ILOマルチメディア・プラットフォーム「声」:難民

新型コロナウイルスの下、子どもを養う決意の固い難民女性

 新型コロナウイルスの世界的大流行によってシリア難民のファティマ・フセイン・アルアフマドさんが働き暮らすヨルダンの農場では労働時間が短縮されました。才能豊かで決然としたファティマさんは、まだ乳児である娘のミルクを買う収入を得る他の方法を見つけました。ILOの新しいマルチメディア・プラットフォーム「声」に掲載された彼女の物語を読んでみて下さい。

ヨルダンで暮らすシリア難民ファティマさんの物語(アラビア語・英語字幕付・2分17秒)

 シリア難民のファティマ・フセイン・アルアフマドさんと夫のアブデル・カハルさんは、6歳の長男、5歳の長女、2歳の次男、そして7カ月の次女の4人の幼い子どもと共に、ヨルダン北部マフラク県サハバ市の農場で農場労働者として暮らしています。シリアで起こっている問題から逃れ、仕事を探すために、兄弟姉妹を含む一家でヨルダンにやって来たファティマさんは、この地で夫と出会い、結婚しました。

 当初は1カ月毎に農場を移動しなくてはならない不安定な生活で疲れ果てましたが、今の農場で提供されたワゴン車での生活はテントよりも快適で清潔であると感じ、今は移動を止めて他の50人の農場労働者と共にここに定住しています。

 ファティマさんの一日は、朝起きて子どもたちと夫に朝食を作ることから始まります。夫が働きに出た後、家事を済ませ、子どもを親戚に預け、自分も農場に働きに出かけます。朝7時から午後2時頃まで桃やトマトを摘んで働いた後、赤ん坊の面倒を見るために帰宅します。午後は羊の乳を搾り、家事をして過ごします。

 このような日常の中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が入ってきました。最初耳にした時は怖くなったのでニュースを見たり、携帯電話でオンライン情報を集め、YouTubeを見て自分を守る方法を学びました。家を出て他の人と接触しなくても済むように必要物資は全て買い込みました。

 ウイルスが流行し始めると職場で密になってはいけないと言われ、2カ月間、仕事を中止しました。生活が苦しくなり、支払いがあるために借金せざるを得ませんでした。母親として赤ん坊のミルク代を始め子どもの必要を満たす収入の確保が必要だったため、あらゆる仕事をしました。夫と農場主を手伝って家畜の世話をした見返りに少量のミルクをもらい、それでヨーグルトとチーズを作って町に行って売り、帰りに薬局で赤ん坊のミルクを買いました。

 自宅でもプレッシャーは大きく、料理に掃除、日に二度の消毒に加え、ウイルス流行の最初の数カ月間は十分なパンが入手できなかったために、2、3日おきに子どものためにパンを焼かなくてはいけませんでした。

 長男は農場で開かれていた非公式な教育センターで学んでいましたが、通い始めて4カ月目で危機のために行けなくなり、先生がWhatsAppを通じて出す課題を解く遠隔学習に入りました。長男はもう文字や数字を学んでおり、自分の名前を書くこともできます。遠隔学習を補うためにファティマさんも教えています。

 農場では互いに助け合い、必要な物を融通し合っています。ファティマさんも独り暮らしの隣りの高齢女性に多く焼いたパンを届けたりしています。

 封鎖が終わり、仕事を再開できたので今は家族の必要を満たすのに十分な収入を確保できているファティマさんは、仕事に復帰できた喜びを語っています。

 新型コロナウイルスの流行が始まる前は就業していた人の約半分が危機の最初の数週間、仕事ができなったことを示す調査結果があります。

 ファティマさんが暮らす農場は、ILOが2018年から実施している、農業における労働条件を高めて働きがいのある人間らしいものにすることを目指す活動の対象となっている24の農場の一つです。農場の敷地内で暮らす家族にプレハブの家を提供したり、労働者委員会の設立、労働安全衛生向上支援、技能訓練、農場で暮らす子どものための非公式教育へのアクセス支援といった活動が展開されています。これは、ILO、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、世界銀行、国際金融公社(IFC)がオランダ政府の任意資金協力を受けて、東・北アフリカ及びアラブの8カ国で避難民とその受入社会を支援している「移動を強いられた人々とその受入社会の展望改善パートナーシップ(PROSPECTS)計画」の一部です。


 以上はマルチメディア・プラットフォーム「声」に掲載されている2021年1月11日付の英文広報記事の抄訳です。