1958年の農園勧告(第110号)

ILO勧告 | 1958/06/24

農園労働者の雇用条件に関する勧告(第110号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十八年六月四日にその第四十二回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第五議題である農園労働者の雇用条件に関する提案の採択を決定し、
 この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の勧告(引用に際しては、千九百五十八年の農園勧告と称することができる。)を千九百五十八年六月二十四日に採択する。

 総会は、加盟国が次の規定を適用することを勧告する。

Ⅰ 予備的規定

1(1) この勧告の適用上、「農園」とは、雇用労働者を定期的に使用する農業的企業で、熱帯又は亜熱帯にあり、かつ、商業的目的のために、主として、コーヒー、茶、さとうきび、ゴム、バナナ、ココア、ココやし、落花生、綿、タバコ、せんい(サイザル、黄麻及び大麻)、柑きつ類、やし油、キナ又はパイナップルの栽培又は生産に従事するものをいう。ただし、地方的消費のために生産し、かつ、定期的に雇用労働者を使用しない家内企業又は小規模な企業は含まない。
 (2) 加盟国は、関係使用者団体及び関係労働者団体で最も代表的なものがある場合にはそれらと協議の上、次の方法によつてこの勧告を他の農園に適用することができる。
  (a)  (1)に掲げる農作物の表に次の農作物の一又は二以上を追加すること。米、きくにがな、しようずく、ジェラニウム、除虫菊又はその他の農作物
  (b) (1)に掲げられない種類の企業で国内法又は国内慣行により農園として分類されるものを(1)に定める農園に追加すること。
   また、前記の加盟国は国際労働機関憲章第十九条6の規定に基いて提出する当該加盟国の報告において、この(2)の規定に従つて執つた措置について国際労働事務局長に通知しなければならない。
 (3) この項の規定の適用上、「農園」とは、通常、農園の生産物の第一次的加工を行う作業を含む。
2 加盟国は、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国籍、社会的出身、部族又は労働組合所属のいかんを問わずすべての農園労働者に対し、平等にこの勧告の規定を適用すべきである。
3 加盟国は、理事会が要請する適当な間隔を置いて、この勧告で取扱われている事項に関して、自国が責任を有する国及び領域における法律及び慣行の現況を国際労働事務局長に報告するものとする。この報告には、この勧告の規定が実施されているか又は実施されようとしている程度及び、これらの規定を採択し又は適用するに当つて必要と認められたか又は必要と認められる規定の変更が示されるものとする。
4 国際労働機関憲章第十九条8の規定に従つて、この勧告のいかなる規定も、この勧告が規定する条件よりも関係労働者にとつて有利な条件を確保しているいかなる法律、裁定、慣行又は協約にも影響を及ぼすものではない。

Ⅱ 職業訓練

5 各国における公の機関若しくは他の適当な機関又は両者の組合せは、職業訓練が、効果的な、合理的な、組織的な及び調整された計画に基いて実施されかつ組織されるよう確保すべきである。
6(1) 訓練施設の欠如している低開発地域において最初に執るべき措置の一は、訓練された教員及び指導員の団体を創設することであるべきである。
 (2) そのような訓練された教員及び指導員を利用することができない場合にも、実施教育を行う資格を十分備えている経営者の農園においては、その訓練施設を発展させるため、すべての可能な援助が与えられるべきである。
7 訓練計画についての責任は、最善の成果をおさめることができる機関に委任すべきであり、また、この責任が若干の機関に連帯で委任される場合には、訓練計画の調整を確保するための措置が執られるべきである。地方機関は、訓練計画の進展に協力すべきである。関係使用者団体及び労働者団体並びに他の関係団体がある場合には、それらの団体は、緊密な協力を保つべきである。
8 多くの場所において、訓練計画に対し現地における財政的援助が必要とされているが、公の機関も、適当かつ必要と認める程度まで、種種の方法、すなわち、補助金の下付、土地、建造物、交通手段、設備及び教材の提供、訓練期間中の被訓練者の生活費又は賃金に対する奨学金その他の方法による援助並びに適格の被訓練者(特に訓練のための費用を支払うことができない者)の寄宿施設を有する農園学校への無償入学等の方法によつて公私の訓練計画を援助すべきである。

Ⅲ 賃金

9 賃金支払のための最長期間は、賃金が次のものよりもしばしば支払われることを確保すべきである。
  (a) 賃金が時間、日又は週をもつて計算される労働者については十六日をこえない期間において一箇月二回
  (b) 報酬が月又は年を基礎として定められる被用者については一箇月一回
10(1) 賃金が出来高を基礎として計算される労働者については、賃金支払のための最長期間は、できるだけ、賃金が十六日をこえない期間を置いて一箇月二回よりもしばしば支払われることを確保するよう定めるべきである。
 (2) 完成に十五日以上を要する仕事を遂行するために使用され、かつ、賃金の支払のための期間が労働協約又は仲裁裁定により別段に定められていない労働者については、次のことを確保するため適当な措置を執るべきである。
  (a) 内金の支払は、遂行される仕事の量に比例して、十六日をこえない期間を置いて一箇月二回よりもしばしば行われること。
  (b) 最終的決済は、仕事の完成から十五日以内に行われること。
11 労働者に知らせなければならない賃金条件の詳細は、適当な場合には、次のものに関する細目を含むべきである。
  (a) 支払われるべき賃金率
  (b) 計算方法
  (c) 賃金支払の定期性
  (d) 支払場所
  (e) 控除をすることのできる条件
12 すべての適当な場合において、労働者に対しては、賃金支払のつど、関係給与期間に関する次の細目を知らせるべきである。(この細目は、変動することがある範囲のものとする。)
  (a) 所得賃金の総額
  (b) なされるべき控除(その理由及び額を含む。)
  (c) 支払われるべき賃金の正味額
13 使用者は、適当な場合において、使用する各労働者に関し前項に明示された細目を示す帳簿を備えるべきである。
14(1) すべての所得賃金が正当に支払われることを確保するために必要な措置が執られるべきであり、また、使用者は、賃金の支払簿を備え付け、労働者に賃金支払の明細書を発行し、及び必要な監督を容易ならしめるための他の適当な措置を執らなければならない。
 (2) 賃金は、通常、現金によつてのみ、かつ、各労働者に直接に支払うべきである。
 (3) 賃金は、賃金取得者の負債の可能性を少くするような間隔を置いて定期的に支払うべきである。ただし、これに反する地方的慣習が確立されており、かつ、この慣習を継続することを労働者が希望している場合は、この限りでない。
 (4) 食料、住居、衣料その他の必要な需品及び役務が報酬の一部をなす場合には、それが十分であること及びその換価が適当であることを厳格に監督するため、権限のある機関は、すべての実行可能な措置を執るべきである。
 (5) 次の目的のため、すべての実行可能な措置を執るべきである。
  (a) 労働者にその賃金に関する権利を知らせること。
  (b) 許可されない賃金からの控除を防止すること。
  (c) 報酬の一部をなす需品及び役務について賃金から控除することのできる額をその貨幣価格に制限すること。
15(1) 賃金取得者の自発的な形式の貯蓄を奨励すべきである。
 (2) 賃金前貸しの最高額及びその返済方法は、権限のある機関が規制すべきである。
 (3) 権限のある機関は、当該地域外から雇入れられた労働者に支払うことのできる前貸しの額を制限すべきである。この前貸しの額は、労働者に明瞭に説明すべきである。権限のある機関が定める額をこえる前貸しは、法律上回収することができないものとすべきである。
 (4) 賃金取得者を高利貸から保護するため、特に貸付金に対する利率の引下げを目的とする措置により、金貸業者の活動の監督により、及び協同信用組合を通じて又は権限のある機関の監督の下にある機関を通じて適当な目的のために借入れを行うための便宜を促進することによつて、すべての実行可能な措置を執るべきである。
16 最低賃金率を決定するに当つては、賃金決定機関がいかなる場合にも関係労働者による適当な生活水準の維持を可能ならしめる必要を考慮することが望ましい。
17 最低賃金率の決定に当つて考慮しなければならない要素には、次のものを含む。
  生計費、提供された役務の公正かつ妥当な価値、類似の又は比較することができる仕事に対し労働協約に基き支払われる賃金及び、労働者が十分に組織化されている地域における比較することができる技能の労働に対する一般賃金水準
18 最低賃金決定機構は、その形式のいかんを問わず、農園における事情の調査のために並びに第一次的にかつ主として関係のある当事者、すなわち、使用者及び労働者又は両者の最も代表的な団体がある場合にはそれらの団体との協議のために運営されるべきである。最低賃金の決定に関するすべての問題については、両当事者の意見を求め、かつ、その意見に対して十分で平等な考慮を払うべきである。
19 決定されるべき賃金率をより権威のあるものとするため、最低賃金決定のため採用された機構上可能であるときは、関係使用者及び関係労働者が、それらの代表者を通じて直接かつ平等な立場においてその機構の運営に参加することができるようにすべきである。これらの代表者は、同一の員数であるか、又はいかなる場合においても同数の投票権を有すべきである。
20 使用者及び労働者のそれぞれの代表者が、それぞれその利益を代表する者の信任を受けるようにするため、19に掲げる場合において関係使用者及び関係労働者は、事情の許す限りその代表者の指名に参加する権利を有すべきであり、また、使用者団体及び労働者団体がある場合には、これらの団体に対し、賃金決定機関に参加させるため、いかなる場合においてもその推せんする者の氏名を提出することを求めるべきである。
21 最低賃金決定機構が、仲裁のためであるとその他のためであるとを問わず、中立者の参加を規定している場合には、それらの中立者は、その職務に必要な資格を有すると認められ、かつ、その公平に疑を生ずるような利害関係を農園及び関係企業に有しない男子又は女子の間から選定すべきである。
22 適当な間隔を置いて最低賃金率を改訂するための手続に関して、規定を設けるべきである。
23 関係労働者の賃金を効果的に保護するために決定された最低賃金率以下で賃金が支払われないことを確保するため執るべき措置は、次の事項を含むべきである。
  (a) 現行最低賃金率を公表し、かつ、特に関係使用者及び関係労働者に国内事情に最も適当な方法でこれらの率を知らせるための措置
  (b) 現実に支払われている賃金率についての公の監督
  (c) 現行賃金率の違反に対する処罰及びこの違反を防止するための措置
24 労働者及びその家族の生活を保護するため必要であると認められる程度まで賃金からの控除を制限するために、すべての必要な措置を執るべきである。
25(1) 使用者の生産品、物品又は設備に関する滅失又は損害の賠償のための賃金からの控除は、関係労働者に明かに責任があると立証することができる原因で滅失又は損害が生じたときのみ許すべきである。
 (2) その控除の額は、公正でなければならず、かつ、滅失又は損害の実額をこえてはならない。
 (3) その控除を行う決定がなされる前に、関係労働者は、控除を行うべきでないという理由を立証するため妥当な機会を与えられるべきである。
26 使用者が供給する器具、材料又は備品に関する賃金からの控除を次の場合に制限するため、適当な措置を執るべきである。
  (a) その控除が当該産業又は当該職業において認められた慣習となつている場合
  (b) その控除が労働協約又は仲裁裁定によつて定められている場合
  (c) その控除が国内法令により認められた手続により別に許されている場合

Ⅳ 同一の報酬

27(1) 加盟国は、報酬率を決定するため行われている方法に適した手段によつて、同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬の原則のすべての労働者に対する適用を促進し、かつ、この方法と両立する限り、その適用を確保すべきである。
 (2) この原則は、次のいずれかの手段によつて適用することができる。
  (a) 国内法令
  (b) 法令によつて設置され又は承認された賃金決定機構
  (c) 使用者と労働者との間の労働協約
  (d) これらの各種の手段の組合せ

Ⅴ 労働時間及び時間外労働

28 この部の規定は、時間を基礎として使用される労働者に適用する。
29 1に定める農園において使用される者の労働時間は、一日について八時間、かつ、一週間について四十八時間をこえるべきでない。ただし、次に定める例外を除く。
  (a) この部の規定は、監督又は管理の地位にある者には適用しない。
  (b) 法律、慣習若しくは使用者団体と労働者団体との間の協定により、又はこれらの団体がない場合には使用者の代表者と労働者の代表者との間の協定により一週間のうちの一又は二以上の日の労働時間が八時間未満とされているときは、権限のある公の機関の許可により、又は前記の団体若しくは代表者の間の協定によりその週の他の日において八時間の制限をこえることができる。ただし、この項に定めるいかなる場合においても、一日八時間の制限は、一時間をこえてはならない。
  (c) 被用者を交代制で使用する場合においては、三週間以下の一期間内における平均労働時間が一日について八時間かつ一週間について四十八時間をこえないときは、いずれかの一日において八時間かついずれかの一週間において四十八時間をこえて被用者を使用することができる。
30 29に定める労働時間の制限は、現に災害があるか若しくはそのおそれがある場合、機械若しくは工場設備につき緊急の作業をなすべき場合又は不可抗力の場合においてはこえることができる。ただし、当該企業の通常の操業に対する重大な障害を除去するために必要な限度までとする。この制限は、また、腐敗しやすい物品又はすみやかに変質するおそれがある材料の滅失を防止するためにもこえることができる。
31 29に定める労働時間の制限は、また、工程の性質上交代により継続的に行うことを必要とする工程においてもこえることができる。ただし、労働時間は、一週間について平均五十六時間をこえてはならない。労働時間に関するこの規制は、いかなる場合においても、前記の工程に従事する労働者に対し、国内法令が週休日の代りとして確保する休日に影響を及ぼしてはならない。
32(1) 農園のために公の機関が定める規則は、次のものについて決定すべきである。
  (a) 農園の一般的労働について定められた制限をこえて行う必要のある準備的若しくは補充的労働において、又は季節的労働若しくは本質的に断続的であるある種の他の労働に対して認められる永久的例外
  (b) 例外的な労働繁忙の場合に対処するため認められる一時的例外
 (2) これらの規則は、関係使用者団体及び関係労働者団体がある場合にはそれらの団体と協議の上においてのみ、定めるべきである。これらの規則は、各場合につき、追加時間の最大限を定めるべきである。
33 29に定める労働時間をこえる時間で、30、31及び32の規定に従つて労働されたものに対する賃金率は、普通賃金率の一・二五倍を下つてはならない。

Ⅵ 福祉施設

34 この部に定める福祉施設は、その種類が多いこと及びその提供に関する国内慣行の種類が多いことを考慮して、公の又は自主的措置により、すなわち、
  (a) 法令により、
  (b) 権限のある機関が使用者団体及び労働者団体との協議の上で承認する他のいずれかの方法により、又は
  (c) 労働協約により若しくは関係使用者と関係労働者との間に成立したすべての他の協定により
  提供することができる。
35 適当な食料、飲料及び食事を購入するための施設が不十分な地方においては、労働者に対しそれらの施設を提供する措置を執るべきである。
36 労働者は、健康上の理由のため国内法令が必要とする場合を除くほか、いかなる場合においても、労働者に対しいかなる給食施設をも使用することを強制されるべきではない。
37(1) 特別機関又は社会により適当なレクリエーション施設が労働者の利用に供されていない場合及び関係労働者の代表者がこのような施設の実際の必要を示す場合には、労働者が使用されている企業内又はその付近に労働者のレクリエーション施設を設置することを奨励するための適当な措置を執るべきである。
 (2) この措置は、適当な場合には、国内法令により設けられる機関がこの分野において責任を有するときはこれらの機関により、又は関係使用者若しくは関係労働者が相互に協議した上での自主的な活動により執られるべきである。これらの措置は、できる限り、社会がレクリエーション施設に対する要求に応ずることができるよう公の機関による活動を促進しかつ支持するような方法で執らなければならない。
38 労働者は、レクリエーション施設の提供のために執られる方法のいかんを問わず、いかなる場合においても、提供された施設のいずれかを利用する義務を負わされるべきでない。
39 各国の権限のある機関は、国内法令により設けられる福祉施設の管理方法及び監督に関し、労働者団体及び使用者団体と協議するための措置を執るべきである。
40 経済的に開発程度の低い国においては、福祉施設に関する法律上の他の義務が存在しない場合には、このような施設に対する融資は、権限のある機関が決定した納付金により維持されかつ使用者及び労働者がそれぞれ同数の代表者を有する委員会により管理される福祉基金を通じて行うことができる。
41(1) 食事その他の食料が使用者により直接労働者に提供される場合には、それらの価格は、合理的でなければならず、かつ、使用者に利益を生じないように定めるべきである。販売から生ずる経理上の余剰は、基金又は特別勘定に払い込み、損失を補うため又は労働者に提供する施設を改善するために状況に応じて使用すべきである。
 (2) 食事その他の食料が食事調達請負人によつて労働者に提供される場合には、それらの価格は、合理的でなければならず、かつ、使用者にとつて利益を生じないように定めるべきである。
 (3) 当該施設が労働協約又は企業内の特別の合意によつて提供される場合には、(1)に定める基金は、合同機関又は労働者のいずれかによつて管理すべきである。
42(1) いかなる場合においても、労働者は、みずから使用することを希望しない福祉施設の経費を分担することを要求されることはない。
 (2) 労働者が福祉施設に対して支払を行わなければならない場合には、分割払又は支払の延滞を認めるべきでない。
43 公共輸送業務の不十分なため又は運転時間表が不適当なため大部分の労働者が通勤に特別の困難を感じている場合には、それらの者が使用されている企業は、当該地方で公共輸送を行つている機関からその業務における必要な調整又は改善を確保するよう努力すべきである。
 44 労働者のために十分かつ利用可能な輸送施設が必要であるが、他のいかなる方法によつても提供することができない場合には、それらの者が使用されている企業は、みずから必要な輸送施設を提供すべきである。

Ⅶ 災害の防止

45 加盟国は、災害及び職業病の予防のため適当な措置を執るべきである。

Ⅷ 労働者補償

46 労働不能の場合においては、補償は、関係のある使用者、災害保険機関又は疾病保険機関のいずれによつて支払われるかを問わず、災害発生の日から支払うべきである。
47 傷害の結果、被害労働者が常時に他人の助力を必要とするような性質の労働不能となつた場合においては、追加補償を支給すべきである。
48 被害労働者は、医療上の扶助並びに災害の結果必要と認められる外科上及び薬剤上の扶助を受ける権利を与えられるべきである。この扶助の費用は、使用者、災害保険機関、疾病保険機関又は(はい)疾保険機関が負担すべきである。
49(1) 被害労働者は、使用者又は保険者から、必要と認められる義肢及び補装具の支給及び通常の取替を受ける権利を有すべきである。ただし、国内法令は、特別の事情の下においては、その義肢及び補装具の支給及び取替に代えて、その補装具の支給及び取替の概算費用に相当する額を被害労働者に与えることを認めることができる。この額は、補償額が決定され又は改訂される時に、決定されるものとする。
 (2) 国内法令は、補装具の取替に関する濫用を防止し又は追加補償がこの目的のために利用されることを確保するため、必要な監督措置について規定すべきである。

Ⅸ 労働者職業病補償

50 加盟国は、職業病によつて労働不能となつた労働者に対し、又はその疾病のため死亡した場合においては労働者の被扶養者に対し、産業災害補償に関する国内法令の一般原則に従い補償を支払わなければならないことを規定すべきである。
51 この補償の率は、産業災害によつて生じた傷害に関する国内法令が定める率を下つてはならない。この規定に従うことを条件として、加盟国は、前記の疾病に対して補償を支払わなければならない条件をその国内法令において定めるに当り、及び産業災害補償に関するその法令を前記の疾病に適用するに当つて、適当と認める変更及び修正を加えることができる。
52 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議の上当該加盟国が定める附表に掲げる疾病及び中毒を職業病と認めるべきである。

Ⅹ 社会保障

53 加盟国は、工業及び商業に従事する労働者の場合の条件と同等の条件により、疾病、出産、廃疾、老令その他類似の社会的危険の場合において、保障を与える保険制度又は他の適当な制度を設けるその法令を農園労働者に及ぼすべきである。

ⅩⅠ 労働監督

54 証明書を有する監督官は、法律により次の権限を与えられるべきである。
  (a) 監督官が法律の保護を受ける者が使用されていると認めるに足りる相当の理由がある場所を昼夜いつでも臨検すること及び事業場又はその一部で監督官がその監督の下にあると認めるに足りる相当の理由がある場所に昼間立ち入ること。ただし、監督官は、退出前、使用者又は使用者の代表者にその臨検をできる限り通告すべきである。
  (b) 事業場の職員を証人の立会なしに尋問すること、監督官が職務を遂行するため他の者でその証言を必要と認めるものに情報を求めること及び労働条件を規制する法律により備え付けなければならない台帳又は書類の提出を要求すること。