1944年の社会保障(軍隊)勧告(第68号)
軍隊及び類似の任務から解除された者並びに戦時雇用から解除された者に対する所得保障及び医的保護に関する勧告(第68号)
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会によつてフイラデルフイアに招集され、且つ千九百四十四年四月二十日を以てその第二十六回会議を開催し、
この会議の会議事項の第三項目に含まれている、軍隊及び類似の任務から解除された者並びに戦時雇用から解除された者に対する所得保障及び医的保護に関する提案の採択を決議し、且つ
この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
千九百四十四年の社会保障(軍隊)勧告として引用することができる次の勧告を千九百四十四年五月十二日に採択する。
軍隊及び類似の任務から解除された者がその職歴を中断することを余儀なくされ、且つ市民生活において再起するための手始めの経費に直面するであろうのに鑑み、
軍隊若しくは類似の任務から解除された者又は戦時雇用から解除された者が或る場合において適当の雇用をうる前一時失業する虞れがあるのに鑑み、
軍隊及び類似の任務から解除された者が民間雇用に残つていた者と比較して年金保険に関し不利益の立場にあることは望ましくなく、且つ千九百三十三年の廃疾、老令及び遺族保険勧告が軍務に従事する者でかかる任務に就く前被保険者であつた者の年金保険制度に基く権利の保全について規定しているが、軍務に就く前被保険者ではなかつた者に対する制度に基く権利の付与について規定していないのに鑑み、
軍隊及び類似の任務から解除された者が保険適用雇用に就くこと又はその他の方法によりその解除と市民生活の恢復との間に起る疾病に関し保険により保護せられることが望ましいのに鑑み、且つ
これらの事項に関し公平な措置を講ずることが必要である(尤もその他の重要な要求例えば等しく国民所得の負担でなければならない戦争及び内乱犠牲者の要求の如きを充すことを阻害しないものとする。)のに鑑み、
総会は、次の諸原則を適用すること及び理事会が要求するときこれらの原則を実施するために執られた措置に関し国際労働事務局に情報を通告することを国際労働機関の加盟国に勧告する。
Ⅰ 解除手当
1 軍隊及び類似の任務から解除された者(国内の法令又は規則によりその報酬の大部分を引続いて受けている場合を除く。)は、その解除の際特別手当(右手当は、その勤務年数に比例させることができる。)を受くべく、且つ、一時金、定期的給与又は一部は一時金、一部は定期的給与の形式で支払われなければならない。
Ⅱ 失業保険及び救済
2 軍隊及び類似の任務から解除された者は、管理上実行しうる限り、失業保険制度の下にその勤続期間に等しい期間醵出金が支払われた被保険醵出者としてこれを取扱わなければならない。その結果として生ずる財政上の費用は、国が負担しなければならない。
3 国内の法令又は規則により定められるような軍隊及び類似の任務から解除された者又は戦時雇用から解除された者が適当の雇用を申込まれる前その給付請求権を行使し尽す場合又は失業保険制度の適用を受けない場合においては、適当の雇用を利用しうるまで、国の基金より全部経理される手当を支払われなければならない。手当は、できるだけ必要の有無に関係なくこれを支払わなければならない。
Ⅲ 年金及び疾病保険
4(1) 廃疾、老令又は死亡の場合における年金を設定し且つ労働人口の大部分に適用する強制保険制度が実施される場合においては、軍隊及び類似の任務における勤務期間は、最低資格期間に関する要件が充されたか否かを決定する目的上、醵出金期間としてこれを計算しなければならない。
(2) 年金の率が被保険者の貸方に記入された醵出金の回数に応じて異る場合においては、勤務期間は、年金の率を増加するためこれを考慮しなければならない。
(3) 醵出金が報酬に従い等級のある場合においては、醵出金は、勤務期間の関係において合理的な額の画一的仮定的報酬を基礎として貸方に記入されなければならない。尤も被保険者が勤務に就く直前にその貸方に記入される醵出金は、かかる報酬が仮定的報酬よりも高いときは、その当時受けていた報酬を基礎とすることができる。
(4) 軍隊及び類似の任務から解除された者は、その解除とその市民生活において復活したと認めることができる時との間の期間中その貸方勘定に記入される醵出金に関し、その権利を保有しなければならない。この権利は、十二箇月を下らない期間保全されなければならない。
5(1) 疾病、母性及び医的給付を設定し且つ労働人口の大部分に適用する強制保険制度が実施される場合においては、軍隊及び類似の任務から解除された者は、その解除とその市民生活において復活したと認めることができる時との間の期間中発生する疾病又は分娩に関し、かかる給付を受ける権利をもたなければならない。
この権利は、十二箇月を下らない期間保全されなければならない。
(2) 強制保険が被保険者の被扶養者に対する母性及び医的給付を規定する場合においては、この制度により保護される被解除者は、その被扶養者につきかかる給付を受ける権利をもたなければならない。
(3) 疾病給付の率が被保険者の報酬に比例する場合においては、被解除者に支払われる給付の率は、合理的な額の画一的仮定的報酬を基礎としなければならない。
6(1) 国は、年金保険醵出金付で軍隊又は類似の任務に服し且つ市民生活において復活するまで疾病に対し保険に付される者の貸方に記入することにより構成される支払を負担しなければならない。尤もかかる者の或る種の給与が、その生活費及び被扶養者手当の価値を考慮し、産業における普通の賃金に全体として少くとも等しいと認められる場合においては、年金保険醵出金の一部は、その勤務給与からこれを控除することができる。
(2) (1)の規定は、国内の法令又は規則により、かかる者がその勤務中その報酬の大部分を引続いて受け且つ法律により要求される通常の醵出金がその者に関し引続き納入される場合においては適用されない。