声明-新型コロナウイルスと船員

コロナ禍が船員の権利に与え続けている負の影響についての海上の労働に関する条約の特別三者委員会役員の声明

 海上の労働に関する条約の特別三者委員会役員は、2020年3月31日付などに続き、コロナ禍が船員の権利に与え続けている負の影響についての新たな声明を2022年2月11日付で発表し、コロナ禍の影響の最小化を図り、船員の移動の自由を確保し、海運業務を円滑化する明確かつ決然とした支援行動を取ることなどを求めています。

 新型コロナウイルスの世界的大流行は海運業及び船員に悲惨な状況をもたらし、世界中の誰もがその悪影響を被り続けています。2021年に規制を緩めた国の多くが再び政策を厳しくし、船員を基幹労働者、海運を世界経済の必要不可欠な資産と認める国も日本を含め複数存在するものの、多くの寄港国が再び、感染を制御する措置があるにもかかわらず、船員に不均衡に厳しい渡航制限や隔離措置を課しており、依然として危機的な乗組員の交代に係わる状況はさらなる悪化を示しているように見え、これは必要不可欠な供給物資の中断のない安全な配達を脅かしています。その上、幾つかの地域で船員が体系的に医療施設の利用を否定されている状況は改めて切迫した人道危機を引き起こしています。

 このような状況に鑑み、「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」の継続的な見直しを任務とする同条約の特別三者委員会の政労使役員は、2020年3月31日以降発表してきた一連の声明の最新のものとして、2022年2月11日に改めて、コロナ禍が依然として船員の権利に及ぼしている負の影響に注意を喚起する声明を発表しました。政府、船舶所有者、船員の代表で構成されている特別委員会の役員は、私たち皆が日常生活で頼っている物品を運搬している船員は、その貴重な業務を提供し続けられるよう、尊厳と敬意をもって処遇されるべきことについて、各国政府の注意を引き続き喚起するようILO事務局に求めると共に、最近発表された2022年の年次報告で、条約勧告適用専門家委員会が「条約規定に従う選択肢が得られる状況下では、不可抗力を船員から権利を剥奪する有効な理由と見なすべきでない」と強調し、批准国に向けて「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」に基づく義務を完全に履行し、船員の権利の保護を完全に回復するために必要なあらゆる措置を講じるよう求めていることを歓迎し、加盟国に対して以下の諸点について真剣に捉え、私たち皆が頼っている製品及び生産物の地球規模の供給を守るため、新型コロナウイルスの大流行が海運業に与え続けている社会的、経済的、そして運営面の影響の最小化を図り、船員の移動の自由を確保し、海運業務を円滑化する明確かつ決然とした支援行動を取ることを求めています。

  • 船員を基幹労働者と認め、そのように処遇すること
  • 基幹労働者として船員を渡航制限の適用から除外し、感染を制御する好事例に従い、優先事項としてワクチン接種の機会を与えつつ、「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」の規定に沿って船員の乗下船・帰国を可能にし、国際海事機関(IMO)の認める手順に沿った見直しを行うこと
  • 乗組員の交代を円滑化し続けるために必要な措置の採用
  • 全ての人を対象とする、信頼がおける効率的かつ整合的な検査手続きの機会が船員に与えられ、利用できるよう協力体制を強化すること
  • 多くの船員が現在体験している期間延長を認める形で査証・旅券の更新を円滑化し、本国送還の便宜を図るに当たって柔軟性を行使するよう、自らの権限でなし得ることを全て行うこと
  • 新型コロナウイルスの新たな変異株に関連した懸念の高まりやこれまであまり流行していなかった国における感染者数の増大に鑑み、中・長期的に船員が船舶に乗り組み、帰国できることを保障する戦略の策定に着手すること
  • 船籍国は自国籍船による船員の本国送還計画立案を確保する明確な手引きを示すこと
  • 船籍国は合意された乗務期間を超えた乗船期間の延長を防止するよう政策の見直しを続け、効果的な取締りや規制執行を通じて過労及び事故に関連したリスクの緩和における責任を十分に行使すること
  • 雇用契約の延長拒否あるいは「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」に基づき懸念や苦情を提起したことにより、船員がブラックリストに掲載されたり、烙印を押されることがないよう保障するしっかりとした行動を講じることの確保
  • 船籍国は検査が船員の負担や心身の疲労を増すのを避けるため、海上労働証書発行のための遠隔検査の制限を検討すること
  • 感染のリスクを制限するため、船舶を訪れる人々が事前にしっかりとした検査手順を経て、完全なワクチン接種を受け、必要なあらゆる個人用保護具の提供を受け、厳格に監視されるよう確保すること
  • 寄港国の検査官が長引く契約延長に関連した安全リスクを評価するに当たり、専門的な判断を行使し、乗組員の適時の交代と帰国の円滑化を助けるよう奨励すること
  • 「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」及び世界保健機関(WHO)の「国際保健規則」の要件に沿って、船員が寄港国の医療施設を利用し、自国民と等しい治療を受けるのを許すこと
  • 寄港国は自国の新型コロナウイルス予防措置に従い、船員の上陸を円滑化すること
  • 労働供給国は適切な医療スクリーニングと予防措置について合意の上、契約を満了した船員の速やかな帰国を円滑化し、船員が乗船のために出国するのを許すこと

 声明はまた、遺棄事件の増大及び長期化に懸念を表明すると共に、乗組員の交代円滑化を目指して2020年12月15日に発表した船舶所有者と傭船者との協力強化に関する声明が依然として適用されることにも注意を喚起しています。


 以上は海上の労働に関する条約の特別三者委員会の役員による2022年2月11日付の英文声明の抄訳です。