1963年の雇用終了勧告(第119号)

ILO勧告 | 1963/06/26

使用者の発意による雇用の終了に関する勧告(第119号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十三年六月五日にその第四十七回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第五議題である使用者の発意による雇用の終了に関する提案の採択を決定し、
 この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の勧告(引用に際しては、千九百六十三年の雇用終了勧告と称することができる。)を千九百六十三年六月二十六日に採択する。

Ⅰ 実施方法

1 この勧告は、国内法令、労働協約、就業規則、仲裁裁定若しくは裁判所決定により、又は国内の慣行に合致し、かつ、国内事情の下において適当と認められるその他の方法により実施することができる。

Ⅱ 一般的適用の基準

2(1) 雇用は、労働者の能力若しくは行為に関連する妥当な理由、又は企業、事業所若しくは施設の運営上の必要に基づく妥当な理由がない限り、終了させるべきではない。
  (2) 前記の妥当な理由についての定義又は解釈は、Ⅰに規定する実施方法にゆだねるべきである。
3 特に、次の事項は、雇用の終了の妥当な理由とすべきではない。
  (a) 労働組合員であること又は労働時間外に若しくは使用者の同意を得て労働時間内に労働組合活動に参加したこと。
  (b) 労働者の代表者に就任しようとし、又は労働者代表の資格において行動し、若しくは行動したこと。
  (c) 法令の違反を理由として、使用者を相手方とする苦情の申立てを行ない、又は使用者を相手方とする手続に参加したこと。
  (d) 人種、皮膚の色、性、婚姻関係、宗教、政治的意見、国民的出身又は社会的出身
4 雇用を不当に終了されたと考える労働者は、企業、事業所又は施設内に存在するか、又はこの勧告に従つて設けられる手続により満足すべき解決が得られた場合を除くほか、自己が要請するときは、自己の代表者の助力を得て、その雇用の終了について、合理的な期間内に、労働協約に基づいて設けられた機関又は中立機関(たとえば裁判所、仲裁人、仲裁委員会その他の類似の機関)に提訴する権利を有すべきである。
5(1) 4に規定する機関は、雇用の終了について示された理由及び関係のあるその他の事情を審査し、かつ、その雇用の終了の正当性について決定する権限を与えられるべきである。
 (2)  (1)の規定は、前記の中立機関が、企業、事業所又は施設の労働力の規模の決定に介入する権限を与えられるべきことを意味するものと解釈すべきではない。
6 4に規定する機関は、雇用の終了を不当と認めた場合には、関係労働者に対し、適当な場合には未払の賃金を支払つて復職させるのでない限り、適当な補償金を支払うか、1に規定する実施方法に基づいて決定する他の救済を与えるか又は同様な方法で決定する補償金及び他の救済を与えるべきことを命令する権限を与えられるべきである。
7(1) 雇用を終了される労働者は、合理的な予告期間又はこれに代わる補償金を与えられる権利を有すべきである。
 (2) 実行可能な限り、労働者は、予告期間中、他の雇用を求めるため賃金を失うことなく勤務に服さない合理的な時間を与えられる権利を有すべきである。
8(1) 雇用を終了された労働者は、その終了の際に、要請するときは、採用及び終了の日並びに従事した仕事の種類を明記した証明書を使用者から受ける権利を有すべきである。
 (2) その証明書には、当該労働者にとつて不利となるいかなる事項も記載すべきではない。
9 雇用を終了された労働者には、なんらかの形式による収入の保障が与えられるべきである。この保障には国内法令、労働協約及び使用者の人事政策に従い、失業保険その他の形式の社会保障、使用者の支払う離職手当その他の形式の離職給付又は各種の給付の組合せを含めることができる。
10 個個の雇用の終了について最終的決定が行なわれる前に、使用者が労働者の代表者と協議すべきかどうかの問題は、1に規定する実施方法にゆだねるべきである。
11(1) 重大な非行による解雇の場合には、予告期間又はこれに代わる補償金は、与える必要はなく、また、使用者が支払うべき離職手当その他の形式の離職給付は、与えないことができる。
 (2) 重大な非行による解雇は、使用者に対して他のいかなる方法も期待することができない場合に限り、行なうべきものである。
 (3) 使用者は、重大な非行のあつたことを知つた後合理的な期間内に解雇の措置を執らなかつたときは、重大な非行による解雇の権利を放棄したものとみなすべきである。
 (4) 労働者は、解雇の通知を受けた後合理的な期間内に提訴しないときは、重大な非行による解雇について提訴する権利を放棄したものとみなすべきである。
 (5) 労働者は、重大な非行による解雇の決定が最終的に有効となる前に、適当な場合には自己の代表者の助力を得て、すみやかに自己の立場を弁明する機会を与えられるべきである。
 (6) この11の規定の実施にあたつて、「重大な非行」の定義又は解釈及び「合理的な期間」の決定は、1に規定する実施方法にゆだねるべきである。

Ⅲ 労働力の削減に関する補足規定

12 すべての関係当事者は、企業、事業所又は施設の能率的な運営を害することなく、適当な措置の採用によりできる限り労働力の削減を回避し又は最小限にとどめるため、積極的な措置を執るべきである。
13(1) 労働力の削減が計画される場合には、できる限り早期にすべての適当な問題について労働者の代表者との協議を行なうべきである。
 (2) 協議の対象となるべき問題には、労働力の削減を避けるための措置、時間外労働の制限、訓練及び再訓練、部門間における移動、一定の期間にわたつて行なう雇用の終了、労働力の削減が関係労働者に及ぼす影響を最小限にとどめるための方策並びに削減の影響を受けるべき労働者の選定を含めることができる。
 (3) 協議が行なわれる場合には、両当事者は、その協議にあたつて両当事者を援助することのできる公の機関がありうることに留意すべきである。
14 提案された労働力の削減が一定の地域又は経済活動の一定の部門の労働力の状況に重大な影響を及ぼすほどの規模のものであるときは、使用者は、その削減について事前に権限のある公の機関に通告すべきである。
15(1) 労働力の削減の影響を受けるべき労働者の選定は、企業、事業所又は施設と労働者との双方の利益を十分に考慮した明確な基準(可能なときは、事前に設定することが望ましい。)に従つて行なうべきである。
 (2) その基準には、次の事項を含めることができる。
  (a) 企業、事業所又は施設の能率的な運営の必要
  (b) 個個の労働者の能力、経験、技能及び職業的資格
  (c) 勤務年数
  (d) 年齢
  (e) 家族の状況
  (f) 国内事情の下において適当と認められるその他の基準
  これらの基準の順位及び相対的比重は、国内の慣習及び慣行にゆだねるべきである。
16(1) 労働力の削減のため雇用を終了された労働者は、当該使用者が新たに労働者を雇用するときは、可能な限りその使用者による再雇用について優先権を与えられるべきである。
 (2) 前記の再雇用の優先権は、特定の期間に限定することができる。先任権の保有に関する問題は、適当な場合には、国内法令、労働協約その他適当な国内の慣行に従つて決定すべきである。
 (3) 再雇用は、15に規定する原則に基づいて実施すべきである。
 (4) 再雇用された労働者の賃金率は、雇用の中断の結果不利な影響を受けるべきではない。もつとも、その労働者の従前の職業と再雇用された職業との差異及び雇用の中断中における企業、事業所又は施設内の賃金制度の変動は、考慮されるものとする。
17 国の職業安定機関その他の適当な機関は、労働力の削減の結果雇用を終了された労働者を遅滞なくそれに代わる雇用に就かせることを可能な限り確保するため、十分に利用すべきである。

Ⅳ 適用範囲

18 この勧告は、経済活動のすべての部門及びすべての種類の労働者に適用する。ただし、次の者は、この適用範囲から除外することができる。
  (a) 作業の性質上期間の定めのない雇用関係を結ぶことができない場合において、特定の期間又は仕事について雇用される労働者
  (b) 試用期間中の労働者。ただし、その期間は、あらかじめ決定され、かつ、合理的なものでなければならない。
  (c) 短期間臨時的に雇用される労働者
  (d) 国の行政に従事する公務員。ただし、憲法上の規定がその公務員についてこの勧告の一又は二以上の規定の適用を妨げる限度において除外されるものとする。
19 国際労働機関憲章第十九条8に規定する原則に従い、この勧告は、これに含まれる規定よりも関係労働者にとつて有利ないかなる規定にも影響を及ぼすものではない。
20 労働者の雇用条件が特別の法令により規制されている場合において、その法令がこの勧告に規定する条件のすべてと全体において少なくとも同程度に有利な条件を規定しているときは、この勧告は、その労働者について実施されているものとみなすべきである。