1935年の労働時間短縮(硝子壜工場)条約(第49号)

ILO条約 | 1935/06/25

硝子壜工場に於ける労働時間の短縮に関する条約(第49号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 千九百三十五年六月四日ジユネーヴに於て其の第十九回会議として会合し、
 労働時間短縮問題が右会議の会議事項の第六項目たるに鑑み、
 生活標準の維持を含む千九百三十五年の四十時間制条約に定めらるる原則を確認し、
 右の短縮を硝子壜工場に付直に実施することを決定し、
 千九百三十五年の労働時間短縮(硝子壜工場)条約と称せらるべき左の条約を千九百三十五年六月二十五日採択す。

第 一 条

1 本条約は、自動式機械に依り壜を製造する硝子工場に於て連続交替制にて労働し且瓦斯発生炉、槽窯、自動式機械及純窯に関する操作並に之に附帯せる作業に使用せらるる者に之を適用す。
2 本条約に於て「壜」と称するは、壜と同一の工程に依り製造せらるる類似の硝子製品をも包含す。

第 二 条

1 本条約の適用を受くる者は、少くとも四交替班を設くる制度に依り使用せらるべきものとす。
2 右の者の労働時間は、一週に付平均四十二時間を超えざるべきものとす。
3 右の平均は、四週を超えざる期間に付計算せらるべきものとす。
4 一交替班の労働時間は、八時間を超えざるべきものとす。
5 同一交替班の二交替番間の間隔は、十六時間を下らざるべきものとす。但し右間隔は、必要あるときは、交替班の定期的転換の場合に短縮せらるることを得。

第 三 条

1 第二条2、3及4に規定せらるる時間制限は、之を超ゆることを得べく、又5に規定せらるる間隔は、之を短縮することを得。但し左の場合に於て、企業の通常の操業に対する重大な障碍を除去するに必要なる限に於てとす。
 (a) 現実なる若は急迫せる災害の場合、機械若は装置に対し施さるべき緊急作業の場合又は不可抗力の場合
 (b) 交替班の一人又は二人以上の班員の予見せられざる欠席を補ふ為の場合
2 本条に依る一切の増加時間に対しては、国内の法令若は規則に依り又は関係使用者団体及労働者団体間の協定に依り定めらるべき方法に於て充分なる補償を与へらるべきものとす。

第 四 条

 本条約の規定の有効なる実施を容易ならしむる為、各使用者は、左記を要求せらるべきものとす。
 (a) 工場若は他の適当なる場所の見易き箇所に掲示することに依り又は権限ある権力に依り承認せらるべき他の方法に依り各交替班の始業及終業の時刻を公示すること。
 (b) 権限ある権力に依り承認せらるべき方法及公示を以てするの外右の如く公示せられたる時刻を変更せざること。
 (c) 本条約第三条に依る一切の増加時間及之に対し与へらるる補償を権限ある権力の定むる様式に従ひ記録すること。

第 五 条

 本条約は、其の定むる所より有利なる条件を保障する慣習又は使用者及労働者間の協定に影響を及ぼさざるものとす。

第 六 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 七 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 八 条

 国際労働事務局長は、国際労働機関の二加盟国の批准が登録されたときは、この旨を直ちに国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。同事務局長は、また他の加盟国からその後通告を受けた批准の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。

第 九 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通告する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で前項に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 一 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第九条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 二 条

 この条約のフランス語及び英語による本文は、ともに正文とする。