2001年の農業における安全健康条約(第184号)

ILO条約 | 2001/06/21

農業における安全及び健康に関する条約(第184号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、二千一年六月五日にその第八十九回会期として会合し、
 関係のある国際労働条約及び国際労働勧告、特に、千九百五十八年の農園条約及び千九百五十八年の農園勧告、千九百六十四年の業務災害給付条約及び千九百六十四年の業務災害給付勧告、千九百六十九年の労働監督(農業)条約及び千九百六十九年の労働監督(農業)勧告、千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約及び千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する勧告、千九百八十五年の職業衛生機関条約及び千九百八十五年の職業衛生機関勧告並びに千九百九十年の化学物質条約及び千九百九十年の化学物質勧告に具現された原則に留意し、
 農業に対する一貫した取組みが必要であることを強調し、また、この分野に適用される他の国際労働機関の文書、特に、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約、千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約、千九百七十三年の最低年齢条約及び千九百九十九年の最悪の形態の児童労働条約に具現された原則の一層広範な枠組みを考慮し、
 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言並びに関係のある実施基準、特に、千九百九十六年の職業上の事故及び疾病の記録及び通知に関する実施基準、千九百九十八年の林業における安全及び健康に関する実施基準に留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である農業における安全及び健康に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、二千一年の農業における安全健康条約と称することができる。)を二千一年六月二十一日に採択する。

Ⅰ 適用範囲

第 一 条

 この条約の適用上、「農業」とは、農業的企業が行う農業活動及び林業(作物生産、林業、畜産及び昆虫の飼育並びに企業の運営者によって又は当該運営者のために行われる農産物及び動物産品の一次加工を含む。)並びに機械、設備、装置、器具及び農業施設の使用及び保守(農業的企業における農業生産に直接関連する加工、貯蔵、作業又は輸送を含む。)をいう。

第 二 条

この条約の適用上、「農業」には、次のものを含まない。
 (a) 自給自足農業
 (b) 農産物を原料として使用する産業上の加工及び関連するサービス
 (c) 森林の産業上の開発

第 三 条

1 この条約を批准する加盟国の権限のある機関は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、
 (a) 重要な性質の特殊な問題が生ずる場合には、特定の農業的企業又は限られた種類の労働者についてこの条約の全部又は一部の規定の適用を除外することができる。
 (b) (a)の規定による除外について、すべての企業及びすべての種類の労働者を漸進的に対象とするための計画を策定する。
2 加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、1(a)の規定による除外をその理由を付して列記する。当該加盟国は、その後の報告において、この条約の規定を関連する労働者に漸進的に拡大するためにとった措置を記載する。

Ⅱ 一般規定

第 四 条

1 加盟国は、国内事情及び国内慣行に照らして並びに関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、農業における安全及び健康に関する一貫した国内政策を策定し、実施し及び定期的に検討する。この政策は、農作業環境に対する危険を除去し、最小限にし又は規制することにより、作業から生じ、作業に関連し又は作業中に生じた事故及び健康に対する傷害を防止することを目的とする。
2 このため、国内法令は、
 (a) 農業における職業上の安全及び健康に関する政策及び国内法令の実施に対して責任を負う権限のある機関を指定する。
 (b) 農業における職業上の安全及び健康に関する使用者及び労働者の権利及び義務を特定する。
 (c) 関係する機関及び団体の補完性並びに国内事情及び国内慣行を考慮して、農業部門のために当該機関及び団体との間で内部の調整の仕組みを確立し、並びにその任務及び責任を定める。
3 指定された権限のある機関は、是正措置又は適当な制裁(適当な場合には、労働者の安全及び健康に急迫した危険をもたらす農業活動の停止又は制限を含む。)を、停止又は制限の原因となった状態が是正されるまでの間、国内法令に従って定める。

第 五 条

1 加盟国は、農作業場における十分かつ適当な監督の制度を実施し、及び適切な手段を提供することを確保する。
2 権限のある機関は、国内法令に従い、一定の監督の任務を地域又は地方の段階において適当な政府機関、公的機関若しくは政府の監督の下にある私的機関に補助的に委託し、又はこれらの機関をその任務の遂行に参加させることができる。

Ⅲ 予防的及び保護的措置

総則

第 六 条

1 国内法令に適合する限り、使用者は、作業に関連するあらゆる側面について、労働者の安全及び健康を確保する義務を負う。
2 国内法令又は権限のある機関は、一の農作業場において二人以上の使用者が活動を行っている場合又は一人若しくは二人以上の使用者及び自営の者が活動を行っている場合には、これらの者が安全及び健康に関する要件を適用するに当たり、協力することを定める。適当な場合には、権限のある機関は、この協力のための一般的な手続を定める。

第 七 条

 第四条に規定する国内政策に適合するため、国内法令又は権限のある機関は、企業の規模及びその活動の性質を考慮して、使用者が次のことを行うことを定める。
 (a) 労働者の安全及び健康に関する適切な危険性の評価を行い、その結果に基づき、使用者の管理の下にあるすべての農業活動、作業場、機械、設備、化学物質、器具及び加工が、労働者の意図したすべての使用状況において、安全なかつ定められた安全及び健康に関する基準に適合することを確保するため予防的及び保護的措置をとること。
 (b) 教育水準及び言語の相違を考慮して、安全及び健康に関する十分かつ適当な訓練及び理解し得る教育並びに必要な指導又は監督(農業労働者の作業に係る危険及び農業労働者の保護のためにとるべき措置に関する情報を含む。)が農業労働者に提供されることを確保すること。
 (c) 安全及び健康に対する急迫したかつ重大な危険がある場合には、作業を停止し及び、適当な場合には、労働者を避難させるため速やかに措置をとること。

第 八 条

1 農業労働者は、次の権利を有する。
 (a) 安全及び健康に関する事項(新たな技術による危険を含む。)について通報され及び協議を受ける権利
 (b) 安全及び健康のための措置の適用及び検討に参加し、並びに国内法及び国内慣行に従い、安全及び健康に関する代表者並びに安全委員会及び衛生委員会の代表者を選出する権利
 (c) 自己の安全又は健康に対する急迫したかつ重大な危険があると信ずるに足りる正当な事由がある場合には、作業活動から生ずる危険から避難し、その旨を自己の監督者に速やかに通知する権利。これらの活動の結果、農業労働者は、不利益な立場に置かれない。
2 農業労働者及びその代表者は、所定の安全及び健康のための措置を遵守し、並びに使用者がその任務及び責任を履行するために使用者と協力する義務を有する。
3 1及び2に定める権利及び義務の行使の方法は、国内法令、権限のある機関、労働協約又は他の適当な方法によって定める。
4 この条約が3に定めるところにより実施される場合には、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と事前に協議する。

機械の安全及び人間工学

第 九 条

1 国内法令又は権限のある機関は、安全及び健康に関する国内基準その他の認められている基準に従い、農業において使用される機械、設備(個人用保護具を含む。)、装置及び手工具が適切に備えられ、維持され及び保護されることを定める。
2 権限のある機関は、製造者、輸入者及び供給者が1に規定する基準に適合し並びに利用者及び要請に応じ権限のある機関に対し、利用者の国の公用語で、危険警告標識を含む十分かつ適当な情報を提供するための措置をとる。
3 使用者は、製造者、輸入者及び供給者が提供する安全及び健康に関する情報を労働者が入手しかつ理解することを確保する。

第 十 条

 国内法令は、農業用の機械及び設備について、次のとおり定める。
 (a) それらが、設計された目的のためにのみ使用されなければならず、特に、人を運送するために設計され又は適合されていない限り、人の輸送に使用してはならない。ただし、当初予定された用途以外の使用が国内法及び国内慣行に従って安全であると評価された場合は、この限りではない。
 (b) 国内法及び国内慣行に従い、訓練を受けておりかつ資格を有する者が操作する。

資材の取扱い及び輸送

第 十 一 条

1 権限のある機関は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、資材の取扱い及び輸送、特に、手による取扱いについて安全及び健康に関する要件を定める。この要件は、国内法令及び国内慣行に従って作業が行われるすべての関連する状況を考慮し、危険性の評価、技術基準及び医学的見解に基づくものとする。
2 労働者は、荷の重量又は性質により労働者の安全又は健康を損なうおそれのある荷の手による取扱い又は輸送に従事することを要求されず又は許されない。

化学物質の適正な管理

第 十 二 条

 権限のある機関は、国内法及び国内慣行に従い、次のことを確保するための措置をとる。
 (a) 農業において使用される化学物質の輸入、分類、包装及び表示のため並びに禁止又は制限のための特定の基準を定める適当な国内制度その他権限のある機関が承認する制度が存在すること。
 (b) 安全及び健康に関する国内基準その他の認められている基準に従い、利用者及び要請に応じ権限のある機関に対し、農業において使用される化学物質を製造し、輸入し、供給し、販売し、移転し、貯蔵し又は廃棄する者が、当該国の適当な公用語で十分かつ適当な情報を提供すること。
 (c) 安全及び健康並びに環境に対する危険を除去し又は最小限にするため、廃化学物質、廃物化学物質及び化学物質の空の容器の他の用途への使用を避けるように、安全な回収、再使用及び処分のための適切な制度が存在すること。

第 十 三 条

1 国内法令又は権限のある機関は、企業の段階における化学物質の使用及び廃化学物質の取扱いについて、予防的及び保護的措置をとることを確保する。
2 1の措置は、特に次の事項を対象とする。
 (a) 化学物質の処理、取扱い、適用、貯蔵及び輸送
 (b) 化学物質の分散をもたらす農業活動
 (c) 化学物質のための設備及び容器の維持、修理及び洗浄
 (d) 空の容器の処分並びに廃化学物質及び廃物化学物質の処理及び処分

動物の取扱い及び生物学的な危険からの保護

第 十 四 条

 国内法令は、生物学的な因子を取り扱う場合における感染、アレルギー、中毒等の危険を防止し又は最小限度にとどめること並びに動物、家畜及び家畜小屋に関連する活動が健康及び安全に関する国内基準その他の認められている基準に従うことを確保する。

農業施設

第 十 五 条

 農業施設の建設、維持及び修理は、国内法令並びに安全及び健康に関する要件に従う。

Ⅳ その他の規定

年少労働者及び危険な作業

第 十 六 条

1 その性質又は実施される状況により、年少者の安全及び健康を損なうおそれのある農作業又はそのようなおそれのある状況下で行われる農作業に指定される最低年齢は、十八歳を下回ってはならない。
2 1の規定が適用される作業の種類は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、国内法令又は権限のある機関によって決定される。
3 1の規定にかかわらず、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、適当な事前の訓練を受けること並びに年少労働者がその安全及び健康について十分に保護されることを条件として、十六歳からの1に規定する作業については、国内法令又は権限のある機関により認めることができる。

臨時の労働者及び季節労働者

第 十 七 条

 臨時の労働者及び季節労働者が同等の常用農業労働者と同一の安全及び健康に関する保護を受けることを確保するために措置をとる。

女性労働者

第 十 八 条

 妊娠、哺育並びに性及び生殖に関する健康に関連する女性農業労働者の特別な必要を考慮することを確保するために措置をとる。

福祉施設及び居住施設

第 十 九 条

 国内法令又は権限のある機関は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、次の事項について定める。
 (a) 労働者の負担によることのない適当な福祉施設の提供
 (b) 企業内に一時的又は恒久的に生活することが作業の性質上要求される労働者のための最低限度の居住に関する基準

労働時間

第 二 十 条

 農業労働者の労働時間、夜間労働及び休息期間については、国内法令又は労働協約に従う。

職業上の傷害及び疾病に対する保護

第 二 十 一 条

1 農業労働者は、国内法及び国内慣行に従い、職業上の傷害及び疾病(致命的であるかないかを問わない。)並びに廃疾その他作業に関連する健康に対する危険について、他の分野の労働者が受けている保護と少なくとも同等の保護を提供する保険制度又は社会保障制度の対象とされる。
2 1の制度は、国内制度の一部又は国内法及び国内慣行に適合する他の適当な形式とすることができる。

最終規定

第 二 十 二 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 二 十 三 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国で自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束 する。
2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 二 十 四 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 五 条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 二 十 六 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 七 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 八 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定 がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第二十四条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 九 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。