企業調査:ベイルート

ベイルートにおける爆発事故からの立て直しに苦闘している企業

記者発表 | 2021/08/10
ベイルートの爆発から1年が経ってもいまだに苦しい状況にある事業主の証言(アラビア語・英語字幕付・5分28秒)

 2020年8月4日にレバノンの首都ベイルートの港で発生した爆発は、港とベイルートを広範囲にわたって破壊し、死傷者も家を失った人も数千人に及ぶ甚大な被害をもたらしました。この度発表されたILOとファフォ労働・社会研究所(Fafo)による調査研究は、多くの小規模事業が依然として様々な課題に直面しており、その内の幾つかは爆発の直接的な影響を越えていることを示しています。

 ILOのレバノンにおける雇用集約型基盤構造計画に資金を拠出しているドイツ開発銀行を経由したドイツ政府からの支援、そして「移動を強いられた人々と受入社会の展望改善パートナーシップ(PROSPECTS)」の枠組みの下でのオランダ政府からの支援によって作成されたこの調査報告は、2020年8月の爆発後に、中小・零細企業1,664社を対象に、新型コロナウイルスの世界的大流行が事業に与えている影響に加えて、爆発が企業とその労働者に及ぼした影響を評価する調査、そしてその後2021年8月に、1,664社の中から27人の事業オーナーを抽出し、事業の現状について聞いた話をもとにまとめられています。

 多くの事業にとって、爆発は新型コロナウイルスの世界的大流行とレバノンの経済的・政治的危機によってもたらされていた既に困難な事業環境に新たな課題を追加するものとなりました。爆発後、多くの事業が商品及びサービスに対する需要の漸減、原材料費の高騰、ハイパーインフレ、停電に直面しており、これは将来に不安を抱かせるものとなっています。

 例えば、食料雑貨店の店主は、多くの顧客が停電によって冷蔵庫に食品を長く保存できないため、生鮮品の買い控えが見られることを報告しています。原材料を入手するための費用の上昇は商品価格の上昇につながり、顧客の需要を押し下げていると報告する事業主もいます。もう一つの結果として、主として供給業者その他の関係取引先を債権者とする企業債務の増加も報告されています。爆発によって引き起こされた社屋構造の被害に関連した経費の累積もあります。

 一時的または永続的に事業を閉鎖した企業は調査対象企業の14%に達しています。爆発前は32%が黒字企業であったものの、爆発後はわずか3%に低下し、逆に爆発前は28%であった赤字企業が爆発後は85%に増加しています。

 爆発によって引き起こされた損害に加え、事業の縮小は新型コロナウイルスの世界的大流行と密接に関連しています。経済的な困難に対処するために調査企業は従業員の賃金を平均3分の1減らしており、これは最終的に企業が頼っている消費者の購買力の低下に寄与しています。

 調査結果には、影響を受けている中小・零細企業を直接支え、より幅広い体系における弱点に対処することによって、将来的なショックに対する企業の強靱性を高めるような提案が含まれています。これには短期的には、事業継続性研修や事業モデルの調整を図り、緊急時対策を立てる助けを提供する個別指導の形での、影響を受けた企業に対する技術支援とコーチングの提供が含まれています。港の爆発後に社屋の修繕・再建に向けた支援がまだ届いていない企業を対象にした助成金や賃金補助を伴うべきことも提案されています。

 より長期的には、より調整を図った支援を提供するために、全国的な中小・零細企業の育成計画や、社会的保護制度への組み込みなどの、非公式(インフォーマル)事業の危機対処力を高め、公式(フォーマル)経済移行の道を開くような、インフォーマル経済で事業を営む企業に合わせた特別対応も求められています。

 ILOのマハ・カッター・アラブ地域強靱性・危機対応専門官は、企業がレバノンに影響している相互に接続した多重危機の中で悪循環に陥っているように感じていると説明し、この調査研究はベイルートの爆発その他の差し迫った課題が小規模事業、労働者、労働条件に与えている影響の全体像を明確に示しているとして、ここで見出された事項が包括的かつ調整を図った形で企業を支援する国家計画を通じて、短期のみならずより長期的にもこういった全ての課題を考慮に入れた対応策を設計する助けになることへの期待を示しています。


 以上はILOアラブ総局によるベイルート発英文記者発表の抄訳です。