広報動画-新型コロナウイルスと仕事の世界

新型コロナウイルスと仕事の世界-2021年発表分

 新型コロナウイルスに関連して多数の広報動画が制作されています。この一部について日本語訳を作成しました。

「障害者の包摂を求めて声を上げよ」と呼びかけるアディー・バルカンさんとブラッドリー・ウィットフォードさん

 12月3日の国際障害者デーに際し、自らも筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者であり、障害者の権利を訴える活動家として「ビー・ア・ヒーロー財団」を設立し、著書もある米国の弁護士アディー・バルカンさんとエミー賞の受賞歴もある俳優兼プロデューサーのブラッドリー・ウィットフォードさんがILOとの連帯を示し、障害者の権利を守り、その包摂を進めるよう諸国に呼びかける動画メッセージを発表しました。

2021年12月3日発表・英語・1分10秒

 ウィットフォードさん:今日、世界人口の15%に当たる10億人以上が障害を抱えています。

 バルカンさん:新型コロナウイルス危機は社会における不平等を増大させました。

 ウィットフォードさん:そして、既に差別と排除を受けてきた障害者は特に大きな打撃を被っています。

 バルカンさん:障害者は社会、経済、保健の点でさらなる疎外に直面しています。

 ウィットフォードさん:持続可能な回復を確保するには、障害者を特定し、支え、巻き込む具体的な公約が必要です。

 アディー・バルカンさんとブラッドリー・ウィットフォードさん:私たちは共にILOとの連帯を示し、障害者の権利を守り、包摂を進めるよう諸国に呼びかけるものです。

 ウィットフォードさん:これはより良い未来の構築に向けた共通の投資と社会正義の問題です。障害者があまりにも多くの障害に直面し続けることがあってはなりません。

 バルカンさん:皆さんは障害の除去を手伝ってくれることができます。包摂を求めて声を上げてくれませんか。

平和で持続可能な未来の構築に向けた世界的な連帯を呼びかけるILO

 世界は1945年の国連創設以来最大の危機に直面しています。世界的な疾患の大流行と気候非常事態です。この両方に取り組み、人々と地球の両方に強靱な回復を確保することは人類共通の課題です。国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に先立ち、国連デー(10月24日)に際し、ILOはより公平かつ平和で持続可能な未来に向けた協働を全ての国に呼びかけます。

2021年10月22日発表・英語・23秒

 新型コロナウイルス危機は、既に脆弱だった状況を悪化させ、長引く紛争と気候変動に取り組んでいる諸国が直面している負担を増大させています。世界が回復に目を向ける今、私たちの世界をより公平で持続可能なものに変えるため、平和と社会の結束の促進に向けてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と公正な移行に対する投資を増そうではありませんか。

前向きのより良い立て直しに向けた持続可能なサプライチェーン

 ILOは欧州委員会の資金協力を受けて、公正かつ持続可能で強靱な新型コロナウイルス危機からの回復に向けて五つのグローバル・サプライチェーン(世界的供給網)でディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の前進に向けた機会と課題に取り組む共同イニシアチブを開始しました。この事業を紹介する広報動画が制作されました。

2021年10月14日発表・英語・1分28秒

 グローバル・サプライチェーン(世界的供給網)は、雇用創出、貧困削減、起業家精神といった形で経済成長に寄与しています。国際貿易と開発の定義を変え、規模や立地場所と無関係に、あらゆる企業に機会を提供しています。

 しかし、新型コロナウイルスの世界的大流行はグローバル・サプライチェーンに深刻な打撃を与え、多くの産業部門が不確実な未来に向けて漂っています。

 「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を行程表とし、ILOの「人間を中心に据えた回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ」に導かれ、ILOと欧州委員会の共同イニシアチブは、コロンビアのコーヒー、マレーシアのゴム手袋、ベトナムの電子産業、マダガスカルの衣料品、ナミビアの漁業という五つのサプライチェーンにおけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会と課題に取り組みます。政府、使用者、労働者団体に加え、企業とも協働し、包摂的かつ持続可能で強靱なサプライチェーンを育み、誰も置き去りにしない未来を形作る手助けをするために、新型コロナウイルス危機からの社会と経済の回復を支援します。

 詳しくは、「前向きのより良い立て直しに向けた持続可能なサプライチェーン・プロジェクト」のウェブページをご覧ください。

新型コロナウイルスの中、職場のメンタルヘルスを守ろう

 10月10日は世界メンタルヘルス・デーです。新型コロナウイルスの世界的大流行の中で大きく変わった作業取り決めと労働条件は労働者の健康と福祉に心理社会的な新たな課題をもたらしています。ILOが2020年に発表した手引きは、職場における健康と福祉を守るために必要なカギを握る要素を含んでいます。世界デーに際して制作された広報動画はこの資料を紹介しています。

2021年10月10日発表・英語・1分30秒

 新型コロナウイルスの世界的大流行は、職場におけるメンタルヘルス(精神衛生)の問題を悪化させました。テレワーク勤務は労働者に孤立感を抱かせたり、仕事と私生活の両立を困難にするため、新たなストレスの種となっています。

 マナル・アッジILO労働安全衛生上級専門官は、保健医療従事者や救急労働者だけでなく、必需品の生産や配達に従事している労働者などの最前線の労働者は、作業量や労働時間が増え、職場で感染してウイルスを家族や友人に移す不安を常に抱えながら働いていること、さらにまた身体的な攻撃を受けた人も多いことを挙げた上で、心理社会的リスクは、適切な評価・管理が行われなければ苦痛の引き金になったり、苦痛を悪化させ、精神衛生面の慢性的な不調につながる可能性があることを指摘し、だからこそ、労働者とその家族を守るには、メンタルヘルスについてはっきりかつ公然と語り合うことが非常に重要と説いています。

 失業は劇的に増え、数百万人の労働者が仕事を失う不安を抱えています。この信じられないレベルの不確実性に直面し、ILOは企業と労働者の双方に向けた新たなガイドを発表しました。『新型コロナウイルスの世界的大流行の中での労働関連心理社会的リスクの管理』と題するガイドには、地域封鎖中と職場復帰時の両方の期間における仕事に関連した心理社会的リスクを管理する方法についての実践的なアドバイスが含まれています。このツールは個別の職業や各国のニーズに合わせて適応することもできます。是非ご活用下さい。

社会・経済回復を形作る緊急事態後の社会対話

 諸国の注意が国家の回復に移りつつある中、長期的な再建と社会・経済組織の強靱性を促進するために今、社会対話が求められていることをILOの調査研究は示しています。資料をまとめたILOガバナンス・三者構成原則局社会対話・三者構成原則ユニットのコンスタンチノス・パパダキス上級専門官は次のように説明します。

2021年10月1日発表・英語・2分4秒

 ILOは2020年2月から2021年1月までの期間に100カ国以上で社会対話活動に関する地球規模の研究を行いました。この間、政府、使用者団体、労働組合は、新型コロナウイルス危機に対応して約380件の様々な種類の合意に達しました。ほとんどは緊急対応と短期的な措置に関するものでしたが、今は重点が回復対応に移りつつあります。見出された一つの重要な点は、回復に関する社会対話は仕事の未来の潮流を考慮に入れているということです。例えば、社会対話はテレワークの規制や事業のデジタル化支援のみならず、インターネットを通じて単発的な仕事を請け負うギグ労働者などの新たな種類の労働者を保護するための法や革新的な政策を形作る手助けをする上で決定的に重要な役割を演じています。回復に関する社会対話はまた、女性や若者、自営業者などへの社会的保護の拡大にも焦点を当てています。社会対話はまた、自国経済のグリーン化を回復努力の中心に据える国々でも牽引力を増し続けています。重要なこととして、多くの国の回復計画が経済や政治の統治を改善し、企業活動や雇用創出を可能にする環境を形成する保護措置として社会対話を用いています。

 社会対話を通じて回復のための解決策を共に考案し、実施することは、ILOの「人間を中心に据えた回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ」に概説されているように、決定的に重要です。今は、各国政府とその社会的パートナーである労使団体が労働者保護の強化、そして仕事を豊かに生む回復に向けて持続可能な企業を支援するために協働する時、あるいは機会であるとさえ言えるかもしれません。さらに詳しくお知りになりたい方は、『新型コロナウイルスの世界的大流行が勃発してから1年後の社会対話:成果にスポットライトを当てる』と題するILOの概説資料をご覧ください。

より良い日常の構築を手助けできる先住民

 8月9日は「世界の先住民の国際デー」です。新型コロナウイルス危機に激しく打撃を受けている先住民は、先住民の権利を尊重し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を確保する、より良い日常の構築における大切なパートナーです。ILOは新型コロナウイルスに対する先住民・種族民の脆弱性を分析し、コロナ禍対応の一環としてそのディーセント・ワークと社会的保護の機会を確保する緊急かつ継続的な行動を示す概説資料を作成しました。

2021年8月10日発表・英語・1分8秒

 世界全体で4億7,600万人以上を数える先住民は、新型コロナウイルスの世界的大流行の脅威に特にさらされています。それは極度の貧困状態で暮らしている可能性が非先住民の3倍に達し、86%以上が社会的保護のない非公式(インフォーマル)経済で働いており、多くが各々の文化に適した保健医療もそれぞれの言語による新型コロナウイルスに関する情報も得られないからです。

 新型コロナウイルスは自主的に孤立している先住民や初期接触段階の先住民の生存自体を脅かしています。コロナ禍は所得の消失、伝統的な活動や食の安全保障の崩壊を引き起こしています。暴力やハラスメントの増大など、先住民の女性は特に影響を受けています。

 先住民の人々はコロナ禍と戦い、誰も置き去りにしない持続可能な開発と強靱な社会に向かう道を築く上での重要なパートナーです。より良い日常の構築には、先住民の権利を尊重し、ディーセント・ワークと社会的保護の機会を確保することが必要です。ILOの先住民及び種族民条約(第169号)を批准し、実行しましょう。

人間を中心に据えた新型コロナウイルス感染症からの回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ

 政府、労働者、使用者の代表は第109回ILO総会において、新型コロナウイルス危機に対する仕事の世界の対応と、人間を中心に据えた仕事の未来を構築する方法に関する提案を記す「行動に対するグローバルな呼びかけ」を全会一致で採択しました。

2021年7月23日発表・2分24秒

2021年船員デー(6月25日):海運業回復のカギを握るのは船員の公正な未来

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)抑制措置として課されている制限を理由として、いまだに数十万人の船員が下船や乗船を阻まれています。海事法に定められているように船員の権利を尊重し、船員の公正で持続可能な未来を確保することが決定的に重要です。

2021年6月25日発表・英語・1分1秒

 新型コロナウイルス危機は海事部門とそこで働く船員及びその家族の暮らしを混乱に陥れました。世界貿易は途絶えることなく続いていますが、基幹労働者である船員は苦闘しています。帰宅できずに、当初の契約期間を何カ月、時には何年も超えて働き続けています。何十万人もの船員が短い休暇や治療のために船を下りることさえできずにいます。他にも多くが船舶に乗船するための移動、さらには下船するためにさえ必要なワクチン接種を待っています。クルーズ船の船員は長い失業期間に直面しており、いつ再び航海にでられるかも不明です。

 2006年の海上の労働に関するILO条約は、たとえ危機の間でも船員を守る中心的な国際的法律文書です。私たち全ての利益のためにも、船員の安全と健康、帰国の権利の全面的な尊重が確保されるよう、各国は迅速に行動を起こす必要があります。

 船員が最も必要とされているこの時に、2021年の船員デーに意味をもたせるよう皆で行動を起こそうではありませんか。

ILO総会デイリーショー第1日目:新型コロナウイルスと仕事の世界

 6月7~19日の2週間にわたるILO総会本会議開催中には、審議後毎日、その日の主な出来事をまとめると共に、日替わりテーマでILOの活動を紹介する30分間のデイリーショーが配信されています。

 初日7日のデイリーショーでは、スイスのギィ・パルムラン大統領の特別演説を含む本会議初日の総会模様をダイジェストで紹介すると共に、ガイ・ライダーILO事務局長、国際使用者連盟(IOE)のロベルト・スアレス・サントス事務局長、国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロウ書記長へのインタビューが行われました。続いて、2021年6月2日に発表されたILOの定期刊行物『World employment and social outlook: Trends 2021(WESO Trends)(世界の雇用及び社会の見通し:動向編2021年版・英語)』についてリチャード・サマンズILO調査研究局長から話を聞き、ILOの現場活動紹介として、日本が任意資金拠出を行ってフィリピンのミンダナオで実施されている「平和の確立のための給水設備管理改善プロジェクト」の紹介が行われました。

2021年6月7日発表・英語・30分19秒

 ライダー事務局長は、オンライン形式ではあるものの、例年通り仕事の世界にとっての重要な議題が満載の今総会には、ILOが活動を続けていることを世界に発信することと仕事の世界が未曾有の危機のただ中にある今、ILOがそこから抜け出し、より良い立て直しを図る指導力を示す場となることという二つの特別な役割があることを紹介し、これから始まる審議への期待を示しました。シャラン・バロウITUC書記長は、新型コロナウイルス対応や普遍的社会的保護、技能、不平等、基準適用など今総会が取り上げる重要議題を挙げた上で、2年前の総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を土台とする新たな社会契約に向けた議論を進めることを今総会の最も重要な役割に挙げました。ロベルト・スアレス・サントスIOE事務局長も、初のバーチャル形式で開かれる今総会において、政労使三者が仕事の世界に破壊的な影響を与えているコロナ禍に対応した、有用で適切な成果文書を生み出すことが決定的に重要と強調しました。

 リチャード・サマンズ調査研究局長は、ソーシャルメディアからの質問にも答えつつ、『世界の雇用及び社会の見通し:動向編2021年版』が見出した主な内容を紹介しました。新型コロナウイルスの世界的大流行は仕事の世界に甚大な影響を与えています。若者や女性、非公式経済で働く人など、その影響が特に激しい集団が存在し、過去5年間の歩みを無に帰すような速度で働く貧困層は急増しています。したがって、幅広い経済成長とマクロ経済政策などに支えられた雇用創出支援などの四つの原則を提案できるものの、打撃が大きい部分を特に対象にした差別化された対策が求められます。ワクチン接種の広がりなどの条件に左右されつつも、今年後半から回復が始まると見込まれますが、労働時間の減少幅が特に激しかった中南米における回復の遅れに対してアジア太平洋では迅速な回復が見られるなど、回復にはばらつきがあり、少なくとも2023年になるまで生じた損失を補うのに十分な雇用成長は見られないと思われます。女性に対する不均衡に大きな影響を是正するには、男女差別対策、ケア部門などの女性就業者が多い産業部門への重点的な支援、女性が圧倒的に多くを担っている無償のケア責任を解消する措置などを挙げることができます。

 日本政府と協力してフィリピンのミンダナオで実施されている「平和の確立のための給水設備管理改善プロジェクト」は、地元住民の手による水道整備を通じて、より安全できれいな水の供給と働きがいのある人間らしい仕事の創出によって地域に力を付け、開発と平和構築に資することを目指しています。プロジェクトのジェニリン・アギナルド主任技術顧問(CTA)は、労働安全衛生や社会的保護の要素も含むこのプロジェクトの下、予定されている11の水道システムの内二つが完成し、受益者が既に学童3,000人、地域世帯3,500戸に及び、コロナ禍で必要不可欠な安全な水、仕事、社会的保護、労働安全衛生を提供するこのプロジェクトは非常に時宜を得た活動であると紹介しています。

文化・クリエイティブ部門で働く人々へ社会的保護を拡大

 地域封鎖措置は映画館や劇場の閉鎖、映画・テレビ番組・音楽制作の中断・中止をもたらしました。この産業の多くの労働者が助けになる社会的保護もない中で職を失いました。ILOの新着資料は文化・クリエイティブ部門に社会的保護を拡大することは可能と説いています。

2021年5月13日発表・英語・1分33秒

 映画、テレビ番組制作、放送など、文化・クリエイティブ部門では世界全体で2,900万人以上が働いています。新型コロナウイルスの登場によって映画館や劇場は閉鎖され、制作は中断あるいは中止されました。この産業では多くの人が臨時契約あるいはプロジェクト毎の契約で働き、収入は不規則で、しばしば社会的保護も適用されていません。

 ILOのマルゲリータ・リカタ民間サービス専門官は、コロナ禍が仕事の消失や契約の取消をもたらし、この産業部門の社会的保護の適用に関して存在するギャップを悪化させ、産業の一部の人に関して存在していた劣悪な労働条件を露呈させたと指摘しています。ILOのマヤ・スターン・プラザ社会的保護法・基準専門官も、危機は適用におけるギャップを縮小し、社会的保護に関する国内法を強化する必要性について諸国政府の目を覚まさせるきっかけになったと説明しています。文化・クリエイティブ部門への社会的保護の拡大は可能であることを既に示した国もありますが、リカタ専門官は、行政手続きの簡素化、新たな財源の確保など、この産業で働く人々のニーズに社会的保護を適応させる革新的な解決策が必要と説いています。スターン・プラザ専門官も、ILOの基準・諸原則に従い、様々な拠出型・非拠出型の選択肢を組み合わせた包括的で調整を図った取り組みを提案しています。

 長期的な回復計画の中には社会的保護が含まれなくてはなりません。政府及び労使団体の協働を通じて危機とニーズの時代における文化部門で働く人々のより良い保護が達成されれば、映画、音楽、娯楽が再び私たちの生活を満たすことになるでしょう。詳しくは、ILOの作業文書『Social protection in the cultural and creative sector - Country practices and innovations(文化・クリエイティブ部門の社会的保護:各国の慣行と革新的取り組み・英語)』をご覧ください。

新型コロナウイルスの世界的大流行の中で保健医療従事者の精神衛生を守ろう

 1年以上にわたり、新型コロナウイルスの世界的大流行の最前線で戦っている保健医療従事者は感染のリスクに絶えずさらされている中で、仕事量は増え、労働時間は伸び、十分な休息と回復のための時間も取れないでいます。加えて、業務の過程で多くが暴力やハラスメントに遭い、不名誉なレッテルを貼られるといった事態にも直面しています。これら全てが保健医療従事者の精神衛生と福祉に悪影響を与えています。ILOと世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの世界的大流行の中での職業衛生機関と保健医療従事者の労働安全衛生措置に関する手引き文書を作成しています。

2021年4月7日発表・英語・1分40秒

 新型コロナウイルスの世界的な大流行が始まってから1年以上が経ちましたが、保健医療従事者は依然として台風の目に留まっています。世界の新型コロナウイルス感染者の推定1割が保健医療従事者であると見られます。命を救い続けつつ、今はワクチン接種という決定的に重要な業務も遂行しています。

 今や新たな世界的流行が生まれつつあります。これは新型コロナウイルス下の労働環境が保健医療従事者の精神衛生と福祉に与えている影響によって引き起こされています。

 ILOのクリスティアン・ウィスコー上級保健医療サービス専門官は、多くの保健医療従事者が、仕事量が増大する中で長時間労働になり、休息や回復のための時間も十分に取れずに慢性疲労に陥っていると同時に、感染症に罹患して家族などに感染させる恐怖とも戦っていること、加えて、コロナ禍の中で、差別や不名誉なレッテルを貼られるだけでなく、保健医療従事者に対する暴力やハラスメントの事件も増加していることを指摘しています。

 保健医療従事者に対する重圧はストレス、不安、不眠、うつ状態、外傷後ストレス障害(PTSD)、さらには自殺をも招いています。精神衛生問題は業務成績の低下や欠勤、保健医療従事者の離職に伴う人の入れ替わりの激しさに寄与する可能性があります。これは既に存在している保健医療従事者不足の問題を悪化させることになります。適切な人員レベルと安全な労働条件はケアの質を上げ、従事者の強靱性を高めることになります。ストレス及び精神衛生問題の予防とこれらへの対処に向けた支援措置を保健医療従事者のための新型コロナウイルス感染症対応に組み込まなくてはなりません。

ディーセント・ワークを促進する可能性を秘めた循環経済

 新型コロナウイルスは健康、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、環境の持続可能性の強い結びつきを明らかにしました。修繕、再利用、リサイクルといった循環経済の原則は、持続可能なサプライチェーン(供給網)を達成するカギを握っており、ディーセント・ワークの促進を助ける可能性があります。

 日本も参加する循環経済加速化プラットフォーム(PACE)がまとめた繊維産業電子産業に向けた循環経済行動アジェンダにはILOも協力しています。

2021年2月16日発表・英語・30秒

 新型コロナウイルスは相互に接合した世界経済における持続可能なサプライチェーンの重要性に光を当てています。修繕、再利用、リサイクルを柱とした循環経済モデルは、危機からより良く、より環境に優しい形で立ち直るためのカギを握っています。循環経済はリサイクル業や廃棄物管理などの分野で約600万人分の仕事を新たに生み出す可能性があると見られます。主要な経済部門全般にわたって持続可能な企業を新たに生み出す潜在力も秘めています。

 未来の形は循環形です。ディーセント・ワークを伴ったグリーン経済に向けた公正な移行となることを確保しましょう。

危機後の回復の構成要素である建設業

 新型コロナウイルスの世界的な大流行は景気循環に敏感な建設部門に相当の影響を与えています。しかし、建設業が秘める雇用創出の潜在力は回復を刺激する可能性が大きく、コロナ危機からの回復措置はこの産業部門の持続可能性とデジタル化に向けた変容を支える可能性があります。

2021年1月28日発表・英語・1分22秒

 建設業の労働者と企業は新型コロナウイルスの世界的な大流行によって引き起こされた経済活動の低下に特に弱く、この産業部門に対する経済的な影響の規模は不確実ですが、企業は収益減の対処に迫られ、労働者の収入は減少しています。建設現場はサプライチェーン(供給網)混乱の影響を受け、中小企業を中心に多くの建設会社の流動性が制約を受けています。社会的保護の適用不足や安全・健康上のリスクは移民や非公式(インフォーマル)経済で働く人々を中心に建設労働者の脆弱性を増しています。

 ILOのエリセンタ・エストルッチ=プエルタス農山漁村経済・建設業専門官は、建設業に対する新型コロナウイルスの影響を扱ったILOの産業部門別概説資料を通じてこの産業部門を支えるためにILO加盟国政労使が講じている措置や対応策を学ぶことができると説明しています。

 建設部門は雇用と経済への刺激の点でも大きな役割を演じることができます。政府の総合回復策は基盤構造に対する公共投資を通じて需要と雇用創出を刺激しています。持続可能な建物が秘める潜在力もまだ活用されていません。

 エストルッチ=プエルタス専門官は人間を中心に据えた建設部門の回復を促進するカギを握るものとして、「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」及び国際労働基準の適用と合わせた社会対話を挙げています。

伐木搬出作業の安全性を保つために力を合わせるILOとFAO

 新型コロナウイルスの世界的な大流行は世界中の伐木搬出作業に相当の影響を与えており、企業と労働者に深刻な直接的影響を与えています。経済活動が再開する中、企業と労働者は新たな現実に適応する手段を見つける必要があります。ILOと国連食糧農業機関(FAO)は、新型コロナウイルスが社会や経済に与える影響を緩和しつつ、企業、労働者、取引先の安全性が保たれ、ウイルスの感染拡大が防止される助けになるような実践的かつ参加型のチェックリストを協力して作成しました。

2021年1月26日発表・英語・1分24秒

 伐木搬出は安全と健康に対する様々な危険を伴う職業です。新型コロナウイルスの世界的な大流行によって伐木搬出作業に従事する労働者は新たな種類の危険に直面しています。

 ILOのヴァルテリ・カタヤマキ農山漁村経済技術専門官は、伐木搬出作業に従事する人々はこの危険を認識し、その防止、制御、緩和方法を知ることが必要不可欠であり、新型コロナウイルスの流行を管理し、林業の安全な労働条件を確保するにはそれが決定的に重要と指摘しています。

 ILOとFAOは伐木搬出作業における新型コロナウイルスの感染予防と制御に関するチェックリストを作成しました。これはコロナ禍の中で企業と労働者が安全であり続ける助けになり、世界中の様々な伐木搬出状況に適応可能な実用的なツールです。

 FAOのヨナス・セデルグレン林業担当官は、このチェックリストは各国機関や産業団体、労働者組織によってまとめられ、この産業部門でこれまでに用いられてきたこの他のツールを補足するものであり、新型コロナウイルスの影響を緩和し、伐木搬出活動の再開を図る取り組みを支えるものであると説明しています。

 チェックリストは現場アクセス、輸送、作業用キャンプや宿舎などの分野を網羅しています。より良い立て直しの第一歩は全ての人に安全な労働環境が確保されるところから始まります。