1958年の船内医療箱勧告(第105号)
船内医療箱の内容に関する勧告(第105号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十八年四月二十九日にその第四十一回会期として会合し、
この会期の議事日程の第五議題の一部である船内医療箱の内容に関する提案の採択を決定し、
この提案が勧告の形式をとるべきことを決定したので、
次の勧告(引用に際しては、千九百五十八年の船内医療箱勧告と稱することができる。)を千九百五十八年五月十三日に採択する。
総会は、加盟国が次の規定を適用すべきことを勧告する。
1(1) 海洋航行に従事するすべての船舶は、医療箱を備えるよう要求されるべきであり、その内容は、船舶内の人員数並びに航海の性格及び期間のような要因を考慮に入れて、権限のある機関が定めるべきである。船長又は他の責任ある職員は、使用が制限されている医薬品を保管するため、特別の措置を執るべきである。
(2) 医療箱の最少限の内容に関する法令は、船舶内に船医がいるかどうかにかかわらず、適用すべきである。
2(1) 各種の医療箱の内容に関する規則を制定し又は検討するに当つて、権限のある機関は、この勧告に附属する最少限の内容の表を考慮に入れるべきである。
(2) 前記の規則は、新たな医学上の発見、進歩及び承認された処置法にかんがみ、国際労働機関及び世界保健機関の間で合意する方法により採択される定期的な改正に関する提案に従つて、定期的に改正されなければならない。
3 すべての医療箱には、権限のある機関が認め、かつ、その内容の使用法を十分に説明した医療便覧を備え付けておくべきである。同便覧は、補助的な無電による医療助言の有無にかかわらず、船医以外の者が船内の病人又は負傷者に対して必要な手当を行うことができるよう十分に詳細にしなければならない。
4 規則は、医療箱及びその内容の適正な維持及び保管並びに、権限のある機関が認める者が通常十二箇月をこえない期間ごとに行う定期的検査を定めるべきである。
附属書
最少限医療薬品及び医療施設表(注)
A 国際薬局方に表示されている次の調剤に相当する薬品
(a) | 第一巻 |
※ | ジフテリア血清 |
※ | 破傷風血清(少量) |
沃(よう)度のエーテル溶液 | |
あへんチンキ(及び(又は)相当薬品) | |
(b) | 第二巻 |
※ | アドレナリン注射液 |
※ | 硫酸アトロピン注射液 |
モルヒネ注射液 | |
※ | ニケサミド注射液 |
※ | プロカイン・ヒドロクライド注射液 |
アセチルサルチル酸錠 | |
※ | アスコルビン酸錠 |
※ | 硫酸アムフエタマイン錠 |
燐酸コデイン錠(及び)又は(相当薬品) | |
塩酸エフェドリン錠 | |
※ | トリニトロ・グリセリン錠 |
塩化第一水銀錠(甘汞(こう)) | |
プロゴナイル・ハイドロライド錠(又は他のマラリア治療薬) | |
サクシニルズルファチアゾール錠(又は相当薬品) | |
ズルファダイアジン錠(又は相当薬品) | |
※ | ベラドンナチンキ剤 |
注射用蒸溜水 |
B その他の薬剤
(a) | 外科薬 |
負傷用防腐剤 | |
消毒剤 | |
殺虫剤 | |
塗薬 | |
急性皮膚炎用水薬 | |
痔(じ)用軟膏(こう) | |
安息香酸及びサルチル酸の化合物のような輪癬(せん)用薬 | |
慢性皮膚炎症薬、たとえば酸化亜鉛軟膏(こう) | |
火傷(やけど)用薬 | |
疥癬(かいせん)用ベンジル安息香酸塩貼用薬 | |
※ | 性病予防薬一式包装 |
(b) | 眼科薬 |
麻酔薬 | |
防腐剤 | |
※ | 黄色酸化水銀眼用軟膏(こう) |
(c) | 歯痛薬 |
(d) | 内服薬 |
バルビチュール酸誘導体錠 (i)即効催眠薬 (ii)遅効鎮静薬 | |
ヒヨスチン水素臭化物錠(スコボラミン水素臭化物)又はこれに相当する船酔薬 | |
ソディユゥム・クロライド錠(熱射痙れん用) | |
ペニシリン・レボジトリ・フオーム注射薬たとえば強化ペニシリンG(晶質ペニシリンを含むプロカイン・ペニシリンG)、PAM(モノステアリン酸アルミニウムを含む油状プロカイン・ペニシリンG)又はベンザチン・ペニシリンG | |
※ | 内服用抗生物質、たとえば塩酸塩又はペニシリンV |
※ | 抗ヒスタミン剤 |
胃液酸度治療薬 | |
緩下剤 | |
(e) | その他 |
オリーヴ油(又は相当薬品) | |
世界保健機関が発行している各港における性病診療所の国際表の写 | |
前記の国際表に附属する性病処置のための個人用小冊子 |
前記の表中のバルビチュール酸誘導体錠、燐酸コデイン錠、モルヒネ注射薬、あへんチンキ及びベラドンナチンキは、船長又は他の責任ある職員が施錠して保管するものとし、同船長又は他の責任ある職員は、プロカイン及びペニシリンについても責任を有するものとする。
C 外科用機械、器具及び備品
体温計 | |
皮下注射器及び注射針(血清その他の注射に適するもの) | |
縫糸及びほうたい(腸線、蚕糸) | |
縫針(できれば針軸も加えること。) | |
止血鉗(かん)子 | |
破片抜き | |
解剖用鉗(かん)子 | |
外科用小刀(ステンレス製) | |
手術用鋏(はさみ) | |
止血器 | |
眼科用反剪(せん) | |
洗眼コップ | |
点眼びん | |
種種の大きさの軟ゴム尿道注入器 | |
副木(そえぎ)(木製又は鉄製) | |
便器 | |
尿器 | |
卵型皿 | |
給食器 | |
熱湧びん | |
担架(ネイル=ロバートソン担架又は類似のもので、船舶内の一部から他の部へ患者を移すことに適するもの) | |
ほうたい鋏(はさみ) | |
木製塗布器 | |
ほうたい | |
ガーゼ | |
脱脂綿 | |
絆創膏(ばんそうこう) | |
ゴムほうたい | |
※ | 石膏(こう)粉製ほうたい |
注 この表に示されている注射用医薬品、たとえばアドレナリンのようなものは、可能な限り、毎回一回分の容器に入れて供されるよう勧告する。
※印は、任意とする。