1970年の船員雇用(技術的発展)勧告(第139号)

ILO勧告 | 1970/10/29

船内における技術的発展から生ずる雇用問題に関する勧告(第139号)


 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十年十月十四日にその第五十五回会期として会合し、
 商船の運航に関しその技術面、組織面及び経済面において急速な変化が生じている時期に、船員の条件を保護し及び改善し、海事産業に十分かつ適切な労働力を供給し、並びに一般的にすべての関係者に対し技術進歩による最大の利益を保障するため、そのような変化から生ずる雇用問題に特別な注意を払うことが必要であることを考慮し、
 さらに、国際労働機関の世界雇用計画に基づく全国的及び地域的労働力計画の設定及び実施にあたり、海事産業の労働力に対する要求が変化していることに十分な注意を払うべきであることを考慮し、
 海上労働力に関する計画及び開発(近代的な商船の要求に応ずる海上訓練計画の導入及び修正を含む。)のため、国際労働機関の技術援助が得られることに留意し、
 技術的発展から生ずる雇用問題に関する現存の国際労働条約及び勧告、特に千九百二十年の海員紹介条約、千九百四十六年の船員年金条約、千九百四十八年の職業安定組織条約及び勧告、千九百六十三年の雇用終了勧告並びに千九百六十四年の雇用政策条約及び勧告の規定に留意し、
 海事産業の要求に応ずるように特別に作成された活動計画を採用することが重要であることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である船内における技術の発展及び近代化から生ずる雇用問題に関する提案の採択を決定し、
 それらの提案が勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、「千九百七十年の船員雇用(技術的発展)勧告」と称することができる。)を千九百七十年十月二十九日に採択する。

Ⅰ 労働力計画

1 海事産業を有する各加盟国は、その国内雇用政策のわく内で海運業のための国内労働力計画の設定を確保すべきである。
2 1の労働力計画を準備するにあたつては、次のことを考慮すべきである。
 (a) 海上労働力の大きさ、雇用の性格及び範囲、年齢別及び職業別の労働力の分布並びにこれらの分野における将来の傾向に関する定期的研究から得られる結論
 (b) 国の内外の海事産業における特に次のような形の構造上の変化に関連する新しい技術の進展の傾向についての研究
  (i)  船舶の運航方法の技術的及び組織的な変化
  (ii) 各種の型の船舶における定員及び職務内容の変更
 (c)  (b)の研究に照らし、将来の異なる時期において各種の職種及び職級の船員について要求されることがある事項に関する予測
3 1及び2の労働力計画は、船舶所有者及び船員並びに一般社会が技術の進歩から最大の利益を得ることができるように、また、技術の進歩により雇用に影響を受ける船員を困窮から保護するように作成すべきである。
4(1) 船舶所有者及び船員の代表が自ら労働力計画を作成しない場合には、船舶所有者団体及び船員団体の代表者は、その計画の作成及びその後の調整に関して協議を受けるべきであり、また、その計画の適用にあたつては、それらの団体の協力及び参加が求められるべきである。
 (2) 技術的変化に関連する雇用問題に関し、船舶所有者、船員並びに各種の船舶所有者団体及び船員団体の間で定期的に協議を行なうべきである。

Ⅱ 募集及び職業紹介

5 海事産業への船員の募集にあたつては、現行の労働力計画及びそれに含まれる予測を考慮すべきである。
6(1) 海上労働力の中での可動性を効果的な職業紹介の運営によつて容易にすべきである。
 (2) 船員の職業紹介が特別の職業安定機関の所管となつており、かつ、その機関が陸上における職業のあつ旋について責任を有する場合には、そのような職業の紹介は、その機関と一般的公共職業安定組織との間の密接な協力によつて容易にされるべきである。
7(1) 責任のある機関は、自然減耗を考慮したうえで、合理的かつ実際的である限り広範囲の船舶への雇用の機会を提供するような方法により、及び適当な場合には再訓練により、可能な限り船員の雇用数の減少の影響を防止し又は最少限度にとどめるための積極的な措置をとるべきである。
 (2) 労働力の減少によつて影響を受ける船員の選択は、海事産業の特殊事情に適応する承認された基準及び基礎に基づいて行なうべきである。
8 船員及び船員になろうとする者の指導のため、船舶における技術変化の性格に関する最新の情報が利用に供されるべきである。

Ⅲ 訓練及び再訓練

9 技術変化により、船員を訓練し、及び船員がその技術変化に適応しうるように助力することの必要性についての研究が必要となつた場合には、千九百七十年の職業訓練(船員)勧告を考慮すべきである。
10 技術的発展から生ずる職務及び要求される技能の変化が船員に影響を与えると思われる場合には、関係者(資格を有する者を含む。)の基礎訓練は、その変化を考慮するように、また、船員が遂行することとなる職務のため十分に訓練されることを確保するように検討すべきである。
11 技術的発展の性格により必要とされる場合には、その技術的発展によつてもたらされる機会を船員が十分に利用しうるようにするため、船員を再訓練する可能性につき考慮すべきである。
12 技術的発展が、定員又は資格基準に変化を、また、各職種の船員の職務及び機能に重要な変化を及ぼすと予想される場合には、船舶所有者団体及び船員団体と協議を行なうべきであり、また、それらの団体の間でも協議を行なうべきである。
13 各職種の船員の職務及び機能の変化は、明確にかつ十分な注意を払つて関係者に説明すべきである。

Ⅳ 雇用及び収入の規則性

14(1) 船員の雇用及び収入の規則性並びに船舶に乗り組ませるため適当な人員を確保する計画を考慮すべきである。
  (2)  (1)の計画は、たとえば、適当な資格を有する船員のため会社又は産業との間で締結される雇用契約について規定することができる。
15 国の社会保障制度の一部として又は他の方法で、船員に対し失業期間中なんらかの形の恩典を与えることを考慮すべきである。
16(1) 船員、特に技術的発展に順応することが特に困難である老齢船員の要求に応ずるように努力すべきである。
  (2) 特に次の事項を考慮すべきである。
   (a) 政府により及び現行の他の計画によつて行なわれる他の産業のための再訓練
   (b) 通常の場合よりも若い年齢で海事産業から離職しなければならない者に対し社会保障制度及び他の計画のわく内で適当な恩典を与える措置

Ⅴ 国際協力

17 外国船に雇用されている船員で船内における技術変化の影響を受けると予想されるものの困窮を避けるため、政府並びに関係のある船舶所有者団体及び船員団体は、次の目的をもつて早急に協議を行ないかつ協力すべきである。
 (a) それらの船員が雇用されている船舶の属する外国の海上労働に対する要求の変化に応じてそれらの船員の供給を漸次調整すること。
 (b) この勧告の関係条項をともに適用することにより供給過剰の影響を最少限度にとどめること。