論説記事:条約勧告適用専門家委員会

2021年の条約勧告適用専門家委員会報告書発表:ILO国際労働基準局長に聞く

 ILOの国際労働基準適用監視の仕組みの主な要素の一つである条約勧告適用専門家委員会は、ILO加盟国によるILO条約・勧告の適用を審査する任務を付託された20人のハイレベル法律専門家で構成されている独立機関です。この度発表された委員会の年次報告の主な内容について、コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長に聞きました。

2020年に開かれた条約勧告適用専門家委員会(英語・1分45秒)

 この度、昨年末に開かれた条約勧告適用専門家委員会の報告書が発表になりました。個別国の批准条約適用状況についての見解と一般報告から成るA部と雇用政策に関する条約・勧告の適用・実施状況についてまとめた総合調査報告書であるB部の2部で構成される委員会の報告書は、今年6月に開かれるILO総会に提出され、審議されます。委員会の主なメッセージについて、コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長は以下のように紹介しています。

 ILO加盟国におけるILO条約・勧告の適用を審査する任務を付託された20人のハイレベル法律専門家で構成される独立した機関である専門家委員会の中心的なメッセージは、新型コロナウイルス危機は批准された国際労働基準に基づく義務を停止するわけではなく、現下のコロナ禍の中でも働く人々の尊厳と自由を守るというILO加盟国の行った具体的な公約は継続しており、より良い立て直しを図る社会の強靱性を強める形で作用するだろうというものです。そして、あらゆる権利制限は合法性、必要性、比例性、非差別の明確に定められた限度内で行使されるべきと説いています。

 委員会はさらに、コロナ禍から生じた具体的な課題として、以下の四つを挙げています。

 一つ目は、各国が国家安全保障と公衆衛生を守るために例外的な措置を講じるに当たり、行政権の急成長が見られますが、これは国際法遵守の必要性を取り除くものではないということです。

 二つ目は、人権と国際労働基準は普遍的なものであり続けているということ、3点目は、コロナ禍によって数多くの脆弱な集団や疎外されている集団の窮状が増していますが、これは不平等を拡大するため、政策策定に携わる人々による適正な対処が必要であるということです。最後に4点目は、コロナ禍が世界全体で200万人近い船員の雇用の受け皿となり、世界貿易の9割以上を扱っている海事部門に深刻な混乱を生じさせているということです。世界中で港湾業務は中断なく続いているのに対し、船員は下船し、帰国のために諸国を通過するのがきわめて困難であるという状況に委員会は深い懸念をもって留意しました。

 ILO理事会は2020年に加盟国が年次報告提出義務を果たすのは非常に困難であることを認め、前年に提出した報告に関する補足的な情報がある場合に提出するよう求めることとし、これに従って900件近い報告が寄せられました。条約勧告適用専門家委員会は2020年の会合をバーチャル形式で開き、これをもとに国際労働基準の遵守に関わる約1,700件の見解をまとめました。専門家委員会の報告書には、日本についても「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」、「1951年の同一報酬条約(第100号)」、「1964年の雇用政策条約(第122号)」、「1981年の家族的責任を有する労働者条約(第156号)」の適用についての見解が掲載されています。

 委員会の見解は一貫して、労働条件下降の悪循環を防止し、公衆衛生を保護する合法的な措置に従い、回復と発展の好循環を追求することをILO加盟国に求めるものとなっています。国際労働基準は、効果的かつ権威ある適用監視の仕組みと組み合わせることにより、この危機の本質的な解決策の一部となり得ます。一方で、労働法による保護を弱めるような回復措置は社会の結束と安定をさらに損ない、政策策定に携わる人々がその必要性を十分に理解されているところの人民の信頼を徐々に失わせることになるでしょう。

 条約勧告適用専門家委員会はまた、2019年の会合で雇用戦略目標に関連した8本の条約・勧告の実施・適用状況を点検して『変化する景観の中での雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進』と題する包括的な総合調査報告書を採択しましたが、2020年の会合ではこれらの条約・勧告に対するコロナ禍の影響を検討した補遺を採択しました。とりわけ、新型コロナウイルスの感染を防止し、経済の安定化を図り、企業閉鎖と雇用減を減らし、非公式(インフォーマル)経済で働く人々を含み、コロナ禍の影響をもっとも受けている産業部門や集団、個人を支える措置が取り上げられています。委員会は好事例に光を当て、将来の危機に直面した際のより良い備えと強靱性に向けた勧告も行っています。


 以上は2021年2月25日付の英文インタビュー記事の抄訳です。