ILO定期刊行物『国際労働研究ジャーナル』

『国際労働研究ジャーナル』誌最新刊発表:人間を中心に据えた新型コロナウイルス危機からの回復において重要な労働組合

記者発表 | 2021/06/24
報告書の内容を著者らが紹介(英語・5分34秒)

 2021年6月24日に開かれた記念イベントで発表されたILO労働者活動局の定期刊行物『International Journal of Labour Research(国際労働研究ジャーナル・英語)』誌最新号(2021年第10巻1/2合併号)は、「新型コロナウイルスと回復:より良い前向きの立て直しにおける労働組合の役割」をテーマとし、コロナ禍対策及び人間を中心に据えた回復の確保における労働組合の重要性と労働組合が演じる重要な役割に光を当てています。

 掲載されている8本の論文を通じて、本書は、労働者とその家族に対する危機の破壊的な影響、労働組合の権利侵害件数の急増、組合員の減少、一部の国で見られる労働組合に敵対的な環境にもかかわらず、世界中で地歩を守り、労働者とその仕事のより良い保護を支援してきた労働組合の姿を示しています。仕事を豊かに生む回復の達成、労働安全衛生制度の強化、全ての人に届く社会的保護の達成、男女平等、デジタル化、環境の持続可能性が確保された経済への公正な移行といった課題に対処する新たな戦略を労働組合が策定する緊急の必要性を概説する本書はさらに、新型コロナウイルスの世界的大流行が労働組合再活性化の機会となり得る可能性を指摘しています。

 本書はまた、組合員の増大及び堅固で包摂的な回復戦略の効果的な設計及び実施に寄与する手段としての社会対話の重要性に光を当てています。労使の合意を達成するために用いられた社会対話は全体で労働組合員数の26%の増加に寄与したデータが示されています。世界全体では83%の組合がコロナ禍対応に際して社会対話を採用し、89%あまりが政労使三者の協議に従事しています。このデータをもとに、労働者団体は新型コロナウイルスに対する政策対応の策定及び実施のあらゆる段階において、政府及び使用者団体とさらに関与すべきことを本書は提案しています。

 さらに、完全に包摂的かつ持続可能で強靱な危機からの回復過程を加速させる緊急の行動と国内外にわたる地球規模の連帯を呼びかけています。

 マリア・エレナ・アンドレILO労働者活動局長は、新型コロナウイルスの世界的大流行は、2年前に採択されたILOの創設100周年記念宣言で光が当てられた課題が現下の危機を通じてなおも大いに通用することを「劇的な形で」提示することになったと指摘した上で、「人間を中心に据えた行程表と仕事の世界における制度・機構、とりわけ労働者団体の強化なしには、社会正義も全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)もあり得ない」と説き、その点で、「今年開かれた第109回ILO総会で『人間を中心に据えた新型コロナウイルス危機からの回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ』が採択されたことは、創設100周年記念宣言のビジョンとその実施の緊急性を確認させるもの」と評価しています。


 以上は労働者活動局によるジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。