1984年の雇用政策(補足規定)勧告(第169号)

ILO勧告 | 1984/06/26

雇用政策に関する勧告(第169号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十四年六月六日にその第七十回会期として会合し、
 千九百六十四年の雇用政策条約及び千九百六十四年の雇用政策勧告並びに特定の種類の労働者に関する他の国際労働文書、特に、千九百八十一年の家族的責任を有する労働者条約及び千九百八十一年の家族的責任を有する労働者勧告、千九百八十年の高齢労働者勧告、千九百四十九年の移民労働者条約(改正)及び千九百四十九年の移民労働者勧告(改正)、千九百七十五年の移民労働者(補足規定)条約並びに千九百七十五年の移民労働者勧告に定める現行の国際基準に留意し、
 国際労働機関の責任がフィラデルフィア宣言に基づく「すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ。」という基本的目的に照らして、経済政策及び財政政策が雇用政策に及ぼす影響を検討しかつ考慮することにあることを想起し、
 千九百六十六年の国際連合総会において採択された経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約が、特に「労働の権利(すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によつて生計を立てる機会を得る権利を含む。)」を認めていること並びにこの権利の完全な実現を漸進的に達成し及び保障するために適当な措置をとることを規定していることを想起し、
 千九百七十九年の国際連合総会において採択された女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の規定を想起し、
 開発及び雇用機会の創出のために資源を可能な限り利用し並びに失業及び不完全就業と戦うことを目的として、世界経済の相互依存の増加及び近年における低い経済成長率に照らし、国内的及び国際的段階で経済政策、金融政策及び社会政策を調整し並びに先進国と開発途上国との間の不均衡の削減及び新たな国際経済秩序の確立のために努力する必要性を認め、
 多数の工業国及び開発途上国における雇用機会の悪化に留意し、並びに貧困、失業及び機会の不均等は、人間性及び社会正義に照らして受け入れ難いものであり、社会的緊張を引き起こすものであり、平和を脅かし、かつ、労働の権利(自由な職業選択、適正かつ望ましい労働条件及び失業からの保護を含む。)の行使を妨げる状況を作り出すものであるとの信念を表明し、
 千九百六十四年の雇用政策条約及び千九百六十四年の雇用政策勧告を千九百七十六年の雇用、所得分配及び社会進歩並びに労働の国際分業に関する三者構成世界会議において採択された行動の原則及び計画の宣言並びに千九百七十九年の国際労働総会において採択された世界雇用会議のフォロー・アップに関する決議の一層広範な枠組みの中に置くべきであることを考慮し、
 この会期の議事日程の第四議題である雇用政策に関する提案の採択を決定し、
 この提案が千九百六十四年の雇用政策条約及び千九百六十四年の雇用政策勧告を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百八十四年の雇用政策(補足規定)勧告と称することができる。)を千九百八十四年六月二十六日に採択する。

Ⅰ 雇用政策の一般原則

1 千九百六十四年の雇用政策条約及び千九百六十四年の雇用政策勧告に規定する自由に選択された生産的な完全雇用の促進を、労働の権利を実際に実現するための手段とすべきである。
2 加盟国による労働の権利の完全な承認を、その目的が自由に選択された生産的な完全雇用の促進である経済政策及び社会政策の実施に関連付けるべきである。
3 自由に選択された生産的な完全雇用の促進を、加盟国の経済政策及び社会政策並びに、適当な場合には、国民の基本的要求を満たすための計画における優先事項とし、かつ、このような政策及び計画の不可分の一部とすべきである。
4 加盟国は、世界雇用会議の行動の原則及び計画の宣言に基づき国民の基本的要求を満たすため、雇用及び生産を増加させる最も効果的な手段に特別の注意を払い、また、国全体における不可欠の財及びサービスの生産の増加及び公平な分配並びに所得の公平な分配を助長するために立案される政策並びに、適当な場合には、計画を策定すべきである。
5 国内慣行に従い、3及び4に規定する政策、企画及び計画は、使用者団体及び労働者団体その他関係のある者を代表する団体、特に千九百七十五年の農業従事者団体条約及び千九百七十五年の農業従事者団体勧告の対象となる農村部門における団体との協議及び協力の上、策定し、及び実施すべきである。
6 国内的及び国際的段階の双方における経済政策及び財政政策は、3及び4に規定する目標に付される優先順位を反映すべきである。
7 3及び4に規定する政策、企画及び計画は、あらゆる差別を撤廃すること並びにすべての労働者に対し雇用に就く機会、雇用条件、賃金及び所得、職業指導及び訓練並びに職業経歴の開発に関する均等な機会及び待遇を確保することを目的とすべきである。
8 加盟国は、不法な雇用、すなわち国内の法令及び慣行の要請に合致しない雇用と効果的に戦うための措置をとるべきである。
9 加盟国は、非制度化部門が存在する場合には、労働者が当該部門から制度化部門へ漸進的に移行することを可能にするための措置をとるべきである。
10 加盟国は、国内の法令及び慣行を考慮して、次の政策を策定し、及び措置をとるべきである。
   (a) 全体、部門及び企業の段階における構造の変化への適応並びに構造及び技術の変化によりその職を失つた労働者の再雇用を促進すること。
   (b) 企業、事業所又は設備の売却、移転、閉鎖又は再配置の場合において影響を受ける労働者の雇用を保障し又は再雇用を促進すること。
11 国内の法令及び慣行に従い、雇用政策を実施する方法は、雇用に関する次のような問題に関する労働協約について交渉することを含むことができる。
   (a) 雇用の促進及び保障
   (b) 経済活動部門及び企業の再編成及び合理化の経済的及び社会的影響
   (c) 労働時間の再編成及び短縮
   (d) 特定の集団の保護
   (e) 経済、財政及び雇用の問題に関する情報
12 加盟国は、使用者団体及び労働者団体との協議の上、多国籍企業が特に千九百七十七年の多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言に規定する雇用政策を実施し及び促進することを奨励し並びに多国籍企業の投資が雇用に及ぼす悪影響を回避し、好影響を奨励することを確保するための効果的な措置をとるべきである。
13 加盟国は、世界経済における相互依存の増大にかんがみ、国内的段階でとる措置に加えて、失業に対する戦いの成功を確保するために国際協力を強化すべきである。

Ⅱ 人口政策

14(1) 十分な雇用機会を確保しつつ、開発政策及び雇用政策は、適当な場合には、かつ、国内の法令及び慣行に従つて、人口問題に関する情報及び自発的な教育の計画による家族の福祉及び家族計画の促進を確保するために立案された人口政策及び計画を含むことができる。
  (2) 加盟国、特に開発途上国は、国内的及び国際的な非政府機関の双方と協力して、次のことを行うことができる。
    (a) 自国の人口政策及び計画において現に親である者及び親になる可能性のある者に家族計画の利点について教育することに特別の注意を払うこと。
    (b) 農村において、家族計画に関するサービスを提供する保健施設及び地域社会センターの数並びにこれらのサービスを提供する訓練された職員の数を増加すること。
    (c) 都市、特にスラム地域において、適当な社会基盤施設を充実し及び生活条件を改善する緊急の必要性に特別の注意を払うこと。

Ⅲ 青少年並びに不利な立場にある集団及び個人の雇用

15 雇用政策全体との関連において、加盟国は、永続的な雇用を見いだす際にしばしば困難を有するすべての種類の者(例えば、特定の女子、特定の青少年労働者、障害者、高齢労働者、長期失業者及び合法的に自国の領域内にいる移民労働者)の必要にこたえるための措置をとるべきである。これらの措置は、これらの集団の雇用に関する国際労働条約及び国際労働勧告の規定並びに国内の法令及び慣行に基づいて定められる雇用条件と適合すべきである。
16 国内事情を考慮し並びに国内の法令及び慣行に従い、15に規定する措置は、特に次のものを含むことができる。
   (a) すべての者に対して機会が与えられる一般教育並びにこれらの者が仕事を見いだすことを助け並びに雇用機会及び所得を改善するための職業指導及び訓練計画
   (b) 教育制度及び労働の領域の双方に関連する訓練制度の創設
   (c) 個人が労働市場に参入すること並びに技能及び適性に適合する雇用を見いだすことを助けるためのカウンセリング及び雇用サービス
   (d) 特定の地域、区域又は部門において有償の雇用を作り出す計画
   (e) 構造の変化への適応の計画
   (f) 継続訓練及び再訓練の措置
   (g) 職業リハビリテーションの措置
   (h) 自発的な移動のための援助
   (i) 自営及び労働者の協同組合の促進のための計画
17(1) 他の特別な措置を青少年のためにとるべきである。特に、
    (a) 国内の事情及び慣行に適した方法により、公的及び私的な機関及び企業を、青少年を雇用し及び訓練するよう奨励すべきである。
    (b) 常用雇用に青少年を結び付けることを優先すべきであるが、千九百七十年の青少年特別計画勧告の規定に留意し、地域社会事業計画、特に社会的性格を有する地域計画の実施に当たり、青少年を自発的に雇用するための特別計画を作成することができる。
    (c) 青少年が最初の仕事を見いだすことを援助するために、訓練と労働が交互に行われる特別計画を作成すべきである。
    (d) 訓練の機会を技術的及び経済的発展に適合させ、並びに訓練の質を向上させるべきである。
    (e) 学校から労働への移行を容易にし及び訓練終了時の雇用機会を促進するために措置をとるべきである。
    (f) 合理的な職業訓練政策の基礎として、雇用の見通しに関する調査を促進すべきである。
    (g) 青少年労働者の安全及び健康を保護すべきである。
  (2)  (1)の措置は、これらが青少年労働者の雇用に有益な影響をもたらすことを確保するために注意深く監視すべきである。
  (3) これらの措置は、青少年の雇用に関する国際労働条約及び国際労働勧告の規定並びに国内の法令及び慣行に基づき定める雇用条件と適合すべきである。
18 15から17までに規定する措置の実施を促進するため、国内の事情及び慣行に適した誘因を提供することができる。
19 国内の法令及び慣行に従い、15から18までに規定する措置及び計画の作成、適用及び監視に関し、権限のある機関と使用者団体及び労働者団体並びに関係のある他の団体との間で十分かつ時宜を得た協議を行うべきである。

Ⅳ 技術政策

20 国の開発政策の主要な項目の一は、潜在的生産力を向上させ並びに雇用機会の創出及び基本的要求の充足という主要な開発目的を達成する手段として技術の開発を促進することであるべきである。技術政策は、経済の発展段階を考慮して、労働条件の改善及び労働時間の短縮に貢献し並びに仕事の喪失を防止するための措置を含むべきである。
21 加盟国は、次のことを行うべきである。
   (a) 新技術の選択、採用及び開発並びに新技術が雇用の量及び構造、雇用条件、訓練、職務内容並びに技能上の要件に及ぼす影響に関する調査を奨励すること。
   (b) 独立した調査機関の関与を確保することにより、自国の特殊な事情に最も適した技術に関する調査を奨励すること。
22 加盟国は、適当な措置により、次のことを確保するよう努めるべきである。
   (a) 教育制度及び訓練制度(再訓練計画を含む。)が、労働者に対し、技術の変化によりもたらされた職業上の要件の変化に適応するための十分な機会を提供すること。
   (b) 現存の及び将来の技能をできる限り最善に活用することに特別の注意を払うこと。
   (c) 特に新技術の企画の段階において人間工学、安全及び健康上の考慮を併せ行うことにより、技術の変化が雇用、労働条件及び生活条件並びに職業上の安全及び健康に及ぼす悪影響をできる限り除去すること。
23 加盟国は、国内の事情及び慣行に適したすべての方法により、適当な新技術の利用を促進し、並びにこれらの問題に関係のある種々の集団及び団体と代表的な使用者団体及び労働者団体との間の連絡及び協議を確保し、又は改善すべきである。
24 関係のある使用者団体及び労働者団体並びに企業が、技術選択上の一般的情報を普及し、大企業と小企業との間の技術上の連携を促進し及び適当な訓練計画を作成することを援助するよう奨励すべきである。
25 国内慣行に従い、加盟国は、新技術の導入の社会的影響に関し、国、部門又は企業の段階において労働協約を締結するよう使用者団体及び労働者団体を奨励すべきである。
26 企業が当該企業の労働者に重大な影響を及ぼすおそれのある技術の変化をその作業過程に導入する場合には、加盟国は、できる限り、かつ、国内の法令及び慣行に従つて、当該企業が次のことを行うよう奨励すべきである。
   (a) 労働者又は労働者代表を新技術の計画、導入及び利用に参与させること。すなわち、新技術が提供する機会及び影響に関する情報をこれらの者に提供し並びに合意に到達することを目的としてこれらの者と事前に協議すること。
   (b) 労働時間の編成の改善及び雇用の配分の改善を促進すること。
   (c) 技術の変化が労働者に及ぼす悪影響を実行可能な最大限度で防止し及び緩和すること。
   (d) 直接又は間接に雇用の創出を促進し並びに生産の漸進的増大及び国民の基本的要求の充足に寄与する技術への投資を促進すること。

Ⅴ 非制度化部門

27(1) 国の雇用政策は、非制度化部門、すなわち、制度化された経済構造の範囲外で行われる経済活動の仕事の供給源としての重要性を認識すべきである。
   (2) 都市及び農村の双方において、個々の作業場における家族労働及び独立した労働を奨励するため、雇用促進計画を作り上げ、及び実施すべきである。
28 加盟国は、制度化部門と非制度化部門との間の相互補完関係を促進し並びに非制度化部門の企業が資源、生産物市場、信用、社会基盤施設、訓練施設、技術的専門知識及び改善された技術を一層利用し得るための措置をとるべきである。
29(1) 加盟国は、非制度化部門における雇用機会の増加及び労働条件の改善のための措置をとりつつ、非制度化部門の自国の経済への漸進的統合を促進するよう努めるべきである。
   (2) 加盟国は、非制度化部門の制度化部門への統合が非制度化部門の労働吸収能力及び所得稼得能力を削減するおそれがあることを考慮すべきである。それにもかかわらず加盟国は、規制措置を非制度化部門へ漸進的に拡大するよう努めるべきである。

Ⅵ 小企業

30 国の雇用政策は、仕事の供給源としての小企業の重要性を考慮すべきであり、また、地方における雇用の自発的な創出が失業と戦い及び経済成長に貢献することを認識すべきである。多様な形態をとることができるこれらの企業(例えば、伝統的な小企業、協同組合及び団体)は、雇用機会を特に特別の困難を有する労働者に提供する。
31 使用者団体及び労働者団体との協議及び協力の上、加盟国は、30に規定する企業とその他の企業との間の相互補完関係を促進し、これらの企業における労働条件を改善し並びにこれらの企業が生産物市場、信用、技術的専門知識及び先進技術を利用する機会を改善するために必要な措置をとるべきである。

Ⅶ 地域開発政策

32 国内の法令及び慣行に従い、加盟国は、天然資源の不平等な配分及び生産手段の不十分な流動性によつてもたらされた社会問題及び雇用問題を緩和し並びに国内の地域間及び区域間の成長及び雇用の不均等を是正する手段としての均衡のとれた地域開発の重要性を認識すべきである。
33 加盟国は、関係のある住民の代表者、特に使用者団体及び労働者団体との協議及び協力の上、未開発地域又は後発地域、衰退しつつある工業地域及び農業地域、辺境並びに一般的に国の開発から十分な利益を得ていない地域における雇用を促進するために措置をとるべきである。
34 国内事情並びに各加盟国の企画及び計画を考慮して、33に規定する措置は、特に次のことを含むことができる。
   (a) 雇用創出のための十分な見通しに立つて、成長の支柱及び成長の中核を作り出し及び開発すること。
   (b) 各地域の人的資源及び天然資源並びに一貫しかつ均衡のとれた地域開発の必要性を考慮して、地域の潜在能力を開発し及び強化すること。
   (c) 大都市の成長と釣合いを保つために中小都市の数及び規模を拡大すること。
   (d)基本的要求を満たすために必要な不可欠のサービスの利用可能性及び配分並びにこれらのサービスを利用する機会を改善すること。
   (e) 労働者の出身地域において生活条件及び労働条件を十分向上させるよう努めつつ、適当な社会福祉措置により国の地域内及び地域間における労働者の自発的な移動を奨励すること。
   (f) 地域の社会基盤施設、サービス及び行政組織の改善(必要な職員の配置並びに訓練及び再訓練の機会の提供を含む。)のために投資すること。
   (g) 地域開発措置の決定及び実施への地域社会の参加を促進すること。

Ⅷ 公共投資計画及び特別公共事業計画

35 加盟国は、特に、失業及び不完全就業が広く存在する地域における雇用の創出及び維持、所得の引上げ、貧困の減少並びに基本的要求の一層の充足のため、経済的及び社会的に実行可能な公共投資計画及び特別公共事業計画を実施することができる。このような計画は、可能かつ適当な場合には、次のことを行うべきである。
   (a) 不利な立場にある集団のための雇用機会の創出に特別の注意を払うこと。
   (b) 農村、都市及び都市近郊における基本的要求の充足のための施設の建設とともに、農村及び都市の社会基盤施設計画を含み、また、エネルギー及び電気通信その他の部門における生産的な投資の増大を含むこと。
   (c) 教育及び保健その他の分野における社会サービスの水準の向上に貢献すること。
   (d) 開発企画が存在する場合には当該企画の枠組みの範囲内で、かつ、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、立案され及び実施されること。
   (e) 計画が利益を与える者を特定し、利用可能な人的資源を決定し、及び事業の選択のための基準を定めること。
   (f) 労働者が任意に採用されることを確保すること。
   (g) 人的資源が他の生産活動から転換されないことを確保すること。
   (h) 国内の法令及び慣行、特に、雇用機会、労働時間、報酬、有給休暇、職業上の安全及び健康並びに業務災害補償を定める法令に適合する雇用条件を提供すること。
   (i) 生産及び雇用の構造的変化のために仕事を変更しなければならない労働者の再訓練とともに、そのような計画に従事する労働者の職業訓練を促進すること。

Ⅸ 国際経済協力及び雇用

36 加盟国は、雇用の増大を達成することを相互に助けるために、国際貿易の拡大を促進すべきである。このため、加盟国は、国際貿易、技術援助及び投資の持続的かつ互恵的な増大の助長に携わる国際機関において協力すべきである。
37 加盟国は、権限のある他の国際機関についての責任を考慮しつつ、雇用政策の有効性を確保するため、次の目的を採用すべきである。
   (a) 経済の安定及び雇用の増大という状況において、開発のための国際協力の枠内において、かつ、権利の平等及び互恵を基礎として、生産及び世界貿易の増大を促進すること。
   (b) 世界経済の統合性の増大のもたらす加盟国間の相互依存は、開発途上国が自国の労働力の増加分を吸収することができるように並びに先進国が関係する労働者のために雇用水準を引き上げ及び調整費用を引き下げることができるように、加盟国が所得及び富の一層公正な国際的分配とともに構造的な調整の社会的費用及び利益の公正な分配を促進するための共同の政策を、適当な場合には定めることができる環境の創造を助長すべきであることを認識すること。
   (c) 開放されかつ公正な世界貿易制度の範囲内において開発途上国が世界の工業生産に一層参加することを可能にし、商品価格を生産者及び消費者の双方が受け入れることができる採算のとれる水準に安定させ並びに開発途上国における商品の生産及び加工に対する投資を奨励するため、貿易並びに構造の変化及び調整に関する国内政策を調整すること。
   (d) 軍事支出及び軍事産業を不可欠の財及びサービス、特に国民の基本的要求及び開発途上国の要求を満たすものの生産へ転換することを奨励するとともに、諸国間の紛争の平和的解決及びすべての国にとつての安全を実現する交渉による軍備縮小協定を奨励すること。
   (e) 先進国及び開発途上国における雇用を促進することを目的として、国際経済体制を改善するために、特に金融分野において、国際的な協調行動に関する合意を求めること。
   (f) 特に、雇用、人的資源並びに私有財産権に関する相互に受け入れられた法令及び慣行に従つて行われる技術の選択、開発及び移転の分野において、経験の交換及び補完的能力の開発により、特に経済発展の異なる段階にある国の間の及び異なる社会経済体制にある国の間の相互の経済協力及び技術協力を増進すること。
   (g) 世界経済の持続的及び非インフレ的成長のための条件並びに新たな国際経済秩序の確立をもたらす改善された国際通貨体制の確立のための条件を作り出すこと。
   (h) 為替相場の一層の安定性、開発途上国の債務負担の軽減、開発途上国に対する長期かつ低利の金融支援の提供並びに雇用及び基本的要求の充足を促進する調整政策の採用を確保すること。
38 加盟国は、次のことを行うべきである。
   (a) 開発途上国が、公正かつ合理的な商業上の条件の下に、雇用の促進及び基本的要求の充足に最も適した技術を採用することができるようにするため、技術の移転を促進すること。
   (b) 雇用の創出及び維持並びに訓練及び再訓練の機会の提供のための適当な措置をとること。そのような措置は、世界経済の変化により影響を受ける産業及び労働者の積極的な調整を援助するため、国内的、地域的又は国際的な再調整基金の設立を含むことができる。

Ⅹ 国際的移住及び雇用

39 加盟国は、移民労働者に関する国際労働条約及び国際労働勧告を考慮して、国際的移住が行われている場合には、次のことのための政策を策定すべきである。
   (a) 雇用を見いだすために移住する必要性を減少させるため、移民を出す国において一層多くの雇用機会及び一層良い労働条件を作り出すこと。
   (b) 国際的移住が自由に選択された生産的な完全雇用を促進するための条件の下で行われることを確保すること。
40 雇用を目的とする多数の外国人労働者を不断に又は繰り返して入国させる加盟国は、当該労働者が開発途上国の出身である場合には、適当な集約度を持つ資本の移動、貿易の拡大、技術的知識の移転及び地方労働者の職業訓練の援助により、雇用のための移住に効果的に代替するものを確立し並びに問題となつている国の経済状況及び雇用状況の改善を援助するため、当該開発途上国の開発に更に十分に協力するよう努めるべきである。
41 外国での雇用を目的とする自国民の大量流出を不断に又は繰り返して経験している加盟国は、法令、使用者団体及び労働者団体との合意又は国内の事情及び慣行に適合する他の方法により、募集の段階での不正な慣行、他国への不法な入国又は他国における不法な滞在若しくは雇用のおそれがある出国を防止するための措置をとるべきである。ただし、この措置が、すべての者が自国を含むいかなる国からも出国する権利に反しないことを条件とする。
42 移民の出身国である開発途上国は、不足している技能を有する自国民の自発的な帰国を促進するため、次のことを行うべきである。
   (a) 必要な誘因を提供すること。
   (b) 国際労働事務局及びこの問題に関係のある他の国際機関又は地域機関とともに、自国民を雇用している国の協力を得ること。
43 加盟国(受入れ国及び出身国の双方)は、次のことのための適当な措置をとるべきである。
   (a) 外国での労働のための労働者の募集の濫用を防止すること。
   (b) 移民労働者からの搾取を防止すること。
   (c) 結社の自由の権利並びに団結及び団体交渉の権利の完全な行使を確保すること。
44 加盟国(受入れ国及び出身国の双方)は、必要な場合には移民労働者に関する現行の国際労働条約及び国際労働勧告を十分に考慮して、入国及び滞在の権利、雇用に起因する権利の保護、移民労働者の教育及び訓練の機会の促進、社会保障、出身国への帰国を望む労働者及びその家族への援助等の事項を対象とする二国間及び多数国間協定を締結すべきである。