1937年の安全規定(建築業)勧告(第53号)

ILO勧告 | 1937/06/23

建築業における安全規定に関する勧告(第53号)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百三十七年六月三日を以つてその第二十三回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第一項目である建築業における労働者のための足場及び揚重機に関連する安全規定に関する提案の採択を決議し、
 この提案は安全規則の規範を包含する勧告を伴う国際条約の形式によるべきものなることを決定したので、
 千九百三十七年の安全規定(建築業)勧告として引用することができる次の勧告を千九百三十七年六月二十三日に採択する。
 建築業における災害の危険を減少するため国際労働機関の加盟国が現に行つている努力を強化する目的を以て、安全規範をその考慮に供し、且つこれらの規定の適用において得られる経験の国際的規模における交換に付て協定することが望ましいのに鑑み、
 千九百三十七年の安全規定(建築業)条約は一連の一般原則を掲げるのみで、詳細な安全規則によりこれを補充する必要があるのに鑑み、
 従つて該条約を批准する国際労働機関の加盟国は災害の危険を減少するのに適すること経験に徴し明白となつた安全規則の規範を自由に利用することができるのが望ましいのに鑑み、
 規範は安全規定(建築業)条約を直ちに批准することができない加盟国に対し指針として利用に供することが望ましいのに鑑み、
 総会は、次のことを勧告する。
1 国際労働機関の各加盟国は、附録規範の規定又はこれに等しい規定に対し、国内の状態よりして可能であり且つ望ましい最も充分な効力を与えなければならない。
2 千九百三十七年の安全規定(建築業)条約を批准した国際労働機関の加盟国は、規範に効力を与えた程度を示す報告を任意的に三年毎に国際労働事務局に送付しなければならない。

付録

規範

第 一 部 足場

規則1――足場の必要

 梯子又はその他の手段によつては安全に行うことができないすべての作業に付、労働者のため適当な足場を設けなければならない。

規則2――足場の建設

 足場は、資格あり且つ責任ある者の指揮の下において、且つできるだけこの種の作業において充分な経験を有する資格ある労働者による外、これを建設し、取除き又は実質的に変更してはならない。

規則3――材料の質

1 すべての足場及びその附属装置並びにすべての梯子は、堅牢な材料のものとし、且つ右足場及び附属装置に加えられる荷重及び内力に対して充分耐久力のあるものでなければならない。
2 足場、通路、道板及び梯子に使用される木材部は、良質のもので、木理通り、且つ良い状態に在り、且つ疵を隠すような方法でこれに塗料を施し又は加工を施してはならない。
3 足場に使用される丸太材は、木皮を完全に剥ぎ取らなければならない。
4 必要なときは、足場に使用される板材類は裂開するのを防止しなければならない。
5 足場の金属部分は、罅のない且つ腐蝕又はその強度を害するようなその他の疵のないものでなければならない。
6 鋳鉄製の釘は、これを使用してはならない。

規則4――材料の検査及び保管

1 足場の各部分(足場機械及び索及び鋼索を含む。)は、組立に先だち常に経験ある者がこれを検査し、且つすべての点において右各部分がその目的上必要な品質を具えるのでなければ、これを使用してはならない。
2 酸類又はその他の腐蝕性物質と接触しているか又は疵のある索は、これを使用してはならない。
3 足場の建設に使用されるすべての材料は、良好な状態の下に且つ足場に不適当な材料とは別に、これを保管しなければならない。

規則5――材料の供給及び使用並びに足場の保存

1 足場建設のため充分な材料を供給し且つ使用しなければならない。
2(1) すべての足場は、良好にして適当な状態においてこれを保存し、且つ各部分は、通常の使用の結果として転位することがないようにこれを取付け又は定着しておかなければならない。
 (2) いかなる足場も、これを一部分取外し、なお且つこれを使用することができるように残しておいてはならない。尤も残存部分が依然この規範に適合する場合はこの限りではない。

規則6――棒建地及び板組足場

1 棒建地及び板組足場は、
 (a) 垂直であるか又は建築物に対し僅少の傾斜を保たせなければならない。
 (b) すべての状態に対し足場の安全を保つため相互に充分に接近させて固定しなければならない。
2 棒建地の安全は、次によりこれを保たなければならない。
 (a) 地質に応じ必要な深さまで地中に挿入するか、
 (b) 滑りを止めるよう適当な板材若しくはその他の適当な台盤の上に棒を立てるか、又は、
 (c) その他の適当な方法により
3 建築物の隅角において二つの足場が相会するときは、足場の外側隅に一本の棒建地を立てなければならない。
4(1) 布は、略水平とし、且つボールト、鎹、索又はその他の有効な手段により建地に堅固に取付けておかなければならない。
 (2) 同一水平線上の二つの相連接する布の端は建地において堅固に連結しなければならない。尤も同等の強度を確保する特別の装置が使用される場合はこの限りではない。
5(1) 腕木は、真直とし、且つ布に堅固にこれを取付けなければならない。
 (2) 布が用いられないときは、腕木は、建地にこれを取付け、且つ堅固に取付けられた棧木によつてこれを支持しなければならない。
 (3) 腕木の一端が壁に支持されるものに在つては、その端において少くとも嵌り込み十糎の平坦な支持表面がなければならない。
 (4) 腕木の厚さは、これに加えらるべき荷重に対し充分なものでなければならない。
 (5) 作業台を載せ掛ける二つの相並ぶ腕木の間隔は、予想される荷重及び作業台の板の質を適当に考慮してこれを定めなければならない。
 (6) 原則として右の間隔は、厚さ四十粍に達しない板材に付ては一米、厚さ五十粍に達しない板材に付ては一・五米及び厚さ少くとも五十粍の板材に付ては二米を超えてはならない。
 (7) この規則の5(6)の要件は、軽い建築材料のみを載せるために使用される作業台には適用されない。尤も右の作業台に付ては、腕木間の間隔は、二米を超えてはならない。
6 作業台に使用される板材は、厚さ三十粍に達しないものであつてはならない。

規則7――梯子足場

1 梯子足場は、殆ど材料を必要としない軽作業(修繕、ペイント塗その他)に付てのみこれを使用しなければならない。
2 梯子足場の建地に供する梯子は、
 (a) 充分の耐久力を有するものとし、且つ
 (b)(i)  地質に応じ必要な深さまで地中に挿入するか、又は
  (ii) 台盤の上におき、以て各梯子の二つの建地が平均に土台の上に在るようにし、且つ脚部を滑らないよう適当に固着しておかなければならない。
3 一つの梯子を延ばすため他の梯子を使用するときは、二つの梯子は、少くとも一米半食い合わせ、且つ堅固に連結しなければならない。

規則8――棒組、板組及び梯子足場の安定

1 すべての足場には充分且つ適当に筋違を施さなければならない。
2 自立足場を除き、すべての足場は、適当な垂直距離及び水平距離において建築物に堅固に連結しなければならない。
3 当該足場が自立足場であるときは、腕木の少くとも三分の一は、足場の最終的に取除かれるまではその位置に残しおき、且つ引続き場合に応じ布又は建地に堅固に取付けおかなければならない。
4 作業台支持の用に供されるすべての構造物及び装置は、構造堅牢であつて脚部堅固なるものとし、且つこれを安定させるため適当に支柱及び筋違を施さなければならない。
5 空積瓦、下水土管、煙突土管又はその他の不適当な材料を足場の建設又は支持に使用してはならない。

規則9――肱木足場

1 肱木足場は、
 (a) これを堅固に固定し且つ内側から蝶番をし、
 (b) 突梁は、その堅牢及び安定を確保するに充分な長さ及び横断面を有し、且つ
 (c) 適当に筋違及び支柱を施さなければならない。
2 建築中足場の各部分に対する支持物として使用することができるのは、堅牢の部分のみとする。
3 作業台が壁に挿入した木製支柱の上に存するときは、支柱は、有効に筋違を施し、壁に真直に挿入し、且つ他の側にぬいて堅固に固定しなければならない。

規則10――持送り足場

 壁に取付けた鎹又は大釘を以て支持され又は固着される見掛けだけの足場又は持送り足場は、これを使用してはならない。尤も持送りが適当な耐久力を有し、適当な金属で作られ且つ壁に堅固に固着されている場合はこの限りではない。

規則11――移動作業台を有する吊り足場

1 吊り足場は、この規則の規定に適合しなければならない。
2 突梁は、
 (a) 足場の堅牢及び安定を確保するに充分な耐久力及び横断面を有するものとし、
 (b) 建築面に直角にこれを設置し、且つ
 (c) 腕木又は台金具に適合するよう注意して間隔を定めなければならない。
3 突梁の建築物よりの突出は、作業台が建築面より最大限度十糎離れて懸垂静止するようにしなければならない。
4(1) 突梁は、ボールト又はその他のこれに類する手段により当該建築面に堅固に定着しなければならない。
 (2) 固定ボールトは、適当に締め付け、且つ突梁を当該建築物の枠組に堅固に緊縛しなければならない。
5 いかなる平衡錘も、右足場の突梁を安定させる手段としてこれを使用してはならない。
6 各突梁の先端には、留ボールトを設けなければならない。
7 鋼索を突梁に緊縛するために使用されるシヤツクルは、移動作業台上に在る捲揚装置の捲索胴の中心の上に垂直にこれを設けなければならない。鋼索の端環は、結索用シヤツクル、ボールトの中心に取付けなければならない。
8 作業台を支持するには、適当な腕木又は台金具を使用し、且つ、右は、転位を防止するよう適当に緊縛しなければならない。台金具は、挾金を以て充分に結合しなければならない。
9 懸垂用に使用される鋼索又は索条は、
 (a) 索が支持すべき最大重量を基礎とし、常に少くとも十の安全率を有し、且つ
 (b) 作業台の最も低い位置においてなお各索捲胴の二捲きを残す長さを有しなければならない。
10 足場機械は、その動く部分が容易に監督の届き得るようこれを建設しなければならない。

規則12――移動作業台を有する軽易吊り足場

1 軽易吊り足場は、この規則の規定に適合しなければならない。
2 突梁は、充分の長さ及び横断面のものとし、且つ適当にこれを設け且つ支持しなければならない。
3(1) 突梁の内側の辺端は、堅固に固定しなければならない。
 (2) 突梁が砂嚢(注:原文は旧字体、以下同じ)は又はその他の散々の材料を以て造つた平衡錘により定着されるときは、嚢又は平衡錘は、突梁に堅固に括り付けなければならない。
 (3) 懸垂索は、少くとも十の安全率を有しなければならない。
4 作業台の最大の長さは、八米でなければならない。
5 作業台は、少くとも三本の索にてこれを吊し、各索の間隔は、三米を超えてはならない。中央の索は、いかなる時においても他の二本よりも緊張してはならない。
6 複合滑車は、堅牢な帯鉄により作業台に取付け、右帯鉄は、作業台の側面及び底面を巡つて適当に取付けてこれを連結し、且つ索を通ずべき眼孔を有するものでなければならない。
7 労働者が作業するために乗る吊り足場には、壁より少くとも三十糎の距離において作業台を支持し、且つ足場が動揺するとき労働者の膝が壁に当ることを防止するための装置を取付けなければならない。

規則13――その他の吊り足場

1 捲揚用籃、大吊籃、水夫座又はその他の類似の設備は、短時間作業のための例外的事情の下に、且つ責任者の監督の下においてのみ、吊り足場としてこれを使用することができる。
2 右の設備が吊り足場として使用される場合においては、
 (a) 右は、自重を含む総重量を基礎とし、少くとも十の安全率を有する鋼索を以てこれを支持しなければならない。
 (b) 労働者が抛り出されることのないよう必要な措置を講じなければならない。
3 捲揚用籃又は大形籃が吊り足場として使用される場合においては、
 (a) 右は、深さ少くとも七十五糎でなければならない。
 (b) 右は、二本の強力な帯鉄で吊り、右帯鉄は、籃の側面及び底面を巡つて適当に取付けてこれを連結し、且つ索を通ずべき眼孔を有するものでなければならない。

規則14――足場上における材料の運搬及び積置き、荷重の配分

1 足場上において又は足場まで重荷物を運搬する場合には、足場に急激な衝動を加えてはならない。
2 足場上における荷重は、できるだけ平均に配分され、且ついかなる場合にも危険な均衡攪乱を避けるよう配分されなければならない。
3 足場の使用中足場が過重に負荷されないよう且つ無用の材料がその上に積置かれないよう常に注意を払わなければならない。

規則15――足場上における揚重装置の設置

1 足場上において揚重装置を使用せんとする場合においては、
 (a) 足場の各部分を周到に検査し、且つ必要あらば適当に補強しなければならない。
 (b) 腕木の移動を防止しなければならない。且つ
 (c) できれば建地は、揚重装置の据置場所における建築物の固定部分と堅固に連結しなければならない。
2 揚重装置の昇降台が案内軌道を移動するのでないとき、又は荷物の揚卸中荷物が足場に接触する虞あるときは、貨物が足場に引掛ることのないよう足場の高さまで垂直の板囲いを設けなければならない。

規則16――足場の定期的検査

 足場は、資格ある者が次の通りこれを検査しなければならない。
 (a) 少くとも一週一度、且つ
 (b) 悪天候の続いた後及び作業の著しい中断の後毎に

規則17――特に他の請負人により建設された足場の使用前の検査

 すべての足場は、これを使用せんとする労働者の使用者により設けられたると否とを問わず、
 (a) 特に次のことを確保するため資格ある者がこれを使用前検査しなければならない。
  (i)  当該足場が安全状態に在ること。
  (ii)  その建設に使用された材料が堅牢のものであること。
  (iii) 当該足場が使用されるべき目的に適すること。
  (iv)  必要な防護措置が施されていること。
 (b) 使用中良好な状態において維持されなければならない。

規則18――作業台

1 地上又は床上二米を超えるすべての作業台は、間隙なくこれを板張りしなければならない。
2(1) 作業台の幅は、作業の性質を考慮して充分のものとし、且つすべての部分において固定の障害物及び堆積した材料に妨げられない六十糎を下らない通路の存するようにしなければならない。
 (2) 作業台の幅は、いかなる場合においても、左記を下つてはならない。
  (a) 単に人が乗るのみで材料の積置きには使用されない場合には六十糎
  (b) 材料の積置きに使用される場合には八十糎
  (c) 他の上方作業台の支持用として使用される場合には百十糎
  (d) 作業台であつてその上で石材の仕上又は粗削りをする場合には百三十糎
  (e) 作業台が上方作業台の支持用として使用され且つその上で石材の仕上又は粗削りをする場合には百五十糎
3 腕木により支持される作業台の最大幅員は、原則として百六十糎を超えてはならない。
4 すべての作業台は、棒組又は板組足場の一部であるときは、建地の上端より少くとも一米低い位置に設けなければならない。
5 作業台の一部を成し又は趾止板として使用される板材は、
 (a) 厚さは、腕木の間の距離に対し充分な耐久力を有するものとし、且ついかなる場合にも三十粍を下らないものとし、且つ
 (b) その幅は、十五糎を下らないものとしなければならない。
6 作業台の一部を成す板材は、辺端支持物より板厚の四倍を超える距離まで突出しなければならない。
7 板材は、躓く危険を最少限度に減じ、且つ手押車の進行を容易ならしめるため傾斜をつけた木片を取付けるが如き手段を講ずるのでなければ、互に重ね合わしてはならない。
8 作業台の一部を成すすべての板材は、少くとも三個の支持物に載せ掛けなければならない。尤も腕木の間の距離及び板材の厚さが彎曲又は不当な傾斜の危険を除くが如きものはこの限りではない。
9 作業台は、板材が通常の使用の結果として転位することのないようこれを建造しなければならない。
10 できる限り作業台は、建築物の壁端より少くとも六十糎延長させなければならない。
11 地上又は床上二米を超える高所より人の落下する虞ある作業台又は作業場には、
 (a) 少くとも三十平方糎の横断面を有し、且つ作業台又は作業台上に設けられた起立台から少くとも一米の高さにおいて固定された適当な扶欄を設け従つて扶欄の下の空間が八十五糎を超えないようにしなければならない。
 (b) 作業台より材料及び工具の落下しないよう充分の高さを有し、且ついかなる場合にも高さ十五糎を下らないできるだけ作業台に近接した踏止板を設けなければならない。
12 足場作業台上において使用される扶欄、踏止板及びその他の安全装置は、使用状態のまま存置しなければならない。尤も人の出入又は材料の運搬若しくは移動を可能ならしめるに必要な時間及び程度においてこれを取外すことができる。
13 足場作業台上において使用される扶欄及趾止板は、建地の内側に取付けなければならない。
14 吊り足場の作業台には、すべての側の扶欄及び趾止板を設けなければならない。尤も
 (a) 壁に面する側の扶欄は、七十糎を超える高さでは作業することができないときは、七十糎を超える必要がない。
 (b) 労働者が作業台上に腰を掛けて作業する場合には、壁に面する側に扶欄及び趾止板を設くるに及ばない。尤もこの場合には、労働者は、堅固な手掛を供し且つ労働者の滑るのを支えることができる鋼索、索又は鎖を作業台に取付けなければならない。
15 壁と作業台との間の間隙は、できるだけ少くしなければならない。尤も労働者が作業中作業台に腰を掛ける場合にはこの限りではなく、この場合には、間隙は、四十五糎を超えてはならない。

規則19――通路、道板及び階段

1 すべての通路又は道板は、地上又は床上一・五米を超える部分あるときは、
 (a) 間隙なく板張りし、且つ
 (b) 少くとも五十糎の幅を有しなければならない。
2 通路又は道板の最大勾配は、一米に付六十糎でなければならない。
3 通路又は道板が材料の通路として使用される場合においては、次の如き障害のない道を開けておかなければならない。
 (a) 扶欄及び趾止板を取除くことなくして当該材料の運搬に充分な幅を有し、且つ
 (b) いかなる場合にも幅六十糎を下らないもの
4 通路用又は道板用であるすべての板材は、過度又は不平均に撓むことのないようこれを固定し且つ支持しなければならない。
5 勾配あるため足掛りを添加する必要ある場合及び勾配が一米に付二十五糎を超えるすべての場合には、次の如き適当な踏棧を取付けなければならない。
 (a) 適当な間隔を置いて取付け、
 (b) 通路の全幅に亙るもの(尤も手押車の通行を容易ならしめるため十糎の幅において間を開けることができる。)
6 階段には全長に亙り扶欄を設けなければならない。
7 二米を超える高所より人の落下する虞ある通路、道板及び階段には、次のものを設けなければならない。
 (a) 少くとも三十平方糎の横断面を有し、通路、道板又は階段より少くとも一米の高さにおいて固定した適当な扶欄及び趾止板を設け、従つて扶欄の下の空間が八十五糎を超えないようにしたもの
 (b) 通路、道板又は階段より材料及び工具の落下しないよう充分な高さを有し、且ついかなる場合にも高さ十五糎を下らないで、できるだけ通路、道板又は階段に近接した趾止板

規則20――作業台、通路、道板及び階段に関する一般規定

1 すべての作業台、通路、道板又は階段に不要の障害物、屑物等を置いてはならない。
2 作業台、通路、道板又は階段が滑り易くなるのを防止するため適当な防護手段を講じなければならない。
3 作業台、通路又は道板のいかなる部分も、空積煉瓦、下水土管、煙突土管その他散々の又は不適当な材料を以てこれを支持してはならない。
4 作業台、通路又は道板は、雨水桶、張出窓又はその屋根、電灯配線その他建築物の不適当な一部を以てこれを支持してはならない。
5 作業台、通路又は道板は、その建設がこの規則に準拠して完成し且つ所定の安全装置が適当に取付けられるまでは、その上で作業を行うためこれを使用してはならない。

規則21――脚立足場

1 脚立足場で次の如きものは、これを使用してはならない。
 (a) 二段を超えて重ねたもの
 (b) 地上若しくは床上より高さ三米を超えるもの
 (c) 吊り足台の作業台上に組立てたもの
2 作業台上に組立てた脚立足場の幅は、作業台上において材料を運搬し又は人が通行するに充分な障害のない場所を残す如きものでなければならない。
3 脚立は転位を防止するよう作業台に堅固にこれを固定しなければならない。

規則22――梯子

1 通路として使用されるすべての梯子は、梯子を用いる人が到達すべき最高点よりも少くとも一米突出しているか、又は建地の一つは頂上において手欄として役立つよう右の高さまで長いものでなければならない。
2 梯子は、空積煉瓦又は締りのない積荷の上に立ててはならないし、水平にして堅固な立脚地がなければならない。
3 すべての梯子は、
 (a) 頂点又は脚点から動くことのないよう堅固に取付けなければならない。
 (b) 頂点を固定することが不可能なときは、脚部を堅固に緊縛しなければならない。又は
 (c) 脚部の緊縛も実行不可能なときは、脚部に人を配して過度の滑脱を防止しなければならない。
4 梯子の不当な撓みは、これを防止しなければならない。
5 梯子は、各建地において平均に且つ適当にこれを支持しなければならない。
6 梯子が別々の床を連絡する場合においては、
 (a) 梯子は互違いとしなければならない。且つ
 (b) 各床にはできるだけ小さな開口部を有する防護用踊場を設けなければならない。
7 梯子であつて踏子の外れたもの又は踏子に欠陥あるものは、これを使用してはならない。
8 梯子であつて釘、狗釘又はその他の固定手段により支持される踏子を有するものは、これを使用してはならない。
9 木造梯子は、次のものを以てこれを建造しなければならない。
 (a) 見える疵がなく且つ木理の通つた木材にて造られた充分に強力な建地、且つ
 (b) 見える疵がない木材にて造られ且つ建地に穴嵌めとした踏子(ただ釘で固定した踏子を除く。)
10 屋根職人及びペイント塗職人用の梯子は、他の職業における労働者がこれを使用してはならない。

規則23――開口部の柵囲

1 建築物の床又は作業台に存在するすべての開口部であつて、昇降用若しくは階段用、材料引揚用、労働者の出入用又はその他の用途に供するものには、次のものを施さなければならない。
 (a) 少くとも三十平方糎の横断面を有し、且つ床上又は作業台上より少くとも一米の高さにおいて固定された扶欄であつて、従つて扶欄の直下の空間が八十五糎を下らないようにしたもの
 (b) 材料又は工具の落下を防止するよう充分の高さを有し、且ついかなる場合にも高さ十五糎を下らないで、できるだけ床又は作業台に近接した趾止板
2 壁面開口部であつて床上一米に達しないところに存在するものには、次のものを施さなければならない。
 (a) 少くとも三十平方糎の横断面を有し且つ床上又は作業台上より少くとも一米の高さにおいて固定された適当な扶欄であつて、従つて扶欄の直下の空間が八十五糎を下らないようにしたもの、及び
 (b) 必要な場合には材料又は工具の落下を防止するよう充分な高さを有し、且ついかなる場合にも高さ十五糎を下らないで、できるだけ床若しくは作業台又は開口部の底面に近接した趾止板
3 開口部の柵囲は、次の項によりその取外しが許容される場合を除き、恒久的閉鎖を完成するためこれを取除くことが必要となるまでこれを存置しておかなければならない。
4 開口部の柵囲は、労働者の出入又は材料の運搬若しくは移動のため必要な時間及程度においての外、これを取外してはならないし、且つ直ちに原位置に戻しておかなければならない。
5 作業が蔽いのない梁上において行われるときは、人の落下を防ぐような梁を堅固に板張りするか、又はその他の有効な措置を講じなければならない。

規則24――屋根上の作業

1 屋根の勾配、表面の性質又は天候状態のため落下の危険ある屋根上において、何人をも使用してはならない。尤も人又は材料の落下を防止するに充分な措置を講じたときはこの限りではない。
2 硝子屋根又は脆い材料を以て覆われる屋根の上には、労働者が無意識に足を掛けるのを防止し、且つ修繕の安全な遂行を容易ならしめるため特別の措置を講じなければならない。
3(1) 三十四度(2:3)を超える勾配がある又は滑り易い屋根の外側における附随工事には身体上及び心理上適当である経験ある労働者のみを使用しなければならない。
 (2) 労働者が右の工事に使用される場合においては、
  (a) できるだけ次の装置を設けなければならない。
   (i)  適当な扶欄
   (ii)  堅固に支持され且つ四十糎を下らない幅を有する適当な作業台
   (iii) 適当であつて充分且つ適正に固定された梯子、脚立梯子又は匍匐板
  (b)  (a)に掲げられる装置を設けることが不可能な場合においては、
   (i)  労働者を堅牢な構造物に括りつけることができるような索を有する安全帯を労働者に提供し、且つこれを使用させなければならない。且つ
   (ii) 安全な索を堅牢な構造物に括りつけることができないときは、他の者を配して索を堅固に保持させなければならない。

規則25――雑則

1 作業場構内であつて作業し又は通行する者が三米半を超える高所より落下する材料、工具その他の物に当る虞れがある部分には、右の者を防護するよう覆いを設けなければならない。尤も右の高所よりの物品の落下を防ぐためその他の有効な措置を講じた場合はこの限りではない。
2 足場用材料、工具又はその他の物品は、投下しないで適当に下げ卸さなければならない。
3 すべての作業台及びその他の作業場には、安全な出入手段を設けなければならない。
4 労働者が出入りすることを要するすべての作業場及びその他の場所並びにその出入通路は、有効に照明をしなければならない。
5 必要なときは材料が引揚げられる筋道に当る足場及び構造物のすべての部分に特別の照明を施さなければならない。
6 建築物の建設、修理、変更又は解体作業中は、労働者が電線又は電気装置(低圧線及び低圧装置を含む。)と接触するのを防止するためすべての必要な措置を講じなければならない。
7 足場又は板張の建設に使用されるすべての材料から突出している釘は、めり込ますか又はこれを除去しなければならない。
8 現場に在るいかなる材料も、人に危険を及ぼすような方法でこれを積置き又は放置しておいてはならない。

第 二 部 揚重装置

規則26――一般規定

1 すべての起重機、扛重装置、捲揚装置並びにその他のすべての揚重機及び複合滑車の構造、連動装置並びに固定及び取付装置のすべての部分は、
 (a) 機械的構造良好、材料堅牢で充分な耐久力及び材質を有し且つ欠陥のないものであり、
 (b) 充分に手入れをし、且つ常に良い運転状態にあり、且つ
 (c) 構造の許す限り運転手又は他の資格ある者により少くとも一週に一回現場検査を受けなければならない。
2 すべての揚重装置の安全荷重を確めるため適当な措置を講じなければならない。
3 次のものには、最大安全荷重を明白に標示しなければならない。
 (a) 荷物の揚げ卸しに使用されるすべての揚重装置、捲揚装置及び複合滑車
 (b) 千瓩以上の重量ある荷物の揚げ卸しに使用されるすべての動肘棒又は柱
 (c) すべての起重機
4 動肘を有する起重機に付ては、動肘使用の種種の半径における安全荷重を明白に標示しなければならない。
5 起重機、扛重装置、捲揚装置若しくはその他の揚重装置又はこれら装置の各部分は、次の項により許容される場合を除き、これにその安全荷重を超えて負荷してはならない。
6 起重機若しくはその他の揚重装置又は連動部分の試験を目的とするときは、試験の施行を命ぜられた有資格者が認許するが如き量まで安全荷重を超えて負荷することができる。
7 揚重作業中人が荷物の下に立ち又は荷物の下を通行するのを防止するため有効な措置を講じなければならない。
8 揚重装置に荷物を懸垂した儘放置してはならない。尤も荷物の懸垂中資格ある者が現実に監督しているときはこの限りではない。
9 すべての起重機運転手又は揚重機操縦者は、適当な資格を有する者でなければならない。
10 十八歳未満の者は、揚重装置(足場捲揚機を含む。)の運転又は操縦者への信号をすることに任ぜられてはならない。
11 通常の労働状態においては、起重機操縦者に対してすべての信号をする責任ある者としてただ一人を任命しなければならない。
12 荷物の揚げ卸しが起重機により行われ、且つ起重機の運転手又は起重機を操縦する者が移動する荷物をそのすべての位置において監視することができないときは、一人又は二人以上の監視人又は信号人を置いて荷物が移動する間監視させ、且つ起重機の運転手又は起重機を操縦する者に必要な信号をさせなければならない。
13(1) 遂行される各作業については、信号を与えられた者が容易に聞き又は見ることができるような性質の明確な信号があるようにしなければならない。
 (2) 音響、色彩又は光線信号の使用される場合においては、有効な方法によりこれを行わなければならない。
 (3) すべての信号用配線は、偶発的接触より充分にこれを防護しなければならない。
14 揚重装置の原動機、連動装置、伝導装置、配電線及びその他の危険な部分には、機械又は装置の使用中取除くことができない有効な安全装置を施さなければならない。安全装置を取除く要あるときは、取除く者ができるだけ速かに、且ついかなる場合にも右機械又は装置が再び通常の使用に供されるに先だち、これを原位置に戻しておかなければならない。
15 すべての起重機又はこれに類する揚重装置の運転手には、安全で蔽いのある台又は室を提供しなければならない。
16(1) 合理的に実行することができる場合には、すべての起重機又はこれに類する揚重装置の運転手室は、起重機又は装置が通常の使用に供されるに先だち、これを完全に建造し、又は天候に対し運転手を保護するためこれに充分な施設をしなければならない。
 (2) 寒冷な天候中は、使用中のすべての動力運転起重機又はその他の揚重装置の運転手室は、適当な手段により充分に暖房をしなければならない。

規則27――捲揚装置、扛重装置及び滑車

1 すべての扛重装置又は捲揚装置のすべての機構部分(軸承を含む。)は、金属性のものでなければならない。
2 鋼索を使用するときは、滑車及び索捲胴の直径は、鋼索の素線(索の核心線を除く。)の直径の四百倍以上でなければならない。
3 索捲胴に溝があるときは、
 (a) 溝の半径は、索の半径と略同一とし、索の半径より下つてはならない。 
 (b) 溝のピツチは、索の直径より下つてはならない。
4 索捲胴には、索がこれから滑つて外れるのを防止するフランジを設けなければならない。
5 すべての起重機、扛重装置及び捲揚装置には、有効な制動装置及び懸垂中の荷物の落下を防止するに必要なその他の安全装置を施さなければならない。
6 すべての扛重装置又は捲揚装置の操縦把手には、適当な留金装置を施さなければならない。
7 すべての蒸汽起重機のリンク運動逆転機構を操縦する把手には、適当な発条式留金を施さなければならない。

規則28――懸垂及び取付方法

1 材料揚げ卸しのため揚重装置に使用されるすべての鋼索又は索は、装置のすべての操縦位置において索捲胴に少くとも二捲きを残すよう充分長くなければならない。
2 索の直径が索捲胴の溝のピツチ又は滑車の溝幅より大なるときは、これを有溝索捲胴又は滑車に掛けてはならない。
3 鋼索は、最大荷重において少くとも六の安全率を有するが如きものでなければならない。鋼索の寸法を計算するに当つては、鋼索が単に牽引力のみを受けるものと仮定しなければならない。
4 結節を有する鎖又は鋼索を荷物の揚げ卸しに使用してはならない。
5 すべての揚重用又は動肘用の索又は鎖は、その所属の起重機、扛重装置又は捲揚装置の索捲胴に堅固に取付けなければならない。
6 起重機の組立又は分解の際に使用される索、鎖又はその他の装置の臨時的な取付又は連結は、これを適当且つ堅固に為さなければならない。
7 揚げ卸し用又は懸垂用に使用されるすべての索は、適当な質及び充分の耐久力を有し、且つ良好な状態に在るものでなければならない。
8 荷物の揚げ卸し用又は懸垂用に使用されるすべての鎖、環、鈎、シヤツクル、スウイヴル又は複合滑車は、試験済みのもので、且つ安全荷重及び標識を明白な数字又は文字にて標示してあるものでなければならない。
9 取付用又は懸垂用として使用される装置は、試験の目的を除き、その安全荷重を超えてこれに負荷してはならない。
10 揚げ卸し用又は懸垂用に使用されるすべての鎖、環、鈎、シヤツクル及びスウイヴルであつて接合によつて延長されたか、変更されたか又は修理されたものは、これを再び使用するに先だち、充分試験し且つ検査しなければならない。
11 荷物の揚げ卸し用に使用されるすべての鈎は、
 (a) 吊り綱又は荷物が鈎から外れるのを防止する有効な抑え金を備え、又は
 (b) かくの如き転位の危険をできるだけ少からしめる形状のものでなければならない。
12 荷物の揚げ卸し中、索又は鎖と接触する虞ある鈎の部分は、角をとらなければならない。
13 荷物の揚げ卸し用として吊り綱を二条又は数条掛ける場合においては、これら吊り綱の上端をシヤツクル又は環にて連結し、且つ揚重鈎に別々に掛けなければならない。この要件は、掲げる全荷重が鈎の安全荷重の半分よりも少ないときは適用されない。
14 嵩つた物を揚げ卸しする場合においては、吊り綱の最大荷重は、その強度のみならず脚の角度に従いこれを決定しなければならない。
15 荷物の鋭角端を吊り綱、索又は鎖に接触させてはならない。
16 揚げ卸し用又は懸垂用のすべての鎖、索、吊り綱及びその他の装置は、資格ある者により定期的に検査さるべく、且つ右の者の決定は、これを証明書又は特別の登録簿に記入しなければならない。

規則29――起重機

1 すべての起重機の据付架台は、堅牢な材料を以て建造し、且つ架台の高度及び位置並びに起重機の昇降運行能力に適合した機構のものでなければならない。
2 起重機の作業台は、
 (a) 間隙のない木板又は鉄板でこれを張り、
 (b) この規則に従い堅固に柵囲し、
 (c) 安全な出入路を設け、且つ
 (d)(i) すべての場合において、起重機の運転手又は操縦手及び信号手のため、
  (ii) 支鋼動肘起重機に付ては廻転機構の操縦手のためにも、
   充分な広さのものでなければならない。
3(1) すべての定置起重機は、これを堅固に固定し、又は安定を保持するため堅固に固定した適当な砂嚢により、充分に加重しなければならない。
 (2) 起重機が砂嚢により加重される場合においては、平衡錘の位置及び大きさを示す図表を運転手室に掲げなければならない。
 (3) すべての走行起重機は、起重機の軌道にこれを固定するための装置を施さなければならない。
4 起重機を運転するすべての据付架台、門型架台又はその他の場所の上面には、起重機の位置の如何を問わず障害のない通行余地をできるだけ存置しておき、この余地は、起重機の運転部分を前記の据付架台、門型架台又は他の場所の固定部分又は角との間に少くとも六十糎の幅がなければならない。
5 或る時において、或る場所又は点に少くとも六十糎の幅の通行余地を存置すること不可能なときは、かかる時にかかる場所又は点に人が接近するのを防止するためすべての合理的な措置を講じなければならない。
6 走行起重機の運行するすべての軌条は、適当な断面及び平坦な走行面のものでなければならない。
7 次の要件は、地表面の施設であると地表上の架設であるとを問わず、すべての軌道に適用する。
 (a) 全軌道は、建設方法が適当でなければならない。
 (b) すべての支柱は、充分な耐久力を有し且つ良好な状態に維持されなければならない。
 (c) 軌条の端には、制動沓又は緩衝器を設けなければならない。
8 走行起重機の運行するすべての軌道は、軌道の適当な連結を確保するか、又は軌道の軌幅の著しい変更を防止するため、充分な措置を執らない限り、次の要件を具備しなければならない。
 (a) 挾み座金又は二重座鉄にて接続し、且つ
 (b) 枕木に堅固に取付けなければならない。
9 走行起重機の軌条及び旋廻台は、最大の注意を以て、且つ堅実な技術的原則に従いこれを設置しなければならない。

規則30――起重機の試験及び証明書

1 起重機は、監督機関のため行動する資格ある者の試験及び検査を受くべく、且つ臂の使用可能最大半径まで種々の半径における安全荷重を指定した証明書を試験及び検査を施行した者より交付された後でなければ、これを使用してはならない。
2 この規則により要求される試験及び検査は、次の通り繰り返しこれを行わなければならない。
 (a) 権限ある機関により規定される定期的間隔をおき、且つ
 (b) 起重機に加えられるすべての重要な変更又は修理の後に、
3 最近の証明書に明示される或る半径における安全荷重は、
 (a) 起重機が試験施行の際該半径にて耐えた最大荷重の八十パーセントより大であつてはならない。且つ
 (b) 製作者により指示された荷重より大であつてはならない。

規則31――動臂起重機

1 すべての動臂起重機には、動臂の使用可能最大半径を明白に標示しなければならない。
2 動臂が使用可能最大半径において使用される場合においては、索捲胴の上に二捲きを下らない索の捲残りを存置しておかなくてはならない。
3 三脚動臂起重機の臂は、起重機の後方支柱間にこれを組立ててはならない。
4 動臂を有するすべての起重機には、動臂用噛(注:原文は旧字体)合接手と動臂用索捲胴を支える歯留金具との間に有効な連動機構を設けなければならない。尤も
 (a) 揚重用索捲胴と動臂用索捲胴とが独立的に運転されるか、又は
 (b) 動臂用索捲胴を運転する機構が自動留金式であるときは、
  この限りではない。
5 支鋼動臂起重機の支鋼を略等間隔に固定すること不可能な場合においては、起重機の安全を確保すべき他の措置を講じなければならない。
6 起重機の固定に用うる装置全体は、組立前その都度これを検査しなければならない。
7 起重機の組立は、資格ある者がこれを監督しなければならない。
8 各起重機は、建築作業場で組立後これが使用に先だち資格ある者により固定に対する現場試験を為されなければならない。
9 起重機は、次のいずれかの方法により各固定状態に最大の懸揚力又は牽引力を作用させることにより、その固定状態を検査しなければならない。
 (a) 当該組立状態において揚重さるべき最大荷重を超過すること二十五パーセントである荷重により、又は
 (b) 当該固定状態において同等の牽引力を及ぼすように装置された右より軽い荷重により
10 試験により固定状態に作用させた牽引力が最大安全荷重により作用させた牽引力を超えること二十五パーセントより少ないときは、起重機運転手が容易に見ることができる場所に起重機の当該固定状態に対する荷重表を添付しなければならない。

規則32――自動式安全荷重指示器

1 固定臂を有すると動臂を有するとを問わず、臂付起重機は、次の自動式指示器を備うるのでなければこれを使用してはならない。
 (a) 臂のいかなる傾斜角度においても移動荷重が起重機の安全荷重に近づいたときは、これを起重機の運転手又は操縦手に明白に指示し、且つ
 (b) 臂のいかなる傾斜角度においても移動荷重が起重機の安全荷重を越えたとき有効な音響信号を発するもの
2 前項は、次のものに適用しない。
 (a) 支鋼動臂起重機
 (b) 手動起重機であつて他の起重機を組立て又は取除くためのみに使用されるもの、又は
 (c) 千瓩以下の最大荷重を有する起重機
  尤もかかるすべての場合において、臂の各種半径における安全荷重を示す表を起重機に添付しておかなければならない。

規則33――起重機操縦に関する雑則

1(1) 起重機は、荷物を直接に揚げ卸しする以外の用に供してはならない。尤もその安全性を害する虞のないときはこの限りではない。
 (2) 三脚動臂起重機の後方支柱間の角度の間に存する荷物は、その起重機を以て移動してはならない。
2 一個の荷物を揚げ卸しするため二台以上の起重機又は捲揚装置を必要とするときは、
 (a) 使用される機械、装置及び設備をうまく配置し且つ据付け、以ていかなる場合にもその起重機又は捲揚装置が荷物の揚げ卸しのために安全荷重を超過し又は不安定となることのないようにしなければならない。
 (b) 一斉に運転する装置の操縦を調整するため特に一名の者を任命しなければならない。
3 荷重が最大安全荷重に殆ど近いものと思惟されるときは、揚重装置が安全に荷物を運び得ることを確めるため荷物を少くし揚げることにより試験をしなければならない。

規則34――揚重機

1 材料の揚げ卸しに使用する揚重機(例えば案内軌道を走るケージ又は作業台を有する昇降装置)は、この規則の要件を具備しなければならない。
2(1) 揚重機昇降路には、次の側に堅牢な壁及びその他これと等しく有効な柵を設けなければならない。
  (a) 地表面においてはすべての側に、及び
  (b) その他のすべての平面においては接近し易いすべての側に、
 (2) 揚重機昇降路の壁は、出入通路を除き、少くとも床、作業台又は接近し易いその他の場所の上二米まで高くしなければならない。
3 揚重機への出入通路には、次のような堅牢な戸扉又はその他これと等しく有効な柵を設けなければならない。
 (a) 少くとも高さ一米であつて、且つ
 (b) 揚重機昇降台が踊場を離れるとき自動式に閉鎖するもの
4 揚重機への出入通路は、充分に照明しなければならない。
5 揚重機昇降台の案内軌条は、屈曲に対し充分な抵抗力があり、且つ安全歯により食い込まれる場合において彎曲に対し充分な抵抗力があるものでなければならない。
6 昇降台は、安全な運搬を確保するようこれを建造しなければならない。
7 台車運搬のための昇降台上においては、昇降台上の安全な位置において台車に有効に輪留をしなければならない。
8 数個の部分品の集合体より成る平衡錘は、堅固に相連結する特殊の構造の部分品でこれを構成しなければならない。
9 平衡錘は、案内軌条間で運行するものでなければならない。
10 二本以上の鋼索の使用されるときは、荷重を鋼索に均等に配分しなければならない。
11 各吊り索は、組続きしないものでなければならない。
12 柵の末端は、これを編み込んで鋼線で緊結するか、鉛封留とするか、又は索締め金具で締めつけて取付けなければならない。できる限り嵌環を使用しなければならない。
13 吊り索の索捲胴における固定部分は、充分且つ堅固のものでなければならない。
14 索は、ケージ又は作業台の最も低い位置に在る場合にも、捲揚胴に少くとも二捲きを残すに充分な長さとし、且つ最大荷重の下においても少くとも八の安全率を有するような直径のものでなければならない。
15 鋼索が使用される場合においては、滑車又は捲揚胴の直径は、索の素線の直径の四百倍を下つてはならない。
16 索捲胴に溝がある場合においては、
 (a) 溝の半径は、索の半径と略同一とし、且つ索の半径を下つてはならない。
 (b) 溝のピツチは、索の直径を下つてはならない。
17 索捲胴には、索がこれより滑つて外れるのを防止するフランヂを設けなければならない。
18 揚重機は、先ず静止状態にもたらすことなくして逆転させてはならない。
19 揚重機は、作業台よりこれを運転してはならない。
20 歯留及び歯留車であつて昇降台の下降しない前に歯留を外す必要ある構造のものは、これを使用してはならない。
21 揚重機を操縦する者がすべての位置において作業台を明瞭に見ることができない場合においては、各位置において作業台を見ることができる責任ある者が操縦者に有効な信号をするための措置を講じなければならない。
22(1) 昇降台の静止するときは、掣動装置は、自動式に作用するものでなければならない。
 (2) 荷物の積み卸し作業中は、昇降台は、掣動装置の外に歯又はその他の類似の装置によりこれを固定しなければならない。
23 揚重機には、昇降台がその最高の停止位置に達した際直ちに捲揚装置を停止する装置を設けなければならない。
24 最高の停止位置の上には、捲揚げ過ぎの場合にケージ又は作業台が障害なく進み得るに足る充分な高さの空所を設けなければならない。
25(1) 揚重機は、資格ある者の試験及び検査を受け且つ規定様式による右の者の試験及び検査の証明書の交付された後でなければ、これを使用してはならない。
 (2) 右の試験及び検査は、次の通りこれを繰り返し行わなければならない。
  (a) 権限ある機関により規定される定期的間隔を置き、且つ
  (b) 重要な変更又は修理の行われる毎に及び新たに組立てられる毎に、
26(1) 前記の諸規定は、材料揚卸用揚重機のみに適用する。
 (2) いかなる揚重機も、次の場合を除き、人の運送にこれを使用してはならない。
  (a) 権限ある機関によりかかる使用の許可された場合、又は
  (b) 当該揚重機が工業的企業における人の運送のため使用される昇降機の設置及び運転に関する所定の条件に適合する場合
27 次の掲示は、見易く且つ極めて読み易き文字にてこれを掲げなければならない。
 (a) すべての揚重機には、
  (i)  作業台に、瓩その他適当な重量単位で表わされた運送能力、及び
  (ii) 捲揚装置に、瓩その他適当な重量単位で表わされた揚重能力
 (b) 人の運送に付許可を得又は証明された揚重機には、作業台又はケージに、一時に運送し得る最大人員数
 (c) 貨物専用揚重機には、
   揚重機へのすべての出入通路に、「貨物用揚重機!人の運送を禁ず」

規則35――雑則

1 起重機又は揚重装置の検査又は注油を為す労働者を保護するため防護方法を講じなければならない。
2 起重機の運転台以外の処に人を載せて捲揚げ若しくは運送し又は籃形揚重機若しくは箱形揚重機に人を搭乗させてはならない。
3 揚げ卸し中荷物の各部分は、危険を防止するようこれを適当に懸垂し又は支持しなければならない。
4(1) 煉瓦、タイル、スレート又はその他の材料を揚げるために用いられるすべての容器は、当該材料のいかなる部分も落下しないようこれを閉鎖しなければならない。
 (2) 散々の材料又は負荷した手押車が揚げ卸し用の作業台に直接置かれるときは、右作業台には囲いを設けなければならない。
 (3) 材料は、急激な衝動を生ずるようにこれを揚げ卸し又は廻転してはならない。
5 手押車を捲揚する場合には、車輪を以て支えてはならない。尤も軸承より心棒が滑り抜けるのを防止するため有効な手段が講ぜられる場合はこの限りではない。
6 軽便揚重機が使用される場合においては、その柱が足場に打ち当らないよう索を使用してこれを防護しなければならない。
7 材料揚重用の臂を建地又はその延長材に取付けてはならない。
8 臂を用いないで滑車のみを使用する場合においては、
 (a) 充分な強度を有し、且つ少くとも二本の建地又はその延長材に対し布に対すると同様の方法を以て横木を緊結し、且つ
 (b) これらの横木を足場の布に兼用しないときは、滑車を横木に取付けることができる。
9 揚重装置又はその附属部分が足場に沿つて動くときは、足場上にいる労働者に右装置又はその附属部分が衝突するのを防止するに充分な手段を講じなければならない。
10 常時通行の頻繁な箇所における荷物の捲揚作業は、囲いをした区画内にてこれを行い、且つこれが実行不可能なとき(例えば物体が尨大な場合)は、暫時通行止をするか又は通行路を変更する措置を講じなければならない。
11 揚げ卸し作業中荷物が何等かの物体に接触し当該荷物又は物体の一部が転位することのないよう適当な措置を講じなければならない。

第 三 部 安全装置及び救急

規則36――安全装置

1 必要あるときは、使用者は、承認された型の充分な数の呼吸用保護具、保護眼鏡及び安全帯を労働者に供給しなければならない。
2 安全帯は、充分な長さ及び強度の救助索を有しなければならない。

規則37――救助装置

 作業が溺死の危険ある場所の近くにおいて行われる場合においては、すべての必要な措置を為し且つこれを常に利用し得る状態におき、且つ危険に瀕した労働者の迅速な救助のためすべての必要な手段を講じなければならない。

規則38――救急装置

1 建築工事の行われるすべての場所においては、作業中に蒙ることあるべきすべての負傷を迅速に治療するため充分な設備例えば容易に接近することができ且つ明瞭に標示された救急箱又は救急戸棚の如きものを備え付けておかなければならない。
2 かかる救急箱又は救急戸棚は、特に救急において訓練さるべき責任ある者の責任の下に置かなければならない。

第 四 部 雑則

規則39――労働者に対する規則の告知

 この規範又は権限ある機関により規定さるべきその抜粋は、その写しを労働者に手交するか又は適当な場所に見易く掲示しておかなければならない。

規則40――第一部乃至第三部の規則を遵守すべき使用者の義務

 この規範の第一部乃至第三部を遵守するのは、使用者の義務でなければならない。

規則41――労働者及びその他の者と使用者との協力

1 使用されるすべての者及び作業場に在るすべての者は、この規則の実施において使用者と協力しなければならない。
2 使用されるすべての者は、設備若しくは装置において発見される欠陥又はある者による災害を惹起する虞ある行動を直ちに匡正し、又は使用者若しくは職場頭に報告しなければならない。
3 何人も、前記規則により要求される設備若しくは安全装置の何れをも使用者又はその責任ある者の許可なくして妨害し、転位し、取除き、毀損し又は破壊することはできない。
4 使用されるすべての者は、その保護のため提供されるすべての防護物、安全装置又はその他の設備を適当に使用し、且つその作業に関係あるすべての安全心得を遵守しなければならない。
5 すべての労働者は、自己及び現場におけるその他の者の安全のため必要な措置を執り、且つ自己又はその他の者を危殆ならしめる虞ある行動を慎しまなければならない。
6 いかなる労働者も、設けられた安全な出入通路によるの外、その作業場への往復をしてはならない。