1919年の夜業(婦人)条約(第4号)

ILO条約 | 1919/11/28

夜間に於ける婦人使用に関する条約(第4号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千十七年六月五日にその第百六回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である複数の国際労働条約の廃止及び撤回に関する提案を検討し、二千十七年六月十四日に、千九百十九年の夜業(婦人)条約(第四号)の廃止を決定する。国際労働事務局長は、この本文書廃止の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
亜米利加合衆国政府に依り千九百十九年十月二十九日華盛頓に招集せられ、
右華盛頓総会の会議事項の第三項目の一部たる「婦人使用の件、夜間」に関する提案の採択を決議し、且
該提案は国際条約の形式に依るべきものなることを決定し、
国際労働機関の締盟国に依り批准せらるるが為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百十九年の夜業(婦人)条約と称せらるべき左の条約を採択す。

第 一 条

1 本条約に於て「工業的企業」と称するは、左に掲ぐるものを特に包含す。
(a) 鉱山業、石切業其の他土地より鉱物を採取する事業
(b) 物品の製造、改造、浄洗、修理、装飾、仕上、販売の為にする仕立、破壊若は解体を為し又は材料の変造を為す工業(造船竝電気又は各種動力の発生、変更及伝導を含む。)
(c) 建物、鉄道、軌道、港、船渠、棧橋、運河、内地水路、道路、隧道、橋梁、陸橋、下水道、排水道、井、電信電話装置、電気工作物、瓦斯工作物、水道其の他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更又は解体及上記の工作物又は建設物の準備又は基礎工事
2 工業と商業及農業との分界は、各国に於ける権限ある機関之を定むべし。

第 二 条

1 本条約に於て「夜間」と称するは、夜十時より朝五時に至る時間を包含する少くとも十一時間の継続の時間を謂ふ。
2 工業的企業に於ける夜間の婦人使用に付、未だ公の規則の適用なき国に於ては、「夜間」とは、当分の内且三年を超えざる期間内、政府に依り夜十時より朝五時に至る時間を包含する十時間のみの時間を謂ふと宣せらるることを得。

第 三 条

 婦人は、年齢に拘らず、同一の家に属する者のみを使用する企業を除くの外、一切の公私の工業的企業又は其の各分科に於て夜間使用せらるることを得ず。

第 四 条

 第三条の規定は、左の場合に之を適用せず。
(a) 不可抗力の場合に於て予見すること能はず且回帰性を有せざる作業中絶が或企業に生じたるとき
(b) 原料又は取扱材料にして急に損敗し易きものを作業上処理すべき場合に於て右原料又は材料の損失を防ぐ為夜業を必要とするとき

第 五 条

 印度及暹羅国に於ては、国法に依り定められたる工場を除き、何れの工業的企業に関しても、政府は、本条約第三条の適用を停止することを得。該停止は、総て国際労働事務局に之を通告すべし。

第 六 条

 季節の影響を受くる工業的企業に於て及例外の事情に依り必要ある一切の場合に於て、一年に付六十日間は夜間を十時間に短縮することを得。

第 七 条

 気候の為昼間の作業が特に健康に困難なる国に於ては、夜間は、前数条に規定するより之を短くすることを得。但し昼間に於て之に代るべき休憩を与ふべきものとす。

第 八 条

 国際労働機関憲章に定むる条件に依る本条約の正式批准は、登録の為国際労働事務局長に之を通告すべし。

第 九 条

1 本条約を批准する各締盟国は、其の殖民地、保護国及属地にして完全なる自治を有せざるものに左の条件の下に之を適用することを約す。
(a) 其の規定が土地の状況に照し適用不可能に非ざること。
(b) 其の規定を土地の状況に適応せしむる為必要なる変更を加ふること。
2 各締盟国は、其の殖民地、保護国及属地にして完全なる自治を有せざるものに付其の執りたる措置を国際労働事務局に通告すべし。

第 十 条

 国際労働機関の締盟国中の二国が国際労働事務局に本条約の批准の登録を為したるときは、事務局長は、国際労働機関の一切の締盟国に右の旨を通告すべし。

第 十 一 条

 本条約は、国際労働事務局長が前条の通告を発したる日より効力を発生すべく、且該事務局に其の批准を登録したる締盟国のみを拘束すべし。爾後本条約は、他の何れの締盟国に付ても、右事務局に其の批准を登録したる日より効力を発生するものとす。

第 十 二 条

 本条約を批准する各締盟国は、千九百二十二年七月一日迄に其の規定を実施し、且右規定を実施するに必要なるべき措置を執ることを約す。

第 十 三 条

 本条約を批准したる締盟国は、本条約の最初の効力発生の日より十年の期間満了後に於て、国際労働事務局長宛登録の為にする通告に依り之を廃棄することを得。右の廃棄は、該事務局に登録ありたる日以後一年間は其の効力を生ぜず。

第 十 四 条

 国際労働事務局の理事会は、少くとも十年に一回本条約の施行に関する報告を総会に提出すべく、且其の改正又は変更に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきや否やを審議すべし。

第 十 五 条

 本条約は、仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に正文とす。