1937年の公共事業(国家的計画)勧告(第51号)

ILO勧告 | 1937/06/22

公共事業の国家的計画に関する勧告(第51号)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二年六月三日にその第九十回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である二十の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二年六月十八日に、千九百三十七年の公共事業(国家的計画)勧告(第五十一号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百三十七年六月三日を以てその第二十三回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第三項目に含まれている公共事業の国家的計画に関する提案の採択を決議し、且つ
 この提案は勧告の形式に依るべきものなることを決定したので、
 千九百三十七年の公共事業(国家的計画)勧告として引用することができる次の勧告を千九百三十七年六月二十二日に採択する。
 事前の計画がないときは、公共事業に使用される経費は、好況時代に増加し、且つ不況時代に減少する傾向があるので、
 公共事業に従事する労働者の雇用量の変動は、そのため商業上の需要から生ずる雇用量の変動を倍加し、かくして好況時代における或る種の労働者の不足と不況時代における失業の程度とを順次に悪化させるので、
 産業的変動をできるだけ緩和するような方法で公共事業の時期を調整することが望ましいので、
 かかる時期調整方策をすべての公共事業に画一的に適用することは、各種の機関により適用される管理上及び財政上の方法の調整を必要とするので、
 公共事業を失業対策として充分有効ならしめようとするなら、公共事業に従事する労働者の募集及び雇用の条件に関する措置を採択すべきことも亦望ましいので、
 総会は、各加盟国が次の原則を適用しなければならないことを勧告する。

第 一 部 公共事業の時期調整

1(1) 公の機関により行われるか又は経理されるすべての事業の時期を適当に調整するため適当な措置を講じなければならない。
 (2) この時期調整は、不況時代においては公共事業の量の増加を伴うべく、且つ、この目的のため、保留しておくことができ又は通常の要求を超える事業であつて、必要の感ぜられるや否や直ちに実行されうるものを好況時代に予め準備しておくことが望ましい。
 (3) 変動する経済事情が要求するところに従い、重工業を促進する公共事業又は消費材に対する一層直接の需要を創造する公共事業に特別の注意を払わなければならない。
2 公共事業の時期を調整する方策は、中央機関、管区機関、地方機関、公益企業又は公の機関から補助金又は貸付金を受ける団体若しくは個人により行われるすべての公共事業(殖民地における事業を含む。)に適用しなければならない。
3 就中次のことを任務とする全国的調整機関を設けなければならない。
 (a) 各種の公共事業に関する情報を蒐集すること。
 (b) 予め事業の準備を確保し又は促進すること。
 (c) 如何なる場合に事業を保留し、且つ如何なる場合に保留されている事業を行うべきかについて指令又は助言を与えること。尤も失業の量の変動、卸売物価指数の変化、利率の変化及び経済事情に於ける変動を示すその他の徴候の変化を考慮するものとする。

第 二 部 公共事業の経理

4 この勧告に掲げられる方策により必要とされる財政上の措置の中では次のものに特に考慮を払わなければならない。
 (a) 不況時代のため準備される事業を行うに必要な財源を好況時代において保留しておくこと。
 (b) 支出されなかつた残金を或る年から他の年に繰越すこと。
 (c) 好況時代において公の機関による借入を制限し、且つ従前の借入金の返還を促進すること。
 (d) 不況時代において経済復興を促進すると思われる公共事業を借入金により経理し、且つ一般的に言えば、かかる時期において公共事業の促進に必要であり、且つその借入金についてできるだけ低い利率を確保する貨幣政策を実施すること。
5 第三項に規定される調整機関又はこれと協力して活動する特別機関は、公共事業の経理に関し次の任務の全部又は一部を委託されなければならない。
 (a) 公共事業に関する財政政策及び必要なときは租税政策について中央機関に助言を与えること。
 (b) 中央銀行又はこれに相当する機関の信用政策及び市場取引と政府の公共事業政策との間に適当の調整を確保することに助力すること。
 (c) 第二項に掲げられる各種の公の機関の借入政策を調整すること。並びに
 (d) 貸付金及び補助金に関し中央機関の政策を有効ならしめることを確保するため必要な措置を講ずること。

第 三 部 或る種の労働者の雇用

6 この勧告に規定される時期調整方策を適用するに当つては、年少労働者、婦人及び非筋肉労働者の如き特種の労働者に職業を与える事業を含める可能性に考慮を払わなければならない。

第 四 部 募集及び雇用の条件

7 公共事業に使用するための労働者の募集は、好んで公共職業紹介所を通じてこれを行わなければならない。
8 当該国において居住することを許可された外国人労働者は、相互的待遇を条件として、内国人と同一の条件で公共事業における雇用を許さなければならない。
9 公共事業に従事する労働者の賃金率は、その工事の行われる地方において同一性質の事業について労働者団体及び使用者により普通に認められているものより不利であつてはならない。その地方においてかように認められているか又は行われている賃金率が存在しない場合には、一般的産業事情が類似している最も近くの地方において認められているか又は行われている賃金率を採用しなければならない。但し右の率は、如何なる場合にも、その時及び国において理解されるが如き合理的の生活標準を労働者に確保するようなものでなければならない。