事象分析:ディーセント・ワーク

紛争から復興へ:イラクにおける人間らしく働きがいのある就労の促進

 1年前にバグダッドに開設されたILOの調整事務所に初代駐イラク調整官として着任したマハ・カッター調整官がイラクにおける最初の1年を振り返り、同国における雇用機会とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進に向けたパートナーとの協働について報告します。

マハ・カッターILO駐イラク調整官

 ILO駐米事務所は2021年3月10日に「紛争から復興へ:イラクにおける人間らしく働きがいのある仕事の創出」と題するオンラインイベントを開催してイラクにおけるILOの活動を紹介しました。講師としてセミナーに参加したマハ・カッターILO駐イラク調整官は、着任後の1年間を次のように振り返っています。

 カッター調整官は1年前に首都バグダッドに開設されたILO事務所に初代駐イラク調整官として着任しました。この間遭遇した最大の課題は安全保障と移動性に関連したものですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生と共に状況は急速に悪化しました。しかし、課題はあるものの、国内チームの育成、パートナーや政労使、他の国連機関との新たな関係の樹立、新規プロジェクト用の資金動員とその構築、地域における経験を活用したイラクの労働市場及び人民のニーズ対応など多くの機会も存在しました。

 人口4,000万人近いイラクはILOが活動しているアラブ諸国の中では最も大きい国の一つです。この広大な国家は古代文明と遺跡、天然資源、そして無限の潜在力で知られています。しかしながら、数十年に及ぶ紛争と多数の難民の発生によってイラクでは何年もの間、人道支援のニーズの方が開発ニーズを上回ってきました。しかし今や、紛争後再建活動の一環として、復興・開発に取り組む緊急のニーズが存在しています。

 そこでILOが登場するわけですが、イラクでディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を達成するためのディーセント・ワーク国別計画が重点を置いている主な支援分野は次の三つです。1)民間セクターの開発が新規雇用の創出を支援することの確保、2)社会的保護の拡大と強化、児童労働への取り組み、3)就労に関わる権利の促進に向けた社会対話の改善。

ILOの駐イラク調整事務所が入る国連の建物

 この計画の下でのILOの活動の最大の優先事項は雇用創出です。これはとりわけ、難民状況における脆弱な地域社会の自立の手助けを目的としています。雇用は尊厳であり、人々は自立し、独立して暮らすことを希望し、家族を扶養することを望んでいます。

 政府は経済ショックに対応する計画の一環として、公共事業を通じて雇用創出を図っていますが、ILOは雇用集約型投資計画を通じた介入を行い、脆弱な集団が大いに必要としている雇用を創出し、地元の基盤構造開発を支援しています。

 こういった介入活動を通じて、ILOは雇用集約型投資計画に対する総合的な取り組みを構築し、労働者が計画を通じて需要主導型の技能を育み、職業紹介やオンライン職業相談などの雇用安定サービスを通じて長期的には民間セクターの仕事が得られることを目指しています。ILOでは現金を基盤とした緊急活動から、より生産的で持続可能な雇用創出へと向かう移行を援助するような総合的な雇用集約型投資の仕組みを提供する標準業務手順の開発を進めています。

 また、女性や若者が起業家として自分自身で小規模事業を興すことを奨励したいとも考え、ILOの幾つかの起業家精神や金融に関する基礎能力についての上級訓練プログラムを用いてこういった事業を設立し、経営する方法についての訓練を支援すると共に金融サービスに結びつける活動も行う予定です。

 雇用創出は技能開発や社会的保護、民間セクターの開発のような重要な問題に対する入り口としてカギを握っています。

 新型コロナウイルス危機は現在の労働市場と雇用のニーズに加えて、より長期的なこの国のディーセント・ワークの優先事項に対処するために総合的な取り組みを通じて全ての優先事項を結びつける必要があることを示すものとなりました。伝統的な形で活動を実施することを妨げるあらゆる物理的な制限にもかかわらず、可能性はまだ無限大であることを学びました。私たちは労働者と労働者を雇う機関を支えるという目標を達成する助けになり得る革新的なアイデアにオープンな心を持ち続けなくてはいけません。


 以上はILOアラブ総局による2021年3月16日付の英文インタビュー記事の抄訳です。