1944年の職業安定組織勧告(第72号)

ILO勧告 | 1944/05/12

職業安定組織に関する勧告(第72号)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二年六月三日にその第九十回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である二十の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二年六月十八日に、千九百四十四年の職業安定組織勧告(第七十二号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてフイラデルフイアに招集され、且つ千九百四十四年四月二十日を以てその第二十六回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第三項目に含まれている職業安定組織に関する提案の採択を決議し、且つ
 この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
 千九百四十四年の職業安定組織勧告として引用することができる次の勧告を千九百四十四年五月十二日に採択する。
 千九百四十四年の雇用(戦時より平時への過渡期)勧告の適用は、有効な職業安定組織の存在及び発達を必要とするのみに鑑み、
 千九百十九年の失業条約は、「中央官庁ノ管理ノ下ニ在ル公ノ無料職業紹介所ノ制度」を設けることを定めているのに鑑み、
 千九百四十四年の雇用(戦時より平時への過渡期)勧告に掲げられる仕事の遂行は、職業安定組織の責任、機能及び運営方法の新しい且つ一層広い定義を含むのに鑑み、
 この一層広い観念は、長期完全雇用政策の樹立と適用とにおいて重要性を有するので、
 総会は、次の一般原則を適用し、且つ理事会の要求に従い随時これらの原則を実施するために執られる措置に関し国際労働事務局に報告することを国際労働機関の加盟国に勧告する。
1 職業安定組織の本来の任務は、他の公私の関係団体と協力して、生産資源の完全利用のための国家的計画の不可分の一部として工業的、農業的及びその他の雇用を最もよく組織化することができる。
2(1) この任務を果すため、職業安定組織及び関係機関を強化するための措置を執らなければならない。
 (2) これらの組織は、次のことについて責任を負わなければならない。
  (a) 労働供給、雇用機会、特定の仕事の遂行に必要な熟練、各種産業における熟練要件の相違、雇用及び失業の傾向、雇用の規制及び失業の原因に関する情報並びに完全雇用を促進する上に価値あるその他の情報を蒐集し且つ提供すること。
  (b) 労働者が適当な職業を見出すこと、及び使用者が適当な労働者を見出すことを援助すること。
  (c) 訓練及び再訓練課程の内容を拡充し且つ決定することを援助すること。
  (d) 必要の場合には一職業又は一地域から他の職業又は地域への労働者の移動を容易にする方法を発達させること。
  (e) 各産業及び地域内における人力の最善の配分を達成することを援助すること。
  (f) 必要に応じて、失業保険及び失業者扶助の実施について協力すること。
  (g) 産業の地理的配分、公共事業、住宅建設、社会施設並びにその他社会的及び経済的措置を計画することにおいて他の団体を援助すること。
3 職業安定組織とその他の機関にしてその活動が雇用に影響するもの(現在の雇用及び失業状態に従い公共事業を促進し又はその速度をゆるめる責任ある機関を含む。)との間の密接な協力は、全国的、地方的及び地域的計画にもとずきこれを組織化しなければならない。
4(1) 千九百十九年の失業条約第二条に定められる合同諮問機関の外、職業安定組織は、使用者及び労働者の団体と緊密に協力しなければならない。これらの団体をして雇用政策の樹立と遂行とを援助することを得しめるため適当の機関を設けなければならない。
 (2) 職業安定組織は、関係産業の特殊問題の解決を促進するため設置されるべき合同委員会と協力しなければならない。