1977年の看護職員勧告(第157号)

ILO勧告 | 1977/06/21

看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する勧告(第157号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十七年六月一日にその第六十三回会期として会合し、
 住民の健康及び福祉の保護及び向上において看護職員が保健の分野における他の労働者と共に果たす重要な役割を認識し、
 地域社会の必要に適した看護業務の提供を確保するために、政府と関係のある使用者団体及び労働者団体との間の協力を通じて保健業務を拡大することが必要であることを強調し、
 看護職員の使用者としての公共部門が看護職員の雇用条件及び労働条件の向上において特に積極的な役割を果たすべきであることを認識し、
 資格を有する者が不足し及び現存の職員が必ずしも最も有効に活用されていない多くの国における看護職員の現状が有効な保健業務の発展に障害となつていることに留意し、
 看護職員が、差別待遇、結社の自由及び団体交渉権、任意調停及び任意仲裁、労働時間、有給休暇及び有給教育休暇、社会保障及び福祉施設並びに母性保護及び労働者の健康の保護に関する文書等雇用及び労働条件に関する一般的な基準を定める多くの国際労働条約及び国際労働勧告の対象となつていることを想起し、
 看護が遂行される特別な状況にかんがみ、看護職員が保健の分野におけるその役割に相応し、かつ、看護職員にとつて受け入れ得る地位を享受し得るようにするための特に看護職員に適用される基準によつて前記の一般的な基準を補足することが望ましいことを考慮し、
 次の基準が世界保健機関との協力の下に作成されたこと及びその適用を促進し及び確保するため同機関との協力が引き続いて行われることに留意し、
 前記の会期の議事日程の第六議題である看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する提案の採択を決定し、
 その提案が勧告の形式をとるべきであると決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百七十七年の看護職員勧告と称することができる。)を千九百七十七年六月二十一日に採択する。

Ⅰ 適用範囲

1 この勧告の適用上、「看護職員」とは、看護及び看護業務を行うすべての種類の者をいう。
2 この勧告は、職務を遂行する場所のいかんを問わず、すべての看護職員について適用する。
3 権限のある機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体との協議の上、奉仕的に働く看護職員に関する特別な規則を定めることができる。この規則は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ及びⅨの規定を損なうものであるべきではない。

Ⅱ 看護業務及び看護職員に関する政策

4(1) 各加盟国は、一般的な保健計画のわく内において、及び保健業務全体のために利用し得る資源の範囲内において、住民のできる限り高い健康水準を達成するために必要な量及び質の看護の提供を意図する看護業務及び看護職員に関する政策を、国内事情に適する方法によつて採用し及び適用すべきである。
 (2)  (1)の政策は、
   (a) 保健の分野における他の労働者の代表者との協議の上、保健業務の他の側面及び保健の分野における他の労働者に関する政策と調整すべきである。
   (b) 看護職のための教育及び訓練並びに看護の実務に関する法令を採用すること及びこのような法令を看護業務に対する需要を満たすために必要とされる看護職員の資格及び責任についての進展に適合させることを含むべきである。
   (c) 次のことを目的とする措置を含むべきである。
    (i)  国全体としての看護職員の有効な活用を促進すること。
    (ii) 看護職員を雇用している種々の施設、地域及び部門における看護職員の資格の最大限の活用を促進すること。
   (d) 関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、策定すべきである。
5(1) 教育及び訓練、職務の水準並びに免許を参考として決定される限られた数の種類に看護職員を分類することによつて合理的な看護職員構造を確立するため、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、措置をとるべきである。
 (2)  (1)の看護職員構造は、国内慣行に従い、次の種類の者を含むことができる。
  (a) 高度に複雑なかつ責任のある職務に就くために必要と認められた教育及び訓練を受け、かつ、そのような職務を遂行するための免許を受けた専門的看護婦
  (b) 適当な場合には専門的看護婦の監督の下で、比較的複雑でない職務に就くために必要と認められた教育及び訓練を少なくとも受け、かつ、そのような職務を遂行するための免許を受けた補助的看護婦
  (c) 専門的看護婦又は補助的看護婦の監督の下で、特定の任務の遂行を可能にする事前の教育及び(又は)職場訓練を受けた看護補助者
6(1) 看護職員の職務は、必要とされる判断の水準、決定を行う権限、他の職務との関係の複雑性、必要とされる技術的能力の水準及び看護業務についての責任の水準によつて分類されるべきである。
 (2)  (1)の分類の結果は、看護職員を雇用する各種の施設、地域及び部門における雇用構造の一層の均一性を確保するために利用されるべきである。
 (3) 一定の種類の看護職員は、特別な緊急の場合に臨時に使用される場合であつて適切な訓練又は経験を有し、かつ、適切な補償を与えられる場合を除くほか、上級の看護職員に代えて使用されるべきではない。

Ⅲ 教育及び訓練

7(1) 看護職に就くことを望む者に対し、看護職に関する必要な情報及び指導を提供するための措置がとられるべきである。
 (2) 基礎的な看護教育は、適当な場合には、当該国の一般教育制度のわく内における教育機関において、類似の職業集団に対する教育の水準と同様の水準で行われるべきである。
 (3) 法令は、看護教育及び看護訓練に関する基本的要件並びにそのような教育及び訓練の監督について規定すべきであり又は権限のある機関若しくは権限のある職業上の団体に対しそのような規定を設ける権限を付与すべきである。
 (4) 看護教育及び看護訓練は、当該国における利用可能な資源を考慮に入れて、認められた地域社会の必要に照らして組織すべきであり、また、保健の分野における他の労働者に対する教育及び訓練と調整すべきである。
8(1) 看護教育及び看護訓練には、権限のある機関によつて公式に認められた計画に従い、理論及び実習の双方を含むべきである。
 (2) 実技訓練は、認定された予防機関、治療機関及びリハビリテーション機関において、資格を有する看護婦の監督の下で行われるべきである。
9(1) 基礎的な看護教育及び看護訓練の期間は、訓練を受けるための最低限度の教育上の要件及び訓練の目的によるべきである。
 (2) 認定された基礎的な教育及び訓練には、次の二の水準があるべきである。
  (a) 病院その他地域社会の保健関係機関において、最も複雑な看護を行うとともに看護を組織し及び評価することができるようにするため充分広範かつ高度な技能を有する専門的看護婦を訓練するための高等水準。この水準の教育及び訓練に受け入れられる学生は、可能な限り、大学入学に必要な一般教育の水準を達成しているべきである。
  (b) 比較的複雑ではないが技術的能力及び対人関係への適性を必要とする一般的看護を行うことができる補助的看護婦を訓練するための中等水準。この水準の教育及び訓練に受け入れられる学生は、中等教育において可能な限り高い水準を達成しているべきである。
10 直接的及び補助的看護、看護業務の管理、看護教育並びに看護の分野における研究及び開発における最も高い責任を負うことができるように看護職員を準備させるための一層高度な看護教育の計画があるべきである。
11 看護補助者は、その職務に適する理論及び実技の訓練を与えられるべきである。
12(1) 職場内及び職場外の双方における継続教育及び継続訓練は、8(1)の計画の不可分の一部であるべきであり、知識及び技能の補充及び向上を確保するため並びに看護職員が看護及び関連科学の分野における新しい考え方及び技術を取得し及び適用することができるようにするため、すべての者にとつて利用可能であるべきである。
  (2)  (1)の継続教育及び継続訓練には、看護補助者及び補助的看護婦の昇進を助長し及び促進する計画を含むべきである。
  (3)  (1)の継続教育及び継続訓練には、就業中断期間の後における看護職への復帰を促進する計画をも含むべきである。

Ⅳ 看護の実務

13 看護の実務に関する法令は、
  (a) 専門的看護婦又は補助的看護婦としての看護の実務のための要件を明記すべきであり、必要な教育及び訓練の水準を達成したことを証明する証明書の所持が看護の実務を行う権利を自動的に意味しない場合には、看護職員の代表者を含む機関に免許を与える権限を付与すべきである。
  (b) 看護の実務を行うことを正式に免許された者に限定すべきである。
  (c) 必要な場合には、看護職における最近の進歩及び慣行に従い、再検討し及び補足すべきである。
14 看護の実務に関する基準は、他の保健職種の実務に関する基準と調整すべきである。
15(1) 看護職員は、その資格及び能力を超える職務に就かせられるべきではない。
  (2) 看護職員は、既に就いている職務につき資格を有していない場合には、必要な資格を取得するためできる限り速やかに訓練されるべきであり、また、このような資格を取得するための便宜が与えられるべきである。
16 看護職員の職務の遂行から生ずる看護職員の民事責任の問題によつて必要となる措置に対して考慮が払われるべきである。
17 看護職員に適用される懲戒規則は、看護職員の代表者の参加を得て定められるべきであり、また、国内事情に適する方法により、手続のすべての段階において看護職員の選ぶ者を代理者とする権利を含む公正な審査及び申立てを行う適当な手続を、看護職員に対して保障すべきである。
18 看護職員は、特定の任務の遂行が看護職員の宗教的、道徳的又は倫理的信念と相反する場合であつて、患者にとつて欠くことのできない看護が影響を受けないことを確保するために必要な代替的措置がとられ得るよう充分事前に異議を監督者に通報するときは、制裁を受けることなくその任務の遂行の免除を求めることができるべきである。

Ⅴ 参加

19(1) 国内一般保健政策、特に看護職に関する企画及び決定への看護職員の参加を促進するため、すべての段階で、国内事情に適する方法によつて措置をとるべきである。
  (2) 特に、
   (a) 看護職員の資格を有する代表者又は看護職員を代表する団体の資格を有する代表者は、看護職に関する政策及び一般原則(教育及び訓練並びに看護の実務に関する政策及び一般原則を含む。)の作成及び適用に参与すべきである。
   (b) 雇用条件及び労働条件は、関係のある使用者団体と労働者団体との間の交渉によつて決定されるべきである。
   (c) 雇用条件の決定に関連して生ずる紛争は、看護職員を代表する団体が他の労働者の団体にその合法的な利益を保護するために通常開かれている他の手段に頼ることを不必要にするため、当事者間の交渉を通じ又はあつ旋、調停及び任意仲裁等の独立のかつ公平な手続を通じて解決を求めるべきである。
   (d) 看護職員を雇用する施設において、看護職員又は千九百七十一年の労働者代表条約第三条の意味における看護職員の代表は、看護職員の職業生活に関する決定に当該問題に適する方法によつて参与すべきである。
20 看護職員の代表は、千九百七十一年の労働者代表条約及び千九百七十一年の労働者代表勧告に規定される保護を保障されるべきである。

Ⅵ 進路開発

21(1) 充分に多様かつ広範な職業的昇進の可能性を規定すること、直接的及び補助的看護、看護業務の管理、看護教育並びに看護の分野における研究及び開発における指導的地位を規定すること、並びに責任の増大を伴い、かつ、一層優れた技術的能力及び職業上の判断力を必要とする職務を受け入れることを認める等級制度及び報酬制度を規定することにより、合理的な進路の見通しを看護職員に与えるための措置がとられるべきである。
  (2)  (1)の措置は、患者及び公衆との直接的な関係を伴う職務の重要性をも認めるべきである。
22 進路の見通し及び、適当な場合には、就業中断期間の後における看護職への復帰に関する助言及び指導を看護職員に対して与えるための措置がとられるべきである。
23 就業の中断の後に看護職に復帰する看護職員が就くべき職務の水準を決定するに当たつては、以前の看護経験及び就業中断期間が考慮されるべきである。
24(1) 継続教育訓練計画への参加を望み、かつ、参加する能力のある看護職員は、必要な便宜を与えられるべきである。
  (2)  (1)の便宜は、有給の又は無給の教育休暇の付与、労働時間の調整及び学習又は訓練の費用の支給から成ることができる。看護職員は、可能な場合にはいつでも、千九百七十四年の有給教育休暇条約に従い、有給教育休暇を与えられるべきである。
  (3) 使用者は、なるべく職場において、看護職員の現職訓練のための職員及び施設を提供すべきである。

Ⅶ 報酬

25(1) 看護職員の報酬は、看護職員の社会的及び経済的必要、資格、責任、任務及び経験に相応する、看護職に固有の拘束及び危険を考慮に入れた、看護職員をその職業に引き付けかつ留めておくような水準に決定されるべきである。
  (2) 報酬の水準は、同様な又は同等の資格を必要とし及び同様な又は同等の責任を負う他の職業の報酬の水準と同程度なものであるべきである。
  (3) 同様な又は同等の任務を有し及び同様な又は同等の条件の下で労働する看護職員の報酬の水準は、労働する施設、地域又は部門のいかんを問わず、同程度なものであるべきである。
  (4) 報酬は、生計費の変化及び国内の生活水準の向上を考慮に入れて随時調整されるべきである。
  (5) 看護職員の報酬は、なるべく、労働協約によつて決定されるべきである。
26 報酬率は、5及び6において勧告されている職務及び責任の分類並びに21に規定する進路に関する政策の原則を考慮すべきである。
27 特に困難な又は不快な条件の下で労働する看護職員は、これに対する金銭的な補償を受けるべきである。
28(1) 報酬は、金銭でその全額を支払うべきである。
  (2) 賃金からの控除は、国内法令又は労働協約若しくは仲裁裁定で定める条件及び限度でのみ認められるべきである。
  (3) 看護職員は、使用者が提供するサービスを利用するか否かを決定する自由を有すべきである。
29 使用者によつて要求される又は仕事の遂行上必要な作業衣、医療用品一式、輸送手段その他の供給品は、使用者によつて看護職員に提供され、かつ、無償で維持されるべきである。

Ⅷ 作業時間及び休息期間

30 この勧告の適用上、
  (a) 「通常の労働時間」とは、各国で法令、労働協約若しくは仲裁裁定により又はこれらに基づいて定められる時間数をいう。
  (b) 「超過勤務」とは、通常の労働時間を超えて労働した時間をいう。
  (c) 「呼出し待機」とは、看護職員がありうる呼出しに応ずるため、職場又はその他の場所において使用者によつて自由に使用され得る状態にある時間をいう。
  (d) 「不便な時間」とは、当該国の通常の労働日以外の日及び通常の作業時間以外の時間において労働した時間をいう。
31 看護職員の作業を編成するために必要な時間、指示を受け及び伝達するために必要な時間等看護職員が使用者によつて自由に使用され得る時間は、呼出し待機に関するありうる特別規定に従うことを条件として、看護職員の作業時間として計算されるべきである。
32(1) 看護職員の通常の週労働時間は、当該国の一般労働者について定められている労働時間を上回るべきではない。
  (2) 一般労働者の通常の週労働時間が四十時間を超える場合には、千九百六十二年の労働時間短縮勧告9の規定に従つて、看護職員のために給料を減少させることなく労働時間を漸進的にしかしできる限り速やかに週四十時間の水準にまで短縮するための措置がとられるべきである。
33(1) 一日当たりの通常の労働時間は、弾力的な作業時間又は週労働日数の短縮に関する措置が法令、労働協約、就業規則又は仲裁裁定によつてとられる場合を除くほか、継続的であるべきであり、かつ、八時間を超えるべきではない。いかなる場合にも、通常の週労働時間は、32(1)に規定する限度内にとどめられるべきである。
  (2) 一日の労働時間(超過勤務を含む。)は、十二時間を超えるべきではない。
  (3) この33の規定に対する一時的な例外は、特別な緊急の場合にのみ認められるべきである。
34(1) 合理的な長さの食事時間が与えられるべきである。
  (2) 通常の労働時間に含まれる合理的な長さの休憩時間が与えられるべきである。
35 作業時間表は、看護職員がその個人生活及び家族生活をそれに応じて組織し得るようにするため、看護職員に充分事前に予告されるべきである。この作業時間表に対する例外は、特別な緊急の場合にのみ認められるべきである。
36(1) 看護職員が四十八時間未満の継続する週休を受ける権利を有する場合には、看護職員の週休を四十八時間の水準にまで引き上げるための措置がとられるべきである。
  (2) 看護職員の週休は、いかなる場合にも、継続する三十六時間を下回るべきではない。
37(1) 超過勤務、不便な時間における労働及び呼出し待機を用いることは、できる限り少なくすべきである。
  (2) 超過勤務及び公の休日における労働に対しては、代休が与えられるべきであり及び(又は)通常の賃金率よりも高い率で賃金が支払われるべきである。
  (3) 公の休日以外の不便な時間における労働は、給料への追加によつて補償されるべきである。
38(1) 交替制による労働は、国内における他の雇用に係る交替制による労働について適用される報酬の増加を下回らない報酬の増加によつて補償されるべきである。
  (2) 交替制による労働に従事する看護職員は、交替時間と次の交替時間との間に少なくとも十二時間の継続する休息期間を享受すべきである。
  (3) 無給の時間帯によつて分断される一回の交替勤務時間(分割された交替勤務時間)は、避けられるべきである。
39(1) 看護職員は、国内の他の労働者と少なくとも同じ長さの年次有給休暇を受ける権利を有すべきであり、かつ、そのような休暇をとることを要求されるべきである。
  (2) 年次有給休暇の長さが一年の勤務につき四週間未満である場合には、看護職員のために休暇の長さを漸進的にしかしできる限り速やかに四週間の水準にまで引き上げるための措置がとられるべきである。
40 特に困難な又は不快な条件の下で労働する看護職員は、報酬総額の減少を伴うことなく、労働時間の短縮及び(又は)休息期間の増加を享受すべきである。
41(1) 疾病又は負傷のために欠勤する看護職員は、法令又は労働協約によつて定められる期間中及びそのような方法により、次の権利を有すべきである。
   (a) 雇用関係の維持及び雇用関係から生ずる権利の保全に対する権利
   (b) 所得の保障に対する権利
  (2) 病気休暇を受ける権利を定める法令又は労働協約は、次の場合を区別すべきである。
   (a) 疾病又は負傷が業務上のものである場合
   (b) 当該者は労働不能ではないが、他の者の健康を保護するために欠勤が必要である場合
   (c) 業務と無関係の疾病又は負傷の場合
42(1) 看護職員は、既婚者と未婚者との間の差別なしに、千九百五十二年の母性保護条約(改正)及び千九百五十二年の母性保護勧告に規定する給付及び保護を確保されるべきである。
  (2) 出産休暇は、病気休暇とされるべきではない。
  (3) 千九百六十五年の雇用(家庭責任をもつ婦人)勧告に規定する措置は、看護職員について適用されるべきである。
43 作業の編成、作業時間及び休息期間に関する決定は、19の規定に従い、看護職員の自由に選ばれた代表者又は看護職員を代表する団体との合意又は協議の上、行われるべきである。それらの決定は、特に次の事項に関して行われるべきである。
  (a) 不便な時間とされるべき時間
  (b) 呼出し待機が作業時間として計算される条件
  (c) 33(3)及び35に規定する例外が認められる条件
  (d) 34に規定する食事時間及び休憩時間の長さ並びにそれらの時間をとる方法
  (e) 37及び38に規定する補償の形態及び額
  (f) 作業時間表
  (g) 27及び40の規定の適用上、特に困難な又は不快なものと考えられる条件

Ⅸ 労働衛生上の保護

44 各加盟国は、労働衛生及び産業安全に関する法令を看護職員の労働及び看護職員の労働が遂行される環境の特殊性に適合させるよう並びにそのような法令によつて与えられる保護を増加させるように努めるべきである。
45(1) 看護職員は、千九百五十九年の職業衛生機関勧告の規定に従つて運営される職業衛生機関を利用する機会を有すべきである。
  (2) 職業衛生機関がまだすべての企業のために設置されていない場合には、看護職員を使用する医療施設は、同勧告4の規定に従い、そのような機関が最初に設置されるべきであるとされている企業について存在すべきである。
46(1) 各加盟国並びに関係のある使用者団体及び労働者団体は、千九百五十三年の労働者健康保護勧告の規定に特別の注意を払うべきであり、看護職員に対するその適用を確保するように努めるべきである。
  (2) 同勧告1から7までの規定に従い、看護職員の健康又は安全に対する危険を防止し、減少させ又は除去するためのすべての適当な措置がとられるべきである。
47(1) 看護職員は、就職時及び離職時において並びにその勤務期間中は一定の間隔を置いて健康診断を受けるべきである。
  (2) 看護職員自身の健康又はその周囲の他の者の健康に対する明白な危険が存在し又は存在する疑いのあるような状況の下で常時就業している看護職員は、そのもたらす危険に適合する間隔を置いて定期健康診断を受けるべきである。
  (3) この47に規定する健康診断においては、客観性及び秘密性が確保されるべきである。当該健康診断は、健康診断を受ける者が勤務上密接な関係を有する医師によつて実施されるべきではない。
48(1) 看護職員がその職務を遂行するに当たつてさらされるおそれのある特別な危険が防止され及び、適当な場合には、その結果に対する補償がなされるよう、そのような危険を決定するための研究が行われるべきであり、かつ、最新のものとされておくべきである。
  (2)  (1)の目的のために、労働に係る事故の事案及び業務災害給付に関する法令に基づき職業病と認められる疾病又は職業性の疑いのある疾病の事案は、千九百五十三年の労働者健康保護勧告14から17までの規定に従い、国内法令で規定される方法により権限のある機関に対して通告されるべきである。
49(1) 看護職員が特別な危険にさらされないことを確保するため、可能なすべての措置がとられるべきである。特別な危険にさらされることを避けることができない場合には、それを最少にするための措置がとられるべきである。
  (2) 特別な危険を伴う業務に常時就いている看護職員については、そのような危険にさらされることを減少させるために、保護衣の提供及び使用、免疫、時間の短縮、休憩時間の頻度の増加、当該危険からの一時的な離脱又は年次休暇の長さの延長等の措置が規定されるべきである。
  (3) 更に、特別な危険にさらされる看護職員は、金銭的な補償を受けるべきである。
50 妊婦及び幼少の子の親でその通常就いている業務が自らの健康又はその子の健康を損なうおそれがあるものは、その権利の喪失を伴うことなく、その状態に適した業務に配置換えされるべきである。
51 看護職員の健康及び安全の保護に関する規定の有効な適用を確保するため、看護職員及び看護職員を代表する団体の協力が求められるべきである。
52 看護職員の健康及び安全の保護に関する法令その他の規定の適用を監督するための適当な措置がとられるべきである。

Ⅹ 社会保障

53(1) 看護職員は、場合により、看護職員以外の者であつて当該国における公務、公共部門若しくは民間部門で雇用されるもの又は自営業に従事するものと同等の又はそれ以上の社会保障の保護を享受すべきである。この保護は、看護職員として常時雇用される者の試みの使用期間及び訓練期間にも行われるべきである。
  (2) 看護職員に対する社会保障の保護は、看護職員の業務の特殊性を考慮すべきである。
54 雇用の変更及び雇用の一時的な中断の場合においては、権利の取得及び給付の支給における継続性を確保するための適当な措置ができる限りとられるべきである。
55(1) 社会保障制度が保護対象者に医師及び医療機関の自由な選択を認めている場合には、看護職員は、同様な選択の自由を享受すべきである。
  (2) 看護職員の医療記録は、秘密事項とされるべきである。
56 国内法令は、看護職員がその労働の結果罹(り)患した疾病に対し、職業病として補償することを可能にすべきである。

ⅩⅠ 特別雇用措置

57 利用可能な看護職員を最も有効に活用し、かつ、資格を有する者が看護職から離れることを防止するために、看護職員を臨時に又はパート・タイムで雇い入れることを可能にするための措置がとられるべきである。
58 臨時に雇い入れられる看護職員及びパート・タイムで雇い入れられる看護職員の雇用条件は、それぞれ常用の職員及び専従の職員の雇用条件と同等であるべきであり、かつ、それらの者の権利は、適当な場合には、比例を基礎として決定されるべきである。

ⅩⅡ 看護学生

59 看護学生は、その教育及び訓練に不可欠な制限にのみ従うことを条件として、他の課程の学生が有する権利及び自由を享受すべきである。
60(1) 看護学生の実習作業は、看護学生の訓練の必要に応じて組織され、かつ、実施されるべきである。看護学生の実習作業は、いかなる場合にも、通常の定員の必要を満たす手段として用いられるべきではない。
  (2) 看護学生は、その実習作業期間中、その学習水準に相応する仕事にのみ就かせられるべきである。
  (3) 看護学生は、その教育及び訓練の期間中、看護職員と同様の健康上の保護を受けるべきである。
  (4) 看護学生は、適当な法律上の保護を受けるべきである。
61 看護学生は、その教育及び訓練の期間中、看護職員の雇用条件、労働条件及び進路の見通しについて並びに看護学生の経済的、社会的及び職業的利益を促進するために利用し得る手段について、正確かつ詳細な情報を受けるべきである。

ⅩⅢ 国際協力

62 職員、意見及び知識の交換を促進し、それによつて看護を改善するため、加盟国は、特に多数国間又は二国間の取決めによつて、次のことを行うように努めるべきである。
  (a) 基準を低下させることなしに、看護職のための教育及び訓練を調和させること。
  (b) 外国で取得された資格に関する相互承認の条件を定めること。
  (c) 免許の要件を調和させること。
  (d) 看護職員交換計画を組織すること。
63(1) 看護職員は、自国で提供される教育機会及び訓練機会を活用することを奨励されるべきである。
  (2) 看護職員は、必要がある場合又は望ましい場合には、できる限り組織された交換計画による外国での教育機会及び訓練機会を有すべきである。
64(1) 外国で教育又は訓練を受ける看護職員は、多数国間若しくは二国間の協定又は国内法令によつて定められる条件の下で適当な金銭的援助を受けることができるべきである。
  (2)  (1)の援助は、看護職員が合理的な期間内に自国に帰り、他の自国民に適用される条件と同一の又はそれ以上の条件で、新たに取得した資格に相応する職に一定の最小限度の期間就くことを約束することを条件とすることができる。
65 一定の期間外国で就業すること又は訓練を受けることを希望する看護職員を、雇用関係を中断することなしに、職場から離脱させる可能性に対して考慮が払われるべきである。
66(1) 外国人看護職員は、その就くべき職に適当であると権限のある機関によつて認められた資格を有すべきであり、かつ、就業先の国において看護の実務のための他のすべての条件を満たすべきである。組織された交換計画に参加している外国人看護職員については、後者の要件を免除することができる。
  (2) 使用者は、外国人看護職員が就くべき職に適切な語学力を有することを確保すべきである。
  (3) 同等の資格を有する外国人看護職員は、同様の任務及び責任を伴う職に就いている自国民看護職員の雇用条件と同等に有利な雇用条件を享受すべきである。
67(1) 雇用のための外国人看護職員の募集は、次の場合にのみ認められるべきである。
   (a) 就業先の国において、就くべき職について資格を有する職員が不足している場合
   (b) 求められた資格を有する看護職員が送出国において不足していない場合
  (2) 外国人看護職員の募集は、千九百四十九年の移民労働者条約(改正)及び千九百四十九年の移民労働者勧告(改正)の関係規定に従つて行われるべきである。
68 外国で雇用され又は訓練を受ける看護職員は、帰国を希望する場合には、すべての必要な便宜を与えられるべきである。
69 社会保障について、加盟国は、国内慣行に従い、
  (a) 自国で訓練を受け又は就業する外国人看護職員に対し、自国民看護職員との待遇の均等を保障すべきである。
  (b) 移民看護職員の既得権又は取得の中途にある権利の保全及び外国での給付の支給を確保するための二国間又は多数国間の取決めに参加すべきである。

ⅩⅣ 適用方法

70 この勧告は、国内法令、労働協約、就業規則、仲裁裁定若しくは裁判所の判決又は国内慣行に適合しかつ国内事情に適するその他の方法によつて適用することができる。
71 この勧告の規定を適用するに当たり、加盟国並びに関係のある使用者団体及び労働者団体は、可能なかつ望ましい限度において、附属書に掲げる実際的適用に関する提案を指針とすべきである。

 附属書 実際的適用に関する提案

看護業務及び看護職員に関する政策

1 看護業務及び看護職員に関する国内政策の目的の達成を可能にするため、充分な予算措置がとられるべきである。
2(1) 看護業務の計画の作成は、すべての段階における一般保健計画の作成の継続的な過程であるべきである。
 (2) 看護業務は、次の事項に基づいて計画されるべきである。
  (a) 発生する問題、必要及び利用可能な資源に関し適切な評価を可能にするための継続的性格を有する研究及び調査から得られる情報
  (b) 変化する必要並びに全国的及び地方的条件に適した技術基準
 (3) 特に、次の事項を目的とする措置がとられるべきである。
  (a) 適当な看護基準を設定すること。
  (b) 認められた必要によって要求される看護職務を明示すること。
  (c) すべての段階及び種類について必要とされる看護職員の人数及び資格に関し、看護チームの適切な構成を確保するための職員配置基準を決定すること。
  (d)  (c)の基準に基づき、看護業務全体の発展及び看護職員の有効な活用のために必要とされる看護職員の種類、人数及び水準を決定すること。
  (e) 関係者の代表者との協議の上、看護職員と他の保健職員との関係を決定すること。
3 看護業務及び看護職員に関する政策は、看護職員の職務の四の分野(直接的及び補助的看護、看護業務の管理、看護教育並びに看護の分野における研究及び開発)を開発することを目的とすべきである。
4 看護職員の任務の適正な遂行のため、適当な技術的及び物的資源が提供されるべきである。
5 この勧告5において勧告している職務の分類は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上行われる職務分析及び職務評価に基づくべきである。

   教育及び訓練

6 住民の大きな部分の教育機会が少ない場合には、この勧告9の規定に従つて要求される水準に達していない学生の一般教育を補足するための措置が看護教育及び看護訓練の計画のわく内でとられるべきである。
7 看護教育及び看護訓練の計画は、一層高度な責任のための教育及び訓練を受け得るための基礎を提供し、自己啓発の意欲を刺戟し、また学生がその知識及び技能を保健チームの構成員として用いることができるようにすべきである。

   看護の実務

8(1) 所定の条件の下で、看護の実務を行うための免許の更新を要求することができる。
 (2) 免許を受けた看護職員が引き続き十分な資格を有することを確保するために必要と認められる場合には、(1)の更新は、継続教育及び継続訓練の要件を満たすことを条件として行うことができる。
9 就業の中断の後における看護職への復帰は、特定の状況の下では、資格の検証を条件として行うことができる。このような場合には、検証が行われる前の特定の期間他の者を併せて雇用する等の方法によつて復帰を促進することに考慮が払われるべきである。
10(1) 看護職員に適用される懲戒規則には、次の事項を含むべきである。
   (a) 看護職の性質及び看護職に適用される職業的倫理基準を考慮に入れた職業上の違反行為に関する定義
   (b) 違反行為の重大性に比例して適用される制裁の指摘
  (2) 看護職員に適用される懲戒規則は、保健職員全体に適用される規則のわく内で定められるべきであり、又は、そのような規則がない場合には、他の種類の保健職員に適用される規則を充分考慮すべきである。

   進路開発

11 看護業務に対する一般的な見方の結果として、職業的昇進の機会が少ない場合には、保健の分野における他の職業のための資格を取得することを可能にする学習を促進するための措置をとることができる。
12(1) この勧告6に規定する職務の水準の分類に基づき、職業的昇進の機会を提供する分類の制度及び報酬率の制度を確立するための措置がとられるべきである。
  (2)  (1)の制度は、看護職員が一の水準から他の水準へ移るための刺戟を与えるように充分開放的であるべきである。
  (3) 看護職員の昇進は、公平な基準に基づくべきであり、経験及び発揮された能力を考慮すべきである。
13 報酬の増加は、経験及び能力の増大に基づき、職務の各水準で行われるべきである。
14(1) 看護職員がその知識及び資格をその業務の上で最大限度活用するように奨励するための措置がとられるべきである。
  (2) 看護職員によつて実際に引き受けられた責任及び看護職員によつて示された能力は、それらに相応する報酬及び昇進又は昇格の機会を確保するため、継続的に検討されるべきである。
15(1) 有給教育休暇の期間は、社会的給付を受ける権利その他の雇用関係から生ずる権利の決定上、勤務期間とみなされるべきである。
  (2) 追加教育及び追加訓練のための無給教育休暇の期間は、特に報酬及び年金権に関し、先任権の期間計算に当たつてできる限り考慮されるべきである。

   報酬

16 同様な又は同等の資格を要し、かつ、同様な又は同等の責任を負う他の職業の報酬水準と同程度の報酬水準が達成されないうちは、看護職員をその職業に引き付けかつ留めておくような水準にまでできる限り速やかに報酬を引き上げるための措置が、必要な場合には、とられるべきである。
17(1) 通常支給される給与への追加及び補償的給与は、有給休暇、年金その他の社会的給付についての計算上、16で言及された他の職業における一般的慣行と均衡がとれた範囲内で、報酬の不可分の一部とみなされるべきである。
  (2)  (1)の給与への追加及び補償的給与の金額は、生計費の変化に照らして定期的に再検討されるべきである。

   作業時間及び休息期間

18(1) 労働時間の編成に当たり、交替制による労働、超過勤務及び不便な時間の労働を、看護職員の間で、特に常用職員と臨時職員との間及び専従職員とパート・タイム職員との間で、公平に配分し、また、個人的選好及び気候、交通、家庭責任等の事項に関する特別な配慮をできる限り考慮するためのあらゆる努力が、業務の要請に従うことを条件として、なされるべきである。
  (2) 看護職員の労働時間の編成は、その他の保健職員の作業形態に従属するよりはむしろ看護業務に関する必要に基づくべきである。
19(1) 作業の編成、職員の人数及び活用に関する決定並びに労働時間の編成の分野において、超過勤務、不便な時間の労働及び呼出し待機の必要を制限するための適当な措置がとられるべきである。法令又は労働協約によつて認められる欠勤又は休暇の期間中、出勤している看護職員の負担が過重にならないよう、代替看護職員を入れる必要が特に考慮されるべきである。
  (2) 患者の看護のために必要であり、かつ、充分な志願者が得られない場合を除くほか、超過勤務は、自発的に行われるべきである。
20 この勧告35に規定する作業時間表の予告は、二週間又はそれ以上前になされるべきである。
21 看護職員が職場に残ることを要求される呼出し待機の期間又は看護職員の業務が実際に行われる呼出し待機の期間は、作業時間とみなされるべきであり、かつ、作業時間として報酬が支払われるべきである。
22(1) 看護職員は、自ら選ぶ場所で食事をとる自由を有すべきである。
  (2) 看護職員は、その休憩時間をその職場以外の場所でとることができるべきである。
23 年次休暇がとられるべき時期は、家庭での責務、個人的選好及び業務の要請を十分に考慮した上、公平に決定されるべきである。

   労働衛生上の保護

24 この勧告47(2)、49及び50に規定するような特別措置の対象となる看護職員には、特に、電離放射線又は麻酔物質に常時さらされる職員及び伝染病又は精神病と接触する職員を含むべきである。
25 更に、電離放射線に常時さらされる看護職員は、千九百六十年の放射線からの保護に関する条約及び千九百六十年の放射線からの保護に関する勧告に規定する措置の保護を享受すべきである。
26 妊婦又は幼少の子の母親を就かせるべきではない業務には、次のものを含むべきである。
 (a) 千九百五十二年の母性保護勧告5の規定の対象となる女子については、その5に列挙する種類の業務
 (b) 一般的に、電離放射線又は麻酔物質にさらされることを伴う業務又は伝染病との接触を伴う業務

   社会保障

27 この勧告54に規定する権利の取得及び給付の支給における継続性を確保するため、現存の各種の私的な補足的制度を相互に調整し及び法定の制度と調整するための措置がとられるべきである。
28 看護職員が、その労働の結果罹(り)患した疾病に関し、この勧告56に規定する補償を受けることを確保するため、加盟国は、法令により、
 (a) 一定の疾病につき、看護職員が罹(り)患した場合には、職業に起因するものであるとの推定を確定する一覧表を規定すべきであり、また、看護職員に影響を及ぼす科学的及び技術的発展に照らして、当該一覧表を定期的に改訂すべきである。
 (b) 職業病の一般的定義により又は、(a)の一覧表の規定によつては職業上のものと推定されない疾病につき、それが職業に起因するものであることを看護職員が確立することを可能にするその他の規定により、同一覧表を補足すべきである。

   国際協力

29 外国で教育又は訓練を受ける看護職員に与えられる金銭的援助は、適当な場合には、次のものを含むことができる。
 (a) 旅費の支給
 (b) 研究費用の支給
 (c) 奨学金
 (d) 既に雇用されている看護職員の場合には、報酬の全額又は一部を継続して支払うこと。
30 外国で訓練を受け又は就業するための休暇又は職場からの離脱の期間は、特に報酬及び年金権に関し、先任権の期間計算に当たつてできる限り考慮されるべきである。