世界の雇用及び社会の見通し2021年版

図解物語-デジタル労働プラットフォームは公正な競争と人間らしく働きがいのある仕事を生むことができるだろうか

 先般発表された『世界の雇用及び社会の見通し2021年版:変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割』は、世界100カ国1万2,000人の労働者、70社の企業、16社のプラットフォーム企業、14のプラットフォーム労働者団体への調査とインタビューをもとにまとめられました。この図解物語では、調査/インタビュー結果の一部を図表や映像などで紹介することによって、デジタル労働プラットフォームが世界中の労働者と企業に与えている影響、プラットフォーム経済に対する整合性のある規制が緊急に必要な理由を示しています。

 インターネットやスマホ・アプリなどを用いて利用者あるいは顧客と労働者を結びつけるデジタル労働プラットフォームは今や現代生活の重要な一部となり、タクシーの手配や料理の配達、その他様々なオンラインサービスが利用できます。ウーバーやゴジェック、デリバルー、ラッピ、アップワーク、トップコーダーなどのプラットフォームを経由してギグと呼ばれる単発的な仕事を請け負う労働者、すなわちギグワーカーあるいはプラットフォーム労働者はこの10年、世界的に増えてきています。

 デジタル労働プラットフォームは世界的な規模で幅広く革新性(イノベーション)を解き放つことによって労働者、事業体、社会に前代未聞の機会を作り出しているものの、同時にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と公正な競争に対する深刻な脅威となっています。

プラットフォーム労働者の物語:ポルトガルのセルジオ・サントスさんとケニアのマーシー・オソンゴさんが自らの経験と課題について語ります(英語・4分11秒)

デジタル労働プラットフォーム:新たな事業形態・働き方

 近年、デジタル技術は劇的に変化し、経済の様々な部門に浸透し、労働市場の伝統的な基盤をその中核まで揺るがしています。情報通信技術(ICT)革命とインターネットは新たな作業工程や製品の波を起こし、競争と生産性の伸びに拍車をかけました。これは仕事と事業の新たな組織形態であるデジタル労働プラットフォームの普及につながりました。オンライン労働を円滑化させたり、労働者をタクシーや配達サービスの提供に直接従事させるデジタル労働プラットフォームは急激に成長し、2010年に世界全体で142以上であったものが2020年には777超と5倍の伸びを示しています。

図:世界の現役デジタル労働プラットフォーム数
注:現時点で現役のプラットフォームのみを含む。出典:Crunchbaseデータベース。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 プラットフォームは、フリーランスの労働者などがオンラインで微小な作業であるマイクロタスクや競技プログラミングなどの作業を遂行する「インターネット基盤型オンライン・プラットフォーム」と、タクシーや配達、家事サービス、保育・介護などのケアサービスを特定の位置に所在する人が直接遂行する「活動地点基盤型プラットフォーム」の二つで構成されています。

図:ベンチャーキャピタルその他投資家からの投資総額
注:プラットフォームの数と投資総額に関するデータが得られる期間:インターネット基盤型オンライン142(1998~2020年)、タクシー61(2007~20年)、配達164(1999~2020年)、混合型5(2010~20年)。出典:Crunchbaseデータベース。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 デジタル労働プラットフォームの成長は主にベンチャーキャピタルファンドの資金に支えられています。中でも資金投入が集中しているのはタクシー部門であり、サービスの提供が数社に独占されているため、赤字続きでも運営・事業拡大が可能になっています。

地域別特定種別デジタル労働プラットフォームの推定年間収益(単位:100万ドル)

*合併または買収されたプラットフォーム 注:収益データが得られるプラットフォーム数:インターネット基盤型オンライン106、タクシー26、配達101、混合型5 出典:プラットフォーム企業による米国証券取引委員会への届け出、年次報告、Owlerデータベース。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 デジタル労働プラットフォームの世界の収益は北米、アジア、欧州に集中しています。

伝統的事業形態とデジタル労働プラットフォームの違い

 プラットフォームは俊敏で、その作業編成は従来の事業体とは根本的に異なっています。事業と顧客を労働者に結び付け、仕事の未来に大きな影響を与えるような形で作業工程を変化させています。プラットフォーム・ビジネスモデルには次のような特徴があります。

  • ネットワーク効果:プラットフォームの成功はネットワーク効果、すなわち顧客や労働者など、活動を円滑化し、成長を許すのに十分な数の利用者をあらゆる方面から引き付けることができるか否かにかかっています。
  • 全てに君臨するのはデータ:プラットフォームはアルゴリズムを用いて労働者と顧客または利用者のマッチングを行います。アルゴリズムによるマッチングの主な要素として、評点、顧客または利用者による評価、労働者の技能水準、仕事の諾否やキャンセルの有無などが挙げられます。アルゴリズムはまた、労働者のモニタリング、追跡、評価を行い、それによって作業工程を組織します。
  • 軽量資産:プラットフォームは固定資本や工場、倉庫、従業員にはほとんど投資せず、代わりにクラウド基盤構造に投資し、利用者(顧客と労働者の双方)の技能やアイデア、物理的な資産に依存することによって高い費用効果による急成長が可能になっています。
  • ベンチャーキャピタルによる資金調達:プラットフォームの財源は主にベンチャーキャピタルファンドです。例えば、タクシーのプラットフォームは新規市場に参入する時、利用者を引き付けるためにベンチャーキャピタルを用いて気前の良い補助金やボーナスを提供することによって急成長しますが、十分な数の利用者が集まると、補助金を減らし、果てには運転手に請求する手数料を引き上げさえします。ベンチャーキャピタルファンドによってプラットフォームは非常に長期にわたって赤字が出ても営業を続けることができます。例えば、ウーバーは2009年以降、28回にわたるベンチャーキャピタル増資によって25.2億ドルを募り、69カ国にサービスを拡大しましたが、まだ利益を出すには至っていません。
  • 価格設定戦略:プラットフォームは利用者を引き付けて増やし、ネットワーク効果を高めるために、例えば、各種手数料や会費など、様々な方法を用いています。ビジネスモデルのカギを握るものとして、ボーナスや特需型値上げ、報酬、さらにプロフィールの可視性を上げたり、優先的なプロジェクト参加機会を付与するといった潜在的給付を挙げることができます。労働者に請求する手数料もまた、プラットフォームの収入に相当に貢献しています。2019年にアップワークの収益3億ドルの62%を労働者に請求した様々な手数料が占め、38%が顧客からの収入でした。しかしながら、この慣行は仲介・斡旋機関や使用者によるそのような手数料の請求を禁止している国際労働基準に違反している可能性があります。
  • プラットフォーム統治原則:労働者、顧客、事業体はプラットフォームに参加するために、そのサービス契約条件を受諾する必要があります。排他性条項、仕事の諾否、アカウント解除、紛争解決、データ使用などの諸面を網羅するこの契約はプラットフォーム側が一方的に決定する傾向があり、これはプラットフォームが労働者の労働の自由に相当の管理権を行使することを可能にし、顧客や企業の労働者との関係を左右する可能性があります。

伝統的な事業体にとっての意味

デジタル労働プラットフォームの隆盛は伝統的な事業に機会と課題の両方を提示しています。様々な部門を代表する85の事業体に対してILOが行ったインタビュー調査は、デジタル労働プラットフォームがいかに伝統的な事業に挑み、その変容を招いているかを示すものになっています。

 

  • 機会:プラットフォームは伝統的な事業に多様な業務、サービス、小売活動を外注する新たな方法を提供しており、これは組織の業績を向上させています。事業は人材採用、経費節減と効率性改善、イノベーションのための知識入手の主に三つの目的からインターネット基盤型オンライン・プラットフォームを利用しています。プラットフォームはまた、新規事業の成長を助け、企業が事業の方向性を変え、より広い市場にアクセスすることを可能にしてもいます。
  • 課題:一方でプラットフォームは、伝統的な事業にとって大いに脅威となる存在です。データやアルゴリズムを用いた価格設定や需給予測、消費者選好のターゲティング、低コストあるいはゼロコストによるサービス提供といった、多くのプラットフォームの戦略は、中小企業を中心に、他の企業に非常に困難な競争を強いることになっています。プラットフォームが享受している利点は不当競争につながる可能性があり、適正な規制枠組みの欠如によって問題はさらに強められています。とりわけ社会保障や労働条件、紛争解決に関し、伝統的な事業とプラットフォーム事業の両方に同じルールが適用される平等な活動の地歩が確保される規制が必要です。

デジタル労働力:ギグワーカーの姿

 プラットフォームには2種類の労働者が関与しています。一つはプラットフォームに直接雇用されている中核人員であり、もう一つはプラットフォームが単発的な仕事を仲介するギグワーカーです。複数の国と様々な産業部門にわたる1万2,000人の回答者から得られた調査結果は、デジタル労働プラットフォームを用いる労働者像を初めて包括的かつ大規模に示すものとなっています。調査結果から示される典型的な利用者像は年齢35歳未満、都会あるいは郊外に住む男性です。インターネット基盤型オンライン・プラットフォームを利用する労働者の6割超が高学歴者であり、タクシー運転手や配達労働者のようなアプリを基盤とする労働者の場合も2割超を高学歴者が占めています。これは労働者の技能水準に見合った地元の雇用機会の不足などといった雇用事情を反映するものかもしれません。インターネット基盤型オンライン・プラットフォームの場合は男女比のバランスが若干取れているものの、プラットフォーム労働者は依然として圧倒的に多くを男性が占めています。

インターネット基盤型オンライン・プラットフォーム労働者の平均年齢

種類 平均年齢(歳)
プラットフォーム種別
マイクロタスク 33
フリーランス 33
競合プログラミング 22
開発水準別
先進国 35
途上国 30
国別調査
中国 27
ウクライナ 32
性別
男性 31
女性 33
計(中国とウクライナを除く) 33
31

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

労働者の平均年齢(部門別)

種類 平均年齢(歳)
タクシー
アプリ基盤型 36
伝統的労働者 44
配達
アプリ基盤型 29
伝統的労働者 31

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

インターネット基盤型オンライン・プラットフォーム労働者の教育水準

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。
図:タクシー運転手の教育水準
出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。
図:配達労働者の教育水準
出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

インターネット基盤型オンライン・プラットフォーム労働者に占める女性回答者の割合

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

タクシー運転手に占める女性回答者の割合

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

配達労働者に占める女性回答者の割合

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 アプリを基盤とするタクシー運転手(84%)や配達サービスに従事する労働者(90%)の場合は、プラットフォーム労働が主たる収入源になっている場合が多く、インターネットを基盤とする労働者の場合は、途上国の女性を中心に、全体の約3分の1について主たる収入源になっています。

下記の5要素を図示したもの
出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査

オンライン労働を主たる収入源とする回答者の割合

種類 オンライン労働を
主たる収入源とする
回答者の割合(%)
プラットフォーム種別
マイクロタスク 32
フリーランス 59
競合プログラミング 3
開発水準別
先進国 29
途上国 44
国別調査
中国 22
ウクライナ 22
性別
男性 29
女性 32
計(中国とウクライナを除く) 36
30

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 インターネットを基盤とする労働者(86%)の場合も配達プラットフォームを利用する労働者(69%)の場合もほとんどがもっと仕事を増やしたいとの希望を表明しています。十分な仕事を請け負えない理由としては、労働者の供給過多、仕事の不足が挙げられます。加えて途上国を中心に多くの労働者がプラットフォームや顧客が課す制限によって一部の仕事や高給の仕事から締め出されています。これは労働者の自律性や就労機会、報酬に深刻な悪影響を与えています。

オンライン労働をもっと多くすることを希望する労働者の割合

種類 オンライン労働をもっと多くすることを
希望する労働者の割合(%)
プラットフォーム種別
マイクロタスク 88
フリーランス 89
競合プログラミング 88
開発水準別
先進国 85
途上国 91
国別調査
中国 82
ウクライナ 85
性別
男性 85
女性 88
計(中国とウクライナを除く) 88
86

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

仕事の機会に関するオンライン労働者の経験

セルビアのデュサン・ミハイロビッチさんの物語(英語・3分2秒)
コロンビアのラウラ・カルドーナさんの物語(英語・2分35秒)

ギグワーカーになる三大動機は追加収入、仕事の柔軟性、これに代わる雇用機会の欠如

 柔軟な就労時間や仕事を選択できる自由、どこでもいつでも働ける選択肢がプラットフォーム労働の人気を高めています。追加収入を得るため、あるいは他の就労機会がないためにプラットフォーム労働に従事する労働者もいます。しかし、プラットフォーム労働の就労条件には低収入や収入の変動の激しさ、不当な労働者のアカウント停止、限られた就労・社会的保護機会、複数プラットフォーム接続の制限など多くの課題が存在します。実質上、労働者の自律性を制限する形で、アルゴリズムを用いた仕事のプロセスや業務成績の管理が行われています。人並みの暮らしを得るために長時間労働に陥る場合も多く、これは仕事と家庭の両立に影響を与え、ストレスを生む要因になる可能性もあります。

デジタル・プラットフォームで働く動機

出典:ILOによるグローバル調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。
デジタル・プラットフォームで働く動機:タクシー部門
出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。
デジタル・プラットフォームで働く動機:配達部門
出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 インターネットを基盤とするオンライン・プラットフォームの労働者の平均時給は4.90ドルですが、無報酬労働時間を考慮に入れると3.40ドルに下がります。

インターネット基盤型オンライン・プラットフォームにおける時間当たり収入額(単位:米ドル)

  男性 女性
平均 中央値 平均 中央値 平均 中央値
プラットフォーム種別 フリーランス 7.7 5.4 7.4 4.8 8 5.8
マイクロタスク 3.3 2.2 3.3 2.1 3.3 2.2
国別調査 中国 2.7 1.8 2.8 1.9 2.3 1.5
ウクライナ 3.2 1.4 3.8 1.9 2.7 1.1
先進国 フリーランス 12.6 9.3 14.1 10 11.2 8.8
マイクロタスク 4 3 4.3 3.3 3.7 2.7
4.5 3.3 4.8 3.6 4.2 3
途上国 フリーランス 5.5 3.8 5.1 3.5 6.1 3.8
  マイクロタスク 2.1 1.2 2.1 1.2 2 1.2
  2.8 1.4 2.6 1.4 3.4 1.8
(中国とウクライナを除く) 3.9 2.5 3.8 2.3 4 2.6
3.4 2.1 3.5 2.2 3.4 1.9

出典:ILOによるグローバル調査及び国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

タクシー及び配達部門労働者の時間当たり収入額(単位:米ドル)

タクシー 平均 中央値 配達部門   平均 中央値
チリ アプリ基盤型 7.2 6.8 アルゼンチン アプリ基盤型 2.3 2.1
伝統的労働者 3.7 3.4 チリ アプリ基盤型 3.4 3.2
ガーナ アプリ基盤型 3.4 3.3 伝統的労働者 5.1 4.9
伝統的労働者 1.7 1.5 中国 アプリ基盤型 3.2 3.1
インド アプリ基盤型 1.1 1.1 ガーナ アプリ基盤型 0.9 0.7
伝統的労働者 0.6 0.6 インド アプリ基盤型 1.2 1.1
インドネシア アプリ基盤型 1.7 1.5 伝統的労働者 1 1
伝統的労働者 1.4 1.1 インドネシア アプリ基盤型 1.2 1.2
ケニア アプリ基盤型 2 1.9 ケニア アプリ基盤型 1.5 1.4
伝統的労働者 1.6 1.3 伝統的労働者 1.1 1
レバノン アプリ基盤型 8.2 7.8 レバノン アプリ基盤型 3.4 3.3
伝統的労働者 3.7 3.6 伝統的労働者 2.4 2.2
メキシコ アプリ基盤型 5.3 4.9 メキシコ アプリ基盤型 2.8 2.6
伝統的労働者 2.9 2.8 モロッコ アプリ基盤型 1.7 1.6
モロッコ アプリ基盤型 2.8 2.7 ウクライナ アプリ基盤型 3.5 3.2
伝統的労働者 1.9 1.4        
ウクライナ アプリ基盤型 5.8 5.6        
伝統的労働者 4.9 4.4        

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 アプリ基盤型のタクシー運転手や配達労働者の場合は、仕事を拒否またはキャンセルすると、悪影響が出る場合があります。

仕事を拒否またはキャンセルすると影響があると回答したアプリ基盤型タクシー部門及び配達部門の労働者の割合(%)

国名 アプリ基盤型
タクシー
アプリ
基盤型配達
アルゼンチン - 39
チリ 34 58
ガーナ 31 45
インド 56 77
インドネシア 48 49
ケニア 13 26
レバノン 36 15
メキシコ 53 57
モロッコ 20 18
ウクライナ 27 36
37 48

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

 アプリ基盤型のタクシー運転手や配達労働者の10人中7人までが、仕事に関連したストレスを報告しています。

アプリ基盤型タクシー部門及び配達部門における主なストレス要因

ストレス要因 アプリ基盤型
タクシー(%)
アプリ基盤型
配達(%)
交通渋滞 68 52
犯罪被害リスク 33 29
不十分な支払い 32 29
長すぎる交代労働時間 31 27
業務関連負傷リスク 29 44
速い運転を強いられる時間的圧力 29 43
長い待機時間 26 34
運転回数・注文数の不足 15 36
その他 5 5

注:業務関連ストレス水準が10段階評価で5以上と回答した労働者の割合(アプリ基盤型タクシー運転手の79%、配達労働者の74%)。出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

社会的保護に加入しているプラットフォーム労働者の割合はほんの小部分

 新型コロナウイルスはプラットフォーム労働者のリスクに光を当てることになりました。新型コロナウイルスの世界的大流行の中で、社会的保護の適用が弱いことはプラットフォーム労働者にとって明確な脅威となっており、その場限りの仕事に完全に依存して有給疾病休暇も疾病給付もないために、自主隔離する余裕がない人も多くなっています。10人中7人が、感染が明らかになっても補償を受けたり、有給疾病休暇を利用できないと報告しており、これは当人だけでなく、他の人々にとってもリスクとなっています。2020年8月に調査を行ったチリ、インド、ケニア、メキシコの348人の伝統的なあるいはスマホ・アプリを基盤とするタクシー運転手及び配達労働者の32%が仕事を通じた感染を非常に懸念しながらも経済的な必要性から危機の間も働き続けていると回答しています。危機はタクシー運転手の10人中9人、配達労働者の10人中7人の収入を引き下げ、既に暗雲が立ちこめていた状況がさらに悪化しています。

社会的保護給付の受給資格がある回答者の割合(%)

    健康保険 失業保険 業務災害保険 障害保険 年金
インターネット基盤型オンライン・プラットフォーム
プラットフォーム種別 マイクロタスク 61 16 21 13 35
フリーランス 16 2 1 2 6
競合プログラミング 9 4 6 2 6
開発水準 先進国 61 17 17 15 35
途上国 43 9 18 7 23
国別調査 中国 30 0 0 18 6
ウクライナ 12 5 5 4 4
性別 男性 42 13 18 12 21
女性 39 10 11 11 18
他の仕事の有無 兼業 45 14 17 13 26
専業 37 10 12 10 14
中国とウクライナを除く 53 14 17 11 30
41 12 15 12 20
タクシー
労働者種別 アプリ基盤型 51 5 27 4 18
伝統的労働者 52 3 23 3 14
配達
労働者種別 アプリ基盤型 53 7 31 6 17
伝統的労働者 40 16 31 4 23

出典:ILO国別調査。英文記事の図表からはデータ数値が入手できます。

プラットフォーム労働者の物語:米国のエリザベス・ロウさんの話(英語・3分23秒)
プラットフォーム労働者の物語:ナイロビのポリカープ・オウマさんの話(英語・2分27秒)

規制のパズル

 プラットフォームはサービス契約条件を一方的に起案しています。この条件は労働者保護に関する法律に制限されることは少なく、社会対話の過程を完全に迂回し、プラットフォームが全ての労働条件を決定している可能性があります。ILOの条約と勧告は全ての労働者に普遍的な労働に係わる権利があると定めています。デジタル労働プラットフォームの規制は複雑で、労働法やディーセント・ワークに関わるその他の法・政策が関与します。社会的保護や団体交渉といった労働者の普遍的な権利のプラットフォーム労働者への適用、公正な競争や公正なデータ利用、データ保護やアルゴリズムの説明責任の改善の確保、課税制度の改革などの課題が存在します。

契約上の地位にかかわらず全ての全てのプラットフォーム労働者に適用されるディーセント・ワークの諸原則

機会を捉える

 新たな形態の規制を含む解決策は実際、世界中で生まれてきています。清掃業務に携わる労働者を被用者として認められるようにしたデンマークの労働協約、安全衛生に関する法的基準をプラットフォーム労働者に広げたブラジルの司法決定、フランスのギグワーカーのつながらない権利とまともな値段を得る権利などの好事例解決策が存在しますが、それは散発的で規範になっていません。

 プラットフォームは複数の法域を横断して運営されている以上、国際的な政策対話と調整が不可欠です。同様に、デジタル経済が公正競争と全ての人のディーセント・ワークの力強い推進要素となるよう確保するには、プラットフォーム、政府、プラットフォーム労働者とその代表の間の社会対話が決定的に重要です。


 以上はILOの定期刊行物『World employment and social outlook 2021: The role of digital labour platforms in transforming the world of work(世界の雇用及び社会の見通し2021年版:変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割・英語)』の内容を図表やプラットフォーム労働者の証言動画で紹介した2021年2月23日付の英文図解物語の簡易版です。