ILO/日本フィリピン水道プロジェクト

ILOと日本国政府とバンサモロ労働・雇用省のパートナーシップによってフィリピン国ラナオ・デル・スル州に最大規模の水道システムが誕生

 コロナ禍の中、ILO/日本フィリピン水道プロジェクトの下で地域住民の手によって建造された新たな水道設備は、ラナオ・デル・スル州の六つの村を結び、バンサモロ地域にきれいで安全な水を供給し、ディーセント・ワークを促進し、平和構築に寄与することになります。

記者発表 | 2021/03/30
安全できれいな水が子どもたちに届きました(ラナオ・デル・スル州ワオ市)© ILO/F. Paslangan

 ILOは2019年より日本の外務省の任意資金協力を得てフィリピンのバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)内で水道整備を通じて和平の確立を目指すプロジェクトを実施してきましたが、2021年3月30日にラナオ・デル・スル州に最大規模の水道システムが誕生しました。

コロナ禍によって職や生計手段を失った人々を中心に地域住民が訓練を受けて建設工事に携わりました

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行は様々な課題を提示すると共に、水が得られる必要性を強調することになりました。3月30日に開通した水道は地域社会、農地、学校、産院に設置された69本の立水栓を通じて20年間水の入手が限られていた6村(バランガイ)を結び、1万人以上にコロナ禍の中、安全できれいな水を提供することになります。

 「ミンダナオにおける和平の確立のための水道設備管理能力向上計画」の下、コロナ禍によって職や生計手段を失った人々を中心に263人の地域住民が訓練を受けて建設工事に携わりました。プロジェクトの実施パートナーである「安全な水のための一滴(ASDSF)」はさらに、地域社会の請負業者であるカトゥトゥンガン灌漑耕作者協会による水道工事を支援しました。労働者は賃金と社会的保護給付を受け取り、工事現場では労働安全衛生に関する手順が実施されました。プロジェクトはまた、女性を工事に従事させることによって雇用機会の平等も確保し、社会対話を通じて持続可能性に関する計画を練り上げました。自治地域におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、平和構築に資するだけでなく、プロジェクトはまた地域社会の技術・財政スキルの向上も支援しました。

水道引き渡し式典におけるカリド・ハッサンILOフィリピン国別事務所長のメッセージ(英語・4分13秒)

 ILOフィリピン国別事務所のカリド・ハッサン所長は、コロナ禍の中、極度の貧困や紛争、気候変動などの多重の負担を抱える地域ではとりわけ、水がますます貴重になっていることを指摘し、「ディーセント・ワークを創出し、安全な水を供給し、平和を促進するこの水道プロジェクト」を通じてミンダナオの発展に参与する機会を与えてくれたことに対し、日本国政府に感謝の意を表明しました。越川和彦駐フィリピン特命全権大使は「ILOの直接的な知識と実地経験」が非常に重要であったことを指摘した上で、「この水道がバンサモロ社会をまた一歩発展に近づけた新たな平和イニシアチブになるであろうと考えると心がなごみます。地元の方々にディーセント・ワークと生活条件向上の機会が提供され、工事中は適正な健康手順が守られたことにきわめて満足しています」とプロジェクトを評価しました。プロジェクト諮問・検討委員会の長として、水道の開通と地元自治体及び地域の人々への引き渡しを主導した自治地域のロメオ・セマ労働・雇用大臣は、「ILOと日本の協力によって開通した水道は、この地域がより良い暮らしの場となることを目指した、バンサモロ自治政府への活発な支援の表明であり、域内全ての共同体に基本的なサービスと事業計画が得られるよう確保するという主席大臣の12項目優先課題に沿ったもの」であると説明しました。

水道引き渡し式典における越川和彦駐フィリピン特命全権大使のメッセージ(英語・4分44秒)
地元自治体からも見返り資金が出されている新たな水道設備は、ラナオ・デル・スル州で最大のシステムであり、六つの村を結んでいます

 水道整備によって直接に水が得られるようになるため、主に農業に依存するこの地域社会と農民の方々がもはや列を作り、時間をかけてきれいで安全な水を汲んでくる必要がなくなるため、さらなる生産性向上が期待されます。関係者のパートナーシップはまた、基本的なサービスを提供する取り組みに投資し、それを維持する地方自治体の役割にも光を当てています。賃金や社会給付を含む水道整備の総経費は約1,700万フィリピンペソ(約3,900万円)でしたが、このうち390万フィリピンペソ(約890万円)は地元自治体の見返り資金です。地元自治体はさらに、通行権問題の解決、建築資材や見返り資金の供給のための措置を採用し、持続可能性を確保するために近い将来地元条例を制定する予定です。

 受益地であるワオ市のエルビノ・バリカオ二世市長は、「地域社会の長年の夢を実現させた水道は、大いに地域の助けになる」と評価した上で、地元の条例を通じて、維持を制度化し、資金を拠出することを約し、「水道は実際、ワオの住民にとって今年最も貴重なプロジェクト」と賞賛しました。

地域社会、農地、学校、産院に新たな水道の立水栓69本が設置されました

 以上はILOフィリピン国別事務所によるワオ発英文記者発表の抄訳です。