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新型コロナウイルスとインフォーマル経済

ILO新着資料:非公式な仕事が支配的な中南米・カリブの労働市場の不十分な回復

2021/09/8

 ILO中南米・カリブ総局から2021年9月8日に発表された技術資料は、中南米・カリブの経済回復はコロナ禍の中で失われた雇用を回復するには不十分であり、高失業率と非公式(インフォーマル)な職業の存在の強さを特徴とする労働市場を生み出していると記しています。2021年中南米・カリブ労働概観シリーズの技術資料『Employment and informality in Latin America and the Caribbean: An insufficient and unequal recovery(中南米・カリブの雇用と非公式性:不十分で不平等な回復・英語)』は、最近数カ月の域内の労働市場、所得、不平等問題に関して検出された変化を分析すると共に、経済活動の再開が一部で見られる中で、雇用回復の状況と危機の影響を取り上げています。

 2021年第1四半期のインフォーマル就業者の規模を「独立労働者の約76%、雇用者の3分の1強」と推定するこの資料は、データが得られる域内諸国の統計をもとに、2020年半ばから2021年第1四半期の間に創出された仕事の約7割がインフォーマルなものであることを示した上で、「以前は公式(フォーマル)だった雇用のインフォーマル化を指摘するには時期尚早に過ぎるものの、過去の危機の経験に鑑みると、これは相当の潜在的危険」をはらんでいると記しています。

 コロナ禍の結果としてのインフォーマル性の動きを分析した本書は、他の危機と違い、今回はインフォーマルな職業の増加もそれがフォーマルな仕事を失った人の避難場所を提供することもなかった中でのこの非典型的な行動様式に光を当てています。健康危機に対処するために必要であった措置は反対に、インフォーマル就労を破壊し、社会的保護の安全網も時間短縮やテレワーク勤務の選択肢もないインフォーマル就労者の収入を低下させる強い相関的な影響力を持ち、一部の国ではインフォーマル就労者率の一時的な低下にもつながりました。しかしながら、インフォーマル就労の影響力がもっと強い新たなシナリオの下では、多くの国でインフォーマル就労者率がコロナ禍以前の約51%と同じか、場合によっては上がっている可能性があります。

 インフォーマル性の増加と並び、地域の雇用回復は不十分で、とりわけ新型コロナウイルス危機が最悪期にあった2020年第1~第2四半期には4,300万人強の就業者数の減少が見られたのに対し、その後、2021年第1四半期までに回復されたのは約2,900万人に過ぎないといったように、減少分を十分に補うほどの雇用増は見られず、失われた雇用の約3割はまだ回復されていません。

 年初には労働市場の重要な指標の低迷も見られ、前年同期比で見ると、2021年第1四半期の地域の平均就業率は3.5ポイント減の52.6%、労働力率は2.6ポイント減の59%、失業率は2ポイント増の11%となっています。これは3,200万人ほどの失業者が積極的に仕事を探していても見つからない状況にあることを意味します。

 今回の危機の特殊性として労働力率の低下を挙げることができます。これは数百万人の人々が仕事が得られない見込みから労働力を抜け出る方を選んだことを意味しており、この多くが再び仕事を探し始めれば危機後に収入を必要としている人々に加わることになり、失業率とインフォーマル就業者率の両方に圧力が加わることになります。

 本書はまた、この危機による域内の就業者と収入の減少、貧困増と不平等化の影響は女性、若者、低技能者に不均衡に大きいことも示しています。

 本書発表に当たり、ビニシウス・ピニェイロILO中南米・カリブ総局長は、「未曾有の危機後の状況に対処するためにこの地域が必要としている数の仕事も必要としている質の仕事も創出されていない」と指摘した上で、労働市場の概観を「複雑で多大な課題を提示する」と表現しました。そして、「2021年の雇用の部分的な回復は、一般的に不安定で、賃金は低く、社会的保護も権利も伴わないインフォーマルな仕事に率いられており、この点で、インフォーマル労働、低収入、不平等の密接なつながりが一層顕著になってきています」と説いています。

 本書の著者であるロクサナ・マウリツィオILO労働経済専門官は、女性の状況について、次のように指摘しています。「数十年にわたって労働力率が上昇してきた女性の労働力率が低下し、15年以上も前と同じくらい低くなっています」。雇用回復が不十分な経済回復を特徴としている地域の労働市場の見通しについては、「より多くのフォーマルな仕事の創出を下支えするような、包括的で合意に基づき、幅広い対象を含んだ、人間を中心に据えた政策課題の採用がこの地域には必要」と説いています。

 本書は、雇用創出の改善に特に焦点を当てた措置は、危機の継続並びに社会及び経済に長く傷跡が残るのを予防することになろうとし、さらに、新たな企業の創出や危機を何とか切り抜けることができた企業の生産性を高めるようなものを含む生産装置を立て直す戦略と共にこの措置を実施する必要性を説いています。そして、「労働者集団毎にばらつきのある雇用回復率と貧困水準や不平等水準の上昇は、経済成長の深刻な足かせになるだけでなく、地域の社会不安の度合いを高める」可能性に注意を喚起しています。

 以上はILOカリブ諸国ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所によるリマ発英文記者発表の抄訳です。

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