1937年の最低年令(工業)条約(改正)(第59号)

ILO条約 | 1937/06/22

工業に使用し得る児童の最低年令を定める条約(1937年改正)(第59号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百三十七年六月九日を以てその第二十三回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第六項目である、総会によりその第一回会議において採択された工業に使用し得る児童の最低年令を定める条約の一部改正に関する提案の採択を決議し、
 この提案は国際条約の形式に依るを要することを思い、
 千九百三十七年の最低年令(工業)条約(改正)として引用することができる次の条約を千九百三十七年六月二十二日採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

1 この条約において「工業的企業」と称するのは、次に掲げるものを特に包含する。
 (a) 鉱山業、石切業その他土地より鉱物を採取する事業
 (b) 物品の製造、改造、浄洗、修理、装飾、仕上、販売のためにする仕立、破壊若しくは解体又は材料の変造を為す工業(造船並びに電気又は各種動力の発生、変更及び伝導を含む。)
 (c) 建物、鉄道、軌道、港、船渠、棧橋、運河、内地水路、道路、隧道、橋梁、陸橋、下水道、排水道、井戸、電信電話装置、電気工作物、瓦斯工作物、水道その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更又は解体及び上記の工作物又は建設物の準備又は基礎工事
 (d) 道路、鉄軌道又は内地水路に依る旅客又は貨物の運送(船渠、岸壁、波止場又は倉庫における貨物の取扱を含むも人力に依る運送を含まない。)
2 工業と商業及び農業との分界は、各国における権限のある機関がこれを定めなければならない。

第 二 条

1 十五歳未満の児童は、すべての公私の工業的企業又はその各分科においてこれを使用し又は労働させることができない。
2 尤も労務であつてその性質又はこれが行われる事情により、これに使用される者の生命、健康又は道徳に危険なものについての外、国内の法令又は規則は、使用者の家に属する者のみが使用される企業において右の児童が使用されることを許容することができる。

第 三 条

 この条約の規定は、工業学校における児童の為す労働にこれを適用しない。但しこの種の労働は、公の機関の承認を得且つその監督をうけるものとする。

第 四 条

 この条約の規定の実行を容易ならしめるため、工業的企業における各使用者は、その使用する十八歳未満のすべての者及びその出生の日を記載した帳簿を備付けることを要する。

第 五 条

1 労務であつてその性質又はこれが行われる事情により、これに使用される者の生命、健康又は道徳に危険なものに関しては、国内の法律は、
 (a) 年少者又は青年をかかる労務に使用することを許容するため十五歳を超える年令を規定するか、又は
 (b) 年少者又は青年をかかる労務に使用することを許容するため十五歳を超える年令を規定する権限を適当の機関に付与しなければならない。
2 国際労働機関憲章第二十二条により提出される年報には、前項(a)に従い国内の法律により規定される年令に関し、又は前項(b)に従い付与される権限の行使により適当の機関が執る措置に関し、充分な情報を包含しなければならない。

第 二 部 若干の国に対する特殊規定

第 六 条

1 この条の規定は、日本においては第二条及び第五条の規定に代つて適用される。
2 十四歳未満の児童は、すべての公私の工業的企業又はその各分科においてこれを使用し又は労働させることができない。但し国内の法令又は規則は、使用者の家に属する者のみが使用される企業において右の児童が使用されることを許容することができる。
3 十六歳未満の児童は、国内の法令又は規則により定められるところに従い、鉱山又は工場における危険な又は不健康な作業においてこれを使用し又は労働させることができない。

第 七 条

1 第二条、第四条及び第五条の規定は、インドに適用しない。但し、インドにおいては、次の規定は、インド立法府が適用する権限を有するすべての地域にこれを適用しなければならない。
2 十二歳未満の児童は、動力を用い且つ十人より多くの者を使用する工場においてこれを使用し又は労働させることができない。
3 十三歳未満の児童は、鉄軌道に依る旅客、貨物若しくは郵便物の運送又は船渠、岸壁若しくは波止場における貨物の取扱(人力に依る運送を含まない。)においてこれを使用し又は労働させることができない。
4 十五歳未満の児童は、次のものにおいてこれを使用し又は労働させることができない。
 (a) 鉱山業、石切業その他土地より鉱物を採取する事業
 (b) この条が適用される作業であつて権限ある機関により危険又は不健康として分類されるもの
5 診断書に依り当該労働に適することを証明されなければ、
 (a) 十二歳以上十七歳未満の者は、動力を用い且つ十人より多くの者を使用する工場において労働することができない。
 (b) 十五歳以上十七歳未満の者は、鉱山において労働することができない。

第 八 条

1 この条の規定は、支那においては第二条、第四条及び第五条に代つて適用される。
2 十二歳未満の児童は、動力により運転される機械を使用し且つ常時三十人以上の者を使用する工場においてこれを使用し又は労働させることができない。
3 十五歳未満の児童は、次のものにおいてこれを使用し又は労働させることができない。
 (a) 常時五十人以上を使用する鉱山
 (b) 動力により運転される機械を使用し且つ常時三十人以上の者を使用する工場において国内の法令又は規則により定められる危険又は不健康な労働
4 この条が適用される企業におけるすべての使用者は、その使用する十六歳未満のすべての者の帳簿及び権限ある機関の要求するが如き右年令の証明書を備付けなければならない。

第 九 条

1 国際労働総会は、問題がその会議事項に上程される会議において、この条約第二部の前諸条の一又は二以上に対する改正案を三分の二の多数を以て採択することができる。
2 右改正案は、その適用を受ける加盟国にこれを通告し、且つ総会会議の閉会から一年以内に又は例外的事情においては十八カ月以内に、その適用を受ける加盟国が立法その他の措置のため当該事項に付権限ある機関にこれを提出しなければならない。
3 かかる加盟国は、当該事項に付権限ある機関の同意を得たときは、登録のため国際労働事務局長に改正案の正式批准を通告しなければならない。
4 右改正案は、その適用を受ける加盟国により批准されるときは、この条約の改正として効力を発生する。

第 三 部 最終条項

第 十 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 十 一 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 二 条

 国際労働事務局長は、国際労働機関の二加盟国の批准が登録されたときは、この旨を直ちに国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。同事務局長は、また他の加盟国からその後通告を受けた批准の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。

第 十 三 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通告する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で前項に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 四 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 五 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第十三条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 六 条

 この条約のフランス語及び英語による本文は、ともに正文とする。