1947年の労働監督条約の議定書、1995年

ILO条約 | 1995/06/22

千九百四十七年の労働監督条約の千九百九十五年の議定書
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十五年六月六日にその第八十二回会期として会合し、
工業的及び商業的な事業場についてのみ適用する千九百四十七年の労働監督条約の規定に留意し、
商業的及び非商業的な農業的企業の事業場について適用する千九百六十九年の労働監督(農業)条約の規定に留意し、
経済活動のすべての部門(公務を含む。)について適用する千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約の規定に留意し、
非商業的役務の部門の労働者がさらされるあらゆる危険及びこの部門が千九百四十七年の労働監督条約に規定する制度と同一の又は同様に効果的かつ公平な労働監督の制度の適用を受けることを確保することの必要性を認識し、
前記の会期の議事日程の第六議題である非商業的役務の部門の活動に関する提案の採択を決定し、
その提案が千九百四十七年の労働監督条約の議定書の形式をとるべきであることを決定して、
次の議定書(引用に際しては、千九百四十七年の労働監督条約の千九百九十五年の議定書と称することができる。)を千九百九十五年六月二十二日に採択する。

第 一 部 適用範囲、定義及び適用

第 一 条

1 この議定書を批准する各加盟国は、千九百四十七年の労働監督条約(以下「条約」という。)の規定の適用を非商業的役務の部門の活動に拡大する。
2 条約の適用上、「非商業的役務の部門の活動」とは、工業的又は商業的とみなされないすべての種類の事業場の活動をいう。
3 この議定書は、条約の適用範囲内にないすべての事業場について適用する。

第 二 条

1 この議定書を批准する加盟国は、条約を次の役務について適用することにより重要性を有する特別の問題が生ずるおそれがある場合には、その批准書に付する宣言により、この議定書の適用範囲から次の役務の全部又は一部を除外することができる。
(a) 国(連邦)による不可欠な行政の役務
(b) 軍隊の役務(軍の要員によるものであるか文民たる要員によるものであるかを問わない。)
(c) 警察その他の公安の役務
(d) 刑務所の役務(刑務所職員によるものであるか作業中の被拘禁者によるものであるかを問わない。)
2 加盟国は、1の規定を援用する前に、最も代表的な使用者団体及び労働者団体又はこれらの団体がない場合には関係のある使用者及び労働者の代表者と協議する。
3 1に規定する宣言を行った加盟国は、この議定書を批准した後は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づく条約の適用に関する次回の報告において、適用を除外する理由を明示し、及び、適用を除外する部門の事業場に対してできる限り別の監督措置をとる。当該加盟国は、その後の報告において、この議定書の規定をそれらの部門に拡大するため自国がとった措置について記載する。
4 1に規定する宣言を行った加盟国は、この条の規定に基づくその後の宣言により、いつでもその宣言を変更し又は取り消すことができる。

第 三 条

1 この議定書の規定は、国内法令により又は国内慣行に適合するその他の方法により実施する。
2 この議定書の実施のためにとられる措置は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体又はこれらの団体がない場合には関係のある使用者及び労働者の代表者との協議の上、策定する。

第 二 部 特別措置

第 四 条

1 加盟国は、条約第十二条に規定する労働監督官の権限を制限するため、国(連邦)による不可欠な行政、軍隊の役務、警察その他の公安の役務及び刑務所の役務の事業場の監督に関し、次のことについて特別の措置をとることができる。
(a) 監督官が、立入りの前に適切な身分証明を有すること。
(b) 予約の上、監督すること。
(c) 秘密の文書の提出を要求する権限を有すること。
(d) 秘密の文書を建物から持ち出すこと。
(e) 原料及び材料を接収し及び分析すること。
2 加盟国は、労働監督官の権限に関して次の制限を課することができるようにするため、軍隊の役務及び警察その他の公安の役務の事業場の監督について特別の措置をとることができる。
(a) 作戦的行動又は訓練中の監督の制限
(b) 第一線又は活動中の部署の監督の制限又は禁止
(c) 緊張状態にあることが宣言された期間における監督の制限又は禁止
(d) 軍事上の目的のための爆発物及び武器の輸送に係る監督の制限
3 加盟国は、緊張状態にあることが宣言された期間における監督に関して制限を課することができるようにするため、刑務所の役務の事業場の監督について特別の措置をとることができる。
4 加盟国は、1から3までに定める特別の措置をとる前に、最も代表的な使用者団体及び労働者団体又はこれらの団体がない場合には関係のある使用者及び労働者の代表者と協議する。

第 五 条

 加盟国は、消火、救助その他の緊急作業中の監督に関して制限を課することができるようにするため、消火その他救助の役務の事業場の監督について特別の措置をとることができる。そのような場合には、労働監督機関は、定期的に及び重大な事件が発生した後に、それらの作業を検討する。

第 六 条

 労働監督機関は、潜在的に危険な作業のための訓練中の危険性を最小限にするための効果的な措置の策定に関して助言し、及び、そのような措置の実施の監視に参加することができる。

第 三 部 最終規定

第 七 条

1 加盟国は、この議定書の正式の批准を登録するため国際労働事務局長に通知することにより、条約の批准と同時に又はその後にこの議定書を批准することができる。
2 この議定書は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。その後は、この議定書は、いずれの加盟国についても、その批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生じ、条約は、この議定書第一条から第六条までを追加されたものとして当該加盟国を拘束する。

第 八 条

1 この議定書を批准した加盟国は、この議定書が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの議定書を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この議定書を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの議定書を廃棄することができる。

第 九 条

1 国際労働事務局長は、この議定書のすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、この議定書の二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この議定書が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。
3 事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、この議定書のすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 条

 この議定書の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。