1976年の雇用継続(船員)勧告(第154号)

ILO勧告 | 1976/10/28

船員の雇用の継続に関する勧告(第154号)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二十一年六月十八日にその第百九回会期として会合し、八本の国際労働条約の廃止並びに十本の国際労働条約及び十一本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二十一年六月十八日に、千九百七十六年の雇用継続(船員)勧告(第百五十四号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十六年十月十三日にその第六十二回会期として会合し、
 千九百七十年の船員雇用(技術的発展)勧告に留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である船員の雇用の継続に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百七十六年の雇用継続(船員)条約を補足する勧告の形式をとるべきであると決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百七十六年の雇用継続(船員)勧告と称することができる。)を千九百七十六年十月二十八日に採択する。

1(1) この勧告は、11の規定が適用される場合を除くほか、船員として恒常的に就労することができる者であつて、年間の主たる収入を船員としての労働によつて得るものについて適用する。
 (2) この勧告の適用上、「船員」とは、国内法、国内慣行又は労働協約により船員と定義される者であつて、次の船舶以外の海上航行船舶に通常乗組員として雇用されるものをいう。
  (a) 軍艦
  (b) 漁撈(ろう)若しくはこれに直接に関連する作業又は捕鯨その他これに類似する業務に従事する船舶
 (3) この勧告の適用上、いずれの場合に船舶が海上航行船舶として認められるかは、国内法令によつて定めるべきである。
 (4) 関係のある使用者団体及び労働者団体は、(2)及び(3)に規定する定義の設定及び改正について協議を受け又はその定義の設定及び改正に参加すべきである。
2 実行可能な限り、資格を有するすべての船員について継続雇用又は常時雇用を確保すべきである。
3(1) 特定の船舶所有者による継続雇用又は常時雇用の場合を除くほか、仕事に対する選考及び配置のための呼出しに応じて出頭する必要並びにそのために要する時間を最小限にするような就労配置制度が合意されるべきである。
 (2) この制度は、実行可能な限り、雇用される船舶を選択する船員の権利及び雇用する船員を選択する船舶所有者の権利を保留すべきである。
4 国内法令又は労働協約に定める条件に従い、特定の使用者に恒常的に雇用される船員を他の使用者の臨時の作業に配置換えすることを必要に応じて認めるべきである。
5(1) 継続雇用又は常時雇用が実行不可能な場合には、当該国の経済的及び社会的事情に即した方法及び限度で、雇用及び(又は)収入を保証すべきである。
 (2) この保証には、次のものを含めることができる。
  (a) 一年について合意される週若しくは月の数の雇用又はこれに代わる収入
  (b) 就労することができない場合の失業給付
6(1) 船員の常時雇用を達成するための措置が資格を有する船員の登録簿又は名簿の作成及び維持を規定している場合には、登録簿又は名簿に含まれる船員を決定する基準を定めるべきである。
 (2) この基準には、次の事項を含めることができる。
  (a) 当該国内に居住していること。
  (b) 年齢及び健康状態
  (c) 能力及び技術
  (d) 海上勤務経験
7 関係団体によつて登録簿又は名簿上の定数が再検討される場合には、すべての関連する要因(海運業の近代化、貿易の傾向の変化等の長期的要因を含む。)を考慮すべきである。
8 登録簿又は名簿上の定数の全般的な削減を回避することができない場合には、千九百七十年の船員雇用(技術的発展)勧告Ⅲに規定する再訓練施設の提供及び公共職業安定組織の助力により、船員が他に雇用されるように援助するため、必要なあらゆる努力が払われるべきである。
9(1) 登録簿又は名簿上の定数の削減は、実行可能な限り、漸進的にかつ雇用を終了させることなく行うべきである。この点に関し、企業段階及び産業段階における人事管理上の技術に関する経験を海運業において活用することができる。
 (2) 削減の程度を決定するに当たつては、次のことを考慮すべきである。
  (a) 自然減耗
  (b) 募集の中止
  (c) 主な生活費を船員としての労働によつて得ていない者の排除
  (d) 停年の引下げ又は年金の供与、一時金若しくは公的年金に対する付加金の支給による早期任意退職の促進
10 雇用の終了は、9(2)に掲げることに十分に考慮を払つた上で、かつ、何らかの雇用の保証が行われることを条件としてのみ行われるべきである。雇用の終了は、可能な限り合意される基準に基づくべきであり、適切な予告の下に行われるべきであり、また、次の支払いを伴うべきである。
  (a) 失業保険その他の社会保障
  (b) 退職手当その他の離職に係る給付
  (c) 国内法令又は労働協約に規定する給付の組合せ
11 この勧告の適当な規定は、実行可能な限り、国内法、国内慣行及び労働協約に従い、季節的に船員として働く者についても適用する。