1963年の機械防護勧告(第118号)
機械の防護に関する勧告(第118号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十三年六月五日にその第四十七回会期として会合し、
この会期の議事日程の第四議題である防護装置の不完全な機械の販売、賃貸及び使用の禁止に関する提案の採択を決定し、
この提案が千九百六十三年の機械防護条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
次の勧告(引用に際しては、千九百六十三年の機械防護勧告と称することができる。)を千九百六十三年六月二十五日に採択する。
Ⅰ 製造並びに販売、賃貸及びその他の方法による移転並びに展示
1(1) 特定の種類の機械の製造並びに販売、賃貸及び権限のある機関が決定する範囲内におけるその他の方法による移転並びに展示は、この機械が、千九百六十三年の機械防護条約第一条に規定するものであり、かつ、同条約第二条に規定する部分のほかに、適当な防護装置が施されていない危険な作動部分(作業点)を含むときは、国内法令により禁止し、又はこれと同様に効果的な他の措置により阻止すべきである。
(2) (1)及び2の規定は、当該機械を設計するにあたつて考慮すべきである。
(3) (1)にいう機械の種類は、国内法令又はこれと同様に効果的な他の措置により定めるべきである。
2 1の規定の適用を受ける機械の種類を定めるにあたつては、次の規定も考慮に入れるべきである。
(a) 作動中に飛散物を生ずるおそれのある機械のすべての作動部分は、作業者の安全を確保するような方法で十分に防護すべきである。
(b) 危険な電圧の下にある機械のすべての部分は、労働者を完全に保護するような方法で防護すべきである。
(c) 機械の起動の際、作動中又は作動停止の際、人は、可能な限り、自動防護装置により保護されるべきである。
(d) 機械の構造は、この2に規定する危険以外の危険でその機械に関連して作業する者が受けるおそれのあるものをできる限り排除するよう、材料の性質又は危険の種類を考慮したものとすべきである。
3(1) 1の規定は、次の場合には、1に規定する機械又はその作動部分に適用しない。
(a) その構造からみて、適当な安全装置によつて防護されていると同様に安全である場合
(b) その取付け方法又は位置からみて、適当な安全装置によつて防護されていると同様に安全に取り付けられ又は安全な位置に置かれようとしている場合
(2) 保守、注油、組立て及び調整の作業が認められた安全基準に従つて行なわれうるときは、その間機械が1に規定する安全に関する要件を十分には満たさないような設計のものであるという理由のみによつては、1に規定する機械の製造若しくは販売、賃貸その他の方法による移転又は展示の禁止は、当該機械に適用しない。
(3) 1の規定は、保管、スクラップ化又は修繕を目的とする機械の販売又はその他の方法による移転を禁止するものではない。ただし、その機械は、保管され又は修繕された後は、1の規定に従つて防護されない限り、販売し、賃貸し、若しくはその他の方法で移転し、又は展示すべきでない。
4 1の規定の遵守を確保する義務は、機械の製造者、販売、賃貸若しくはその他の方法による移転を行なう者又は展示者に課すべきであり、また、国内法令の下において適当であるときは、その代理者に課すべきである。
5(1) 加盟国は、1の規定の暫定的な適用除外について規定することができる。
(2) この暫定的な適用除外の期間(いかなる場合にも三年をこえてはならない。)その他の条件は、国内法令により定め、又はこれと同様に効果的な他の措置により決定すべきである。
(3) この5の規定を適用するにあたつて、権限のある機関は、最も代表的な関係のある使用者団体及び労働者団体並びに、適当なときは、製造者団体と協議すべきである。
6 機械の操作に関する指導は、安全な操作方法を基礎とすべきである。
Ⅱ 使用
7(1) 危険部分(作業点を含む。)に適当な防護装置が施されていない機械の使用は、国内法令により禁止し、又はこれと同様に効果的な他の措置により阻止すべきである。ただし、この禁止は、その機械の使用を妨げることなくしては完全に適用することができないときは、その機械を使用することができる限度で適用する。
(2) 機械は、産業安全及び労働衛生に関する国内の規則及び基準に違反しないことを確保するように防護すべきである。
8 7の規定の遵守を確保する義務は、使用者に課すべきである。
9(1) 7の規定は、機械又はその部分で、その構造、取付け方法又は位置からみて、適当な安全装置によつて防護されていると同様に安全であるものには適用しない。
(2) 7及び12の規定は、認められた安全基準に従つて機械又はその部分について保守、注油、組立て又は調整を行なうことを妨げるものではない。
10(1) 加盟国は、7の規定の暫定的な適用除外について規定することができる。
(2) この暫定的な適用除外の期間(いかなる場合にも、三年をこえてはならない。)その他の条件は、国内法令により定め、又はこれと同様に効果的な他の措置により決定すべきである。
(3) この10の規定を適用するにあたつて、権限のある機関は、最も代表的な関係のある使用者団体及び労働者団体と協議すべきである。
11(1) 使用者は、機械の防護に関する国内法令を労働者に周知させるための措置を執り、かつ、機械の使用にあたつて生ずる危険及び遵守すべき予防措置に関し、適宜労働者を指導すべきである。
(2) 使用者は、この勧告の適用を受ける機械に関連して雇用される労働者が危険にさらされることのないような環境条件を確立し、かつ、維持すべきである。
12(1) 労働者は、防護装置が所定の個所に設けられていないいかなる機械も使用すべきでなく、また、防護装置が所定の個所に設けられていないいかなる機械の使用も要求されるべきではない。
(2) 機械を使用する労働者は、防護装置を無効にすべきでなく、また、労働者が使用する機械の防護装置は、無効にされるべきでない。
13 社会保障又は社会保険に関する国内立法に基づく労働者の権利は、この勧告の適用によつて影響を受けるべきでない。
14 使用者及び労働者の義務に関するこのⅡの規定は、権限のある機関が決定するときは、その決定の範囲内において、自営の労働者に適用する。
15 このⅡの規定の適用上、「使用者」とは、国内法令の下において適当であるときは、使用者の所定の代理者を含む。
Ⅲ 適用範囲
16 この勧告は、経済活動のすべての部門に適用する。
Ⅳ 雑則
17(1) この勧告の規定の効果的な実施を確保するため、すべての必要な措置を執るべきである。その措置には、機械又はある種類の機械が適当に防護されていると認めることができるための手段に関する可能な限りの明細、効果的な監督のための規定及び適当な制裁のための規定を含めるべきである。
(2) 各加盟国は、この勧告の規定の適用について監督を行なうため適当な監督機関を設け、又は適当な監督が実施されていることを立証すべきである。
18(1) 機械の輸出又は輸入を行なう加盟国は、機械の販売及び賃貸のための国際的な性格の取引について千九百六十三年の機械防護条約及びこの勧告を適用するため、相互に協議しかつ協力することを規定する二国間又は多数国間の取極を行なうべきである。
(2) その取極は、特に、機械に関する産業安全基準及び労働衛生基準の統一について規定すべきである。
(3) 加盟国は、その取極を行なうにあたつて、国際労働事務局が随時刊行する関係のある模範安全規則集及び慣行集並びに標準化のための国際機関の適当な基準に考慮を払うべきである。
19 この勧告の規定を実施するための国内法令は、権限のある機関が、最も代表的な関係のある使用者団体及び労働者団体並びに、適当なときは、製造者団体と協議した後、定めるべきである。