ベターワーク

危機時の社会対話は双方に利益をもたらす

 社会対話は労使双方に得になる解決策を見出すカギを握る戦略です。ILOが国際金融公社(IFC)と展開しているベターワーク(より良い仕事)計画は、衣料品産業のグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)における国内労働法と国際労働基準の遵守度合いの改善を図り、競争力を促進することを目標に掲げ、現在、世界9カ国で実施されています。その一つであるインドネシアの参加企業は社会対話が労働者の福祉と事業の継続性の両方に利することを示しています。

職場の安全性を高めるために労働者は保健手順に従うことを求められています
 社会対話は労使双方に得になる解決策を見出すカギを握る戦略です。ILOが国際金融公社(IFC)と展開しているベターワーク(より良い仕事)計画は、衣料品産業のグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)における国内労働法と国際労働基準の遵守度合いの改善を図り、競争力を促進することを目標に掲げ、現在、世界9カ国で実施されています。その一つであるインドネシアの参加企業は社会対話が労働者の福祉と事業の継続性の両方に利することを示しています。

 

 西ジャワ州ボゴール県に立地する皮革履物製造会社のセパトゥ・マス・イダマン株式会社(SEMASI)に勤務するインドネシア金属労働者組合連合のマリオ・プロスタシウス書記長は、新型コロナウイルスの流行が始まってから工場の全労働者の安全を確保するために毎朝、工場の全生産施設の見回りを始めました。「これほどの規模の疾病の流行は経験したことがありませんが、労使双方のためにも生産を続ける必要がありました。そこで、保健手順の適用を確保するために毎朝工場を見回ることなどの措置について合意が達成されました」とプロスタシウス書記長は説明します。

 1,600人の労働者全員の遵守を確保することは労使の講じている共同措置の一つに過ぎません。2020年3月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がインドネシアに上陸して以来、輸出用履物の製造会社であるSEMASI社の受注高は最大7割減の急激な落ち込みを記録しました。休業間際にまで追い詰められ、労使代表が膝を突き合わせて話し合い、一時解雇はなんとしても避けることに合意しました。

 SEMASI社にはインドネシア金属労働者組合連合と独立労働者組合の二つの組合が存在しますが、労働者代表同士も和解し、団結してコロナ禍を生き残る、より良い解決策の探求に乗り出すことに合意しました。「それぞれに意見があり、合意に達するのは簡単ではありませんでしたが、事業の継続と全ての労働者及び家族の生計のために、違いに目をつぶり、最善の解決策を見出すための対話を始めることに合意したのです」と独立労働者組合トップのイワン・リドワンさんは説明します。

 対話と交渉を通じて労働者らは経済状況の改善と仕入れ業者からの注文の回復を待つ間、有給一時帰休を受け入れることに同意しました。「注意深く様々なシナリオを検討しました。当時は有給一時帰休が会社と労働者のどちらにとっても最善の解決策でした」とプロスタシウス書記長は振り返ります。

 ILOのベターワーク・インドネシア事業に参加するSEMASI社にとって社会対話は決して新しいものではなく、労使協力と社会対話がもたらす利益はよく理解しています。同社は他の参加企業と共に何年も前から職場内コミュニケーションや交渉、エンパワーメントの重要性に関する様々なオンライン研修やセミナーに参加し、支援サービスを受けてきました。ベターワーク・インドネシアのマリア・バスケス主任技術顧問(CTA)は、雇用と事業の強靱性のための社会対話を支持するものとして、労使団体が「インドネシアの輸出用衣料品・履物産業における労働者の福祉と事業の持続可能性、安全衛生を守るための協力」と題する共同公約に署名するよう便宜を図ったことを挙げ、「社会対話を通じて、労使双方に利するような、より完璧で、より容易に受け入れられ、より適した解決策が達成できると信じています」と語っています。

 これまでのところ、工場の操業が徐々に上向いてきた中、確立された労使協力は継続しています。毎日の見回りに加え、労働者代表は携帯電話のメッセージ・アプリを用いて労働者の声に耳を傾け、情報や意見を集め続けています。物理的な距離を確保するための生産現場のレイアウト調整や手洗い設備の設置、マスク着用などの提案が出されています。

 SEMASI社のヘンリー・リスティアンドリー人事・総務部長は、「私たちはひとりで働くことはできません。感染を防ぎ、安全な作業環境を確保することによってコロナ禍と戦うには、共に手を携えて働く必要があります」と語って、事業継続、生産性向上、職場における安全と健康の維持に向けて労働組合が示した公約を評価しています。

 10時から始まったプロスタシウス書記長の見回りは11時になっても終わりません。書記長は時々立ち止まって労働者に距離を確保するよう求めたり、安全手順について注意を促したり、要望に耳を傾け、情報を集めています。「これは固定費です。労働者は健康で生産的である必要があり、一方、工場は操業と生産を続けなくてはなりません」と、プロスタシウス書記長は結論づけています。


 以上はILOインドネシア・東チモール国別事務所による2021年5月5日付のボゴール発英文広報記事の抄訳です。