アジアにおける責任あるサプライチェーンプロジェクト

日本:レジリエンス構築における責任ある企業行動の役割を検証する

パンデミックからの地域レベルの回復に向けた責任ある企業行動の役割を、ハイレベル会議と産業部門別会議で明らかにする。

ニュース記事 | 2021/02/28
東京(ILOニュース) -「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムが、日本で連続して開催した最近の会議で、COVID19の大流行により、持続可能で責任あるサプライチェーンの運営を確保する上で経済や企業が直面する課題が明らかになりました。

1月に開催された最初のオンライン会議「ILO-EU-OECDハイレベルイベント-レジリエンス構築における責任ある企業行動の役割、日本からの視点」では、日本政府の高官をはじめ、欧州連合(EU)、企業、労働者団体、市民社会、主要な専門家が一堂に会し、COVID-19パンデミックへの対応とレジリエンス構築における、責任ある企業行動(RBC)と国際労働基準の役割、および持続可能な開発を目的とした貿易・投資に関する日EU経済連携協定の条項を実施するための取組みに焦点が当てられました。

ハイレベルコメントとして、⽥島浩志 外務省経済局兼総合外交経済局審議官は、COVID-19の影響で優先順位が変化したことを指摘しました。「企業規模を問わず、多くの企業が試練の時期を迎えており、その下で働く労働者の雇用の問題が焦点となっている」と述べました。

しかし最終的には、日本政府は、COVID-19の復興措置においても、RBCの普及が企業の信頼を醸成し、ビジネスを円滑にしていくための環境整備を後押しするものと考えているとした上で、「RBCは、企業の更なる国際展開につながる大きな一助となると考えている。日本政府は、EU、OECD、ILOと連携し、国際社会におけるRBCの周知を支援し、公平な 競争条件を確保した上での自由で公正な企業活動を一層促進していく」と述べました。

このテーマは、麻田千穂子 ILO事務局⻑補・アジア太平洋地域総局⻑をはじめとする多くの登壇者も同様に語っています。日本は、三者構成主義も根付いており、国際的な基準に沿った活動を行う体制が整っています。「RSCAプログラムなどのILOによる研究では、日本のサプライチェーンにおける既存の慣行とILOの多国籍企業宣言の主要な要素との間で、大きく一致するところがあることが明らかになった」と述べています。

また、最近策定された日本の「ビジネスと人権に関する国別行動計画」(NAP)についても言及されました。NAPは、人権デュー・ディリジェンスの導入を義務づけるものではなく、企業への期待を表明するものです。NAPの実施を通して、日本での人権の保護・促進および SDGs の達成への貢献を図り、企業価値および競争力の向上につなげることが目的とされています。

次に、産業部門別会議として開催されたウェビナー「グローバル・サプライチェーンにおける責任ある労働慣行の実践と持続可能性向上 ~タイにおける日本の自動車部品企業の事例~」では、これらの原則を実際に適用することが主に議論されました。

このイベントでは、ジェトロ・アジア経済研究所(IDE-JETRO)とILOが共同で実施した自動車部品分野の調査結果の発表を中心に、グッドプラクティスや関係者への実践的な推奨事例などが紹介されました。

各登壇者による発表の後、タイにサプライチェーンを持つ多くの日系企業が、原材料調達と製品の需要に迫られる中、雇用を維持するという継続的な課題に対処した経験について語りました。

その中で、サプライチェーンを通じた生産の品質・価格・納期(QCD)を管理する仕組みが、労働安全衛生(OSH)に関する取組みを推進するツールとしてすでに事業に組み込まれており、それが強固なCSRを実践するための幅広い会話への橋渡しとなっていることが、重要なテーマとして浮かび上がってきました。これは、オープンで建設的な労使間対話を導くものであり、相互信頼の上に成り立つ持続可能でレジリエントなサプライチェーンに貢献するものであることがわかりました。

戦略としては、経営のローカル化が挙げられます。ある企業では、現地トップマネジメントの大部分をタイ人にしています。また、差別のない共同事業を行うことの重要性を強調する企業もありました。

企業と労働組合の間に相互信頼の文化を確立することが重要であると考えられています。労働者は、会社の成長に貢献したことが「従業員自身のキャリア開発や生活水準の向上につながった」と実感されることが必要となるのです。