1964年の業務災害給付勧告(第121号)

ILO勧告 | 1964/07/08

業務災害の場合における給付に関する勧告(第121号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十四年六月十七日にその第四十八回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第五議題である労働災害及び職業病の場合における給付に関する提案の採択を決定し、
 この提案が千九百六十四年の業務災害給付条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百六十四年の業務災害給付勧告と称することができる。)を千九百六十四年七月八日に採択する。

1 この勧告において、
  (a) 「法令」とは、社会保障に関する法律、命令及び規則をいう。
  (b) 「所定の」とは、国内の法令により、又はこれに基づいて決定されたことをいう。
  (c) 「被扶養者たる」とは、所定の場合に存在すると推定される被扶養の状態をいう。
2 各加盟国は、必要なときは段階的に、千九百六十四年の業務災害給付条約に定める保護から同条約第四条2の規定により除外することができる種類の被用者に対し、業務災害給付について定める法令の適用を及ぼすべきである。
3(1) 各加盟国は、所定の条件に従つて、必要なときは段階的に及び場合により任意的な保険により、次の者に対し、業務災害給付又は類似の給付の支給を確保すべきである。
  (a) 物品の生産又は役務の提供に従事する協同組合の構成員
  (b) 所定の種類の自営業者、特に小規模の事業所又は農場を所有し、かつ、それらの経営に実際に従事している者
  (c) 次の者を含む一定の種類の無償で働く者
   (i)  訓練を受ける者、技能検定を受ける者又は将来の職業に対する準備を行なう者(生徒及び学生を含む。)
   (ii)  天災との戦い、人命及び財産の救助又は法及び秩序の維持を任務とする篤志団体の構成員
   (iii) その他の種類の者で、公共のため又は市民的若しくは慈善的目的のための活動に従事するもの(公職、社会事業又は病院において自発的に役務を提供する者等)
   (iv)  囚人その他拘禁されている者で、権限のある機関が要求し又は承認する作業を行なうもの
 (2) (1)に定める種類の者に係る任意的な保険の資金は、被用者のための強制的制度の財源に充てられる拠出金からまかなわれるべきでない。
4 船員(海上漁業に従事する者を含む。)及び公務員に適用される特別な制度は、千九百六十四年の業務災害給付条約に規定する業務災害給付より不利でない給付を支給すべきである。
5 各加盟国は、所定の条件の下に、次のものを労働災害として取り扱うべきである。
  (a) 原因のいかんにかかわらず、作業場若しくはその附近において又は労働者がその業務を行なつていなかつたならばい合わせなかつたであろうその他の場所において労働時間中に受ける災害
  (b) 労働時間の前後の合理的な時間内に作業用具又は作業衣の運搬、手入れ、準備、整理、保存、貯蔵又は包装に関連して受ける災害
  (c) 作業場と次に掲げる場所との間の直接の途上において受ける災害
   (i)  被用者の主たる又は従たる住居
   (ii)  被用者が通常食事をする場所
   (iii) 被用者が通常報酬を受け取る場所
6(1) 各加盟国は、工程、業種又は職業に特有な物質又は危険にさらされるために発生するものと知られている疾病を、所定の条件の下に職業病と認めるべきである。
 (2) 反証がない限り、次の場合には、当該疾病は、職業に起因するものと推定すべきである。
  (a) 被用者が少なくとも特定の期間危険にさらされた場合
  (b) 被用者が危険にさらされた最後の雇用の終了に引き続く特定の期間内において当該疾病の徴候を示した場合
 (3) 加盟国は、自国の職業病の表を定め、かつ、これを最新のものにしようとするときは、国際労働機関の理事会が随時承認することのある職業病の表を特に考慮すべきである。
7 国内の法令が一定の疾病に関しその職業上の原因を定めた表を含むときは、この表に列記されていない疾病の職業上の原因及びこの表に列記されている疾病であつて職業上の原因の推定を定める条件と異なる条件の下に発生したものの職業上の原因については、立証が許されるべきである。
8 労働不能についての現金給付は、所得が停止するごとに最初の日から支払われるべきである。
9 一時的若しくは初期的労働不能又は永久的なものとなるおそれのある所得能力の全部喪失若しくは身体機能の相当喪失についての現金給付の額は、次のとおりとすべきである。
  (a) 災害を受けた者の所得の三分の二を下らない額。ただし、給付の額又は給付の計算に当たつて考慮される所得については、最大限を定めることができる。
  (b) 前記の給付が定額で支給される場合には、男子の最大多数を占める経済活動の中分類において雇用される者の平均所得の三分の二を下らない額
10(1) 永久的なものとなるおそれのある所得能力の喪失又は身体機能の相当喪失を理由として支払われる現金給付は、喪失の程度が少なくとも二十五パーセントに等しいすべての場合には、当該喪失が継続する全期間にわたつて定期的支払金の形式をとるべきである。
 (2) 永久的なものとなるおそれのある所得能力の喪失又は身体機能の相当喪失の程度が二十五パーセント未満である場合には、定期的支払金に替えて一時金を支払うことができる。この一時金の額は、定期的支払金の額と均衡を保つべきであり、かつ、三年の期間について支払われる定期的支払金の額を下らないものとすべきである。
11 災害を受けた者が他人の援助又は付添いを常時必要とする場合には、その援助又は付添いのための合理的な費用を支払うため、措置が執られるべきである。この費用の支払に替えて、定期的支払金の額を所定の百分率又は所定の額により増額すべきである。
12 業務災害が就業能力の喪失を伴い又は醜(しゅう)状を残し、かつ、災害を受けた者が被つた喪失の評価の際にこれらが十分に考慮されなかつた場合には、追加的又は特別の給付が支給されるべきである。
13 遺族たる配偶者及び子に支払われる定期的支払金が所定の最高額に満たない場合には、次の種類に属する者で死亡者に扶養されていたものには、定期的支払金が支払われるべきである。
   (a) 両親
   (b) 兄弟姉妹
   (c) 孫
14 遺族の全部に支払われる給付の合計について最大限を規定する場合には、その最大限は、永久的なものとなるおそれのある所得能力の全部喪失又は身体機能の相当喪失について支払われる給付額を下らないものとすべきである。
15 千九百六十四年の業務災害給付条約第十四条2及び3並びに第十八条1の規定に従つて支払われる現金給付の額は、一般所得水準又は生計費の変動を考慮して定期的に調整すべきである。