見習い実習

中国の見習い実習制度を前進させる原動力を供給

 労働市場の急速な変化と新型コロナウイルスの課題を背景に、ILOと中国は協働して質の高い見習い実習制度の実施を進めています。

長興技術学院における見習い実習

 中国では2018年に企業内指導員と地元の技術・職業教育訓練機関の教員が共同で見習い実習生を指導する企業内見習い実習制度が全国的に導入されました。しかし、年間を通じて高い生産水準を維持しつつ、見習い実習に投資するのを企業に納得させることを中心として課題が残っています。訓練提供機関にとっても十分な教育資源を備えた専門教職員チームの確立は困難です。

 湖州長興技術学院の阮強志学院長は見習い実習用の教員不足がいつも問題だったと指摘します。同時に、地元の技術・職業教育訓練機関の教員の専門知識も全ての企業のニーズを満たすことはできず、結果として十分でない訓練結果と企業参加率の低さを招いていたと言います。

 より進んだ見習い実習制度を中国で推進するために、ILOはJ.P.モルガン・チェース財団から資金拠出を受けて開始した「中国における質の高い見習い実習・生涯学習プロジェクト」を通じて同国に新たな専門知識とツールを導入しました。このプロジェクトは仕事と技能のミスマッチを減らし、企業の持続可能な開発を促進し、若者の就業能力を後押しすることを目指しています。管弦ILO中国プロジェクト調整官は、「長期的視野に立てば、中国に需要に対応した持続可能な見習い実習制度を構築するためには、世界中の最善事例から学ぶ必要があります」と指摘します。

 プロジェクトはまた、企業、技術・職業教育訓練機関、政策策定者が良質の見習い実習の実施方法に関する包括的な理解を得ることも目指しています。

質の高い見習い実習制度に関するILOの能力構築ワークショップに参加した桃苗苗さん

 山東省日照市に本社を置く大規模な自動車・農機具メーカーである山東五征グループはこのプロジェクトのパイロット企業の一つとして、管理職や指導員がILOの「企業内良質見習い実習のためのオンライン講習ツール」を試行して社内における見習い実習の充実を図っています。従業員数約1万人のこの大企業は見習い実習生に訓練を提供してきた長い伝統があります。しかし、人員需要、労働市場の急速な変化、新型コロナウイルスの影響は見習い実習プログラムに打撃を与えています。

 プログラムを運営する桃苗苗さんは生産ペースが高く、訓練のための時間がほとんど取れないという問題に直面しています。「仕事の強度が高いため、各部署で見習い実習に与えられた時間の管理が難しくなっています。結果として、訓練プログラムは良い成績をあげていません」と桃さんは指摘します。そこで、桃さんはILOの支援を受けて2021年3月と4月に重慶市で開かれた2回の能力構築ワークショップに参加し、新型コロナウイルスの世界的大流行の中で質の高い見習い実習制度を実施する世界中の経験を学ぶことができました。「オンライン学習プラットフォームと移動式携帯端末による訓練ログを通じて訓練と監督の手順を統合することによって、訓練プログラムを社内の生産状況に合わせられることに気付きました。これは繁忙期に生産と訓練の対立を解決する素晴らしい方法です」と桃さんは評価しています。

 五征社の指導員を務める傳崔周さんはオンライン講習で伝授されたコーチング実用ヒントが印象に残ったと言います。「このコースは明確なコミュニケーションからステップを踏んだ例示に至るまで、見習い実習生が学んだことを吸収できるよう導く方法を示しています。以前はこの要素に重要な役割があるとは気付きませんでした。ILOのオンライン講習は未来の見習い実習実施方法、そして訓練を受けた見習い実習生が会社の大黒柱に成長する可能性があることを私たちに示しています」と語っています。

長興技術学院で見習い実習を提供する孔令暁上級講師

 同じくワークショップに参加した長興技術学院の孔令暁上級講師は、自らの経験について、学院が将来進む方向を形作る助けになったとして次のように語っています。「幾つかの国では、技術・職業教育訓練の指導員は単なる学校の教員よりも重要な役割を社会において演じています。これによって堅固な専門指導職員チームを構築する方法に関する新たな着想を得ることができ、企業から傑出した指導員を求めることにしました。学院で見習い実習のための指導員研修を修了した指導員に見習い実習指導員の資格を付与します。これによって教職員を拡充すると同時に熟練指導員を求める企業の需要にも応える助けになります」。

 中国における質の高い見習い実習・生涯学習プロジェクトは現在、国内二つの自治体、二つの市、そして一つの大規模産業部門に導入されており、39社、32の訓練提供機関、五つの地元主管局の計270人の参加者がこの事業計画の直接の受益者となっていますが、学んだことを実践に移すことによってより幅広い見習い実習生に恩恵が広がっています。

 桃さんはまた、社交スキル、情緒スキル、認知スキル、デジタルスキル、環境に優しいグリーンスキルなどのコアスキルのカリキュラムを見習い実習に組み込むことによって、必要に応じて従業員の職務転換を行うことが容易になるとの着想を得ました。「技術スキルの訓練とコアスキルの訓練を組み合わせることによって、自らの感情を管理し、戦略的に考える見習い実習生の能力が徐々に向上することを期待しています。コアスキルと専門スキルの両方を備えた見習い実習生は、絶えず変化する仕事の世界において自らのキャリア展望を明るくすることができるでしょう」と述べています。


 以上はILOアジア太平洋総局による2021年6月3日付の北京発英文広報記事の抄訳です。