1967年の企業内コミュニケーション勧告(第129号)

ILO勧告 | 1967/06/28

企業内における経営者と労働者との間のコミュニケーションに関する勧告(第129号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十七年六月七日にその第五十一回会期として会合し、
 千九百五十二年の企業における協力勧告の規定に留意し、
 前記の勧告の規定を補足することが望ましいことを考慮し、
 この会期の議事日程の第五議題に含まれる企業内におけるコミュニケーションに関する提案の採択を決定し、
 この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の勧告(引用に際しては、千九百六十七年の企業内コミュニケーション勧告と称することができる。)を千九百六十七年六月二十八日に採択する。

Ⅰ 一般的考慮

1 各加盟国は、この勧告の規定について、企業内における経営者と労働者との間のコミュニケーションに関する政策の策定及び実施に関係する個人、団体及び当局の注意を喚起するため適当な措置を執るべきである。
2(1) 使用者及びその団体並びに労働者及びその団体は、共通の利益のため、企業の能率及び労働者の向上心の双方にとつて好ましい企業内における相互の理解及び信頼の雰(ふん)囲気の重要性を認識すべきである。
 (2) この雰(ふん)囲気は、企業の諸側面及び労働者の社会的条件に関するできる限り完全なかつ客観的な情報の迅速な伝達及び交換により増進すべきである。
 (3) この雰(ふん)囲気を助長することを目的として、経営者は、労働者の代表者と協議の上、労働者及びその代表者とのコミュニケーションに関する効果的な政策を実施するため適当な措置を執るべきである。
3 コミュニケーションに関する効果的な政策は、利害関係の大きい事項に関する決定が経営者によつて行なわれるに先だち、情報の伝達がいずれの当事者にも損害を与えない限り、その情報が与えられ、かつ、当事者間で協議が行なわれることを確保すべきである。
4 コミュニケーションの方法は、いかなる場合にも結社の自由を害すべきではない。コミュニケーションの方法は、いかなる場合にも、自由に選出された労働者の代表者若しくは労働者団体に不利益を与え、又は国内の法令及び慣行に従つて労働者を代表する団体の機能を縮小すべきではない。
5 使用者団体及び労働者団体は、コミュニケーション政策の承認及びその効果的な実施を奨励しかつ促進するため執るべき措置を検討することを目的として、相互間の協議及び意見の交換を行なうべきである。
6 コミュニケーションの方法の使用に関する訓練を関係者に与え、かつ、これらの者をコミュニケーションの対象となるあらゆる事項にできる限り精通させるための措置を執るべきである。
7 コミュニケーション政策の策定及び実施にあたり、経営者、使用者団体、労働者団体、労働者を代表する団体及び、国内事情の下で適当な場合には、公の機関は、Ⅱの規定を指針とすべきである。

Ⅱ 企業内におけるコミュニケーション政策の要素

8 コミュニケーション政策は、企業の規模並びに労働者の構成及び利益を考慮して、当該企業の性質に適合させるべきである。
9 企業内におけるコミュニケーションの制度は、その目的を達成するため、次の者の間において真正なかつ規則的な相互間のコミュニケーションを確保することを内容とすべきである。
  (a) 経営者の代表者(社長、部長、職長等)と労働者との間
  (b) 社長、人事部長その他経営首脳部の代表者と労働組合の代表者又は国内の法令若しくは慣行若しくは労働協約に基づき企業内において労働者の利益を代表する任務を有するその他の者との間
10 経営者が労働者の代表者を通じて情報を伝達することを希望する場合においてその代表者の同意があるときは、その代表者は、この情報を迅速かつ完全に関係労働者に通報する手段を与えられるべきである。
11 経営者は、伝達すべき情報の種類に照らして適当と考えるコミュニケーションの経路を選択するにあたり、監督者及び労働者の代表者の地位を弱めることがないように、それぞれの職務の性質の相違について十分な考慮を払うべきである。
12 コミュニケーションの適当な手段及びその実施の時期の選択は、国内慣行を考慮して、それぞれの事情に基づいて行なわれるべきである。
13 コミュニケーションの手段は、次のものを含むことができる。
  (a) 意見及び情報を交換するための会合
  (b) 監督者公報及び人事方針手引のような特定の範囲の労働者を対象とする手段
  (c) 企業内の新聞及び雑誌、回覧新聞、情報及び手引のための小冊子、告知板、すべての労働者に理解しうる形式で提出される年次報告又は会計報告、被用者あての書簡、展示会、工場見学、映画、フィルムストリップ、スライド、ラジオ、テレビジョン等の大衆伝達手段
  (d) 労働者が企業の経営に関する問題について提案を行ない及びその意見を表明することを可能にする手段
14 伝達すべき情報及びその伝達の方法は、企業活動の複雑性によつて提起される問題に関する相互の理解を助長するように決定すべきである。
15(1) 経営者が与える情報は、その性質を考慮して、労働者の代表者又は労働者のいずれかに向けて伝達すべきであり、また、その伝達が両当事者に損害を与えない限り、企業の運営及び将来の見通し並びに労働者の現在及び将来の状態に関する事項で労働者が関心を有するものをできる限り含むべきである。
 (2) 特に、経営者は、次の事項に関する情報を与えるべきである。
  (a) 一般的な雇用条件(雇入れ、配置転換及び雇用の終了を含む。)
  (b) 職務記述及び企業の組織内における個個の職務の位置
  (c) 企業内における訓練の可能性及び昇進の見通し
  (d) 一般的な作業条件
  (e) 労働安全衛生規則並びに災害及び職業病の予防のための指示
  (f) 苦情審査手続、その手続の運用に関する規則及び慣行並びにその手続を利用するための条件
  (g) 労働者福祉施設(医療、保健、食堂、住宅、余暇、貯蓄及び銀行の施設等)
  (h) 企業内の社会保障制度又は社会扶助制度
  (i) 労働者が企業に雇用されていることにより適用を受ける国の社会保障制度に関する規則
  (j) 企業の概況及び将来の発展の見通し又は計画
  (k) 企業における労働者の状態に直接又は間接に影響を及ぼすと思われる決定についての説明
  (l) 経営者及びその代表者と労働者及びその代表者との間における協議、討議及び協力の方法
 (3) 企業内における使用者と労働者若しくはその代表者との間の交渉又は企業段階をこえる段階で締結される労働協約の対象となつた問題については、情報は、このことに明示的に言及すべきである。