条約勧告ができるまで

ILOの条約と勧告は、毎年開かれる国際労働総会で、政府、使用者、労働者の三者代表の審議の結果、出席代表の3分の2の多数決で採択されます。

総会で審議される議題を決定するのは、ILO理事会又は総会自身です。理事会における決定に際して、議題について提案できるのは、(1)加盟国の政府、(2)もっとも代表的な全国的又は国際的労使団体、(3)政府間機関の三つです。これらの団体から議題についてなんらかの提案があると、国際労働事務局(ILO事務局)は、その問題に関する各国の現行法規と慣行についての調査結果を理事会に提出します。もし理事会がその問題を議題に決定すれば、ILO事務局はさらに、総会における討論の助けとするため一層詳細な報告(各国の状況や各加盟国に対する質問状とその回答などを内容としたもの)を作成します。総会での審議は、普通2年にわたって行われ、二回討議制と呼んでいます。初年度の第1次討議では一般的な原則を検討し、次年度の第2次討議で条約なり勧告なりのいわゆる国際文書を採択します。

総会で一つの議題が審議されるに際しては、まず、その問題に関して設けられる技術的な委員会で実質的な討議が行われ、この委員会の結論が本会議に提出されたうえ、そこで最終的に決定をみることになります。総会の本会議に投票権をもって出席するのは、政府2、民間2(労使それぞれ1)の各国代表ですが、委員会では、政労使三者とも全く平等の投票権をもつような手続がとられます。例えば、政府側委員10名、労使側委員各5名の委員会では、政府側委員には各1票、労使側委員には各2表の投票権が与えられます。

総会の本会議では、出席代表の3分の2の多数決で条約・勧告を採択しますが、政府の投票権は労使を合わせた投票権(つまり民間代表の投票権)と等しいものとなります。このことは、自国の法令に直接責任をもつのは政府であることから、それ相当の投票権を政府側に与えていることを示すものです。また3分の2の多数決という原則は、政府側代表全員の賛成投票だけでは、また逆に、労使側の代表全員の賛成投票だけでは、条約・勧告は採択できない、ということを意味しています。

なお、前述した総会議題の提案の一例として、ILOの条約の中でも特に重要な1948年の「結社の自由と団結権条約」(第87号)の場合を挙げます。その採択経緯は第二次大戦前にさかのぼりますが、戦後に限ってみると、アメリカ労働総同盟(AFL)が1946年に、また世界労連(WFTU)が1947年に、それぞれ国連事務総長に宛てた要請書に端を発しています。

これより先1945年末に国連とILOの間で結ばれた協定の中で、ILO憲章に含まれている事項はILOの責任(所管)であること、及び両機関が互いに相手方に対して議題提案権をもつことが定められていました。1947年3月に国連の経済社会理事会がAFLとWFTUの要請を審議した結果、多数決で2つの要請書をILOに回送し、ILOの次の総会の議題に上程するよう要請しました。この問題は1947年6月のILOの総会で第1次討議が行われ、翌1948年の総会(第2次討議)で第87号条約として採択されました。

国際労働基準関連手続の流れ

(1) 条約・勧告の採択までの経緯(二回討議手続の場合)
第1年11月及び
第2年3月 理事会で第4年のILO総会の議題を検討
第2年11~12月 選択された主題に関する法律・慣行の報告書を質問状ととも に配布
第3年6月30日 質問状回答提出締切
第4年1~2月 各国からの回答を分析し、結論案を掲載した報告書を配布
第4年6月 総会第1次討議
第4年8~9月 第1次討議に基づき条約・勧告案を配布
第4年11月30日 条約・勧告案に対するコメント提出締切
第5年2~3月 受け取ったコメントに即し、修正した条約・勧告案を配布
第5年6月 総会第2次討議

(2) 採択された条約・勧告の権限ある機関への提出
8月 事務局は新たに採択された条約・勧告を配布
翌年6月(例外的に12月) 権限ある機関への条約・勧告提出期限

(3) 批准条約に関する報告
2月 事務局より各国へ報告請求
4月 翌年以降に報告が請求される条約の当該国における適用状況 に関する適用監視機関の見解を各国に送付
5月 労使団体へ報告請求の写しを送付
6~8月 各国はILOに報告を提出
11~12月 条約勧告適用専門家委員会の開催
翌年3月 条約勧告適用専門家委員会報告書の刊行
6月 基準適用総会委員会の開催
7月 基準適用総会委員会の報告書を配布

(4) 未批准条約・勧告に関する報告
9月 事務局より各国へ報告請求
翌年4月30日 報告提出締切
11~12月 条約勧告適用専門家委員会による総合調査
翌々年3月 条約勧告適用専門家委員会総合調査報告書の刊行
6月 基準適用総会委員会による総合調査の審議