1946年の年少者夜業(非工業的業務)条約(第79号)

ILO条約 | 1946/10/09

非工業的業務における児童及び年少者の夜業の制限に関する条約(第79号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてモントリオールに招集され、且つ千九百四十六年九月十九日にその第二十九回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第三項目に含まれている非工業的業務における児童及び年少者の夜業の制限に関する若干の提案の採択を決議し、
 この提案は国際条約の形式によるべきであることを決定したので、
 千九百四十六年の年少者夜業(非工業的業務)条約として引用することができる次の条約を千九百四十六年十月九日に採択する。

第 一 部 総則

第 一 条

1 この条約は、非工業的業務において、賃金のために雇用され、又は直接若しくは間接に収益のために労働する児童及び年少者に適用する。
2 この条約において「非工業的業務」と称するのは、権限のある機関が工業的、農業的又は海事的業務と認定する以外のすべての業務を包含する。
3 権限のある機関は、非工業的業務と工業的、農業的及び海事的業務との分界を決定しなければならない。
4 国内の法令は、次のものをこの条約の適用から除外することができる。
 (a) 私人の家庭における家事的労務
 (b) 両親及び児童又は被保護者のみが使用される家族的企業において児童又は年少者に有害、不利又は危険と認められない作業における雇用

第 二 条

1 全時的又は一部的雇用を認められる十四歳未満の児童及び全時的就学義務がなおある十四歳以上の児童は、夜八時から朝八時に至る時間を包含する少くとも十四時間の継続時間中、夜間にこれを使用し又は労働させてはならない。
2 尤も国内の法令は、地方的事情が要求する場合には、夜八時三十分よりも遅く定めてはならず朝六時よりも早く定めてはならない他の十二時間に代えることができる。

第 三 条

1 全時的就学義務がもはやない十四歳以上の児童及び十八歳未満の年少者は、夜十時から朝六時に至る時間を包含する少くとも十二時間の継続時間中、夜間にこれを使用し又は労働させてはならない。
2 尤も特定の活動部門又は特定の地域に関する例外的事情が存する場合には、権限のある機関は、関係ある使用者及び労働者の団体と協議した上、その部門又は地域に使用される児童及び年少者について、夜十時から朝六時に至る時間に代えるに夜十一時から朝七時に至る時間を以てすることができる。

第 四 条

1 気候により昼間の労働が特に困難な国においては、昼間において代償休憩を与えられるときは、夜間を前諸条に定められるよりは短くすることができる。
2 重大な緊急事故の場合に国家的利益のため必要があるときは、政府は、十六歳以上の年少者に対する夜業の禁止を停止することができる。
3 国内の法令は、職業訓練の特別の必要があるときは十六歳以上の年少者をして夜間に労働することを得しめるため、一時的個人免許証を付与する権限を適当の機関に付与することができる。尤も休憩時間は、二十四時間毎に継続十一時間を下らないものとする。

第 五 条

1 国内の法令は、児童又は十八歳未満の年少者をして、公衆娯楽場に出演者として夜間に出場し又は映画フイルム製作に出演者として夜間参加することを得しめるため、個人的免許証を付与する権限を適当の機関に付与することができる。
2 かかる免許証が付与されるべき最低年令は、国内の法令によつてこれを定めなければならない。
3 娯楽の性質若しくはこれが行われる事情のため又は映画フイルムの性質若しくはこれが製作される事情のために、娯楽又はフイルム製作における参加が児童又は年少者の生命、健康又は道徳に危険である場合、かかる免許証は、これを付与することができない。
4 次の条件は、免許証の付与に適用する。
 (a) 労働時間は、夜半後継続してはならない。
 (b) 児童又は年少者の健康及び道徳を保護し、かれらについての親切な待遇を確保し、且つその教育の阻害を避けるため、厳格な保障を定めなければならない。
 (c) 児童又は年少者は、少くとも十四時間の継続的休憩時間を与えられなければならない。

第 六 条

1 この条約の規定の有効な実施を確保するため、国内の法令は、
 (a) 条約の適用をうける各種の活動部門の特別の要求に適合する公の監督制度を設けなければならない。
 (b) すべての使用者に対し、その使用する十八歳未満のすべての者の氏名及び出生日並びにその労働時間を示す帳簿を保存し、又は公の記録を備え附けることを要求しなければならない。街頭又は公衆の出入する場所において労働する児童及び年少者については、帳簿又は記録は、労働契約により定められた労働時間を示さなければならない。
 (c) 使用者のため又は自己のため、街頭又は公衆の出入する場所において行われる労務又は業務に従事する十八歳未満の者の身元証明及び監督を確保するため、適当の措置を講じなければならない。
 (d) かかる法令の違反に対し使用者その他責任ある成年者に適用すべき刑罰を定めなければならない。
2 国際労働機関憲章第二十二条により提出される年次報告は、この条約の規定を実施するすべての法令に関する充分な情報並びに特に左のものに関する情報を含まなければならない。
 (a) 第二条1に定められる時間を同条2の規定により置き代える時間
 (b) 第三条2の規定を援用する程度
 (c) 第五条1の規定により個人的免許証を付与する機関及び同条2の規定に従い免許証の付与につき定められる最低年令

第 二 部 若干の国に対する特殊規定

第 七 条

1 この条約の批准を承認する国内の法令又は規則の制定の日以前に、非工業的業務における児童及び年少者の夜業を制限する法令又は規則をもたなかつた加盟国は、その批准に添付する宣言により、第三条に定められる年令限度について十八歳より低い年令限度に代えることができるが、いかなる場合にも十六歳を下つてはならない。
2 かかる宣言をした加盟国は、何時でも爾後の宣言により当該宣言を取り消すことができる。
3 本条1による宣言が実施されている加盟国は、この条約の適用に関するその年次報告において、条約の規定の完全な適用の見地から進歩のあつた程度を指示しなければならない。

第 八 条

1 この条約の第一部の規定は、この条に定める変更を条件としてインドに適用する。
 (a) 前記の規定は、インド立法府がその適用の管理権を有するすべての領土に適用されるものとする。
 (b) 権限のある機関は、二十人より少い者を使用する非工業的企業において使用される児童及び年少者を、条約の適用から除外することができる。
 (c) 条約の第二条は、全時的又は一部的雇用を認められる十二歳未満の児童及び全時的就学義務がある十二歳以上の児童に適用するものとする。
 (d) 条約の第三条は、全時的就学義務のない十二歳以上の児童及び十五歳未満の年少者に適用するものとする。
 (e) 第四条2及び3により許される除外例は、十四歳以上の年少者に適用するものとする。
 (f) 第五条は、児童及び十五歳未満の年少者に適用するものとする。
2 本条1の規定は、次に掲げる手続によつて改正され得るものとする。
 (a) 国際労働総会は、当該問題がその会議事項に含まれる会議において、本条1の改正案を三分の二以上の多数で採択することができる。
 (b) 右の改正案は、総会の閉会後一年以内に又は例外的事情においては十八箇月以内にインドにおいて立法その他の措置のために当該問題について権限のある機関に提出しなければならない。
 (c) インドは、当該問題について権限のある機関の同意を得たときは、改正の正式批准を登録のため国際労働事務局長に通告しなければならない。
 (d) 右の改正案は、インドで批准されたときは、この条約の改正として効力を有するものとする。

第 三 部 最終規定

第 九 条

 この条約の規定は、この条約により定められるものよりも有利な条件を確保するいずれの法律、裁定、慣習又は使用者と労働者との間の協約に影響を及ぼすものではない。

第 十 条

 この条約の正式批准は、登録のため国際労働事務局長にこれを通告しなければならない。

第 十 一 条

1 この条約は、事務局長にその批准を登録した国際労働機関の加盟国のみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長に登録された日から十二箇月後に効力を発生する。
3 爾後この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日から十二箇月後に効力を発生する。

第 十 二 条

1 この条約を批准した加盟国は、条約が効力を発生した日から十年の期間満了後において、国際労働事務局長に登録のためにする通告によりこれを廃棄することができる。右の廃棄は、その登録のあつた日の後一年間はその効力を生じない。
2 この条約を批准した各加盟国であつて前項に掲げた十年の期間満了後一年以内にこの条に定めた廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受くべく、又爾後各十年の期間満了毎に本条に規定する条件に従つてこれを廃棄することができる。

第 十 三 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の各加盟国から通告をうけたすべての批准及び廃棄の登録を国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通告をうけた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、条約が効力を発生する日について国際労働機関の加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 四 条

 国際労働事務局長は、前諸条の規定に従い登録されたすべての批准及び廃棄の詳細を国際連合憲章第百二条による登録のため国際連合事務総長に通告しなければならない。

第 十 五 条

 国連労働事務局の理事会は、この条約の効力発生の後十年の期間が満了するごとに、この条約の施行に関する報告を総会に提出し、且つこの条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきか否かを審議しなければならない。

第 十 六 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する新条約を採択する場合、新改正条約に別段の定のない限り、
 (a) 一加盟国による新改正条約の批准は、新改正条約が効力を発生したとき、前記第十二条の規定に拘わらず当然にこの条約の即時の廃棄を生ぜしめる。
 (b) 新改正条約の効力発生の日から、この条約は、加盟国により批准され得ないようになる。
2 この条約は、これを批准したが改正条約を批准しない加盟国に対しては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容において引き続いて効力を有する。

第 十 七 条

 この条約は、イギリス語及びフランス語の本文を以て共に正文とする。