世界銀行/IMF春季会合

世界銀行/IMF春季会合向けILO声明:新型コロナウイルス戦略においては人間を中心に据えた回復への投資を

記者発表 | 2021/04/09

 2021年4月5~11日にバーチャル形式で開かれている世界銀行グループと国際通貨基金(IMF)の春季会合の枠内で8日に開かれたIMFの国際通貨金融委員会及び9日に開かれた開発委員会に向けて発表した声明文で、ガイ・ライダーILO事務局長は新型コロナウイルス危機からの回復政策においては、人間を中心に据え、世界的な感染症(COVID-19)の影響に加えて仕事の世界に以前から存在していた課題にも対処すべきと提案しました。

 ウイルスの世界的な大流行が始まってから目撃されている貧困と不平等の急激な拡大を挙げて、ライダーILO事務局長はまた、包括的かつ協調的な政策努力なしには「新型コロナウイルス危機が社会的不正義と不平等拡大の遺産を後に残す非常に現実的な危険」が存在すると警鐘を鳴らしました。そして、経済・社会の回復がコロナ禍そのものの影響と同じくらい人間を中心に据えたものとなることを確保するには、整合的な多国間行動が必要不可欠であり、この点で、2019年のILO総会で全会一致で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」が国際的に合意された、より包摂的で強靱な社会に向けた行程表を提示すると紹介し、「この行程表の実施を加速化することを、公共政策と国際協力の最優先事項」にすべきと訴えました。

 開発委員会に向けた声明文でライダーILO事務局長は、新型コロナウイルス対応においてはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の創出を優先すべきとし、将来のショックに対する強靱性をも構築する、人間を中心に据えた回復に必要な要素として次の4点を挙げました。一つ目は、労働安全衛生制度の強化です。不十分な安全衛生の取り組みが人間に与える膨大な影響を経済的な費用に換算すると毎年、国内総生産(GDP)世界合計の4%かかっていることになります。二つ目はより良い社会的保護などを通じた貧しい脆弱な人々の支援です。「私たちには今日、包括的かつ十分な社会的保護制度に投資することの価値と緊急性の両方を認識した共通のパラダイムの下、力を結集する機会」が提示されていることを声明文は指摘しています。

 3点目は、非公式(インフォーマル)経済関連を含む働く全ての人と全ての事業体に届く政策及び措置による、雇用の質に焦点を当てた、持続可能な雇用創出と企業成長に対する支援です。4点目は仕事に関連した制度・機構の強化であり、これには結社の自由や、より実効性のある団体交渉、賃金に関するものを含むその他の社会対話が含まれます。

 国際通貨金融委員会向けの声明文では気候変動の問題を提起し、これはマクロ経済の安定と数百万人の生計手段を脅かしている一方で、低炭素の未来への移行をディーセント・ワークの創出と結びつける相当の潜在力が秘められていることに注意を喚起しました。そして、「景気回復プロセスに配備される数兆ドルは持続可能性とディーセント・ワーク創出を推進する要素になり得る」として、再生可能エネルギー、効率化、環境に優しいグリーン交通への投資に重点を置いた環境に優しいグリーン回復は2030年までに約2,050万人分の仕事を新たに創出する可能性を示すILOの調査研究を紹介しました。

 さらに、この移行においては、適正な技能訓練の平等な機会と生涯学習への支援が必要不可欠であり、包摂的かつ持続可能な開発のカギを握る要素となることに注意を喚起しました。

 両委員会の任務は、世界銀行グループ及びIMF理事会に世界経済の見通しや貧困根絶、経済開発、援助の有効性などのグローバルな関心事項について助言することです。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。