ILO Newsletter「ビジネスと人権」

G7のUNGPs促進に向けたエンゲージメントと企業の責任

近年、G7サミット(主要国首脳会議)において、グローバル・サプライチェーンにおける人権分野の課題に懸念が表明されてきました。この問題については2022年6月にドイツ・エルマウで開催されるG7サミットでも、引き続き議論されます。今回は、G7サミットにおける議論に向けて作成された、G7首脳のリーダーシップについて示された国際文書を紹介します。

記事・論文 | 2022/05/30
©ILO/ILO CLEAR パキスタンの綿花を栽培する農場で働く子どもたち


2022年6月26日~28日、G7サミット(主要国首脳会議)がドイツ・エルマウで開催されます。[1]

議長国を務めるドイツの経済協力開発省(BMZ)は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に、 グローバル・サプライチェーンにおける持続可能性、人権、環境保護を促進するためのG7の取組みに焦点を当てた報告書の作成を依頼しました。そして2022年1月に、” Sustainable Global Supply Chains: G7 Leadership on UNGP Implementation”(「持続可能なグローバル・サプライチェーン:国連の『ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)』の実施に関するG7のリーダーシップ」)(書名は参考のための仮訳)が発表されました。[2]

本報告書は、国連ビジネスと人権に関するワーキンググループ(UNWG)を含む、幅広い視点と専門知識を持つ多くの関係者が、労働組合、市民社会、企業、ILOやOECDをはじめとする国際機関、金融、国際法、エネルギー、国際投資分野の専門家など、主要なステークホルダーとの協議を提言書にまとめています。本報告書は、UNGPsに加え、「OECD多国籍企業行動指針」、「ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)」も重要な文書として掲げ、これらをUNGPsの規範としての価値を高める相互補完的な国際文書として、セットにして取り扱っています。

UNGPs促進につながる「ビジネスと人権に関する国内行動計画(NAP)」の活用ーー日本の好事例、G7への期待

NAPは、UNGPsの実施に関する国家のコミットメントを、目に見える形で、具体的かつ明確に示す手段であると報告書は述べています。[3]

その上で、日本におけるNAP策定の取組みを、好事例として紹介しています。

「NAP策定のプロセスは、国内の現状把握調査に始まり、持続可能なサプライチェーン強化に向けた、国内外の既存・今後の支援策、救済手段を特定することが目的とされています。…支援策や救済措置に関しては、外交、開発、金融開発機関など様々な関係機関・省庁間が連携して行います。こうした省庁間の連携はNAPプロセスにおいて重要です。・・・日本のNAPは諸機関・省庁間からなるビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議の主導により策定されました。今後のモニタリング報告の局面でも、協働の取組みが進められます」

NAP策定の過程におけるグローバル・サプライチェーンに関する取組みについて、日本とILOの協力についても述べられています。

「日本政府は、特に国内外のディーセント・ワーク、外国人労働者の権利保護、未批准のILO基本条約の批准など、主要な人権リスクの分野において、ILOと協力し、NAPの策定を進めてきました。ILOのような、専門性と世界的な展開力を有する機関は、グローバル・サプライチェーンに関して、最終的に国内外にもたらされる可能性がある人権リスクについての考察を提供できます」 [4]

ILOは、日本のNAP策定の過程で、社会対話とステークホルダ―対話推進の一環として、ステークホルダー共通要請事項の策定において、ファシリテーター役を担いました。

現在NAPを策定している国は30か国にとどまっています。[5] 今後、先進7カ国の企業と重要な取引関係にある国々とG7が協働して、関係国における人権が尊重された環境づくりと、さらなる人権尊重の促進に向けて、相乗効果につながる政策を明らかにするNAP策定の過程に向けた支援は、UNGPs促進に向けて改善の余地につながると、報告書は述べています。

G7とILO

ILOは、G7サミットの雇用分野の議論に参加し、世界共通の課題解決に向けて、専門的な知見を提供し、議論の発展に貢献しています。

議長国ドイツの雇用タスクフォースは、「構造の転換の時代における公正な移行:包摂的で環境に配慮した経済活動におけるディーセント・ワークの創出」という全体テーマのもと、以下の側面に焦点を当てています。[6]
  • 就業能力の強化:ニーズの特定と、潜在力の活用
  • 労働安全衛生(OSH):OSHに係る機会を捉えて、課題に対応
  • 気候変動対策に向けた、社会的責任への取組み
  • 特別議題:持続可能なサプライチェーンの構築ーー サプライチェーンとバリューチェーンにおける企業のデュー・ディリジェンスに関する、国際的に法的拘束力のある基準策定に向けて
グローバル・サプライチェーンの人権問題については、G7の主導により、グローバルな事業活動を行う多国籍企業、関係するステークホルダー、国際機関が連携し、結束して対処することが重要です。ILOは、その専門的知見と国際的なネットワークを通じて、グローバル・サプライチェーンに参加する国々の経済的発展と公正な移行に資する技術的支援を行っています。

参照
[1] G7ドイツホームページ
https://www.g7germany.de/g7-en

[2] OHCHRウェブサイト:国連人権高等弁務官事務所報告書” Sustainable Global Supply Chains: G7 Leadership on UNGP Implementation”, January 2022
https://www.bmz.de/resource/blob/106408/85bc5f3f900e679518b0ec0c8a6b31c6/Final%20OHCHR%20G7%20Report%20Report.pdf

[3] 同上、p.36

[4] 同上、p.36及びILO駐日事務所ウェブサイト: 「ビジネスと人権に関する国別行動計画を受けて、ILO、労使を含むステークホルダーが合同コメントを発表」
https://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_760388/lang--ja/index.htm

[5] Danish Institute for Human Rightsウェブサイト:
https://globalnaps.org/country/

[6] ILOウェブサイト:”Germany 2022”
https://www.ilo.org/global/about-the-ilo/how-the-ilo-works/multilateral-system/g7/2022/lang--en/index.htm