ILO/UNDP共同論説:労働力移動

移民を取り込んだ新型コロナウイルス後の回復を

 国連移住ネットワークが主催する移住週間(2月14~18日)の活動の一つとして、ILOと国連開発計画(UNDP)が中心となってまとめたネットワークの新刊書が発表されました。同書は、新型コロナウイルスの影響を受けている移民に働きがいのある人間らしい仕事や社会的保護、技能開発、起業機会を与えることの重要性に光を当てています。マーサ・ニュートンILO政策担当副事務局長と岡井朝子UNDP危機局長は共同論説で、新型コロナウイルス後に生活を軌道に戻し、持続可能な開発に対する人の移動の貢献を高めるには、移民をその受入社会により良く統合する必要があると説いています。

 ILOも参加する国連移住ネットワークは2022年5月に国際移住レビュー・フォーラムを初めて開催します。これに先立ち、2月14~18日を移住週間と定め、「安全かつ秩序だった正規の移住のためのグローバル・コンパクト」の実施における最善事例を展示する場としています。

 国連移住ネットワークは移住週間の中で、ILOと国連開発計画(UNDP)が主導して作成された新刊書『Tackling the socio-economic consequences of COVID-19 on migrants and their communities: Why integration matters(新型コロナウイルスが移民とその共同体にもたらしている社会・経済的結果に取り組む:統合が重要な理由・英語)』を発表しました。移民とその受入社会に対する移住の有形の利益の諸例を示す本書は、移民に働きがいのある人間らしい仕事と社会的保護、技能開発、起業機会を提供することの重要性に光を当てています。本書の発刊を記念して発表した共同論説で、マーサ・ニュートンILO政策担当副事務局長と岡井朝子UNDP危機局長は、新型コロナウイルス後に生活を軌道に戻し、持続可能な開発に対する人の移動の貢献を高めるには、移民をその受入社会により良く統合する必要があると次のように説いています。

 マレーシアに住むインドネシア出身の女性家事労働者は雇い主から契約終了を通告されたと報告します。タイで働いていた別の移民は、新型コロナウイルスのせいでレストランが休業したため、給料と滞在許可の両方を失って退去しました。工場で働いていた3番目の移民は労働時間と給与が切り下げられ、祖国ミャンマーに帰らざるを得ませんでした。

 コロナ禍の中、移民労働者は仕事を失っただけでなく、社会的安全網からも排除され、外国でも帰国後も差別と烙印に直面しています。幾つかの国の政府は地域封鎖時の移民労働者に対する援助は送出国の責任との姿勢を取り、当局が実際に食料援助を行うと、ソーシャルメディアで外国人排斥の否定的反応が引き起こされました。

 コロナ禍の打撃は移民に最も激しかったものの、逆説的に、地球規模の健康危機はまた、その際だった貢献を再確認させるものにもなりました。多くの政府が、移民は送出国、通過国、受入国の発展を支える知識、支援、ネットワーク、技能をもたらすことを認識するに至り、アルゼンチン、チリ、フランス、ドイツ、ペルー、スペインの政府は皆、コロナ禍対応における移民の重要性を認め、保健医療や農業といった基幹部門における雇用機会を確保するに至りました。ケニア政府はビザの延長を決め、労使と協働して雇用の維持に努めました。

 人の移動が安全かつ包摂的であり続け、国際的な人権及び労働基準が尊重されたなら、移住の再開はコロナ禍からの回復に拍車をかける重要な要素の一つとなることでしょう。しかしながら、移住を持続可能な開発の要素と化すには、政府、使用者、労働組合、その他の利害関係者が最優先事項として移民の社会と経済への統合を促進することが求められます。統合は移民の持続可能な包摂と地元経済への貢献を育むことによって移民に力を与えます。

 国連移住ネットワークの新刊書が光を当てている、移民に十分な機会を開くことの重要性を示す一例として、ベネズエラの海外避難民の脆弱性を減らし、貢献の最大化を図るために、ILOとUNDPが中南米の政府、労使団体に提供している支援を挙げることができます。この主要目的の一つはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を生み出すことでした。ベネズエラからの避難民の大半は受入国の非公式部門(インフォーマル・セクター)で働いています。コロンビア政府は返礼として、技能評価を行い、ベネズエラからの人々がディーセント・ワークを見つけることができるよう、認証サービスを提供しています。さらに、包摂的な保健医療その他の形態の社会的保護を確保し、子どもの就学を助け、社会の結束を促進しています。

 「安全かつ秩序だった正規の移住のためのグローバル・コンパクト」に係わるあらゆる側面の実施における歩みを検討し共有する主として政府間のグローバルな情報共有の場として5月に開かれる国際移住レビュー・フォーラムは、グローバル・コンパクトに係わる進歩を評価し、人権と労働者の権利を守り、持続可能で強靱な開発を支えるような、権利に根ざした移住の統治に向けて進む道を描く貴重な機会を提供することになるでしょう。

 新型コロナウイルスの世界的大流行の終結から立ち上がるに当たり、人の移動をより安全かつより秩序だったより正規のものと化し、社会の結束を促進し、統合を達成する形で移民の包摂に向けて取り組むことは、他の危機が同じような悪影響をもたらすのを防ぐことになるでしょう。回復は私たちに一つの選択肢を与えています。これまで通りの状況に戻るのか、それとも人の移動を一人ひとりのためになるものにするかのどちらかです。


 以上はマーサ・ニュートンILO政策担当副事務局長と岡井朝子UNDP危機局長による2022年2月15日付英文共同論説の抄訳です。