船員のディーセント・ワーク

ILO/国際海事機関共同声明:即時に医療が利用できることを切実に必要としている船員たち

記者発表 | 2021/10/06

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行によって課されている制約を理由として、数十万人の船員が上陸の自由を制限されています。ILOと国際海事機関(IMO)はこのたび、両機関のトップ名で、港湾を有する国々及び沿岸国に向けて、船員が医療を受けることを許すよう呼びかける共同声明を発表しました。この問題を「生死に関わる事項」と表現する共同声明はまた、世界貿易に対する船員の貴重な貢献を認め、船員を基幹労働者に指定し、新型コロナウイルス・ワクチン接種の優先対象に含むことも求めています。

 ガイ・ライダーILO事務局長と林基澤(イム・ギテク)IMO事務局長は、「船員に対する医療上の援助義務の確認及び船員のワクチン接種計画の加速化」と題する共同声明において、「『新型コロナウイルスの世界的大流行の中で船員が陸上で医療を受けるために即時に上陸できることに関する港湾国及び沿岸国に対する勧告』が発せられてから約14ヵ月が経過したにもかかわらず、船員はいまだに必要な時にそのような医療を受けるのに苦労している」と記した上で、「加盟国、海事産業、社会的パートナーである労使団体、船員自身の訴えが、この船員の苦境を再び前面に押し出した」として、新型コロナウイルスを理由とする制限によって船員が医療を受ける上で直面している困難を概説し、「船員が必要とする時にはいつでも遅滞なく陸上で医療を利用できるよう確保し、必要が生じた時には資格を有する医師及び歯科医師が船舶を訪れることを許可することによって船上における医療上の援助を提供する義務」に光を当てています。そして、「そのような医療を受けることは、船舶で勤務中に病気になった船員にとって生死に関わる事項になり得る」点に注意を喚起し、「過去18ヵ月にわたり、コロナ禍の中でグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)を維持し、しばしば巨大な個人的困難に直面しつつも働き続けている人々を支える最大限の努力」を国際社会に呼びかけています。

 ILOの「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」は、自国の領域内の船上で働く船員が緊急医療を必要とする際には、歯科診療を含み、陸上の医療施設を利用できるよう確保することを加盟国に求めています。医療上のものを含む援助を、遭難している船員に提供する法的義務は、IMOの「海上人命安全条約(SOLAS)」、「海上捜索援助条約(SAR)」、「国際海上交通簡易化条約(FAL)」にも内在している要素です。

 ILOとIMOのトップによる声明はまた、国際貿易の円滑化において他の海事人員が果たしている役割を認め、可能な限り、ワクチン接種においてこういった人々も優先させることを各国政府に奨励しています。

 現在、自国領域内の指定された港で船員ワクチン接種計画を実施しているか、そうする意思を表明した国は24カ国に上ります。声明はこれらの国々に対する心からの感謝を表明しつつも、「政府機関、産業、労働者団体、船員福祉団体は船員にワクチンを届け、接種を円滑化するためにたゆまなく働き続けているものの、やるべきことはまだ多く残っており、他の国連機関、各国政府、産業団体と共に、船員の現下のニーズに対処し、その基本的な権利を守り、船員が国際経済の円滑化を続けられるように働き続ける」所存を示し、国際海運に従事している船員のワクチン接種を中心に、さらに一歩踏み出して取り組みを加速化することを求めています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。