第111回 ILO総会

「社会正義を優先課題に」 事務局長が開会演説

記者発表 | 2023/06/05
第111回ILO総会が6月5日、スイス・ジュネーブで始まりました。開会式で、ILO事務局長のジルベール・F・ウングボは、ますます広がる不平等と闘うには「社会正義のためのグローバル連合」の構築が必要だと訴えました。会期は6月16日まで。

総会には加盟する187カ国から労働者、使用者、政府のそれぞれの代表が参加します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で対面とバーチャルを組み合わせたハイブリッド式が続いていましたが今年は4年ぶりに全ての議事が対面で行われます。

ウングボは、拡大する経済格差と闘うためには「国際社会や地域、国にいたる全ての主要な」政策や行動に、社会的な検討課題を体系的に組み込んでいかなければならない、と強調。「私のメッセージはシンプルです」と述べ、「『仕事の世界』を揺るがす課題や不都合な現実に目をつぶることはあってはならない」と続けました。

「生産方法を根本的に変えるであろう第4次産業革命(人工知能(AI)やビッグデータを用いた技術革新)、人口動態の激変、目下の急務である経済の脱炭素化は、私たち全員にとって、より良い未来につながるチャンスだ」。ウングボは「しかしながら、40億人の人々が社会的保護を受けられず、2億1400万人の労働者が貧困線以下の収入しか手にできない。雇用を担う零細・中小企業の多くが倒産している。そして、女性の収入は男性よりも平均して20%も少ない。この事実をどう説明できるだろうか」と投げかけ、社会正義は世界的な回復の「要」であり、人間を中心に据えた未来をつくるためには、国際機関やステークホルダー(利害関係者)が結集して、社会正義のための世界連合をつくる必要がある、と訴えました。

総会初日の6日には、カタールのアリ・ビン・サミク・アル=マッリー労働大臣が議長に選出。副議長にはモルドバのアジダ労働副大臣(政府側代表)、ノルウェーのムンテ氏(使用者側代表)、パキスタンのアワン氏(労働者側代表)が選ばれました。

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主な総会議題は次の通り
  • 質の高い見習い研修制度(基準設定、2回目)
  • 社会的保護の戦略的目標に関する反復討議
  • 産業政策と技術に関する考察を含む、全ての人のための環境的に持続可能な経済と社会への「公正な移行(Just Transition)」達成に向けた一般討議
  • 労働安全衛生がILOの「労働における基本的原則及び権利の枠組み」(中核的労働基準)に含まれたことを受け、15本の国際労働文書の部分的改正に関する条約と勧告の提案
  • 「基準(条約・勧告)の適用に関する総会委員会」の総合調査報告の焦点である、男女平等の達成について
※以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。