1958年の賃金、労働時間及び定員(海上)に関する勧告(第109号)
賃金、船内労働時間及び定員に関する勧告(第109号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十八年四月二十九日にその第四十一回会期として会合し、
この会期の議事日程の第二議題である千九百四十九年の賃金、労働時間及び定員(海上)に関する改正条約の一般的改正に関する提案の採択を決定し、
千九百五十八年の賃金、労働時間及び定員(海上)に関する改正条約を採択し、
同様に船員の雇用条件を改善することを加盟国に奨励する他の手段の必要を認めて、
次の勧告(引用に際しては、千九百五十八年の賃金、労働時間及び定員(海上)に関する勧告と称することができる。)を千九百五十八年五月十四日に採択する。
適用範囲
1 この勧告は、商業に従事する機械推進の海洋航行船(江湾船、漁船及び原始的構造の船舶を除く。)において使用されている船長以外の船員について適用する。
賃金
2 この勧告が適用される船舶において使用される有能海員の一暦月間の勤務に対する基本給又は基本賃金は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国の通貨で二十五ポンド又はアメリカ合衆国の通貨で七十ドルのいずれかでその時に応じて大きい方の金額を下つてはならない。ただし、他の属員群を使用する場合より多人数の使用を必要とするような属員群が使用されている船舶における最低基本給又は最低基本賃金の決定に当つては、同一労働同一賃金の原則に留意して、使用されている余分の属員数及びその属員の使用の結果として生ずる船舶所有者の乗組員費用の相違のような特別の要素を考慮することができる。
3 船舶所有者を代表する善意の団体と船員を代表する善意の団体との間の労働協約によつて前項の規定が実施される場合を除き、加盟国は、次のことを確保しなければならない。
(a) 監督及び処罰の制度により、前項に定める率を下らない率で報酬が支払われるようにすること。
(b) 前項に定める率より低い率で支払を受けた者が低廉かつ迅速な司法又は他の手続により支払不足額を回収することができるようにすること。
労働時間
4 航行中及び入港中の通常の労働時間は、各部につき一日八時間でなければならない。入港中の労働時間で週休日及びその前日におけるものに関しては、国内法令又は労働協約により特別の規定を定めなければならない。
5 週休日に船舶が航行中であるときは、労働協約又は国内法令の定めるところに従つて船員に対し補償しなければならない。
6 小型船舶及び近距離航路に就航する船舶については、労働協約及び国内法令により一日平均八時間制を定めることができる。
7 時間外労働に対する補償率は、国内法令又は労働協約によつて定めなければならない。しかし、いかなる場合においても、時間外労働に対する一時間当りの支払率は、一時間当りの基本給又は基本賃金の一・二五倍を下つてはならない。国内法令又は労働協約により、現金支払に代る同等時間の休息下船又は他の補償方法を定めることができる。
8 国内法令又は労働協約により、この勧告の適用上就業時間を通常の労働時間に含め又は時間外労働とみなしてはならない作業を定めなければならない。
9 特別の理由がある場合には、労働協約により、時間外労働に対する直接支払に代る適当な補償を認める特別の措置を定めることができる。
定員
10 過度の時間外労働の回避を確実にし、かつ、海上における人命の安全に関する必要を満たすため、十分な数の職員及び属員を乗り組ませなければならない。
11 加盟国は、船舶の定員に関する苦情又は紛争の調査及び解決のため、能率的な機関を維持し、又はそれが維持されていることを確認しなければならない。
12 善意の船舶所有者団体及び船員団体の代表は、単独で又は他の者若しくは当局とともに前記の機関の運営に参加しなければならない。
一般
13 この勧告のいかなる規定も、法律、裁定、慣習又は船舶所有者と船員との間の協約による、賃金、船内労働時間又は定員に関する規定でこの勧告が定める条件より一層有利な条件を船員に確保するものを害するものとみなしてはならない。