特殊ノ労働者募集制度ノ規律ニ関スル条約（第50号）
(1938年９月８日批准登録)

　国際労働機関ノ総会ハ
国際労働事務局ノ理事会ニ依リジユネーヴニ招集セラレ千九百三十六年六月四日其ノ第二十回会議トシテ会合シ
右会議ノ会議事項ノ第一項目タル特殊ノ労働者募集制度ノ規律ニ関スル提案ノ採択ヲ決議シ且
該提案ハ国際条約ノ形式ニ依ルベキモノナルコトヲ決定シ
千九百三十六年ノ土民労働者募集条約ト称セラルベキ左ノ条約ヲ千九百三十六年六月二十日採択ス

第　一　条

　本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ土民労働者ノ募集ガ存在シ又ハ将来存在スルコトアルベキ各地域ニ於テ左ノ規定ニ従ヒ其ノ募集ヲ規律スルコトヲ約ス

第　二　条

　本条約ニ於テ
(a)　「募集」ト称スルハ労務地、公ノ移民事務所若ハ職業紹介所又ハ使用者団体ニ依リ経営セラレ且権限アル権力ニ依リ監督セラルル事務所ニ於テ自発的ニ自己ノ労務ヲ提供スルニ非ザル者ノ労働ヲ得又ハ供給スル目的ヲ以テ行ハルル一切ノ行為ヲ包含ス
(b)　「土民労働者」ト称スルハ本機関ノ締盟国ノ属地ノ土民ニ属シ又ハ之ニ類似スル労働者及本機関ノ締盟国ノ本土ノ非自立土民ニ属シ又ハ之ニ類似スル労働者ヲ包含ス

第　三　条

　権限アル権力ハ職業的募集ニ従事スル個人又ハ団体ニ依リ行ハルル場合ヲ除ク外左ノ種類ノ募集行為ヲ本条約ノ適用ヨリ除外スルノ政策ノ採用ヲ望マシトスル事情アル場合ニ於テハ右除外ヲ為スコトヲ得
(a)　所定制限数ヲ超ユル労働者ヲ使用スルニ非ザル使用者ニ依リ又ハ其ノ為ニ行ハルル行為
(b)　労務地ヨリ所定制限圏内ニ於テ行ハルル行為
(c)　個人的及家庭的使用人並ニ非筋肉労働者ノ雇入ノ為ノ行為

第　四　条

　労働ノ募集ヲ伴フコトアルベキ経済開発計画ヲ或地域ニ付承認スルニ先チ権限アル権力ハ実行可能且必要ナルベキ左ノ措置ヲ執ルベシ
(a)　必要ナル労働ヲ得ル為使用者ニ依リ又ハ其ノ者ノ為圧迫ノ危険ガ関係住民ニ加ヘラルルコトヲ避クルコト
(b)　関係住民ノ政治的及社会的組織並ニ新経済状態ヘノ順応力ガ労働ノ需要ニ依リ危殆ナラシメラレザルコトヲ能フ限リ保護スルコト
(c)　前記経済開発ガ関係住民ニ及ボスコトアルベキ其ノ他ノ不都合ナル影響ヲ予防スルコト

第　五　条

１　或地域ニ於ケル労働募集ノ許可ヲ与フルニ先チ権限アル権力ハ成年男子ノ退去ガ関係住民ノ社会生活ニ及ボスコトアルベキ影響ヲ考慮ニ入ルベク且特ニ左記ヲ考慮スベシ
(a)　人口ノ密度、其ノ増加又ハ減少ノ傾向及成年男子ノ退去ガ出産率ニ及ボスコトアルベキ影響
(b)　成年男子ノ退去ガ特ニ食糧ノ供給ニ関連シ関係住民ノ健康、福利及発展ニ及ボスコトアルベキ影響
(c)　成年男子ノ退去ニ基ク家族及道徳ニ対スル危険
(d)　成年男子ノ退去ガ関係住民ノ社会組織ニ及ボスコトアルベキ影響
２　権限アル権力ハ成年男子ノ退去ノ不都合ナル結果ニ対シ関係住民ヲ保護スル為一定ノ社会的単位ニ於テ残存スル成年男子ノ数ガ成年男子ノ婦人及児童ニ対スル通常ノ割合トシテノ所定率ヲ下ラザル様其ノ単位ニ於テ募集セラルベキ成年男子ノ最大限度数ヲ定ムルノ政策ノ採用ヲ実行可能且必要ナラシムル事情アル場合ニ於テハ右ノ最大限度数ヲ定ムベシ

第　六　条

　未成年者ハ募集セラレザルベキモノトス但シ権限アル権力ハ所定ノ年齢ヲ超ユル未成年者ガ其ノ福利ノ為ノ所定ノ保護ヲ条件トシテ軽易労働ニ使用セラルル為其ノ両親ノ同意ヲ得テ募集セラルルコトヲ許可スルコトヲ得

第　七　条

１　家長ノ募集ハ其ノ家ニ属スル者ノ募集ヲ包含スト看做サレザルベキモノトス
２　権限アル権力ハ被募集労働者ニ対シ就中家庭ヨリ遠距離ニ於テ且一定期間ヲ超ユル期間農業又ハ類似ノ労務ノ為募集セラルル労働者ニ対シ其ノ家族ヲ同伴スルコトヲ奨励スルノ政策ノ採用ヲ実行可能ナラシメ且望マシカラシムル事情アル場合ニ於テハ右ノ奨励ヲ為スベシ
３　関係者ノ明示ノ要求アル場合ヲ除クノ外被募集労働者ハ労務地ニ同行シ且其ノ者ト共ニ留ルコトヲ許容セラレタル妻及未成年ノ子ト別居セシメラレザルベキモノトス
４　募集地ヨリ当該労働者ガ出発スルニ先チ反対ノ契約ナキ限リ労働者ト同行スルコトノ許容ハ其ノ労務ノ全期間中右労働者ト共ニ留ルコトノ許容ト看做サルベキモノトス

第　八　条

　権限アル権力ハ被募集労働者ヲシテ適当ナル人種的条件ノ下ニ労務地ニ於テ集団セシムルコトヲ募集ノ許可条件ト為スノ政策ノ採用ヲ実行可能ナラシメ且望マシカラシムル事情アル場合ニ於テハ右ノ許可条件ヲ附スルコトヲ得

第　九　条

　公ノ職員ハ直接タルト間接タルトヲ問ハズ私ノ企業ノ為ニ募集ノ行為ヲ為スベカラザルモノトス但シ公ノ権力ノ為私ノ企業ガ受託者トシテ遂行スル公益事業ニ被募集労働者ガ使用セラルベキ場合ニハ此ノ限リニ在ラズ

第　十　条

　首長又ハ他ノ土民権力ハ左記ヲ為サザルベキモノトス
(a)　募集代理人トシテ行動スルコト
(b)　募集セラルルコトアルベキ者ニ圧迫ヲ加フルコト
(c)　募集ノ援助ニ対シ出所ノ如何ヲ問ハズ特別ノ報酬又ハ他ノ特別ノ利益ヲ受クルコト

第　十　一　条

　如何ナル者モ又如何ナル団体モ右ノ者又ハ団体ガ権限アル権力ニ依リ許可セラレ且行政庁ノ為又ハ一若ハ二以上ノ特定ノ使用者若ハ使用者団体ノ為労働者ヲ募集スル場合ヲ除クノ外職業的募集ニ従事スルコトヲ得ザルモノトス

第　十　二　条

　使用者、使用者ノ代理人、使用者団体、使用者ニ依リ補助セラルル団体並ニ使用者団体及使用者ニ依リ補助セラルル団体並ニ使用者団体及使用者ニ依リ補助セラルル団体ノ代理人ハ権限アル権力ニ依リ許可セラルル場合ニ限リ募集ニ従事スルコトヲ得

第　十　三　条

１　募集許可証ヲ発給スルニ先チ権限アル権力ハ左記ヲ為スベシ
(a)　許可申請者ガ個人ナルトキハ適当ノ者タルコトヲ確ムルコト
(b)　許可申請者ガ使用者団体又ハ使用者ニ依リ補助セラルル団体タル場合ヲ除クノ外右申請者ニ対シ被許可人トシテノ適正ナル行動ニ対スル金銭上又ハ他ノ保証ヲ提供スルコトヲ要求スルコト
(c)　許可申請者ガ使用者タルトキハ支払ハルベキ賃銀ノ支払ニ付金銭上又ハ他ノ保証ヲ提供スルコトヲ之ニ要求スルコト
(d)　募集セラルベキ労働者ノ健康及福利ヲ確保スル為充分ナル措置ガ執ラレタルコトヲ確ムルコト
２　被許可人ハ一切ノ募集行為ノ適法ナルコトヲ立証シ且各被募集労働者ノ身元ヲ証明シ得ベキ記録ヲ権限アル権力ガ定ムル様式ニ従ヒ作成保存スベシ
３　被許可人ニシテ他ノ被許可人ノ代理人タルモノハ能フ限リ固定給ヲ受クベク且被募集労働者ノ頭数ニ依ル率ヲ以テ計算セラルル報酬ヲ受クル如何ナル場合ニ於テモ右報酬ハ権限アル権力ノ定ムル最大限度ヲ超エザルベキモノトス
４　許可証ノ効力ハ権限アル権力ニ依リ定メラルベキ一年ヲ超エザル一定期間ニ制限セラルベキモノトス
５　許可証ノ更新ハ被許可人ノ許可証発給条件ノ遵守振ヲ条件トセラルベキモノトス
６　権限アル権力ハ左ノ権限ヲ有スベキモノトス
(a)　被許可人ガ募集行為ヲ行フニ適セザル犯罪又ハ非行ヲ犯シタルトキ許可ヲ取消スコト
(b)　被許可人ノ行動ニ付テノ調査ノ結果ノ判明スル迄許可ヲ停止スルコト

第　十　四　条

１　何人ト雖モ現実ノ募集行為ニ付従属的資格ニ於テ被許可人ヲ補佐セザルベキモノトス但シ右ノ者ガ公ノ職員ニ依リ承認セラレ且被許可人ニ依リ承認書ヲ付与セラレタル場合ニハ此ノ限ニ在ラズ
２　非許可人ハ右補佐人ノ行為ノ適正ナルコトニ付責ニ任ズベキモノトス

第　十　五　条

１　権限アル権力ハ労働者タル左記募集者ヲ許可証所持ノ義務ヨリ免除スルノ政策ノ採用ヲ必要ナラシメ又ハ望マシカラシムル事情アル場合ニ於テハ右ノ免除ヲ為スコトヲ得
(a)　労働者トシテ自己ガ使用セラルル企業ノ為ニ他ノ労働者ヲ募集シ
(b)　使用者ニ依リ他ノ労働者ヲ募集スルコトヲ書面ヲ以テ正式ニ委託セラレ且
(c)　募集ニ対シ報酬又ハ他ノ利益ヲ受クルニ非ザル者
２　労働者タル募集者ハ被募集者ニ対シ賃銀ノ前貸ヲ為サザルベキモノトス
３　労働者タル募集者ハ権限アル権力ニ依リ定メラルベキ地域内ニ於テノミ募集行為ヲ為スコトヲ得
４　労働者タル募集者ノ行為ハ権限アル権力ニ依リ定メラルベキ方法ニ於テ監督セラルベキモノトス

第　十　六　条

１　被募集労働者ハ公ノ職員ノ前ニ出頭セシメラルベク右職員ハ募集ニ関スル法令及規則ガ遵守セラレタルコト及殊ニ労働者ガ不法ナル圧迫ヲ受ケ又ハ詐偽若ハ錯誤ニ依リ募集セラレタルニ非ザルコトヲ確ムベシ
２　被募集労働者ハ募集地ニ便利ナル能フ限リ近クノ公ノ職員ノ前ニ又ハ異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為一地域ニ於テ募集セラルル労働者ニ付テハ遅クトモ募集地域ヲ離ルル地ニ於ケル公ノ職員ノ前ニ出頭セシメラルベキモノトス

第　十　七　条

　権限アル権力ハ募集地又ハ其ノ附近ニ於テ雇入レラルルニ非ザル各被募集労働者ニ対スル当該権力ノ定ムベキ事項（例ヘバ労働者ノ身元、将来ノ雇傭条件及労働者ニ為サルベキ賃銀ノ前貸ニ付テノ事項）ヲ包含セル採用証書、労働手帳又ハ仮契約書ノ如キ書類ノ発行ヲ要求スルノ措置ノ採用ヲ実行可能且必要ナラシムル事情アル場合ニ於テハ右ノ要求ヲ為スベシ

第　十　八　条

１　一切ノ被募集労働者ハ医学的検査ヲ受クベキモノトス
２　労働者ガ募集地ヨリ距離隔レル地ニ於ケル労務ノ為募集セラレ又ハ異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為一地域ニ於テ募集セラレタル場合ニハ医学的検査ハ募集地ニ便利ナル能フ限リ近クノ場所ニ於テ又ハ異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為一地域ニ於テ募集セラルル労働者ニ付テハ遅クトモ募集ノ地域ヲ離ルル場所ニ於テ行ハルベキモノトス
３　権限アル権力ハ公ノ職員ニシテ其ノ前ニ労働者ガ第十六条ニ従ヒ出頭セシメラレタルモノニ対シ右ノ職員ガ左記ヲ確認スルトキハ医学的検査ニ先チ右労働者ガ出発スルコトヲ許容スルノ権限ヲ付与スルコトヲ得
(a)　労働者ニ付募集地ノ附近又ハ出発地ニ於テ医学的検査ヲ行フコトノ不可能ナリシコト及不可能ナルコト
(b)　労働者ガ旅行及将来ノ労務ニ適スルコト及
(c)　労働者ガ労務地ニ到着ノ際又ハ其ノ後能フ限リ速ニ医学的検査ヲ受クルコト
４　権限アル権力ハ特ニ被募集労働者ノ旅行ガ其ノ健康ヲ害スルノ虞アルガ如キ期間及状態ニ於テ行ハルルモノナルトキハ出発前及労務地到着後右被募集労働者ガ医学的検査ヲ受ケシメラルベキコトヲ要求スルコトヲ得
５　権限アル権力ハ被募集労働者ノ馴化及順応ノ為並ニ免疫ノ為必要ナル一切ノ措置ガ執ラルベキコトヲ確保スベキモノトス

第　十　九　条

１　募集者又ハ使用者ハ可能ナル都度労務地ヘノ被募集労働者ノ輸送ヲ為スベキモノトス
２　権限アル権力ハ左記ヲ確保スル為一切ノ必要ナル措置ヲ執ルベキモノトス
(a)　労働者ノ輸送ニ使用セラルル船車ハ右輸送ニ適シ、良好ナル衛生状態ニ在リ且乗員過剰ト為ラザルコト
(b)　夜間旅行ヲ停止スルコト必要ナルトキハ労働者ノ為ニ適当ナル宿泊設備ヲ為スコト
(c)　長距離旅行ニ付テハ労働者ノ医療及福利ノ為一切ノ必要ナル施設ヲ為スコト
３　被募集労働者ガ労務地迄徒歩ニテ長距離旅行ヲ為スコトヲ要スルトキハ権限アル権力ハ左記ヲ確保スル為一切ノ必要ナル措置ヲ執ルベキモノトス
(a)　日日ノ旅程ガ労働者ノ健康及体力ノ保持ト両立スルコト
(b)　労働ノ移動ノ程度ガ必要トスルトキハ休憩仮舎又ハ休憩家屋ヲ主要通路ノ適当ノ個所ニ設ケテ適当ナル衛生状態ニ之ヲ保チ且必要ナル医療施設ヲ之ニ具ヘシムルコト
４　被募集労働者ハ集団ヲ成シテ労務地ニ長距離旅行ヲ為スコトヲ要スルトキハ責任アル者ニ依リ護送セラルベキモノトス

第　二　十　条

１　被募集労働者ノ労務地迄ノ旅費（旅行中其ノ保護ノ為ニ生ズル一切ノ費用ヲ含ム）ハ募集者又ハ使用者ニ依リ負担セラルベキモノトス
２　募集者又ハ使用者ハ被募集労働者ニ対シ労務地ヘノ旅行中ノ其ノ福利ノ為必要ナル一切ノ物（就中地方的事情ニ従ヒ適当且充分ナル食糧品、飲料水、燃料及炊事道具並ニ被服及毛布ヲ含ム）ヲ供給スベキモノトス
３　本条ハ其ノ適用ガ権限アル権力ニ依リ可能ナリト認メラルル限度ニ於テ労働者タル募集者ニ依リ募集セラルル労働者ニ之ヲ適用ス

第　二　十　一　条

　左記ノ被募集労働者ハ募集者又ハ使用者ノ費用ヲ以テ送還セラルベキモノトス
(a)　労務地ヘノ旅行中疾病又ハ災害ニ依リ労働不能ト為リタル者
(b)　医学的検査ニ依リ労務ニ適セズト認メラレタル者
(c)　自己ノ責ニ帰スベカラザル理由ニ依リ募集後雇入レラレザル者
(d)　詐偽又ハ錯誤ニ依リ募集セラレタルモノト権限アル権力ニ依リ認メラレタル者

第　二　十　二　条

　権限アル権力ハ賃銀ノ前貸ニ関シ被募集労働者ニ支払ハルベキ額ヲ制限シ且右ノ前貸ガ為サルベキ条件ヲ規律スベキモノトス

第　二　十　三　条

　被募集労働者ノ家族ガ労務地迄労働者ト同行スルコトヲ許容セラレタル場合ニハ権限アル権力ハ旅行中其ノ健康及福利ヲ保護スル為一切ノ必要ナル措置ヲ執ルベク就中
(a)　本条約第十九条及第二十条ハ右ノ家族ニ適用セラルベキモノトス
(b)　労働者が第二十一条ニ依リ送還セラルルトキハ其ノ家族モ亦送還セラルベキモノトス
(c)　労働者ガ労務地ヘノ旅行中死亡スルトキハ其ノ家族ハ送還セラルベキモノトス

第　二　十　四　条

１　異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為労働者ノ募集ヲ許可スルニ先チ募集地域ノ権限アル権力ハ被募集労働者ガ該権力ノ管轄区域ヲ超エテ旅行スル場合ニ本条約ノ規定ニ従ヒ右労働者ヲ保護スル為一切ノ必要ナル措置ガ執ラレ来レルコトヲ確ムベキモノトス
２　労働者ガ異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為一地域ニ於テ募集セラレ且関係ノ権限アル権力ガ募集ノ事情及員数ニ徴シ必要ト認ムル場合ニハ該権力ハ右募集ガ許可セラルベキ限度ヲ定メ且募集及雇傭ノ条件ノ実行ノ監督ニ関スル右権力間ノ協力ヲ規定スル協定ヲ締結スベシ
３　異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為一地域ニ於テ為サルル労働者ノ募集ハ募集地域ノ権限アル権力ニ依リ発給セラルル許可証ニ依リテノミ行ハルベキモノトス但シ右権力ハ労務地域ノ権限アル権力ニ依リ発給セラレタル許可証ヲ以テ自己ニ依リ発給セラレタル許可証ト同価値ノモノト認ムルコトヲ得
４　募集地域ノ権限アル権力ガ異レル行政庁ノ下ニ在ル地域ニ於ケル労務ノ為募集ノ事情及員数ニ徴シ必要ナリト認ムル場合ニハ右権力ハ右募集ガ其ノ承認セル団体ニ依リテノミ行ハレ得ルコトヲ規定スベキモノトス

第　二　十　五　条

１　国際労働機関憲章第三十五条ニ掲ゲラルル地域ニ関シテハ本条約ヲ批准スル右機関ノ各締盟国ハ左記ヲ示ス宣言ヲ該国ノ批准ニ附加スベキモノトス
(a)　右締盟国ガ変更ヲ加ヘズシテ本条約ノ規定ヲ適用スルコトヲ約スル地域
(b)　右締盟国ガ変更ヲ加ヘテ本条約ノ規定ヲ適用スルコトヲ約スル地域及右変更ノ細目
(c)　本条約ヲ適用シ得ザル地域及其ノ場合ニ於テハ之ヲ適用シ得ザル理由
(d)　右締盟国ガ其ノ決定ヲ留保スル地域
２　本条１(a)及(b)ニ掲ゲラルル規定ハ批准ノ一部ト看做サルベク且批准ノ効力ヲ有スベシ
３　何レノ締盟国モ本条１(b)、(c)又ハ(d)ニ依リ其ノ原宣言ニ於テ為サレタル留保ノ全部又ハ一部ヲ爾後ノ宣言ニ依リ取消スコトヲ得

第　二　十　六　条

　本条約ノ正式批准ハ登録ノ為国際労働事務局長ニ之ヲ通告スベシ

第　二　十　七　条

１　本条約ハ国際労働事務局長ニ其ノ批准ヲ登録シタル国際労働機関ノ締盟国ノミヲ拘束スベシ
２　本条約ハ事務局長ガ締盟国中ノ二国ノ批准ヲ登録シタル日ノ後十二月ニシテ効力ヲ発生スベシ
３　爾後本条約ハ他ノ何レノ締盟国ニ付テモ其ノ批准ヲ登録シタル日ノ後十二月ニシテ効力ヲ発生スベシ

第　二　十　八　条

　国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ノ批准ガ国際労働事務局ニ登録セラレタルトキハ事務局長ハ国際労働機関ノ一切ノ締盟国ニ右ノ旨ヲ通告スベシ事務局長ハ爾後該機関ノ他ノ締盟国ノ通告シタル批准ノ登録ヲ一切ノ締盟国ニ同様ニ通告スベシ

第　二　十　九　条

１　本条約ヲ批准シタル締盟国ハ本条約ノ最初ノ効力発生ノ日ヨリ十年ノ期間満了後ニ於テ国際労働事務局長宛登録ノ為ニスル通告ニ依リ之ヲ廃棄スルコトヲ得右ノ廃棄ハ該事務局ニ登録アリタル日ノ後一年間ハ其ノ効力ヲ生ゼズ
２　本条約ヲ批准シタル各締盟国ニシテ前項ニ掲グル十年ノ期間満了後一年以内ニ本条ニ定ムル廃棄ノ権利ヲ行使セザルモノハ更ニ十年間拘束ヲ受クベク又爾後各十年ノ期間満了毎ニ本条ニ定ムル条件ニ依リ本条約ヲ廃棄スルコトヲ得<

第　三　十　条

　国際労働事務局ノ理事会ハ本条約ノ効力発生ヨリ各十年ノ期間満了毎ニ本条約ノ施行ニ関スル報告ヲ総会ニ提出スベク且其ノ全部又ハ一部ノ改正ニ関スル問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グベキヤ否ヤヲ審議スベシ

第　三　十　一　条

１　総会ガ本条約ノ全部又ハ一部ヲ改正スル新条約ヲ採択スル場合ニハ新条約ガ別段ノ定ヲ為サザル限リ
(a)　締盟国ニ依ル新改正条約ノ批准ハ新改正条約ガ効力ヲ発生シタルトキ前記第二十九条ノ規定ニ拘ラズ当然ニ本条約ノ即時ノ廃棄ヲ生ゼシムベシ
(b)　新改正条約ノ効力発生ノ日ヨリ本条約ハ締盟国ニ依リ批准セラレ得ザルニ至ルベシ
２　本条約ハ之ヲ批准シタルモ改正条約ヲ批准セザル締盟国ニ対シテハ如何ナル場合ニ於テモ其ノ現在ノ形式及内容ニ於テ引続キ効力ヲ有スベシ

第　三　十　二　条

　本条約ハ仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トス