移民労働者

ILO新刊:新型コロナウイルスによって一層不安定化した移民労働者の暮らし

記者発表 | 2021/11/22

 この度発表されたILOの新刊書は、しばしばコロナ禍の経済的ショックを真っ先に経験することになった不安定な低賃金部門で働く人々を中心に、新型コロナウイルス危機が世界中で移民労働者に壊滅的な影響を与えていることを示しています。低賃金移民労働者の流れが最も大きい移住経路の幾つかにおいて2020年上半期に行われた、移民労働者と主な利害関係者の面談などを含む一連の簡易調査をもとにまとめられた『Locked down and in limbo: The global impact of COVID-19 on migrant worker rights and recruitment(封じ込められ忘却されて:移民労働者の権利と募集・斡旋に対する新型コロナウイルスの世界的影響・英語)』は、その上、移民労働者が差別や外国人嫌悪の標的になっていることも明らかにしています。

 ウイルス感染の広がりと共に、多くの移民労働者が即決で雇用の中断・終了といった事態を被り、収入源を失いました。無給の一時帰休の対象となった人もいれば、労働時間や賃金率がカットされた人、休暇を取るよう求められた人もいます。契約条件に違反して働いた分の賃金が支払われなかった人もいます。

 移民労働者はまた、地域封鎖や国境閉鎖を理由としてしばしば立ち往生することにもなり、逆に体系的な計画や手順も踏まずに突然帰国させられた人もいます。追放の口実として公衆衛生法が用いられた場合もあります。帰国者はさらに、新型コロナウイルスの感染者と見なされ、しばしば後ろ指を指されたり、長い強制隔離期間を送ることになりました。

 このような状態は外国人労働者を多く雇用する国の場合にとりわけ多く見られ、例えば、マレーシアでは閉鎖された複数の衣料品会社の人員の半分以上を移民労働者が占め、数千人が仕事を失いました。スリランカの移民労働者は契約期間の満了を待たずに雇用契約が断ち切られ、前代未聞の数の失職者が発生しました。

 職を失うだけでなく、移民労働者はまた基礎的な保健医療や仕事及び賃金の突然の喪失に対する総合的な所得保障措置などの自国民労働者に得られる新型コロナウイルス対策の社会保障措置からも直接・間接的に排除される場合が多く、コロナ禍の影響にますますさらされました。

 職を失い、帰国することもできず、何らの助けも得られない中、多くの移民労働者が自分自身及び家族の基本的な生計費として用いるか、帰国のために貯めていた蓄えを失い、新たな借金を抱えることになっています。債務には帰国者の再統合に影響する金銭的のみならず、社会的・心理的意味合いもあり、移住が失敗して帰郷した移民は金融業者からの暴力や脅迫、虐待を受ける可能性もあります。

 コロナ禍が既に不安定な移民労働者の状態をさらに悪化させるのを防ぐため、本書は移民労働者の権利保護を求め、以下のような具体的な提案を行っています。

  • 新型コロナウイルス関連のあらゆる保健・回復総合策・サービスの対象に移民労働者を含むこと
  • 自国民との均等待遇に基づく労働安全衛生措置を実施し、職場における性差に基づく暴力やハラスメントからの保護を確保すること
  • 非正規状態にある人々を含む全ての移民労働者が無料のあるいは手頃な料金の苦情申し立てその他の紛争解決の仕組みを利用できるよう確保すること
  • 突然の経済的ショックの影響を受けた移民労働者を保護し、その安全な帰国を円滑化する効果的な仕組みを含むよう二国間協定の見直し・向上を図ること
  • 非差別を確保するように自国民との均等待遇を広げること
  • ILOの「1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)」及び「公正な人材募集・斡旋一般原則・実務指針」に沿って、移民労働者が募集・斡旋手数料または関連経費(個人用保護具、検査、ワクチン接種、接種証明、隔離などに関連したものを含む)を負担しないよう確保すること
  • 募集・斡旋団体向けにコロナ禍(あるいは類似の危機)期間中の移民労働者の監視・支援・調整に関する指針を導入すること
  • 募集・斡旋慣行の政府による監督・取り締まりの強化
  • 募集・斡旋団体による安全衛生手順に関する情報普及の確保

 本書は序章、雇用・職場に対する新型コロナウイルスの影響、国境規制、移住費用とコロナ禍における債務、各国の募集・斡旋産業の対応、移民労働者が経験した差別と外国人排斥、保健医療と社会的保護へのアクセス、送出国への帰国と再統合、勧告の8章構成で、コロナ危機が移民労働者に与えている影響の全体像を世界的な視野で描き、移民労働者の権利保護を確保する貴重な提案を提示しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

移民労働者、難民、その家族の社会的保護

 

移民労働者、難民、その家族の社会的保護(英語・1分51秒)

 社会保障は移民労働者や難民もその生涯を通じて享受すべき基本的人権です。しかし、進歩は見られるものの、世界中で41億人が社会的保護を得られないでいます。これには数百万人に上る移民労働者や難民、その家族が含まれています。この保護ギャップは不平等及び差別と共に新型コロナウイルス危機の中で悪化してきました。

 合計で1億6,900万人に上る国際的な移民労働者の大半が各国の社会的保護制度の適用から漏れています。それは保健医療などの必要不可欠な業務を含み、低技能の臨時労働、季節労働、不定期労働に従事しているためです。

 サミア・カジ・アウルILO労働力移動専門官は、生涯一つの国で働く国内労働者と比べ、移民労働者や難民は社会的保護の適用を阻む特別の障害に直面する可能性があると指摘し、この障害に含まれるものとして、自らの権利に関する限られた情報、法的制約、国家間の調整不足、アクセスを阻む複雑な手続きを挙げています。

 ILOは国際社会保障協会(ISSA)と協力して移民労働者、難民、その家族に社会的保護を広げる多様な行政・政策選択肢に関する実務的な手引きを作成しました。詳しくはこのILOの新しい手引き『Extending social protection to migrant workers, refugees and their families: A guide for policymakers and practitioners(移民労働者、難民、その家族への社会的保護の拡大:政策策定者及び実務者向けガイド・英語)』をご覧ください。

 社会的保護の権利を全ての人に実現する方向に各国が一歩でも近づくにはさらなる努力が必要です。

 詳しい情報をお知りになりたい方は、労働力移動に関するテーマ別ページ(英語)にアクセスするか、#RightsMigrateTooのタグを用いて検索してみて下さい。