国際移住者デー

2021年ILO労働力移動グローバル・メディア・コンクール受賞作品決定

記者発表 | 2021/12/17
ブザンソン市の小さなパン屋の店主であるステファン・ラバクレイ氏(写真左)とそこで働くギニア出身の見習い実習生レイエ・ファデ・トラオレ氏。グルバン・クリスタナジャジャ氏による受賞記事「見習い実習の絆で結ばれた小規模事業主と移民の若者」掲載写真。© Cyril Zannettacci / VU

 12月18日の国際移住者デーに先立ち、ILOは「労働力移動グローバル・メディア・コンクール」の受賞作品を発表しました。

 ILO理事や家事労働者団体代表、報道関係者など6人の審査員で構成される独立審査員団が創造性、正確さ、バランス、移民の保護、労働力移動のプラスイメージの表現といった審査基準をもとに厳正な審査を行った結果、最終選考に残った、いずれも質の高い10点の中から以下の4点が受賞作品に選ばれました。

バルセロナ市で非公式な廃品回収業を営むセネガル出身の移民労働者カリム氏。フディト・アロンソ・ゴンサルベス、ハビエル・スレ、マルタ・サイスの諸氏による受賞記事「都市の屋外鉱山労働者、リサイクリングの目に見えない一面」掲載写真。© Javier Sulé Ortega
◎職業ジャーナリスト部門
◎学生部門
サウジアラビアでハウスクリーナーとして働くケニア出身のブレンダ・ダマさんのTikTok動画。ルイーズ・ドノバン氏による受賞記事「TikTokを用いて悲哀を吐き出す湾岸諸国の家事労働者」掲載写真。© Olyvia Lim

 国際労働組合総連合(ITUC)、国際使用者連盟(IOE)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)、イークォル・タイムズ、労働者の権利擁護機関「連帯センター」、アジア移民フォーラム(MFA)、そして欧州連合(EU)が資金拠出する「労働力移動の斡旋・募集枠組み改善グローバル行動(REFRAME)プロジェクト」、スイス開発協力庁(SDC)が資金拠出する「第2期公正人材募集・斡旋総合計画(FAIR Ⅱ)」の後援を受けて開催されたこのコンクールは、バランスの取れた倫理的な報道は誤解や固定観念に対処し、移民労働者が送出国と受入国で果たしている貢献に光を当てる重要な役割を果たし得るとの考えから、労働力移動問題に関する質の高い報道を促進することを目的としています。今年は新型コロナウイルスの世界的大流行が移民労働者に与えている影響に関連した事項を扱った作品、そしてILOの「2011年の家事労働者条約(第189号)」採択10周年を記念して移民家事労働者に関する作品の応募が奨励されました。

 選ばれた作品はとりわけ現下の危機状況下における国際労働基準及びILOの「公正な人材募集・斡旋のための一般原則及び実務指針並びに人材募集・斡旋手数料及び関連経費の定義」に沿った、移民家事労働者を含む移民労働者の権利の保護と労働力移動の良い統治の重要性に光を当てるものとなっています。これらの諸原則はとりわけ、人材募集・斡旋に際して労働者に手数料または関連経費を請求すべきではないとの点を強調し、移民労働者を守る公正かつ実効性のある労働力移動の枠組み、制度・機構、業務の整備を求めています。コンクールは移民労働者の労働条件改善や移住に関する公的叙述に対するプラスの影響などといった「安全かつ秩序だった正規の移住のためのグローバル・コンパクト」と「難民に関するグローバル・コンパクト」の幾つかのターゲットに寄与することも期待されています。

食品工場で調理作業に従事する労働者。マシュー・ロー氏による受賞記事「悪臭を放つシンガポールの1ドル・カレー:シンガポールは移民労働者の食事代を飲み込むべきか」掲載写真

 審査員を務めたミシェル・レイトンILO労働力移動部長は、地球規模のコロナ禍が世界中で移民労働者にかつてないほどの課題を提起していると同時に、就労している国の回復戦略に対する移民の貢献と献身に光を当てるまたとない機会も表していること、移民労働者は必要不可欠な経済部門で決定的に重要な役割を演じ続けていることに注意を喚起した上で、今年のコンクールの受賞作品について、「それぞれの受入社会において変化をもたらす行為者となることへの移民労働者の決意を強調するもの」と評しています。

 ILOは応募作品の質を認めるものではありますが、そこに用いられている名称や用語、表明されている意見に対する責任は原著者のみが負うものであり、ILOによるその再掲は支持を表すものではありません。

2020年コンクール受賞者の続報

 2020年に実施された「第6回労働力移動と公正な人材募集・斡旋グローバル・メディア・コンクール」では、梗概部門が設けられ、報道企画も審査対象になりました。この部門の受賞者はコンクール賞金の助けを借りて企画を実現することが求められています。受賞者の続報をお届けします。

◎学生賞受賞者クレメンティーヌ・エベノさん
クレメンティーヌ・エベノさん

 フランスの清掃外注業務を通じた移民労働者搾取の調査を提案する報道企画「目に見えぬ不可欠な人々」によってジャーナリズムを学ぶ学生を対象とした梗概部門学生賞を受賞したクレメンティーヌ・エベノさんは、フランスのCYセルジー・パリ大学ジェヌビリエ・ジャーナリズム研究科最終学年に所属するフランス人学生です。エベノさんからこの1年を振り返る次のような報告が届きました。

 ジャーナリズムを学ぶ前に卒業した法学部で国際法と難民問題の授業を受ける機会があったことから、数年前から移住問題に個人的に強い関心があったエベノさんは、必ずしも授業で論じられない労働力移動というテーマを扱ったコンクールにとても関心をもちました。以前に接客業界で宿泊施設の主人として働いた経験があったため、低賃金の仕事に就く移民労働者がしばしば虐待的な労働条件で働いている姿を目にしていました。宿泊施設の主人はほとんどが臨時労働者として働いており、同時に複数の仕事に就き、苦情申立の仕組みも整備されていません。接客産業で働く同僚の苦難を知り、フランスのホテルで部屋の清掃係として働くスタッフの状況を扱った報道企画を提出しました。

 エベノさんはコンクールの賞金を用いて調査を実施し、証言を記録し、記事に添える画像を制作する機材を購入しました。実地調査は目を開かされる経験となり、労働組合に電話をする時に自己紹介する方法、写真の撮影や名前の公開に対する同意を得たとしても脆弱な情報源の身元を守る方法など、教室では実際に深く掘り下げないか抽象的にしか考えない類の質問など、具体的な課題に対処しなくてはなりませんでした。

 取材中にエベノさんは労働関連問題を扱うフランスの出版物『TaF(仕事の未来)』誌でインターンとして働く機会に恵まれました。その後、「待遇の悪い外注業務を請け負う清掃労働者か?」と題するエベノさんの記事は、食品配達部門の労働者の労働条件に関するもう一つの記事と共に同誌に掲載されました。掲載誌を携えて自分を信頼して情報を託してくれた人々を訪ねました。このニュース記事で労働条件が大きく変わることはないと気付いたものの、記事の共有は重要でした。掲載誌は級友にも見せ、興味深い議論を行うことができました。卒業したら、取り上げるテーマを自由に選べ、希望としては労働力移動のような重要な社会問題を扱えるように、フリーのジャーナリストになるつもりと、エベノさんは将来展望を語っています。

 ジェヌビリエ・ジャーナリズム研究科でエベノさんを指導する教員の1人であるアクセル・ブルシエ先生は、教室で学生が学ぶことを補うこの経験の有用性を評価する次のようなコメントを寄せてくれました。

 「実習による学びは当校が求めていることです。情報源とどう接触すべきか学生に講義することはできますが、実際に出かけていって証言を集めて初めて、適切なアプローチを見出すのがいかに難しいか実際に理解するのです。当校では多くの学生が、自らの経験としてあるいは地域社会における現実として、移住と個人的に幾分関わっています。しかしながら、まだとても若いので、ほとんどの学生のこの問題についての理解は十分とは言えません。現場に出かけ、課題の多様性を知り、現実はマスコミが通常描くよりも複雑な場合が多いことを目撃するのが大切なことだと思います」。

◎プロフェッショナル賞受賞者ダナ・アルマンさん
ダナ・アルマンさん

 梗概部門のプロフェッショナル賞を受賞した米国の独立フォトジャーナリストのダナ・アルマンさんは米国の移民労働者の労働条件など、人権問題に強く焦点を当てた作品を発表してきました。2018年からテキサス州とメキシコを中心とした強制労働問題を扱ってきたアルマンさんは、人材募集・斡旋の仕組みを詳しく調べるようになり、ソーシャルメディアを用いて提示される米国における偽の仕事にだまされる移民の問題を取り上げるために「悪夢と化すアメリカン・ドリーム:米国で働くために支払う代償」と題する報道企画でコンクールに応募しました。受賞から1年経ったアルマンさんから次のような報告が届きました。

 受賞後、賞金かILOの国際労働研修センターにおける労働力移動に関する研修コース受講かのどちらかを選ぶよう求められたアルマンさんは、労働力移動のパターンに関する理解を広め、他の国の状況や移民が直面している構造的な課題を知りたいと思い、後者を選択しました。講習は興味深い経験となり、この問題に情熱を傾ける専門家の話を聞き、法的枠組みや実施に関わる幾つかの課題を学ぶことによって、自分の道具箱が豊かになったように感じました。これは「善人/悪人」といった叙述法を超えて体系的な問題を探究しようとする、解決型ジャーナリズムの類に関心を有するアルマンさんのような人にとっては「非常に有用」であったとの感想を抱きました。そして、アカデミーで出会った何人かの専門家や参加者の方々とは連絡を保ち、その識見を求めて連絡を取るのに躊躇しないだろうと語っています。

 コロナ禍によって米国からの出国ができなくなったため、人材募集・斡旋に関する調査は予定より遅れることになりましたが、もちろんILOの研修で学んだことを用いて近い将来報告をまとめることを計画しています。


 以上は次の2点の英文広報資料の抄訳です。