セミナー報告

ILOキャリアセミナー「国際機関で働くこと、求められる人材とグローバル人材育成への取組み」

ニュース記事 | 2022/01/06
2021 年12 月10 日、ILO 駐日事務所主催によりILO キャリア・セミナーをオンラインで開催しました。100 名を超える参加者がオンラインで視聴する中、松居眞司氏(外務省地球規模課題審議官組織・専門機関室長)による開会挨拶に続き、キハラハント愛氏 ( 東京大学総合文化研究科准教授)、三宅伸吾氏(ILO カリブ海事務所・労働法国際労働基準専門家)、中富玄氏(ILO ジュネーブ本部対外パートナーシップ・資金調達担当官(JPO)による発表、最後に山口忠彦氏(外務省国際機関人事センター)より国際機関への就職を目指す方に対する同センターのサポートサービスや、予定されているJPO 受験者対象のセミナーをご案内いただきました。司会進行は高﨑真一(ILO 駐日代表)が務めました。

ILO は、国際労働基準の設定・監視、社会労働分野の開発協力などを中心に活動する国連の専門機関であることから、国際法、労働法の専門性を生かし、将来ILOでの仕事を希望する学生、社会人の方からのお声を多くいただいています。本セミナーでは、国際法という専門性を生かし、国連の場で実務に携わることについて紹介することを主要なテーマとしました。また、JPO などの制度や、空席公募への応募を通して国際機関への就職を目指す場合、その専門分野での実務経験を必要要件として求められることから、学生の時から志す場合、実現までの過程で自身のモチベーションの維持が難しい時期もあるかと思われます。国際機関での就職を目指し、その目標を達成するまでのキャリア形成の過程で、教育機関としてはどのようなサポートが考えられるのか、についてもテーマとしました。

それぞれに従事する職務は異なりますが、すべての登壇者より、興味のある科目、分野を追求することにより、まずは自身の専門性を確立することの重要性が強調されました。また自身が設定した目標に加えて、さらに実務を通じて、様々な専門性を有する同僚と共に課題に取り組み、解決する中で、自身が設定したもの以外の新たな目標に出会う可能性もあります。そうしたことから、専門性は教育機関だけでなく、職務経験においても深めることができ、働きながらにして学び、専門性を身に付けることは可能であること、専門性は一つとは限らず、常に学び続ける姿勢の重要性も強調されました。

写真:松居眞司氏(外務省地球規模課題審議官組織・専門機関室長)

専門性を高めるための努力を続けることは、モチベーションの維持にもつながります。職務に従事する中で遭遇した課題の解決や、専門性のさらなる向上を目指して、新たな技術を身に付ける必要性に遭遇した際に、再び教育機関で学ぶ立場に戻り、新しく身に付けた知識を、次の実務の場を通じて活かし、社会に還元することもできます。教育機関において実務に近い技術を学べるようなカリキュラムを提供することは、学びを実務につなげる橋渡しとして、効果的なのではないかという提言もされました。
 
写真:キハラハント愛氏 ( 東京大学総合文化研究科准教授)

さらに、国際機関就職に至るまでに、自身が目指す分野での専門性を培う場として、職務経験を積むことは必要ですが、それは専門性だけでなく、必要なビジネススキルを身に付ける場としても有用であることも示されました。また、本部やフィールドで求められている資質はそれぞれに異なるため、特にフィールドの現場では、直面する課題に取り組む中で、既存の手法を遂行するばかりでなく、よりその状況に適した手法について自身で考える機会となり、エキサイティングな職場であることが強調されました。
 
写真:三宅伸吾氏(ILO カリブ海事務所・労働法国際労働基準専門家)

また、JPO 後のキャリア構築については、自身の適正はどのような分野、専門性で発揮されるのかについて常に自問自答する機会を持ち、自律したキャリア構築を図る姿勢が重要であるとも述べられました。職務を通じて熱意を示し、自身の強みを生かすこと、また好機をのがさないよう視野を広め、あきらめない姿勢が、次の目標への到達にとって重要であることも強調されました。
 
写真:中富玄氏(ILO ジュネーブ本部対外パートナーシップ・資金調達担当官(JPO)

本セミナーを通して、将来国際機関でのキャリアを目指し、JPO の受験などを考えている方に対し、国際法の専門性を活かして、ILO、国際機関での仕事に就くことへの具体的なイメージの共有に向けて活用していただきたいことに加えて、ひとりの人があるキャリアを確立するまでの道筋を示すことで、今後何に関心を持ち、どのような仕事に就いていきたいのかについて、今考えている若年者層へのキャリア形成のヒントにつながればと思います。

外務省国際機関人事センターは、国際機関への就職を目指す方に対する同センターのサポートサービスの提供や、JPO 受験者対象のセミナーを行っています。

写真:山口忠彦氏(外務省国際機関人事センター)によるJPO派遣制度に関する説明 

2022年度JPO試験の募集日程・応募方法
  1. オンライン事前登録受付期間:2022年1月6日(木)から3月7日(月)まで  (外務省国際機関人事センターのホームページ上で必要情報を登録。)
  2. 応募書類受付期間:2022年2月1日(火)から3月7日(月)まで  (同センター宛てにメールで応募用紙を送付。)
応募を完了するためには、事前登録の上、応募書類の提出が必要となります。詳しくは,外務省国際機関人事センターウェブサイトをご参照ください。


ILOでのキャリア

ILO駐日事務所はILOでの仕事及び、自身のキャリア形成について、世界各地で様々なフィールドでの職務に就くILO職員からのエッセイを紹介しています≫≫≫「活躍する日本人職員

ILOは、年に2-3回、世界各地(本部、地域総局、現地事務所)の専門職の空席情報を、RAPS (Recruitment, Assignment and Placement System:人材募集・採用・配置システム) により集中的に公募します。公募期間は1ヵ月です。専門職ポストの選考過程は、書類選考、筆記試験・インタビューなどを経て、最終決定まで約4ヵ月かかります。赴任は、最終決定から2~3ヵ月後となります。技術協力プロジェクト・スタッフの空席募集は、随時行われてます。

応募される方は、まず応募者登録を行い、オンライン上で応募書類を作成して、各空席の募集要項に示された締切日までにご応募ください。ILO職員のカテゴリー、資格要件、雇用条件などに関する説明、「よくある質問」については、ILO Employment Opportunities   のさらなる情報をご参照下さい。

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