「ビジネスと人権」に精通した社労士を 都内で研修

ニュース記事 | 2023/02/07
社会保険労務士を対象にした「ビジネスと人権」の研修が2月2、3の両日、都内であり、全国から集まった21人がロールプレイなどを通じて企業活動やサプライチェーン(供給網)上に人権を侵害するリスクがないか調べ対応する「人権デューディリジェンス」について学びました。

社労士は労務管理や労働社会保険に関する助言を行ったり、手続きなどのサービスを提供したりする国家資格。企業活動における人権侵害を防ぎ、責任ある企業行動を促す「ビジネスと人権」を理解し、人権デューディリジェンスについて企業に助言できる社労士を育成しようと全国社会保険労務士会連合会(東京都中央区、大野実会長)が企画、主催しました。ILOは、アパレル産業の労働環境改善と生産性向上を支援する活動の一つ「ベターワーク」の知見を活かしたプログラム作成に協力するなど、専門家の立場からサポートしました。

参加者は事前にILO多国籍企業宣言中核的労働基準についてオンラインコースで学習したほか、「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」(日本繊維産業連盟作成)収録の「チェックリスト」を使い、取引は適正か、差別やハラスメントはないかなどの聞き取りを企業に実施。研修では、経営者や従業員の立場に沿った効果的な説明をロールプレイを通じて練習し、顧問先企業にどう改善を促すか、助言や質問スキルを磨きました。また、聞き取りの進め方や企業の反応を振り返りつつ、現状を是か否かで判断するだけではなく改善につなげる重要性や、社労士がどんな役割を果たせるかについて話し合いました。

参加者からは「『取り組むメリットと取り組まない(ことで起こるかもしれない)リスク』を丁寧に説明することが大切」「現場では『どういう業務が増えるのか』といった不安感がある。全体像を伝えると安心してもらえる」などの感想も。進行役を務めたILO駐日事務所プログラム・コーディネーターの小林有紀は「人権デューディリジェンスは継続的なプロセス。企業の伴走者として耳を傾けて」と話しました。

研修の終盤であいさつに立ったILO駐日代表の高﨑真一は「『企業のプラスを伸ばし、前進しよう』という意識で取り組んでいただきたい」と激励。連合会の河村卓副会長は「一人でも多くの社労士が使命として日本の企業を支え、人権デューディリジェンスに関わってほしい」と力を込めました。

ロールプレイを通じて活発な意見が飛び交った=2月3日午後3時すぎ、東京都港区
グループごとに研修の成果を振り返る参加者=2月3日午後3時すぎ、東京都港区