仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ

科学技術はより公平な仕事の未来を形成できるか

 科学技術は仕事の未来を形作る重要な推進要素の一つになると考えられますが、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会正義を奨励するものとなるでしょうか。それとも不平等と不安定労働を増すものとなるでしょうか。2月20日の世界社会正義の日に向けて発表された「仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ第2話」では、ソーシャル・ネットワーキング企業LinkedInの共同創業者であるアレン・ブルー製品管理担当副社長に話を聞きました。

 2月20日の世界社会正義の日に向けて前日の19日に発表された「仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ第2話」では、ソーシャル・ネットワーキング企業LinkedIn(リンクトイン)の共同創業者であるアレン・ブルー製品管理担当副社長に「科学技術はより公平な仕事の未来を形成できるか」というテーマで話を聞きました。ブルー副社長は技能ギャップ縮小における訓練の重要性、科学技術分野の技能とグリーン・スキルに対する需要増大の傾向、職種間移動におけるネットワーキング・ギャップ解消の重要性を指摘し、科学技術はさらなる多様性形成の基盤となり、それによって社会正義に寄与すると説いています。以下はこの抄訳です。

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 職業人のネットワーキングとキャリア開発のためのオンライン・プラットフォームとして生まれたLinkedInですが、今は調査研究や訓練、求人・求職案内を扱うまでに成長しています。150カ国24言語にわたる7億2,500万人近い登録会員の存在は、仕事の世界で今起こっていることを示すまたとない情報源になっています。ILOは今年1月、同社と2年間に及ぶデータ洞察に関するパートナーシップ関係を構築しました

 ブルー副社長と仕事の未来の係わりは2012年に遡ります。その年、米国大統領選挙に関するパネル討議に参加した氏が出会ったコミュニティ・カレッジの学長から、技能ギャップを解消する手段として、近隣の企業から求められている技能についての情報を入手し、その技能に関する訓練を提供したことによって学生の就職率が8割に上昇したとの話を聞いたことによって、訓練ギャップを解消するために自社に何ができるかを考えるに至りました。ちょうどその頃、LinkedInのネットワークも十分に大きくなり、7億2,500万人の会員の就いている仕事や卒業した学校、行っている活動に関する情報は世界中の経済で何が起こっているかを知る貴重な情報源となっていました。ここから仕事の世界の現状や今後だけでなく、それに対する取り組みにも関心を抱くようになりました。

 現状から判断される今後の仕事は、科学技術分野の仕事か科学技術によって可能になる仕事のいずれかです。急速に成長している仕事、今後成長する大きな潜在力を秘めた仕事は、工学系の仕事やデータ関連の仕事、機械学習に関する仕事か、科学技術によって可能になっている顧客サービスやマーケティングの仕事です。例えば、マーケティングに携わる人ならば、今はフェイスブックやグーグルの活用法、ターゲット広告の使い方、仕事のためになるように科学技術を用いる方法を知っている必要があります。

 科学技術の革命が不平等を拡大するのではないかとの人々の懸念に対処する方法として、氏は次のように述べています。どんな時代でも求められる仕事の種類と技能の種類には傾きがあります。例えば、電話通信の初期にベル研究所は自分たちでこの技術を理解する人々を訓練し、新しい仕事に向けて養成しました。今日の世界は正にそのような状況にあり、企業が自ら、需要の高い仕事に向けて人材を養成しようとしています。問題はその機会が全ての人に平等に与えられるか否かという点です。

 そのために取り組むべき最初の課題は訓練ギャップの問題です。例えば誰もがコンピュータで駆動する5軸大型製材のこのような科学技術で可能になった道具の使用方法を学べるかというとそんなことはありません。問題は科学技術を活用してこのギャップを縮小する方法があるかという点ですが、オンライン教育の可能性を挙げることができます。これにはもちろんアクセスの問題や、使用者がオンラインで取得した学位に注意を払うかというもっと重要な問題もあり、この克服が必要です。

 科学技術、そして環境分野のグリーン・スキル、企業は現在、このような技能を備えた人材を大いに欲しています。例えば、LinkedIn社では、工学見習い実習プログラムであるリーチと、LinkedInにおける学習と新たな採用手続きを組み合わせたシャインの二つのプロジェクトを通じて、この問題に対処しています。現在、企業はこういった通常の人材集団以外に手を差し伸べる考えに非常にオープンであり、民間セクターの多くの部分がこういった変化を受け入れる意欲があると思われます。この状況はまた、伝統的に使用者のニーズに応えるために自らが講師となって訓練を提供してきた労働組合や同業者組合のようなパートナーにとっても大きな機会を開くものであるように思われます。

 科学技術の幅広い活用はギグエコノミーにおける不安定な仕事を増大させるだけとの人々の懸念もありますが、科学技術分野の仕事は多様であり、科学技術によって可能になっている仕事のほとんどが実際には通常のフルタイム正社員の範疇に収まっています。さらに、こういった仕事に就いている人々が組織の中の重要な人材と見なされ、使用者との関係や仕事のやり方などについて、それ以外の仕事に就いている人々よりも大きな力を持っている企業もあります。

 ILOでもグリーン経済によって世界全体で新たに2,400万人分の仕事が創出される可能性があるとの予測を出していますが、LinkedInでもグリーン経済を理解しようとしており、つい最近、初期の研究の成果物を発表しました。本質的に、多くの産業、多くの技能においてグリーン・エネルギーの世界に向かう大きな動きが見られます。例えば、今の投資アナリストは気候問題を考慮に入れずに投資判断を下すことはできません。これは技能自体における相当の変化も表しており、実際、グリーン・スキルを備えた人々の採用が急増しています。

 科学技術の恩恵をもっと多くの人々に広げる方法ですが、科学技術分野の仕事あるいは科学技術によって可能になった仕事に就く機会について学んだことが幾つかあります。科学技術を用い、高賃金で、科学技術の世界の他の仕事に移行する基盤となるような良い顧客サービスの仕事を例として挙げると、この仕事とバーテンダーの仕事の間では75%の技能が重複しています。接客業の仕事で用いられている技能の多くは実際には急速に成長している、科学技術によって可能になった仕事で得られる技能の幾つかと密接に重複しているかもしれません。問題はこの移行がなぜ行われないかということです。多くの技能が重複していても、科学技術分野の仕事に就いている人もそれ以外の分野の人の場合も、ほとんどが同じ分野からの転職者です。ここで指摘できるのはネットワーク・ギャップです。つまり、ネットワーク内に多様性がないと、機会が相当に狭まるということで、この点で科学技術は助けになると思われます。

 企業の場合も競争力強化や応募者の質量改善のためだけでなく、経済全体の多様性の欠如に寄与している採用慣行を改めたいと願い、人員の多様化を図っていますが、この点でもネットワークの多様化がものをいいます。

 このように科学技術は多様性を増す基盤となり、それを通じて機会の平等が図られ、たとえほんの薄い表層的なものであるとしても、社会正義の問題に取り組む助けになると思われます。とりわけ、代表性が低い集団に関しては、低く留めている構造的な要因が多々存在します。ある要因は法的なもの、ある要因は文化的なもの、そしてある要因はネットワーク・ギャップであり、これら全てを解きほぐすには、様々な分野における多くの活動が求められます。