1957年の週休(商業及び事務所)条約(第106号)

ILO条約 | 1957/06/26

商業及び事務所における週休に関する条約(第106号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十七年六月五日にその第四十回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第五議題である商業及び事務所における週休に関する提案の採択を決定し、
 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の条約(引用に際しては、千九百五十七年の週休(商業及び事務所)条約と称することができる。)を千九百五十七年六月二十六日に採択する。

第 一 条

 この条約の規定は、法定の賃金決定制度、労働協約、仲裁裁定その他の国内事情の下において適当な、かつ、国内慣行に合致する方法により別に実施しない限り、国内法令により実施しなければならない。

第 二 条

 この条約は、公私を問わず、次の事業所、団体又は行政機関に雇用されているすべての者(見習者を含む。)に適用する。
 (a) 商事事業所
 (b) 雇用されている者が主として事務労働に従事する事業所、団体及び行政機関(自由職業に従事する者の事務所を含む。)
 (c) 当該者が、第三条に掲げる事業所に雇用されておらず、かつ、工業、鉱業、運送業又は農業における週休に関する国内規則その他の取極の適用を受けていない場合に限り、
  (i) 他のいずれかの事業所の商事部門
  (ii) 他のいずれかの事業所の部門で、雇用されている者が主として事務労働に従事するもの
  (iii) 商工業混合事業所

第 三 条

1 この条約は、この条約を批准する加盟国がその批准に附する宣言において指定することができる次の事業所に雇用されている者にも、適用するものとする。
 (a) 個人的役務を提供する事業所、団体及び行政機関
 (b) 郵便及び電気通信施設
 (c) 新聞企業
 (d) 劇場及び公衆娯楽場
2 この条約を批准したいずれの加盟国も、前項に掲げる事業所で先に行つた宣言においてまだ指定していないものに関して、この条約の義務を受諾する旨を、その後の宣言により、国際労働事務局長に通告することができる。
3 この条約を批准した各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基く年次報告において、1に掲げる事業所で1又は2の規定に従つて行つた宣言の適用を受けないものに関して、この条約の規定をいかなる程度まで実施したか又は実施しようと考えているか及び、それらの事業所にこの条約を漸進的に適用するため、いかなる進歩が達成されたかを、明示しなければならない。

第 四 条

1 必要な場合には、この条約の適用を受ける事業所をその他の事業所から区別するため適当な措置を執るものとする。
2 いずれかの事業所、団体又は行政機関がこの条約の適用を受けるものであるかどうか疑わしい場合には、この問題は、権限のある機関が、関係のある使用者及び労働者の代表的な団体があるときは、その団体との協議の上で解決するか、又は国内法及び国内慣行に合致する他の方法により解決するものとする。

第 五 条

 次のものは、各国の権限のある機関によつて、又は適当な制度により、この条約の適用範囲から除外されることができる。
 (a) 使用者の家族で、賃金所得者でないか、又は賃金所得者とみなすことのできないもののみが雇用されている事業所
 (b) 高い管理的地位にある者

第 六 条

1 この条約の適用を受けるすべての者は、以下の諸条に別段の定めがある場合を除き、七日の各期間の中に二十四時間以上の中断されない週休を受ける権利を有する。
2 週休は、各事業所におけるすべての関係者に対し、できる限り同時に与えなければならない。
3 週休は、国又は地方の伝統又は慣習により休日として定められた日と、できる限り一致させなければならない。
4 宗教上の少数派の伝統及び慣習は、できる限り尊重しなければならない。

第 七 条

1 労働の性質、事業所が行う役務の性質、その役務の提供を受ける者の数又は雇用される者の数が前条の規定の適用を許さない場合には、各国の権限のある機関によつて又は適当な制度により、この条約の適用を受ける特定の種類の者又は事業所に対し、適切な社会的及び経済的考慮を払つた上、適当と思われるときは、特別の週休制度を適用するための措置を執ることができる。
2 前記の特別の制度の適用を受けるすべての者は、七日の各期間について、少くとも前条に定める期間に相当する長さの休暇を受ける権利を有する。
3 特別の制度の適用を受ける事業所の部門のうち、独立しているとすれば前条の規定に従う部門において働いている者は、同条の規定に従うものとする。
4 前三項の規定の適用に関するいずれの措置も、関係のある使用者及び労働者の代表的な団体があるときはその団体と協議した上で執らなければならない。

第 八 条

1 次の場合には、前二条の規定の全部又は一部の一時的な適用排除(休暇期間の停止又は短縮を含む。)は、各国において、権限のある機関によつて、又は権限のある機関が承認し、国内法及び国内慣習に合致する方法で認められることができる。
 (a) 実際に災害があつたか若しくはそのおそれがある場合、不可抗力の場合又は建物及び設備に対する緊急工事の場合。ただし、事業所の通常の運営に対する重大な支障を防止するため必要な場合に限る。
 (b) 特別な事情による業務の異常な繁忙の場合。ただし、使用者が他の措置によることを通常期待することができない場合に限る。
 (c) 損壊しやすい商品の損失を防止することを目的とする場合
2 前項(b)及び(c)の規定に従つて一時的な適用排除を認めることができる事態を決定するに際しては、関係のある使用者及び労働者の代表的な団体があるときは、その団体と協議しなければならない。
3 この条の規定に従つて一時的な適用排除が行われた場合には、関係者は、少くとも第六条に定める期間に相当する長さの代償的休暇を与えるものとする。

第 九 条

 賃金が法令により規制されているか又は行政機関の統制の下にある場合には、この条約の適用を受ける者の所得は、この条約に基いて執られる措置の適用の結果として減額されてはならない。

第 十 条

1 週休に関する規則又は規定の実施を十分な監督その他の方法により確保するため、適当な措置を執らなければならない。
2 この条約の規定を実施する方法にとつて適当であるときは、その規定の実施を確保するため、刑罰の形式による必要な措置を執らなければならない。

第 十 一 条

 この条約を批准する各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基く年次報告に、次のものを含めなければならない。
 (a) 第七条に定める特別の週休制度の適用を受ける者及び事業所の種類の表
 (b) 第八条の規定に従つて一時的な適用排除を認めることができる事態に関する情報

第 十 二 条

 この条約のいかなる規定も、この条約に定める条件よりも関係労働者にとつて有利な条件を確保する法律、裁定、慣行又は協約に影響を及ぼすものではない。

第 十 三 条

 いずれの国においても政府は、戦争その他国の安全に対する脅威となる緊急の場合に、この条約の規定の適用を停止することができる。

第 十 四 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 五 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 六 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 七 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 八 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 九 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十六条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 一 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。