グローバル・サプライチェーンにおける人権とディーセント・ワーク

ガイ・ライダーILO事務局長、「EUのデュー・ディリジェンス法は契機となるであろう」

ニュース記事 | 2020/10/06
ガイ・ライダーILO事務局長は、EU理事会議長国であるドイツが主催する「グローバル・サプライチェーンにおける人権とディーセント・ワーク」に関するハイレベル会議に参加しました。

欧州レベルでのデュー・ディリジェンス(注意義務)法への期待を聞かれたILO事務局長は、透明性が確保されるだろうと言及し、「フランス、オランダに続き、ドイツでも、各国における取組みが進められている。欧州でひとつのまとまった制度が導入されれば、欧州域内で公平な競争の場を作ることができ、この分野で企業が求めることが明確化されるだろう」と述べました。

さらに、「EUレベルでのデュー・ディリジェンス法をきっかけとして、この分野では、国連の『ビジネスと人権に関する指導原則』が2011年に採択されて以来、最も重要なステップとなるだろう」と発言しました。これはリーダーシップを発揮するチャンスであり、地政学的な連合を目指す欧州の使命に沿ったものです。

このような制度があれば、欧州外で事業を展開する欧州企業が、これらの優良事例を他国に持ち込むことができるようになります。また、欧州で事業を行うEU以外の企業にも同様の方法で事業を行うよう促すことができるようになります。

このような制度により、正しい行動が求められる企業は、同等の基準を持たず人権を守らない可能性のある海外の企業と比べて、競争面で不利な立場になるのではないかという疑問が生じます。

ライダー事務局長は「デュー・ディリジェンスや人権を遵守している企業は、往々にして生産性や競争力が高い」と述べて、これに反論しました。消費者や投資家はこのような行動を求め、そこから市場での競争優位性が生まれるのです。

しかし、限界もあります。第一に、どのような制度でどういった問題を解決したいのかを明確にする必要があります。ILOの「労働における基本的原則および権利」は、世界的に合意された原則です。さらに、デュー・ディリジェンスやサプライチェーンマネジメントは、適切な生活賃金や職場の安全衛生など、他にも重要な要素に関連しています。

第二に、私たちが実現したいのは仕事の世界で最も脆弱な立場にあり、不利な立場に置かれている人々を保護することであり、また、グローバル・サプライチェーンを強化・維持することであるという事実を伝えなければなりません。新興国では、サプライチェーンの安全性に対する不安が大きいのです。その国の経済において、サプライチェーンは非常に重要な存在です。こうした状況が自分たちに対し不利に作用するのではないか、という印象を人々は持っているでしょう。

「政府間対話(欧州外も含む)、部門別対話、社会的パートナーやステークホルダーとの対話、大企業と中小企業の対話など、対話をこの試みの中心に据える必要があるのです。」と述べ、会議を締めくくりました。