1925年の労働者補償(最小限度の規模)勧告(第22号)
労働者補償の最小限度の規模に関する勧告(第22号)
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百二十五年五月十九日を以て其の第七回会議を開催し、
右会議の会議事項の第一項目の一部たる労働者補償の最小限度の規模に関する提案の採択を決議し、且
該提案は勧告の形式に依るべきものなることを決定し、
国際労働機関の締盟国をして立法其の他の方法に依り之が実現を為さしむる目的を以て考慮せしむる為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百二十五年六月十日、千九百二十五年の労働者補償(最小限度の規模)勧告と称せらるべき左の勧告を採択す。
総会は、国際労働機関の各締盟国が左の原則及規準を考慮すべきことを勧告す。
Ⅰ
傷害の結果、労働不能に至りたる場合に於ては、各国の法令又は規則は、以下指示する率より低からざる率を以て補償を支払ふことを定むべし。
(1) 終身の全部労働不能の場合に於ては、当該労働者の一年の労働所得の三分の二と同額の定期金
(2) 終身の一部労働不能の場合に於ては、終身の全部労働不能の場合に支払はるべき定期金を基礎とし、傷害に因り生じたる労働所得能力の減少に応じて計算せられたる其の定期金の割合
(3) 一時の全部労働不能の場合に於ては、補償の目的の為計算せられたる労働者の基礎労働所得の三分の二と同額の毎日又は毎週の定期金
(4) 一時の一部労働不能の場合に於ては、一時の全部労働不能の場合に於て支払はるべき毎日又は毎週の定期金を基礎とし、傷害に因り生じたる労働所得能力の減少に応じて計算せられたる其の定期金の割合
補償が一時金として支払はるる場合に於ては其の金額は、前項に従ひ支払はるべき定期金の現価を下ることを得ず。
Ⅱ
労働者が常時他人の手助けを要する傷害の場合に於ては、右労働者には割増補償を支払ふべく、右は、終身の全部労働不能の場合に支払ふべき額の半額を下ることを得ず。
Ⅲ
傷害の結果死亡に至りたる場合に於ては、補償の目的の為被扶養者と認めらるる権利を有する者には、少くとも左記の者を包含せしむべし。
(1) 死亡者の夫又は妻
(2) 死亡者の子にして十八歳未満の者、又は十八歳以上なるも身体若は精神の耗弱の為労働所得能力なき者
(3) 死亡者の直系尊属(父母又は祖父母)にして生計の手段を有せず且死亡者の扶養を受け又は死亡者が其の生計を扶くるの義務を負ひたる者
(4) 死亡者の孫及び兄弟姉妹にして十八歳未満又は十八歳以上なるも身体若は精神の耗弱の為労働所得能力なく孤児なる者又は其の父母生存せるも之を給養するの能力なき者
補償が定期金の方法に依り支払はるる場合に於ては、一切の被扶養者に支払はるべき年額の最高総額は、死亡者の一年の労働所得の三分の二を下ることを得ず。
補償が一時金として支払はるる場合に於ては一切の被扶養者に支払はるべき最高額は、死亡者の一年の労働所得の三分の二と同額の定期金の現価を下ることを得ず。
Ⅳ
被害労働者の職業再教育は、当該国の法令又は規則の最も適当と認むる方法に依り之を定むべし。
政府は、右の再教育に従事する施設を奨励すべし。