1982年の社会保障の権利維持条約(第157号)

ILO条約 | 1982/06/21

社会保障についての権利の維持のための国際制度の確立に関する条約(第157号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十二年六月二日にその第六十八回会期として会合し、
 均等待遇のみならず取得された権利及び取得の過程にあつた権利の維持にも関連する千九百六十二年の均等待遇(社会保障)条約により確立された原則を想起し、
 千九百五十二年の社会保障(最低基準)条約の適用を受ける社会保障のすべての部門に関し、取得の過程にあつた権利及び取得された権利の維持についての原則の適用を定めることが必要であることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である移民労働者の社会保障の権利の維持に関する提案(第四十八号条約の改正)の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十二年の社会保障の権利維持条約と称することができる。)を千九百八十二年六月二十一日に採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

 この条約において、
 (a) 「加盟国」とは、国際労働機関の加盟国でこの条約に拘束されるものをいう。
 (b) 「法令」とは、法律、命令及び社会保障に関する規定をいう。
 (c) 「権限のある加盟国」とは、関係者が給付を請求することを認める法令を有する加盟国をいう。
 (d) 「機関」とは、加盟国の法令の全部又は一部を適用することにつき直接責任を有する団体又は当局をいう。
 (e) 「難民」とは、千九百五十一年六月二十八日の難民の地位に関する条約第一条及び千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する議定書第一条2に定める者をいう。
 (f) 「無国籍者」とは、千九百五十四年九月二十八日の無国籍者の地位に関する条約第一条に定める者をいう。
 (g) 「家族の構成員」とは、給付の支給若しくは支払について定める法令により、場合に応じ、家族の構成員として若しくは世帯の構成員として定義され若しくは承認される者又は関係加盟国間の相互の合意により定められる者をいう。ある者が関係者と生計をともにしているという条件にのみ基づき関係法令により家族の構成員として又は世帯の構成員として定義され又は承認される場合には、この条件は、当該関係者により主な扶養を受けている者については満たされたものとみなす。
 (h) 「遺族」とは、給付の支給について定める法令により、遺族として定義され又は承認される者をいう。ある者が死亡した者と生計をともにしていたという条件にのみ基づき関係法令により遺族として定義され又は承認される場合には、この条件は、当該死亡した者により主な扶養を受けていた者については満たされたものとみなす。
 (i) 「居住」とは、通常の居住をいう。
 (j) 「一時的な居住」とは、一時的な滞在をいう。
 (k) 「保険期間」とは、拠出期間、雇用期間、職業活動期間又は居住期間であつてこれらの期間の満了について定める法令により保険期間として定義され又は承認されるもの及び当該法令により保険期間と同等とみなされる他の期間をいう。
 (l) 「雇用期間」及び「職業活動期間」とは、これらの期間の満了について定める法令により、雇用期間及び職業活動期間として定義され又は承認される期間及び当該法令により雇用期間又は職業活動期間のいずれかと同等とみなされる他の期間をいう。
 (m) 「居住期間」とは、この期間の満了について定める法令により、居住期間として定義され又は承認される期間をいう。
 (n) 「無拠出制」は、その支給が保護対象者若しくはその使用者の直接の費用分担又は職業活動による資格期間に基づかない給付について及び専らそのような給付を支給する制度について適用する。
 (o) 「経過的措置の下で支給される給付」とは、適用される法令が効力を生ずる日に所定の年齢を超えている者に対して支給される給付及び加盟国の領域の現行の国境の外において発生した事故又は満了した期間を考慮して、経過的措置として支給される給付をいう。

第 二 条

1 この条約は、第四条1及び3(a)の規定に従うことを条件として、社会保障の次の部門のうち加盟国が効力のある法令を有する部門について適用する。
 (a) 医療
 (b) 傷病給付
 (c) 母性給付
 (d) 廃疾給付
 (e) 老齢給付
 (f) 遺族給付
 (g) 業務災害給付、すなわち、職業上の負傷及び疾病に関する給付
 (h) 失業給付
 (i) 家族給付
2 この条約は、1に掲げる社会保障の部門に関する法令により定められるリハビリテーション給付について適用する。
3 この条約は、すべての一般的なかつ特別の社会保障制度(拠出制のものであるか無拠出制のものであるかを問わない。)及び1に掲げる社会保障の部門に関する法令により使用者に課せられた義務から成る制度について適用する。
4 この条約は、公務員若しくは戦争犠牲者のための特別の制度又は社会的若しくは医療的な援助の制度については、適用しない。

第 三 条

1 この条約は、次条1及び3(b)並びに第九条1の規定に従うことを条件として、この条約により確立される権利の維持のための国際制度により、その領域内に関係者が居住し又は一時的に居住している加盟国以外の加盟国の法令に考慮を払うことが要求されるすべての場合において、加盟国の法令の適用を受ける者又は適用を受けてきた者並びにこれらの者の家族及び遺族について適用する。
2 この条約は、いずれの加盟国に対しても、国際協定に基づき当該加盟国の法令の適用から除外されている者にこの条約の規定を適用することを要求するものではない。

第 四 条

1 加盟国は、関係加盟国間の相互の合意により決定される条件により、第二部から第六部までの規定に基づく義務を履行する二国間又は多数国間の協定によりこれらの義務を履行することができる。
2 1の規定にかかわらず、第七条4、第八条2及び3、第九条1及び4、第十一条、第十二条、第十四条並びに第十八条3の規定は、この条約が加盟国について効力を生ずる時から直ちに当該加盟国に適用する。
3 1に規定する協定は、特に次の事項を明記する。
 (a) 第六条及び第十条に規定する相互主義の要件に留意して、当該協定を適用する社会保障の部門。これらの部門には、関係加盟国が当該部門につき定める法令を有する場合には、少なくとも廃疾給付、老齢給付、遺族給付及び業務災害に関する年金(死亡一時金を含む。)並びに、第十条1の規定に従うことを条件として、医療、傷病給付、母性給付及び業務災害に関する給付(年金及び死亡一時金を除く。)を含む。
 (b) 当該協定を適用することのできる者の種類。これらの者には、少なくとも、被用者(適当な場合には、国境労働者及び季節労働者を含む。)並びにその家族及び遺族であつて関係加盟国の一の国籍を有するもの又は関係加盟国の一の領域内に居住する難民若しくは無国籍者であるものを含む。
 (c) 一の加盟国の機関が他の加盟国の機関に代わつて支給した給付その他負担した費用の償還の方法。ただし、加盟国が償還を行わないことを合意している場合は、この限りでない。
 (d) 拠出、他の債務又は給付の不当な重複を排除するための規定

第 二 部 適用法令

第 五 条

1 この条約の適用を受ける者に対し適用する法令は、法律上の抵触を回避し及び保護の欠如により又は拠出その他の債務若しくは給付の不当な重複の結果として当該者に生ずるおそれのある望ましくない帰結を回避するため、次の規定に従い、関係加盟国間の相互の合意により決定する。
 (a) 一の加盟国の領域において通常雇用されている被用者は、当該被用者が他の加盟国の領域内に居住している場合又は当該被用者を雇用する企業が他の加盟国の領域内に登録された事務所を有し若しくは当該被用者の使用者が他の加盟国の領域内にその居住の地を有する場合であつても、当該一の加盟国の法令の適用を受ける。
 (b) 一の加盟国の領域において通常職業に従事している自営業者は、当該自営業者が他の加盟国の領域内に居住している場合であつても、当該一の加盟国の法令の適用を受ける。
 (c) 一の加盟国を旗国とする船舶に乗船している被用者及び自営業者は、これらの者が他の加盟国の領域内に居住している場合又はこれらの者を雇用する企業が他の加盟国の領域内に登録された事務所を有し若しくはこれらの者の使用者が他の加盟国の領域内にその居住の地を有する場合であつても、当該一の加盟国の法令の適用を受ける。
 (d) 経済活動従事者でない者は、(a)から(c)までの規定に基づいて保護されない限り、その領域に当該者が居住している加盟国の法令の適用を受ける。
2 1(a)から(c)までの規定にかかわらず、関係加盟国は、ある種類の者(特に自営業者)がその領域に居住している加盟国の法令の適用を受けることについて合意することができる。
3 関係加盟国は、関係者のため、相互の合意により、1(a)から(d)までの規定に対する例外で2の規定以外のものを決定することができる。

第 三 部 取得の過程にあつた権利の維持

第 六 条

 第四条3(a)の規定に従うことを条件として、加盟国は、継続して又は断続的に当該加盟国の法令の適用を受けてきた者のため、他のすべての関係加盟国とともに、第二条1に掲げる社会保障の部門のうちこれらの加盟国のいずれもが効力のある法令を有する部門に関し、取得の過程にあつた権利の維持のための制度に加入するよう努める。

第 七 条

1 前条に規定する取得の過程にあつた権利の維持のための制度は、次のことのため、必要な範囲内で、場合に応じ、保険期間、雇用期間、職業活動期間又は居住期間であつて、関係加盟国の法令により満了するものの通算について定める。
 (a) 適当な場合には、任意保険又は選択的継続保険への加入
 (b) 給付の権利の取得、維持又は回復及び、場合に応じ、給付の算定
2 二以上の加盟国の法令により同時に満了した期間は、一回に限り通算される。
3 関係加盟国は、性質の異なる期間及び特別の制度に基づく給付の権利に係る資格期間を通算するため、必要な場合には、相互の合意により特別な方法を決定する。
4 ある者が異なつた二国間又は多数国間の協定の締約国である三以上の加盟国の法令により期間を満了した場合には、これらの協定のうち二以上の協定により同時に拘束される加盟国は、給付を受ける権利の取得、維持又は回復に当たり、必要な範囲内で、当該二以上の協定の定めるところにより、当該期間を通算する。

第 八 条

1 第六条に規定する取得の過程にあつた権利の維持のための制度は、次の給付の支給の方法及び、適当なときは、要する費用の負担の割合を決定する。
 (a) 廃疾給付、老齢給付及び遺族給付
 (b) 職業病に関する年金
2 第七条4に規定する場合には、同条4に規定する協定のうち二以上の協定により同時に拘束される加盟国は、関係加盟国の法令により通算される期間を考慮して、当該加盟国の法令により権利のある給付を算定するに当たり、当該二以上の協定を適用する。
3 2の規定を適用する場合において、加盟国が二以上の二国間又は多数国間の協定により同一の者に対して同一の性質の給付を支給しなければならないときは、当該加盟国は、これらの給付の最初の支給に関する決定に従い、関係者にとつて最も有利な給付のみを支給することが要求される。
4 2の規定にかかわらず、関係加盟国は、必要な場合には、2に定める給付の算定のための補足規定について合意することができる。

第 四 部 取得された権利の維持及び給付の外国における支給事務

第 九 条

1 加盟国は、一の加盟国の国籍を有する受給者又は難民若しくは無国籍者である受給者に対し、これらの者の居住している地のいかんを問わず、廃疾現金給付、老齢現金給付及び遺族現金給付並びに業務災害に関する年金並びに死亡一時金であつて当該加盟国の法令に基づき権利が取得されたものの支給を保証する。ただし、必要な場合に加盟国間又は関係国との合意によりこのためにとられる措置に従うことを条件とする。
2 1の規定にかかわらず、第六条に定める取得の過程にあつた権利の維持のための制度に加入する関係加盟国は、権限のある加盟国以外の加盟国の領域内に居住している受給者に対し、第四条1に定める二国間又は多数国間の協定の枠内で第六条の給付の支給を保証することについて合意することができる。
3 更に、1の規定にかかわらず、無拠出制の給付の場合には、関係加盟国は、権限のある加盟国以外の加盟国の領域内に居住する受給者に対し、当該給付の支給が保証される条件を相互の合意により決定する。
4 1から3までの規定は、次の給付については適用することを要しない。
 (a) 援助の形態として又は必要な場合に支給される特別な無拠出制の給付
 (b) 経過的制度の下で支給される給付

第 十 条

1 関係加盟国は、第三部の規定を考慮して、医療、傷病給付、母性給付及び業務災害に関する給付(年金及び死亡一時金を除く。)に係る社会保障の部門のうち、当該関係加盟国のそれぞれが効力のある法令を有する部門に関し、当該関係加盟国の法令に基づき取得された権利の維持のための制度に加入するよう努める。その制度は、関係加盟国間の相互の合意により決定される条件により及び当該合意により決定される範囲内で、権限のある加盟国以外の加盟国のいずれかの領域内に居住し又は一時的に居住している者に対し、このような給付を保証する。
2 1の規定により必要とされる相互主義は、現行の法令により保証されない場合には、一の加盟国が他の加盟国の法令の定める給付に対応する給付を保証するためにとる措置により保証されることができる。ただし、当該他の加盟国の合意を条件とする。
3 関係加盟国は、第三部の規定を考慮して、失業給付、家族給付並びに、第九条1及びこの条の1の規定にかかわらず、リハビリテーション給付に係る社会保障の部門のうち関係加盟国のそれぞれが効力のある法令を有する部門に関し、当該加盟国の法令に基づき取得された権利の維持のための制度に加入するよう努める。その制度は、関係加盟国間の相互の合意により決定される条件により及び当該合意により決定される範囲内で、権限のある加盟国以外の加盟国のいずれかの領域内に居住している者に対しこのような給付を保証する。

第 十 一 条

 加盟国の法令により定められる給付の調整のための規定は、この条約により、当該法令により支払われるべき給付に適用する。

第 五 部 運営上の援助及びこの条約の適用を受ける者に対する援助

第 十 二 条

1 加盟国の当局及び機関は、この条約の適用及び加盟国の法令の適用を容易にするため、相互に援助を与える。
2 1の当局及び機関により相互に与えられる運営上の援助は、原則として無料とする。加盟国は、一定の支出の償還について合意することができる。
3 一の加盟国の当局、機関及び裁判所は、これらに提出された請求その他の文書が他の加盟国の公用語で記載されている事実を理由として、当該請求その他の文書を拒絶してはならない。

第 十 三 条

1 請求人は、権限のある加盟国以外の加盟国の領域内に居住している場合には、その居住の地の機関に対し合法的に請求を行うことができる。この場合において、当該機関は、その請求に言及されている機関に請求を送付する。
2 請求、申告又は申立てであつて一の加盟国の法令により当該一の加盟国の当局、機関又は裁判所に対し所定の期間内に提出すべきであつたものは、その領域に請求人が居住している他の加盟国の当局、機関又は裁判所に対し当該所定の期間内に提出される場合には、受理されなければならない。この場合において、当該請求、申告又は申立てを受理する当局、機関又は裁判所は、これらを遅滞なく当該一の加盟国の権限のある当局、機関又は裁判所に送付する。当該他の加盟国の当局、機関又は裁判所に対し請求、申告又は申立てが提出された日は、これらを取り扱う権限を有する当局、機関又は裁判所に提出された日とみなす。
3 一の加盟国が他の加盟国の領域内に居住し又は一時的に居住している受給者に対し支給する給付は、支払に責任のある機関により直接に又は関係加盟国の協定により、当該受給者が居住し若しくは一時的に居住している場所において、当該他の加盟国により指定される機関の仲介を通じて支給することができる。

第 十 四 条

 加盟国は、この条約の適用を受ける者、特に移民労働者が、特に資格を有する給付の支給及び受領並びにこれらの者の申立ての権利の行使に関し、当局、機関及び裁判所を利用するに当たつて、これらの者を援助し並びにこれらの者及びその家族の福祉を向上するための社会的サービスの発展を促進する。

第 六 部 雑則

第 十 五 条

 この条約は、廃疾給付、老齢給付、遺族給付及び職業病に関する給付であつてその費用が二以上の加盟国に割り当てられるものを除くほか、同一の強制保険期間、雇用期間、職業活動期間又は居住期間に基づく同一の性質の複数の給付を得る権利を付与し又は維持するものではない。

第 十 六 条

1 一の加盟国の機関が、他の加盟国の機関に代わつて支払つた給付その他の負担した費用は、これらの加盟国間の相互の合意により決定される方法に従い償還される。ただし、これらの加盟国が償還を行わないことを合意している場合は、この限りでない。
2 この条約の適用に係る金額の移転は、必要な場合には、移転の時に関係加盟国間で効力を有する取極により実施される。当該取極がない場合には、関係加盟国間で必要な取極について合意する。

第 十 七 条

1 加盟国は、二以上の加盟国間で締結される二国間又は多数国間の協定の枠内における特別な取極により、この条約の規定を免れることができる。ただし、当該取極は、他の加盟国の権利及び義務に影響を及ぼすものではなく、かつ、この条約に定める条件と全体として少なくとも同等の条件に基づく権利の維持について定める。
2 加盟国は、次の場合には、第九条1及び第十一条の規定を満たしているものとみなす。
 (a) 当該加盟国が、この条約の批准の日において、国籍及び居住の地のいかんを問わずすべての受給者に対し、実質的な額の適切な給付であつて当該加盟国の法令により定められるものの支給を保証する場合
 (b) 当該加盟国が、第四条1に規定する二国間又は多数国間の協定の枠内において、第九条1及び第十一条の規定を実施する場合
3 2の規定を援用する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する報告において、次のいずれかのことを述べなければならない。
 (a) 2の規定を援用する理由が引き続き存在していること。
 (b) 2の規定を一定の日以後は援用しないこと。

第 七 部 経過規定及び最終規定

第 十 八 条

1 この条約は、関係加盟国についてこの条約が効力を生ずる前の期間に係る給付の権利を付与するものではない。
2 この条約の適用上、保険期間、雇用期間、職業活動期間又は居住期間であつて、第六条に規定する取得の過程にあつた権利の維持のための制度が関係加盟国について効力を生ずる日前に当該加盟国の法令により満了するすべてのものは、その制度が効力を生ずる日からその制度に基づいて権利が生ずるか生じないかを決定するに当たり、考慮すべきである。ただし、必要なときは、関係加盟国間で合意する特別の規定に従うものとする。
3 第九条1に規定する給付で、請求人が権限のある加盟国以外の加盟国の領域内に居住していることにより、支給されておらず又は停止されているものは、当該請求人の要請により、当該権限のある加盟国についてこの条約が効力を生ずる日又は当該請求人が国籍を有する加盟国についてこの条約が効力を生ずる日のうちいずれか遅い日から支給され又は回復される。ただし、当該請求人がこの給付に代わる一時金の決定を従前に受けている場合は、この限りでない。権利の消滅に関する権限のある加盟国の法令の規定は、当該請求人が、場合に応じ、当該いずれか遅い日又は第九条1に規定する措置が効力を生ずる日の後二年以内に要請を提出する場合には、当該請求人については実施されない。
4 関係加盟国は、第六条に規定する取得の過程にあつた権利の維持のための制度が当該関係加盟国について効力を生ずる前に生じた給付事由につき、当該制度を適用する範囲を相互の合意により決定する。

第 十 九 条

1 加盟国によるこの条約の廃棄は、廃棄が効力を生ずる日前に生じた給付事由に関する当該加盟国の義務に影響を及ぼすものではない。
2 この条約により維持される取得の過程にあつた権利は、加盟国によるこの条約の廃棄を理由として消滅するものではない。この条約が効力を失つた日の後の期間における当該権利の維持は、当該加盟国が締結した二国間若しくは多数国間の社会保障に関する協定により又は、そのような協定が存在しない場合には、当該加盟国の法令により決定する。

第 二 十 条

1 この条約は、この条に定める条件の下に、千九百三十五年の移民年金権保全条約を改正するものである。
2 千九百三十五年の移民年金権保全条約の義務により拘束される加盟国についてのこの条約の効力発生は、当然に同条約の即時の廃棄を伴うものではない。
3 千九百三十五年の移民年金権保全条約は、締約国間の関係において、第六条に規定する取得の過程にあつた権利の維持のための制度が適用された時以降、効力を失う。

第 二 十 一 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 二 十 二 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 二 十 三 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 四 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 二 十 五 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 六 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 七 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第二十三条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 八 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。